銀河英雄伝説の戦闘 | |
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アスターテ会戦 | |
基本情報 | |
時期 : 宇宙暦796年/帝国暦487年 2月頃 | |
地点 : イゼルローン回廊同盟側・アスターテ星域 | |
結果 : 銀河帝国・自由惑星同盟両軍の撤退 | |
詳細情報 | |
交戦勢力 | |
ゴールデンバウム朝銀河帝国軍 | 自由惑星同盟軍 |
総指揮官 | |
ラインハルト・フォン・ローエングラム上級大将 | 第二艦隊司令官・総司令官 パエッタ中将 |
戦力 | |
ローエングラム艦隊 艦艇総数20000隻余 兵員総数244万8600名 |
アスターテ派遣部隊 第2艦隊(パエッタ中将) 約15000隻 第4艦隊(パストーレ中将) 約12000隻 第6艦隊(ムーア中将) 約13000隻 艦艇総数40000隻余 兵員総数406万5900名 |
損害 | |
喪失・大破艦艇2200隻余 戦死者15万3400名余 |
喪失・大破艦艇22600隻余 戦死者150万8900名余 第4艦隊、第6艦隊壊滅 第2艦隊半壊 |
帝国暦時代 | |
前の戦闘 | 次の戦闘 |
第四次ティアマト会戦 | カストロプ動乱 第七次イゼルローン要塞攻防戦 |
アスターテ会戦とは、「銀河英雄伝説」の戦闘の一つ、および『銀河英雄伝説』第一巻黎明篇第二章・OVA「銀河英雄伝説」第2話・アニメ「銀河英雄伝説 Die Neue These」第2話のサブタイトルである。
「アスターテ星域会戦」あるいは「アスターテの会戦」とも称される。
宇宙暦796年/帝国暦487年2月頃、イゼルローン回廊同盟側入口の近傍に位置するアスターテ星域において、ゴールデンバウム朝銀河帝国軍と自由惑星同盟軍とのあいだに生起した戦闘。
同盟軍に大きな損害を出しつつも、帝国軍によるアスターテ星系への侵入は阻止された。帝国・同盟間の慢性的な戦争状態が続いていた最後の時期の戦闘であり戦略的意義には乏しいが、のちの”常勝の英雄”ラインハルト・フォン・ローエングラムと”不敗の魔術師”ヤン・ウェンリーがはじめて互いに艦隊指揮官として相対した戦闘であった。
宇宙暦796年、帝国暦487年初頭、ラインハルト・フォン・ローエングラムを総司令官とし、同年1月3日に帝都オーディンを出撃した銀河帝国軍艦隊20000隻は、イゼルローン回廊を経由して自由惑星同盟方面へと侵攻した。
これに対する迎撃のため、同盟軍は第2艦隊(司令官パエッタ中将)、第4艦隊(司令官パストーレ中将)、第6艦隊(司令官ムーア中将)の三個艦隊からなる艦艇約40000隻の派遣部隊を編成した。
こうして両軍は、イゼルローン要塞同盟側入口の近傍に位置するアスターテ星域において戦闘におよぶこととなった。
迎撃側である同盟軍の作戦は、総数にして帝国軍に倍する三個艦隊をもって三方から同速度で帝国軍艦隊に迫り、防御戦を選択し密集隊形をとるであろう帝国軍を厳重な包囲下においてその交戦能力を削り取る、というもので、かつてダゴン星域会戦において帝国軍を完敗させた際の戦闘経過の再現であった。この作戦にしたがい、戦場では右翼側に第2艦隊、中央に第4艦隊、左翼側に第6艦隊というかたちで部隊が配置され、集結している帝国軍に三方向から接近する態勢をとった。
いっぽう帝国軍も、開戦前の索敵によってこの同盟軍の意図を的確に推測するに至っている。遠征軍は総司令官ローエングラム上級大将のもとウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ大将、シュターデン中将、フォーゲル中将、エルラッハ少将、アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト少将の五名の艦隊指揮官が配属される編成となっていたが、彼らも自軍が不利な交戦態勢にあることを理由に撤退を進言した。しかし、ローエングラム上級大将はこお状況がむしろ同盟軍を各個撃破する好機であるとして進言を退けている。
なお、同盟軍第2艦隊の次席幕僚ヤン・ウェンリー准将は、帝国軍による各個撃破の企図を予測し、三方からの包囲殲滅という構想はそのままに作戦に修正を加えるかたちの対応策を上申していたが、こちらも必勝の態勢にあるにもかかわらず消極的にすぎるとして司令官パエッタ中将により退けられている。
