アウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェとは、ポルトガルにあるサーキットである。
最寄りの都市がPortimão(ポルティマオン、ポルティマオ)なので、ポルティマオンサーキットとかポルティマオサーキットとも呼ばれる。
頭文字をとったAIAという略称で呼ばれることもある。
2008年10月に完成した。総工費は1億9500万ユーロ(当時のレートで換算すると約244億円)で、サーキットをデザインしたのは建築家のリカルド・ピナ(Ricard Pina)である。
2008年から2020年現在までの13年間で、12回、スーパーバイク世界選手権(公道走行向けの市販オートバイによるレース)が開催されている。2016年だけは開催されなかった。
2020年はコロナ禍の混乱がモータースポーツ界に広がった。ヨーロッパに本拠を持つチームが、ヨーロッパを離れてアジアや南米や中近東に出張するのが難しくなり、ヨーロッパ内のサーキットにF1やMotoGPを開催するチャンスが回ってきた。その混乱のさなか、本サーキットでF1世界選手権とMotoGPが開催されることが決まっていった。2020年7月24日に同年10月のF1開催が発表され(記事)、2020年8月10日に同年11月のMotoGP開催が発表された(記事)。ポルトガルにおけるF1開催は24年ぶり、MotoGP開催は8年ぶりである。
2018年12月に、ホルヘ・ヴィエガスというポルトガル人が国際モーターサイクリズム連盟(FIM)の会長選挙に勝利した。ホルヘ・ヴィエガス会長が政治力を使ってポルトガルにMotoGPを誘致するのではないか、と噂されていたが、その噂が現実のものとなった。
F1やMotoGPの開催に向けて、2020年8月に路面が再舗装されることが決まった(記事)。実際に再舗装が行われた(画像)。
2017年のスーパーバイク世界選手権で走行したステファン・ブラドルは、「路面の凹凸が多かった」と振り返っていた(記事)。ダニロ・ペトルッチも「路面が凹凸だらけのようだ。スーパーバイク世界選手権を観戦したが、(路面の凹凸で車体が跳ねて)前輪と後輪の両方が浮いているのを見た」と指摘していた(記事)。そうした路面の凹凸をおそらく解消できたものと思われる。
本サーキットを管理する会社はパーカルガー・セルヴィコス(Parkalgar Serviços)という。この企業は2013年9月に、ポルトガルベンチャーズという企業に買収された(記事)。ポルトガルベンチャーズは、ポルトガル政府が2012年6月に設立した国営企業である(資料)。
政府として、サーキットを国費で整備し、大レースを誘致して、観光産業の看板にしたいのだろう。
2020年現在のサーキットCEOは、パウロ・ピニェイロという人物である。F1やMotoGPの誘致に際して先頭に立った。
ポルトガル南部のアルガルヴェ地方の中に位置する。アウトードロモ・インテルナシオナル・ド・アルガルヴェとは、「アルガルヴェ地方を代表する国際的サーキット」という意味である。
ポルトガルの首都リスボンから南へ170kmほど離れた場所に、アルガルヴェ地方が広がっている。170kmというのは、東京駅と長野市役所の直線距離と同じぐらいである。
アルガルヴェ地方は温暖で、夏は高温で乾燥している。アルガルヴェ地方の中心都市のファロの気候は、7月~8月の平均最高気温が29.2~28.8度で「ちょうどいい暑さ」といったところ。また、7月~8月の降水量は非常に少ない(資料)。
そして綺麗な砂浜に恵まれているので(画像1、画像2)、夏になるとヨーロッパ中から観光客が押し寄せてくる。
アルガルヴェ地方の中心都市のファロにおいて、最も寒い1月の平均最高気温が16.1度である。鹿児島県奄美市における一番寒い月の平均最高気温が17.5度であるので(資料)、要するに冬でも温暖である。
冬でも温暖なので、オフシーズンにおけるテスト走行に最適である・・・といいたいところだが、後述するように、このサーキットは超絶難易度の特殊なコースであり、ちょっとテストには向かないだろう。
サーキットの位置はここで、最寄りの都市Portimãoはここである。
Portimãoをポルトガル語読みすると「ポルティマオン」となり、語尾に「ん」が入る(資料)。
英語圏の人や、英語教育を受けた日本人が、Portimãoという文字列を見ると、「ポルティマオ」と発音したくなる。このため、この都市を「ポルティマオ」と呼ぶ日本語文章が多い(検索例)。また、本サーキットの別名称を「ポルティマオサーキット」と呼ぶ例も多い(検索例)。
サーキットの位置はここで、海岸線から12km離れた山の中にある。
