「かどの目ざし焼き(かどの目刺し焼き)」とは、三重県の一部地方での郷土料理である。
三重県の中勢地方や、布引山地を隔てて西に隣接する伊賀地方において、塩をして干したサンマを「かど」と呼ぶ。[1]このサンマの尾を、同じサンマの目の部分を貫通するように刺して輪っか状にして焼いたもの。要するに「焼き魚」であり、「サンマの塩焼き」の類型の一種である。
「目ざし焼き」とはこの「目の部分を尾で刺してから焼く」という焼き方を強調した呼び名であるわけだが、「この焼き方が当たり前」なところでは特にその点は意識にのぼらないのか、単に「かど焼き」と呼ばれることもあるようだ。
なお、東北地方にも「かど焼き」(カド焼き)と呼ばれるものがあるが、これはサンマではなくニシンを焼いた料理であり、あるいはニシンを焼いて食べつつ集まって楽しむ飲み会行事のことである。山形県新庄市の「新庄カド焼きまつり」などが知られる。地方によって「かど」(カド)という言葉が指す魚は、サンマだったりニシンだったりするわけだ。
1984年の書籍『日本の食生活全集24 聞き書 三重の食事』(編:「日本の食生活全集三重」編集委員会 出版:農山漁村文化協会)には、以下のような記載がある。
かど焼き
鈴鹿地方では、塩かどは目に尾を突きさして輪にし、金の棒につるして、庭先で稲わらを燃やして焼く。稲わらを一束燃やし終わるころには、かどの脂がぶつぶつとにじみ出て、ちょうど食べごろに焼ける。一人一ぴきずつ夕飯につける。かど焼きは、秋の農繁期のおかずによく食べる。また、九月二十一日のえべっさん(恵比寿さん)のときに、斗枡の上にあか飯と一緒にのせて、お供えにもする。
魚は、伊勢から売りに来たかどやさいら、ときには、いわし、鮭などである。とくに秋はかどのしゅんである。夕方、家々の内庭で、かどの尾を目にさして丸くして目刺し焼きをする風景が見られる。目刺し焼きをすると、頭から尾まで全部食べることができる。
かどの目ざし焼き
行商人から買う塩干ものは、たいていのものはこんろの上で網で焼くが、かどだけは少し変わった焼き方をする。かどのしっぽを目にさして輪にし、火ばしを輪の中に通して、七輪の火や風呂の焚き口にかざして焼く。こうして焼くとまっ黒に焦げたりせず、まんべんなく焼けるし、頭からしっぽまで食べることができる。
また、2018年の書籍『三重県食文化事典』(著:大川吉崇 出版:創英社/三省堂書店)には以下のような記述がある。
○かど焼き [民俗]
秋の収穫で慌ただしい津市や鈴鹿市の農家では、手間を掛けて昼や夜の食事は作れないため、かど(秋刀魚)の目に尻尾の部分を刺して丸い状態にし、金箸の上に載せて畑や庭先で藁を燃やして焼き、おかずにする。
以上の書籍内では「なぜ輪っかにするのか」について詳しく記されてはいないが、記述内容から読み取るに
などといった利点があったものかと思われる。
また、実際にこの焼き方を試した人の声として「腹全体の焼き過ぎが軽減される」「身剥がれがよく食べやすい」との声がある。
「なぜそうなるのか」の説明はなされていないが、おそらく「腹全体の焼き過ぎが軽減される」の方は、この焼き方で焼くと、通常の「横に寝た状態で焼く」のとは異なり「腹を下にして立った状態、あるいは背を下にして仰向きになった状態で焼く」ことになるためか。これならば「薄い腹側の部分を焼く時間は短くし、厚い背側を焼く時間は長くする」といった調整が容易になる……ということではないかと思われる。
また「身剥がれがよく食べやすい」の方は、「曲げて力がかかった状態で焼く」ことによって、加熱している間に生じる身と骨との間のズレが大きくなりやすく、結果として身が骨から外れやすくなるのかもしれない。
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最終更新:2025/12/07(日) 14:00
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