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全米鉄道旅客公社(National Railroad Passenger Corporation)、通称アムトラック(Amtrak)は、アメリカで都市間旅客鉄道を運営する公共企業体。
かつては鉄道大国とも称されたアメリカであったが、旅客面においては、モータリゼーションや航空路の整備等により、輸送量が減少し始める。
かつてEmpire Builder(帝国をつくった男)と呼ばれた鉄道王James J. Hillは「旅客列車は男の乳房と同じだ。実用にならなければ飾りにもならない」という言葉を残した。これは、アメリカは国土があまりにも広大であり、鉄道は貨物輸送には適していても旅客輸送には適していないことを示している。それでも鉄道各社は貨物輸送による収益を元手に会社の広告塔としての役割を旅客列車に託し、さまざまなサービス内容で各社で競い合っていたが、他の交通機関の発達によりとうとうその維持も難しくなっていたのである。
1960年代にその動きは加速し、旅客列車全廃が危ぶまれたことから、これらを維持するため、全米の鉄道会社の旅客部門を切り離した上で統合して発足したのがアムトラックである。発足当初の輸送シェアが1%だったといえばアメリカの旅客鉄道の惨状が多少は理解しやすい。
とはいえ、こと貨物輸送については相変わらず好調で、同様の理由で貨物輸送を目的とする半官半民の組織になったコンレールは再び民営化されている。これは、米国本土があまりに巨大であり、地形上船舶による輸送に頼ることができず、トラックや航空機には一度に輸送できる量に限界があるためである。
ここで、アムトラックは国有鉄道であると勘違いされやすいがそうではなく、アムトラックはあくまでも全米の各貨物鉄道会社の線路を借り、その上でアムトラックの車両を走らせているのが特徴である。日本では第二種事業者と呼ばれる事業者である(日本における逆JR貨物)。北東回廊の全面電化の成立で登場した高速列車「アセラ」などもあるが状況は芳しくはない。
※一応、ボストン~ニューヨーク~ワシントンD.C.とミシガン州の一部の線路はアムトラック所有。
以上の背景より、ビジネス需要のあるボストン~ワシントンD.C.間と一部短距離列車を除けば、列車は1日1本だったり、下手すれば3日ほど列車が無かったりと、シベリア鉄道もびっくりの過疎っぷりである。
経営も万年赤字で、しばしばアムトラックの存続そのものが取り沙汰されている。
しかしながら、列車での北米大陸横断の旅もまた一興であろう。往年と変わらない雄大な景色の中を走る優雅な列車の旅に、機会があれば是非行ってみてはいかがだろうか。まあ、私はおそらく飛行機で行くが。
アムトラックは日本の鉄道のように、輸送手段としての存在意義を第一に置いていない。また広大な国土など諸条件が余りに違うこもあり、日本の鉄道のそれとは多くの違いがある。
前述のとおり、 アムトラックの長距離列車はせいぜい一日一往復である。中にはロサンゼルスとニューオーリンズを結ぶSunset Limitedのように一部毎日運転ですらないものもある。これはアムトラックの設立目的として「どうにか旅客列車を残したい」という強い目的意識があるためで、輸送人員などからも、どうしても本数増というのは難しいところがある。
もっとも、アメリカはあまりに広い。鉄道での大陸横断にも最低3泊4日かかるのだ。おまけに西部には今も人の疎らな荒野が点在しており、輸送上の効率は極めて悪いと言わざるを得ない。
なにせ、急ぐ旅客は飛行機に、そしてお金のない旅客はさらに安い長距離バスに流れてしまう。アムトラックは、基本的には「鉄道で旅行をしたい」という意思を持った旅客のためのものなのである。
もっとも、深夜にしか列車の来ない小さな駅でも大体乗降はあるので、これらの小さな町々にとって公共輸送機関としての使命を果たしているという側面もある。
これを勘案すると、たとえ本数は少なくとも、現在でも複数系統の大陸横断特急が存続していることは非常に貴重といえる。これもアムトラックが発足し、今まで残してくれたからこそである。日本では、このような毎日運転の夜行列車は、とうとうサンライズエクスプレスを残して絶滅してしまったのだから。
アムトラックの運賃体系の特徴として、以下の3点が挙げられる。
まず、アムトラックの列車はすべて特急扱いである。そのため日本のような特急券という概念はない。座席車の料金がベースとなるが、これにはもう特急料金が含まれていると考えてよい。車両は大柄で、フットレストなども整っているので日本の特急車両より快適である。
次に、寝台料金などが定まっていないことが特徴として挙げられる。これは飛行機の座席のようにその時々の輸送需要に応じて弾力的に決定されるためである。なので時刻表を見ても、日本のような細かな運賃制度を説明したページはない。ウェブサイトで検索すれば利用したい日時における料金はすぐわかるので、あまり困ることはない。
最後に、寝台料金は部屋あたりの値段で決まるということである。アメリカの寝台車は大体において最低2人で使えるようになっている。これを2人で使っても1人で使っても料金は同じである。一人旅には不利な制度だが、逆にいえば連れを見つければ割安で使えるということ。これはアメリカのホテルなどでも同様である。
列車遅延が多いこと、 これはアムトラック利用者からの大きな不満としてしばしば取りざたされる。
これは、線路を貨物鉄道会社から借りて使っており、貨物列車が運行上優先されてしまうというのが最大の理由である。