帝国軍は急進し、正面に位置する同盟軍第4艦隊を急襲した。これは第4艦隊が三方向の同盟軍のうちもっとも少数であったためであるが、包囲される側の帝国軍による積極的攻勢を予想していなかった第4艦隊は態勢が整わないまま戦闘に突入することとなった。帝国軍ファーレンハイト部隊の猛攻を受けた第4艦隊先頭部隊(2600隻)は開戦後一時間のうちに戦力の八割を喪失し、第4艦隊中ではわずかにフィッシャー准将が善戦したものの、開戦後四時間が経過するまでに司令官パストーレ中将は戦死し、第4艦隊自体も組織的抵抗力を失った。
開戦時すでに帝国軍の妨害電波のため第4艦隊と他の同盟軍艦隊との通信は不可能となっており、接敵は連絡艇によって急報されたが、同盟軍第2艦隊、第6艦隊はともにそのまま戦場への進撃を続けていた。両艦隊の意図は第4艦隊と交戦中の帝国軍を左右から挟撃せんとするものであった。ヤン准将はその前提となる両艦隊の戦場到着までの第4艦隊の交戦続行は不可能であると指摘し、むしろ第2艦隊と第6艦隊の合流を優先すべきと提案していたが、第4艦隊を見捨てるかたちとなるこの提案は司令官パエッタ中将の容れるところとはならなかった。
第4艦隊を破った帝国軍は、同盟軍が戦況を把握していない様子であることから、次に戦力の少ない第6艦隊の右後背に回り込んで急襲する。第4艦隊の交戦がいまだ続いているものと想定していた第6艦隊は、後衛部隊の艦艇が最新鋭でなかったこともあって効果的な反撃ができなかった。司令官ムーア中将は艦隊に反転迎撃を命じたが、この命令はむしろ反転による混乱を招き、帝国軍メルカッツ部隊がこれに乗じて攻勢に出たことで第6艦隊は一挙に壊滅した。ムーア中将も旗艦<ペルガモン>への降伏勧告を拒絶して戦死している。
帝国軍は第6艦隊を壊滅させてその右側背から左前面に抜けると、カーブを描いて第2艦隊の前方1時20分・俯角11度方向へと展開した。対する同盟軍第2艦隊は第4艦隊、第6艦隊の敗亡のため戦意を低下させていたものの、すでに第一級臨戦態勢の発令下にあり、帝国軍の接近に対応して戦闘態勢に入った。しかし戦闘開始直後に第2艦隊の旗艦<パトロクロス>が被弾し、艦隊司令部をふくむ艦橋が全滅状態におちいる。司令官パエッタ中将も肋骨骨折などの重傷を負い、無傷だったヤン准将を健在中の最高位者と判断して艦隊の指揮権を移譲した。
同盟軍の混乱にあわせて帝国軍は攻勢を強め、艦隊を紡錘陣形に再編成して中央突破に出た。指揮をひきついだヤン准将はこのような事態を想定して戦闘開始前に戦術コンピューターに記録した作戦を発動し、帝国軍の中央突破による左右分断を利用するかたちで艦隊を逆進させ帝国軍後方へと回り込ませた。これに気づいたローエングラム上級大将が反転の危険を避けて右方全速前進による同盟軍左後背への攻撃を命じたため、わずか30分のあいだに、両軍は先頭集団が互いに相手の後尾を攻撃する輪状の戦況を形成するに至った。この間、命令を無視して反転迎撃に及んだ帝国軍エルラッハ少将が戦死している。
消耗戦と化した戦況を受け、これ以上の戦闘を無益と見たローエングラム上級大将の命令により、帝国軍は後退を開始。これに呼応する形でヤン准将も同盟軍を後退させ、アスターテ星域における両軍の戦闘は終了する。帝国軍は隊列を再編成して撤退し、同盟軍も第4艦隊、第6艦隊の残兵収容ののちハイネセンへと帰還した。なお、この際ローエングラム上級大将はヤン准将に対し、健闘を讃える通信文を送っている。
アスターテ会戦において、帝国軍は実質的に勝利をおさめたものの完勝を逃し、いっぽう同盟軍は戦術的には完敗といってよい大敗北を喫したものの、第2艦隊の善戦によりかろうじて全軍の崩壊をまぬがれ、アスターテ星域に侵入した帝国軍を撃退するという戦略目的を達成した。
帝国軍の戦死者は約15万3400名、喪失・大破艦艇は約2300隻。高級指揮官ではエルラッハ少将が戦死している。これに対し同盟軍は戦死者約150万8900名、喪失・大破艦艇約22600隻と、キルレシオにおいて10-11倍、戦力の六割近くを失う大損害ととなった。特に、壊滅して司令官も戦死した第4艦隊、第6艦隊はそのまま解体され、同年夏~秋の帝国領侵攻作戦での大敗も影響して自由惑星同盟の消滅までついに再編成されることがなかった。