海岸線から12kmというのは、結構な距離であり、海から吹き込む風の影響を受けにくい。また、サーキットが山という壁に覆われているので、なおさら風の影響を受けにくい。
ミサノサーキットのような海岸線すぐそばのサーキットは強風に苦しむことが多いのだが、本サーキットでは風に苦しまずにすむ可能性が比較的に高い。
VIPタワーという5階建ての円柱状の建物がある(画像)。外側はガラス張りで青く、内部は真っ白である。バックストレートに続く低速コーナーの内側に立っている(航空写真、動画)
風力発電用の風車が4基ほど立っている(画像)。9コーナー(クレイグ・ジョーンズ)の外側から8コーナーの方向を見たカメラに映り込む。
サーキットの内部と外部をつなぐトンネルは、メインストレートのこの場所にある。また、この場所にもトンネルがある。
スーパーバイク世界選手権において、コーナー数15と数えることが恒例である。このため本記事もそれに倣う。
コース図は、英語版Wikipedia記事の画像や、この記事の画像を参照にした。
本サーキットの一大特徴は、強烈な高低差である。上りと下りが次々とやってくる本サーキットは、ハイスピードローラーコースター(High Speed roller coaster 「超速ジェットコースター」という意味)という異名を持つ。
上るときも、下るときも、ライダーに強烈な縦Gがかかり、ライダーは上から押さえつけられるような感覚をおぼえる。
上りのコーナーも下りのコーナーも、先がどうなっているか見えない。そういうのをブラインドコーナーという。ライダー達は視覚に頼らず、記憶と想像に頼ってアクセルを開けて走行ラインを選択せねばならない。ライダーは、頭脳と勇気を試される。
本サーキットでテスト走行したアレイシ・エスパルガロは次のようなコメントを出した。
「トラックの浮き沈みは、MotoGPの安全性を限界まで到達させるだろう(トラックの浮き沈みがあるので、MotoGPの安全性の限界ギリギリのコースである、という意味)」「人生でこんなサーキットを走ったことがない」「アウトドローモ・テルマスデリオオンドは2周したらコースを憶えることができたほど簡単だったが、アルガルヴェはアクセルを開ける場所やブレーキの場所を理解するのが本当に難しい。公道向けの低出力マシンで走ったのに、理解が難しかった」「アレックス・リンスやアルベルト・アレナスと練習した。彼ら2人は自分より2人ほど練習時間が多かった。そのため初日は彼ら2人よりも1周2秒も遅かった」「危険なサーキットと言うつもりはないが、安全性の限界のサーキットだ」「人生で経験した中で一番素晴らしいサーキットだ」(記事)
2008年に完成したサーキットなので、安全性は比較的に高い。コースの脇にそそり立っている壁だとか、そういう危険要素が少ない(記事)。
ただし、「最終コーナーの立ち上がりで、アウト側の壁がコースに近くて危険である」と複数のライダーに指摘されていた(記事)。この記事の画像を見てみると、その指摘通りの様子になっている。
スーパーバイク世界選手権で独占的にブレーキを供給するブレンボは、本サーキットのブレーキ難易度を、5段階評価で3とした(記事)。
下っていく最終15コーナーを加速すると、メインストレートに入る。
メインストレートに入るといきなり急な上り坂になり、坂を登り切ったら平坦になる(動画)。この上り坂で、フロントタイヤが地面から離れてウィリーする(動画)。
リアタイヤが地面から離れることもありうる。チームの電子制御担当者は、電子制御を駆使して、ジャンプした瞬間のエンジン回転を抑制し、エンジンが故障しないように配慮せねばならない。
メインストレートの終盤に、落とし穴のような下り坂がある(動画)。1コーナーから見た様子は、滑り台そのものである(動画1、動画2)。いきなり急な下り坂が始まっているので、見るからに恐ろしい。
平坦~急な下り坂~平坦 となっているので、下りきったところの平坦を上手く使えば、上手くマシンを止めることができるという(記事)。
1コーナーから3コーナーは平坦な右コーナー3連発であり、最初の2つは緩い角度で、3コーナーだけ低速コーナーである。3コーナーはギアを1速か2速まで落とすことになる。
4コーナーというのは急激な上り坂になっていて、先が全く見えない(動画)。しかし、4コーナーの次はバックストレートとなっているので、この4コーナーで頑張って加速して勢いを付けねばならない。
4コーナーを上から見た映像はこちら。
左にVIPタワーを見ながらバックストレートを爆走し、5コーナーに突入していく(動画)。この5コーナーは、パッシングポイントになる。
バックストレートの途中から緩やかに下っていて、5コーナーの進入も下っている。
5コーナーを立ち上がると、今度は上っていく。左にVIPタワーを見ながらドンドン上っていき、上りながら緩やかな左の6コーナーをクリアしていく(動画)。