道中の事故で何時間も足止めを食らうこともあるが、数十分の遅れが積み重なって大きな遅延に至ることもある。
場合によっては、運転を打ち切り、バス代行となることもある。あるいは、線路工事の都合ではじめから代行バスで運転されることもある。これらの情報は逐一アムトラック公式サイトでアナウンスされるので、これをマメにチェックすることが重要である。
何より大切なのは、足止めを食らっても慌てない心の余裕である。もともと鈍足な列車で行く旅なのだから、のんびり風景を眺めたり本を読んだりして待てばよい。あまりに酷い遅れの場合は食事のサービスなどもされるし、たとえ乗り継ぎ列車が待ってくれなくても、アムトラック乗車券の最終目的地まではアムトラックのスタッフが責任をもって最後まで対応してくれる。
なおアムトラックでは、列車の乗り継ぎの際に4時間の乗り換え時間を用意することが求められている。
なにぶんアメリカ全土をアムトラックが一手に担っているので、使われている車両の種類は限られている。以下、その主な車両を紹介する。
「ヘリテイジ」とは「遺産」のこと。その名の通り、アムトラック成立以前の私鉄各社から譲り受け、引き続き使われている車両。さすがにアムトラック成立より40年を経た近年では数を減らしているが、食堂車や乗務員用車両などでまだまだ現役のものもある。特に旅客の大きな荷物を運ぶ荷物車は、いまもだいたいこれ。
しかし、ニューヨークやワシントンD.C.など主要都市を結び旅客需要の高い北東回廊線での高速化のため、これらの生き残りを置き換えるために後述のビューライナーの増備車として新しく荷物車、食堂車が製造されており、これらの歴史的なヘリテイジ車両も先が見えてきた。
アムトラックといえばまず思い浮かべるであろう、ステンレス製の巨大な2階建て車両。前述のヘリテイジ車両の置き換えによるアムトラックのサービス向上を図って、1970年代の末ごろ製造された。最近座席のモケットを青くするなど更新工事をしたので、まだまだ使うようだ。1990年代初めに増備された車両はSuperliner IIと呼ばれるが、アメリカの名所・地名を使った愛称がついていることと、台車くらいしか違いがなく、車体や内装設備はそっくり。
シカゴから西の区間はだいたいこの車両が使われているので、大陸横断の旅をするなら必ず乗ることになる。逆に、その巨大さゆえに、東部の電化区間には入れない。
新幹線のグリーン車並のゆったりした座席で、レッグレスト、フットレスト完全装備なので長旅も快適に過ごせる。ただしリクライニングともども段があるので、適当に動かすとガチャガチャとうるさいので注意。
長距離夜行列車なら枕も貸してくれたのだが、経費節減により2013年7月限りでこのサービスはなくなった。現在は後述の車内売店で"Passenger Comfort Kit"が$8で売られている。これは長さ15cm、直径10cmくらいのアムトラックロゴの入った巾着袋に、空気枕、耳栓、ブランケット、アイマスクが収められたもので、お土産にもなる。後述のアムフリートでも扱いがある。ちなみに自前の大きな枕を持ち込んでいる人も意外と多い。
1階はファミリー寝台(なんとベッドが4つもある)と体の不自由な方のための個室と共用のトイレ、シャワールームになっており、2人用個室は1階と2階の両方にある。
2階の2人用個室は真ん中の階段を境にデラックス寝台とルーメットに分かれている(一部例外あり)。
ルーメットは一番狭い部屋で、通路の両側に個室が並んでいる。上の段が跳ね上げ式のベッド、下の段は日中は折りたたんでソファー状の座席にできるベッドになっている。日本の583系電車を個室にしたような感じ。一番狭いといっても、かなりゆったりしたサイズで昼夜問わずくつろげる。
デラックス寝台は車両のを幅ほとんどいっぱいに使った大きな部屋で、室内にシャワーとトイレがある。
1階がまるごと厨房で、一般利用者は立ち入れない。2階が通路兼食堂になっていて、4人がけのテーブル席が両側にずらりと並んでいる。なので2人以下で来るとほぼ確実に相席になる(これはスーパーライナーに限らず、食堂車が連結されている場合はだいたいそうなるようだ)。
誰でも使える共用のスペース。その昔日本の近鉄ビスタカーに強い影響を与えた、ビスタドームの進化形といえる。
1階部分に売店があり、アムトラックグッズやジュース、お菓子、ホットドッグのような軽食が買える。ちなみに車内販売はない。
2階は真ん中の階段を境に、半分が食堂車同様の4人がけテーブル席、もう半分が外を向いた1~2人がけの回転ソファーになっているのが一般的なスタイル。真ん中の階段脇にちょっとしたカウンターがあり、ガイドさんが沿線風景の案内をしていることもある。天窓がつき、窓の大きさも他の車両より大きくなっているので、アメリカの雄大な景色を楽しむのにもってこいの車両。
市販のガイドブックには「席が埋まっていても後から来た人に譲ってくれる」と書いてあったりするが、事実上早い者勝ちで、先に来た人がいつまでも使っている光景がしばしば見受けられる。
同じくヘリテイジ車両の置き換えを目的に製造された車両。こちらは電化区間に対応した1階建てで、丸に近い断面をした、独特のステンレス車両。アムトラック発足時に、北東回廊線で疾走していたメトロライナー電車が元になっている。
座席車と、座席の他にビュッフェコーナーを設けたカフェカーがある。座席車は、片側2ドアでシートピッチの狭い中近距離列車用の「アムフリートⅠ」と、片側1ドアでレッグレストを備える長距離列車用の「アムフリートