本記事では1.について記述する。
1870年に制作、翌1871年に初演されたイタリア・オペラ。
古代エジプトを舞台とし、若き将軍と亡国の姫の悲恋を描く、オペラの中でも世界的な人気を誇る作品である。
1869年、スエズ運河開通の祝賀事業として、エジプトのアリー朝総督、イスマイール・パシャがカイロにオペラ劇場を創設する。この時こけら落としの為にヴェルディに作曲の依頼が入ったが本人が辞退した為、ヴェルディのオペラ『リゴレット』が上演された。
その後パシャは「ヨーロッパの著名な作曲家による、エジプトを舞台としたオペラ」の制作をヴェルディに希望。この時題材として提示されたのは、エジプト考古学者、オーギュスト・マリエットが記した23ページの草稿だった。これはマリエットが発掘作業中に見つけた一組の男女の遺体からインスピレーションを受けたもので、その後加筆されてオペラの原作となった。
1870年にヴェルディは依頼に合意し、制作を開始。この時提示された条件は「台本はイタリア語」「初演を監督する義務はない」「初演以外の全ての上演に権利を持つ」などの厳しい内容だったが、パシャはこれを全て受諾している。なお制作自体は契約締結からわずか5ヶ月という驚異的スピードで行われており、ヴェルディの意気込みが感じられる。
『アイーダ』のカイロでの初演は1871年1月に決定していたが、1870年7月に勃発した普仏戦争により、舞台装置や衣装を製作していたパリがプロイセンによって包囲され、スケジュールが大幅に遅延してしまう。
その後初演は12月に延期されたが、結果は大成功。パシャは感謝の電報をヴェルディに送ったと伝えられている。
イタリアでは1872年にスカラ座で初演。熱狂的に迎えられ、その後各都市でも上演された。日本では1919年、帝国劇場にてロシアの歌劇団によって上演されたのが初演とされている。
最も有名なのは第2幕第2場で演奏される「凱旋行進曲」で、本作を代表する曲である。
舞台でも「アイーダ・トランペット」と呼ばれる特別なトランペットにより、舞台上で演奏されるのが通例。日本ではサッカーの応援歌として人口に膾炙している。
舞台は古代エジプト。
敵国エチオピアとの戦を間近に控えた中で、祭司長ラムフィスは神々に司令官を誰にすべきかを問い、託宣によって若き将軍・ラダメスが指名される。
ラダメスは王女アムネリスの奴隷であるアイーダと密かに愛し合っており、司令官となった暁にはアイーダに勝利を捧げる事を願う。一方でアムネリスはラダメスに恋をしていたが、彼の心が自分の奴隷にあると知って嫉妬の炎を燃やす。
しかし誰も知らない事だったが、実はアイーダはエチオピアの王女だった。ファラオによってラダメスが司令官に任命され、アイーダは父王と自分の恋人が殺し合う運命を嘆く。そんなアイーダの心も知らず、神殿では戦勝祈願の儀式が盛大に執り行われるのだった。
時は経ち、エジプト軍の勝利が伝えられる。歓喜に沸き立つエジプトでは、アムネリスが大勢の侍女や奴隷に囲まれながら、祝宴の準備を始めていた。
母国の敗北を知り、父の消息を不安に思い、意気消沈するアイーダ。そんなアイーダに対し、アムネリスはわざと「エジプト軍は勝利したがラダメスは死んだ」と嘘をついて動揺させる。更にアイーダに対して自分もラダメスを愛している事、身分違いの恋は叶う事なく、ラダメスは自分のものとなると高らかに宣言する。
軍を率いて凱旋、歓呼の声で迎えられるラダメス。捕虜として連行されたエチオピア人の中には、アイーダの父であるエチオピア王・アモナズロもいた。思わず「お父様」と口走ってしまうアイーダだったが、アモナズロはうまく誤魔化す。
ラダメスは捕虜の釈放を願い出て、ファラオはアモナズロを人質として残すことを条件にそれを受諾。更にラダメスにアムネリスを妻として与え、次期国王に指名した。エジプトの栄光を讃える合唱と共に、絶望するアイーダ、勝ち誇るアムネリス、復讐を誓うアモナズロの歌が歌われる。
アモナズロはアイーダに、エジプト軍の動きを探るように命じる。迷うアイーダはラダメスと共にエジプトから逃げる事を願い、ラダメスもこれに応じた。二人の逃げ道として、エジプト軍の行軍経路をアイーダに語って聞かせるラダメス。だがそれは最高機密であり、これがエチオピアに知られれば形勢は一挙に傾くものだった。
これを物陰から聞いたアモナズロは喜び、アイーダを連れて逃亡。愛する女の正体を知って愕然とするラダメスは、その場に残って罰を受ける事を選ぶ。
栄光の座から一転して国の裏切者となり、捕らわれの身となったラダメスの許に、アムネリスが現れる。エチオピア軍は結局鎮圧されてアモナズロは戦死、アイーダは行方不明になったという。ラダメスがアイーダを諦めて自分を受け入れるならば命を助けると言うアムネリスだったが、ラダメスは裁判に臨んで一切の抗弁を行わなかった。
激しく取り乱すアムネリスの嘆願も空しく、ラダメスは生き埋めによる死刑が確定してしまう。
自らの墓となる地下牢に入ったラダメスだったが、そこにはアイーダが待っていた。彼女はエジプトとエチオピアの戦争を生き延び、判決を予測して先に潜入していたのだ。闇の中で二人は固く抱き合って愛を再確認し、現世に別れを告げ、静かに死んでいく。
地上の神殿では嘆き悲しむアムネリスがラダメスの魂の救済を祈る中、幕が下りる。
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最終更新:2024/03/29(金) 13:00
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