らくだとは落語の演目である。正式名称は「駱駝の葬礼」(らくだのそうれん)。動物の駱駝はラクダを参照のこと。
上方発祥の演目だが、らくだという名前は東京両国で行われたラクダの見世物に因む。主な演者に一世一代の大ネタと言わしめた笑福亭松鶴のほか、桂米朝、桂米團治、古今亭志ん生、三遊亭圓生といった顔ぶれであり、40分~50分に及ぶ大ネタとして知られる。
なお、なぜ登場人物(とは言っても死んでいるが)が「らくだ」なのかは、当時両国の見世物で公開された「らくだ」の印象として、動作がゆったりとした役立たずの動物という見方がされていた(実際は暑さと乾燥に耐え、砂漠の船とも言われるほど優秀な動物である)ため、うすのろの役立たずを「らくだのよう」と形容していた時代があったことに因むらしい。
酒好きな暴れ者、渾名は「らくだ」、彼の長屋に兄貴分の男がやってきたが、返事がない。彼が訝って中に入ると、彼はフグに中って死んでいた。早速彼は葬儀をしてやりたいと思うが金などあるわけがない。そこに紙屑屋がやってきた。彼はしめたと思い、紙屑屋を捕まえ、部屋の家財一色を引き取ってもらおうと言い寄るが、断られてしまう。
ならばと男は、長屋の月番の所に遣わせ香典を回収するように命令する。渋々ながら紙屑屋は月番の所に行くが、月番はあの厄介者が死んだときいて大喜び。赤飯代わりに香典を出すように長屋連中を集めてくる」と了承する。安心した紙屑屋も束の間、今度は大家に酒と料理を出すように言うのだ。
困った紙屑屋、その大家は吝嗇で知られていたからで案の定「あんな一度も店賃をもらったこともない男にやるものはなにもない」と即座に断られてしまう。それを伝えるや兄貴も手を打ち、らくだの亡骸を文楽人形のように操り、”かんかんのう”を大家の前で演じるよう仕向けた。紙屑屋は乗り気ではなかったが、仕方なく演じるや大家はすっかり腰を抜かしてしまい、やめる引き換えに酒と料理を手配してもらい、棺桶代わりに古い漬物樽を受け取って、らくだの遺骸を放り込んだ。
こうして2人で葬礼を始めようと、男は紙屑屋に酒を勧めようとする。彼は仕事中だからと断るが、「俺の酒が飲めないのか?」と脅迫する。だが、それは飲めないのでなく、飲ませてはいけなかったのである。
一度飲むと彼は次第に態度が豹変していき、完全に立場が逆転してしまい、とうとうお代わりの酒まで手配される始末。挙げ句に紙屑屋は踊りまで始めてしまった。
大抵はこの辺りでお開きとなっている。実はこの噺は1時間以上あるのだが、下げがイマイチ蛇足気味なのでカットされることが多く、最後まで演じていた噺家は笑福亭松鶴、三笑亭可楽など少数派となっている。ちなみに、その後の展開は以下の通り。
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…ふたりともできあがってしまい、明日にしようと言っていた葬礼を本日中に済ませてしまおうと、早く火屋(葬式場)に駆けつけようとする。二人は棺桶代わりの漬物樽を掲げ、陽気に歌いながら葬礼をしていたが、うっかり古い漬物樽の底が抜けており、らくだが姿を晦ましていた。
二人は泥酔していたのもあり、そこにたまたま酒で酔って眠っていた生臭坊主を亡骸と勘違いして無理に詰め込んでしまう。そして、火屋に投げ入れてしまい、はっとした坊主が目を熱さに目を覚ました。
「ここはどこだ?」と坊主が尋ねると、ここは「火屋(火葬場)だ」と答える。坊主は
「火屋でもいいからもう一杯よこしてくれ…」
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このように、火屋と冷酒を掛けた地口落ちとなっているのだが、なんかイマイチな下げとなっているのも端折られる理由である。また、亡骸を手入れするときに髪を歯で引きちぎったりとけっこうグロテスクな描写もあるので、そこも敬遠されている理由となっている。
カンカン踊りという名称で知られ、江戸時代後期、長崎の人が堀江の盛り場で披露した唐人踊りに始まり、後に江戸や全国にも広まる庶民的な踊りとなった。なお、漫画家あさりよしとおの「宇宙家族カールビンソン」というSF漫画でも、ヒロインのコロナが、この「かんかんのう」を踊ろうとして、お母さんに「やめい!」と忠告されるシーンがあるが、今日「かんかんのう」といえば、落語の「らくだ」を連想させる、縁起の悪い(気味が悪い)踊りと誤解されている節がある。
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最終更新:2023/09/21(木) 17:00
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