左の6コーナーを抜けたら急に上り勾配が消滅して、視界に右の7コーナーが飛び込んでくる。車速が乗っていて切り返しが難しいが、体力を使って頑張って切り返し、下りの7コーナーに入っていく。
7コーナーから見た切り返しの映像はこちら。切り返してから、一気に下って7コーナーへ突っ込んでいく。
7コーナーと8コーナーは、「底辺」という感じである。この動画を見ても、7~8コーナーが2つとも同じぐらいの高さであることがわかる。
8コーナーを脱出するとグイグイ上っていく。空に向かってアクセルを開ける、という感じで上っていく。もう、先がさっぱり見えない(動画)。
上りきったらいきなりドシーンと下りが始まる。「へ」の字になっているのである。
激しい下り坂でアクセルを開け、高速の9コーナーに突っ込んでいく。この下り坂では、日本のサーキットで味わえないような激しい縦Gを感じる(記事)。
9コーナーに向けての下り坂では、どうしてもフロントタイヤが浮くことになる。この動画で、そのことが確認できる。先述のように、ここのカメラは4基の風車を同時にとらえている。
9コーナーは緩い角度の高速コーナーになっている。凄まじい高低差の後の高速コーナーであり、本サーキットを象徴する場所である。この名物コーナーにはクレイグ・ジョーンズという名前が付いている。
クレイグ・ジョーンズは、本サーキットを管理するパーカルガー・セルヴィコス(Parkalgar Servicos)の支援を受けるチームに所属して、2008年のスーパースポーツ世界選手権(600ccの公道向け市販車のレース)で活躍していたが、英国のサーキットで事故を起こした。その名前を受け継ぐコーナーである。
9コーナー(クレイグ・ジョーンズ)を抜けると、またドンドン上っていく。
10コーナー~11コーナーは山の頂上といった感じになっていて、ぐるっとまわりこむ感じで、旋回時間が長く、進行方向が180度近く変換される。
11コーナーを脱出したら、また、ズドンと急な下り坂になる。いったい、どれだけ「急な下り坂」を体験させたら気が済むのであろうか。
下り坂を下るとき、下方向にメインストレートが見える(動画)。
10コーナー~11コーナーを上から見つめる映像は、こちらとこちらである。上り坂を登り切って、上りきったところで右に切り返し、10コーナーを抜けていく。
11コーナーを脱出した後の下り坂を下から見た映像はこちら。ライダー達が駆け下る様は、滝を流れる水のごとしである。
12コーナーは緩い角度の高速コーナーで、脱出するとドンドン上っていく(動画)。12コーナーを過ぎた後の上りで他車に置いていかれないよう、11コーナー脱出の下りでなんとかアクセル開けて加速しなければならない。とはいえ、下りでアクセルを開けるのは至難の業である。
上りきった13コーナーは、低速のヘアピンで、旋回時間が長い。時間を掛けてぐるっと回り込む(動画)。
このサーキットは「へ」が多く、上りきったらいきなり下り、というのが多いが、13コーナーあたりは平和なもので、比較的に平坦な状況が長時間続く。13コーナーあたりを映すカメラの動画は、こちらである。
13コーナーを脱出した後は、緩やかな下りが続く。「ズドンと急な下り」ばかりだったので、ライダーにとって、とても優しく感じられる。
14コーナーは「U」の字を描く大きなコーナーで、ずっと緩やかな下りである(動画)。
右手にピットロードが見えるのが最終15コーナーで(航空写真)、このあたりは下り勾配が激しくなる。進むにつれて下り坂が厳しくなる、というのはレッドブルリンクの最終区間と同じである。ライダーは闇雲にアクセルを開けるわけにいかず、フロントタイヤの安定性を考えねばならない。
14コーナー~最終15コーナーをとらえるカメラはこちら。最終15コーナーで下り勾配が急になる様子がよくわかる。
最終15コーナーを走りきると、グイっと急な上り坂になる(動画)。エンジンパワーのない車両にとっては厳しいものである。
おさらいすると、ズドンと急な下り坂というのは、メインストレートの後と、6コーナーを抜けた後と、8コーナーを脱出して上りきった後と、山の頂上の11コーナーを抜けた後に存在する。
「右コーナーを回りきって、いきなり急な下り坂になり、そのまま左の高速コーナーへ突入し、左の高速コーナーを抜けると上り坂」というパターンが、2回繰り返される。8コーナーの後と、11コーナーの後である。
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最終更新:2024/03/28(木) 17:00
最終更新:2024/03/28(木) 17:00
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