帝国軍では、この戦いの勝利により総司令官ラインハルト・フォン・ローエングラム上級大将が元帥号を受け、宇宙艦隊の半数を指揮下におさめる宇宙艦隊副司令長官に任命された。ローエングラム上級大将は王朝創立以来の名家であるローエングラム伯爵家を出征直前に継承しており、アスターテ会戦での大勝利は、帝国騎士ミューゼル家の出である自身が伯爵号にふさわしいことを証明する結果ともなった。また、参加したうちではメルカッツ大将、シュターデン中将、ファーレンハイト少将などもそれぞれ昇進している。
同盟軍では戦後、戦力の六割を失った同盟軍アスターテ派遣部隊のうち、壊滅した第4艦隊と第6艦隊の残存戦力は、さらに新規兵力を加えた上で、新設の第13艦隊を構成することとなった。この第13艦隊の兵力は通常の艦隊の約半分、艦艇6400隻、兵員70万名からなり、アスターテ会戦の戦功と大敗に動揺する軍民の沈静化のために昇進したヤン少将が司令官に就任している。副司令官には第4艦隊に所属したフィッシャー准将が任命された。
のこる第2艦隊の残存戦力は、つづく第13艦隊によるイゼルローン要塞攻略(第七次イゼルローン要塞攻防戦)ののち、第13艦隊に合流して通常の一個艦隊を編成した。負傷した第2艦隊司令官パエッタ中将は快癒ののち、大将昇進のうえ統合作戦本部長に就任したクブルスリー中将の後任として第1艦隊司令官に任じられている。
原作では明確にされていなかった会戦の時期が2月に確定されるなど、アニメ化にあたっての描写の追加・省略等は少なからずあるものの、アスターテ会戦そのものの展開はOVAや劇場長篇「新たなる戦いの序曲」でも大きく変更はされていない。そのため、ある程度大きな変更点といえるのは「同盟軍の艦艇配置の変更」「帝国軍と同盟軍第6艦隊の交戦」と「ダスティ・アッテンボローの参加」の三点になる。
同盟軍の艦艇配置は、OVAにおいては合計約40000隻を変えることなく各艦隊それぞれ13000隻へと平均化された。ただし、これによる会戦展開への影響はなく、「新たなる~」では原作通りの艦艇数に戻っている。
帝国軍と第6艦隊の交戦については、OVA第1話ではムーアが反転を命じた直後に旗艦<ペルガモン>が被弾してムーア中将が戦死、艦隊全滅の報が第2艦隊に届くかたちとなり、大幅に簡略化された。「新たなる~」では降伏勧告を受けたムーアが玉砕を命じるなど描写は増量されているものの、戦闘自体は概ね原作通りに展開している。
アッテンボローの参加については、OVA以前に製作された劇場長篇「わが征くは星の大海」で第2艦隊の幕僚としてアッテンボローが登場している影響と考えられるが、OVAではヤンが持論を披瀝する会話相手を務めるほか、原作でラオが務めている役どころを兼任している(ラオは登場しない)。「新たなる~」ではラオも登場しているが、やはりほとんどの役どころがアッテンボローに変更されている。
形勢は逆転した。 優位に立つラインハルトの攻勢にさらされ、絶体絶命の同盟軍第二艦隊。 だがヤンには起死回生の策があった。 次回、『銀河英雄伝説』第2話、「アスターテ会戦」。 銀河の歴史が、また1ページ。 |
原作小説での黎明篇第二章「アスターテ会戦」は帝国軍と同盟軍第4艦隊の交戦開始以降、つまり実際の戦闘が開始されてから会戦の終結までを描いているが、石黒監督版OVAにおける第2話「アスターテ会戦」では会戦の後半以降、帝国軍と第2艦隊の交戦開始から会戦後の同盟軍がハイネセンに帰投した直後までで構成されている。「Die Neue These」では、第1話「永遠の夜の中で」がラインハルト視点でアスターテ会戦クライマックスまでを描く構成だったことに対応し、改めて戦闘開始前まで時間をさかのぼってヤン視点から会戦の終結までで構成された。
同盟軍第4艦隊、第6艦隊を撃破した帝国軍は、ついに同盟軍第2艦隊との交戦に突入した。第2艦隊旗艦<パトロクロス>の被弾により負傷した司令官パエッタ中将は、軽傷ですんだヤン・ウェンリーに艦隊の指揮権を委ねる。
「そう心配するな、我が部隊は負けやしない。……私も、偉そうなこと言ってるな」
