ゆれる人魚とは、2015年のポーランド映画である。日本では2018年2月10日公開。
監督はアグニェシュカ・スモチンスカ。彼女の長編デビュー作でもある。本作はサンダンス映画祭2016にてワールドシネマコンペティション部門の審査員特別賞を受賞した。
原題は「Córki dancingu」。ジャンルはホラー&ミュージカル映画である。アンデルセンの有名な童話『人魚姫』にインスピレーションを受けている。
舞台は1980年代のポーランド・ワルシャワ。岸に上がった人魚の姉妹・シルバーとゴールデンはナイトクラブに雇われる。彼女らは、バンドのバックコーラスやストリップとして活動を始めるとたちまち人気ものになる。しばらくして、シルバーはバンドのベーシスト・ミーテクに恋をするが、ミーテクにとってシルバーは魚でしかなく、また、ゴールデンにとっても人間は餌でしかない。複雑な状況のなか、シルバーはある決断をする。
監督は初め、ポーランドの人気オルタナティヴバンド「Ballady i Romanse」のヴロンスキ姉妹の伝記を作るつもりだった。作中の音楽をヴロンスキ姉妹が担当しているのはこのためである。しかし、ヴロンスキ姉妹はあからさまな伝記として作られることに難色を示した。そこで、監督が短編時代から組んでいた脚本家のロベルト・ボレストの提案により、人魚をモチーフにすることに決めた。そして、人魚は歌を歌うということから、ミュージカル映画にすることを決めた。
作品の舞台である80年代のポーランドはポーランド統一労働者党(PZFR)の支配下である。この時期にはポーランド自主管理労組「連帯」(ソリダルノスチ)が結成され反政府運動が活発化した。それに対し、81年、第6代第一書記ヴォイチェフ・ヤルゼルスキは戒厳令を布き、反政府運動を抑え込もうとした。その間市民の生活は著しく制限され、人々は破綻した経済の下で貧困にあえいだ。83年に戒厳令が解除された後も市民の自由権はひどく踏みにじられ、社会には閉塞感が漂っていた。
しかし、それでもなお閉塞感を打破しようとした市民らは、「ダンシング・レストラン」に集まり、戒厳令からの「再脱出」を試みた。そこで人々は西欧化への憧れを抱き、生活で溜まったフラストレーションを発散した。ヴロンスキ姉妹が活動を初めたのもここである。
作中に登場するナイトクラブ「ダンシング・レストラン」は実在したものを忠実に再現するというよりは、制作陣の記憶の中で美化されたものを表現することを重視している。これには、ともに親の経営するダンシングレストランのバックステージで育った監督やヴロンスキ姉妹が、唯一のきらびやかな世界であったディスコに抱いていた憧れの感情を再現しようとする意図がある。
オープニングで流れるアニメーションの絵は、ポーランドの画家アレクサンドラ・ヴァリシェツカによるものである。制作陣はクリシェから脱出したよりモダンな人魚のイメージを求め、モンスターをも連想させる人魚のイメージが完成した。この作品における人魚は、動物と人間の間の存在、また、子供と大人の間にいる思春期の少女のメタファーとしても描かれている。
ポーランドではミュージカル映画やホラー映画はマイナーなものであり、それゆえか独特の演出が垣間見られる。ミュージカルの振り付けは、ボブ・フォッシーのミュージカルや、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のビョーク、ピナ・バウシュ、ストリートダンス・プロジェクト・イスラエルなどに影響を受けたという。
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最終更新:2024/04/18(木) 03:00
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