あさぎり型護衛艦とは、昭和63年から平成3年にかけて8隻が竣工した海上自衛隊の汎用護衛艦である。
はつゆき型護衛艦の拡大改良型でもあり、この2種類合計20隻の竣工をもってして護衛艦隊。
その主力である4個護衛隊群の汎用護衛艦を、オールガスタービンシステム艦に置き換えることを達成し得た。
各種欠点も指摘されているが、平成初期から中期の護衛隊群を支えた歴としたワークホースである。
ある意味では「海上自衛隊が当初望んだはつゆき型護衛艦」ともいえる。
はつゆき型は予算、排水量の制約から各部で妥協を余儀なくされ、その妥協をようやく乗り越えた艦ともいえる。
運用構想そのものは、はつゆき型と同一。あるいはその延長線上にある。
そのため、やや古めかしい設計も目立つが、着実に進歩している点も多い。
近年では新型汎用護衛艦の就役に伴い、徐々に10番代護衛隊へと配備転換されている。
なお3番艦「ゆうぎり」はリムパックでCIWSの誤操作、誤作動で米軍機を撃墜してしまったり、
トラファルガー海戦200周年観艦式に招待されたり、色々と毀誉褒貶の激しい艦だったりする。
全長 | 137m |
全幅 | 14.6m |
排水量 | 基準3500t(はまぎり以降3550t) 満載4900t(はまぎり以降4950t) |
乗員 | 220名 |
武装 | 62口径76mm速射砲1門 高性能20mm機関砲(CIWS)2基 74式アスロック発射装置1基 シースパロー短SAM発射装置1基 ハープーン艦対艦誘導弾発射筒4連装2基 3連装短魚雷発射管2基 Mk36チャフ・フレア発射装置複数等 |
レーダー | OPS-14C対空レーダ(はまぎり以降OPS-24対空レーダ) OPS-28C対水上レーダ |
ソーナー | OQS-4Aハルソーナー OQR-1曳航ソーナー |
ECM/ESM | QLT-3ECM+NQLR-8ESM OLR-9Cミサイル警報装置 |
速力 | 最大30kt |
主機 | COGAG4基2軸方式 出力54000馬力 スペイ「SM-1A」13500馬力4基 |
搭載機 | SH-60J対潜哨戒ヘリコプター1機(最大2機) |
船体規模に余裕を持つことが出来たため、ガスタービンの配置を従来のパラレルからシフト方式に変更。
これにより被害時の耐久性が向上、同一の主機を用いることで操作性。整備性も改善されている。
また、C4Iの中核となるCDS(情報処理装置)の性能向上が図られ、汎用護衛艦としては初めて、Link11データリンクシステムに対応している。
最終艦「うみぎり」では対潜情報処理装置も統合搭載され、他の同型艦へも順次バックフィットされた。
これにより曳航ソーナーから得られた情報を含め、、対潜情報を一元管理。
アスロックや短魚雷による攻撃。もしくは哨戒ヘリとの高度な連携が可能となった。
そして5番艦「はまぎり」からであるが、世界最初の艦載アクティブフェイズドアレイレーダ「OPS-24」を搭載。
これにより大幅に対空捜索能力を拡張に成功した。このレーダは改良を受けつつ、次のクラスにも搭載されている。
哨戒ヘリ運用に関しても、緊急時は2機収容可能な容積が持たされている。
最初に列挙されてしまうのは、ステルス性の根本からの欠如であろう。
はつゆき型をタイプシップとしている以上、基本設計が古く、特に巨大な格納庫のRCSは大きい。
また、上構造物がはつゆきよりも巨大化したため、航行時に風向の影響を受けやすい。
それだけ船体への負荷がかかりやすいとの指摘もある。
主機のシフト配置化による耐久性向上は評価されるべきだが、それにより2本に増えた煙突。
その配置は褒められたものではなく、排熱が格納庫上のシースパロー用FCSに開く影響を与える。
あるいは焼損事故さえ生じたという噂も存在する。
近年は港湾設備の発展により使われることはなくなったが、搭載された非常用ディーゼル発電機。
その排煙設計にも問題があり、稼働させた場合、艦内に排煙が流れ込んでくる構造となってしまった。
長所、短所を総じて見た場合。過渡期の護衛艦といえるであろう。
けして十全といえる設計ではないが、近年の新型護衛艦建造ペースの低下、そして周辺情勢の緊張に伴い、
あさぎり型護衛艦も延命措置を施され、現役に留まり続けることが決定した。
既に5隻分の改修予算が認可され、これにより5年から10年の延命が可能と言われている。
現在判明している改修内容は船体の延命工事、リエンジン(SM-1A→SM-1C)による自動化と維持費低減。
そして「はまぎり」以降の4隻は、曳航ソーナーを含む対潜システムに、何らかの近代化が行われる模様である。
既に3隻が護衛隊群から離れたとはいえ、それなりに使い勝手の良い汎用護衛艦であることに変わりはない。
今しばらく護衛艦隊の一線部隊で、活躍し続けることとなるであろう。
ソマリア・アデン湾海賊対処部隊にも度々参加しており、本年度の15次部隊にも派遣されている。
1999年11月にあさぎり型護衛艦7番艦「さわぎり」では、機関科所属の3等海曹が自殺に追い込まれる事件が発生した。この自殺に至る過程においては上官によるメンタルヘルス、いじめ対策の不備。それどころか他の同階級の自衛官への上官による金銭恐喝、艦内の賭博や飲酒も発覚、後に防衛省は被害者遺族相手に敗訴・謝罪している。
但し処罰や賠償は人間一人を自殺に追いやったことを鑑みれば、大変に軽微なものであった。乗員60名以上が異動とされているが、艦長の2佐でさえ懲戒免職ではなく異動処分に留まっている。加えて遺族に支払われた賠償金は350万円とあまりにも少なかった。同様の自殺事件は現在は退役したミサイル護衛艦たちかぜでも起きている。
一応現在は陸海空自衛隊共に白書などでメンタルヘルス対策を講じている模様だが、自衛隊部内でも自殺者は跡を絶たないのが現状である。この3等海曹は未だに21歳と命を絶つには余りにも若すぎる悲劇だった。
艦名 | 艦番号 | 竣工日 | 配属 | 定係港 |
あさぎり | DD-151 | 1988年3月17日 | 第14護衛隊 | 舞鶴 |
やまぎり | DD-152 | 1989年1月25日 | 第11護衛隊 | 横須賀 |
ゆうぎり | DD-153 | 1989年2月28日 | 第11護衛隊 | 横須賀 |
あまぎり | DD-154 | 1989年3月27日 | 第11護衛隊 | 横須賀 |
はまぎり | DD-155 | 1990年1月31日 | 第15護衛隊 | 大湊 |
せとぎり | DD-156 | 1990年2月14日 | 第14護衛隊 | 舞鶴 |
さわぎり | DD-157 | 1990年3月17日 | 第13護衛隊 | 佐世保 |
うみぎり | DD-158 | 1991年3月12日 | 第12護衛隊 | 呉 |
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