帝国軍の中央突破に対し、後退しつつ左右に分かれて一挙逆進をはかるヤン。しかし帝国軍を率いるラインハルトも、事態に即応して時計回りに同盟軍の後ろを衝くべく前進を命じる。やがて両軍の陣形は、大きなリング状を描くことになる。戦闘は、二匹の蛇が互いを飲み込まんとする消耗戦の様相を呈しつつあった。
「なんたるぶざまな陣形だ。これでは消耗戦ではないか」
ラインハルトは撤退を決意する。二倍の敵に包囲された状況からすでに二個艦隊を撃滅しており、戦果はもはや十分なものといえたが、目前の完勝をはばまれたことには悔しさを感じずにはいられなかった。彼はキルヒアイスに命じ、第四次ティアマト会戦に続いて自分の完勝を阻止してみせた好敵手に、賞賛の電文を送らせる。
「貴官の勇戦に敬意を表す。再戦の日まで壮健なれ」
「勇戦と評してくれたか。恐縮するね」
戦闘を終え、帰途につく両軍。ヤンの友人ジャン・ロベール・ラップ少佐の婚約者だったジェシカ・エドワーズは、その戦死の報を受け取り泣き伏す。ラップの墓前でジェシカと出会い、軍人という仕事の業を再確認するヤン。しかしその頃、帝国と同盟の間に位置するフェザーン自治領では、アスターテ会戦がフェザーンに都合のよい結果に終わったという報告に満足しつつもラインハルトとヤンを警戒する自治領主、アドリアン・ルビンスキーの姿があった。
この回はOVAの第2話として、第1話につづき作品の基本的な部分についての解説シーンがいくらか挿入されている。アスターテ会戦の推移を見守るフェザーン自治領や、イゼルローン回廊やイゼルローン要塞についての説明、”雷神のハンマー”の発射シーンなどがそれにあたる。
こうしたシーンは以後の回への伏線ともなっており、イゼルローン要塞関連の説明は、会戦終了後に挟まれたジェシカ・エドワーズの描写もあわせ、次話である「第13艦隊誕生」につながるものに、アンネローゼ・フォン・グリューネワルトとマグダレーナ・フォン・ヴェストパーレの会話は第4話「帝国の残照」や第5話「クロプシュトック事件」へつながるものである。
ちなみに、この回の”雷神のハンマー”発射シーンで犠牲となる同盟軍の旗艦級大型戦艦については公式設定に記述がないため、ファンサイトなどでは同艦系統の旗艦級戦艦を「アキレウス級」とする一部公式設定において宇宙暦787年に喪われたとされているネームシップ<アキレウス>(初代)ではないかとする考察が見受けられる。
アスターテ会戦で婚約者を失ったジェシカは、 追悼集会で国民の犠牲を説く国防委員長トリューニヒトを弾劾する。 ジェシカに迫る、憂国騎士団の黒い影。 次回、『銀河英雄伝説』第3話、「第13艦隊誕生」。 銀河の歴史が、また1ページ。 |
OVAでは第1話「永遠の夜の中で」と第2話「アスターテ会戦」に分割するかたちでアスターテ会戦を描いた。のちにはアスターテ会戦を中心におく長篇作品「新たなる戦いの序曲」が製作されている。
掲示板
81 ななしのよっしん
2023/10/11(水) 21:32:29 ID: E32w3fT+/p
この間久しぶりに原作1巻のアスターテ会戦の、第6艦隊壊滅の下りを読み返してみたんだけど、この時のムーアって予想外の事態にパニックから視野狭窄には陥っていたけど、新たなる戦いの序曲やフジリュー版ほど暴虐な人物とは思えなかった。言葉は荒いけど最前線の軍人やってりゃあれくらい普通じゃないかな。
人間、悪い方向に事態が連鎖したときは、有能無能以前に何をやってもドツボなんだよね。
あと、ラインハルトが第2艦隊に仕掛けた中央突破は、「そろそろ物資面では継戦能力の限界に近いし、帰る前にキルマークを稼ぐだけ稼ぐかな」ってことで、火力を集中できる戦法を選択しただけってところじゃないかな。
82 ななしのよっしん
2023/10/31(火) 20:05:41 ID: Q6wN5ZMd2t
83 ななしのよっしん
2024/02/21(水) 18:14:29 ID: c+2MMrGNCq
可能性で言うなら第4艦隊に対して掃討戦が行われてたらフィッシャーさんが…
急上昇ワード改
最終更新:2024/03/29(金) 05:00
最終更新:2024/03/29(金) 05:00
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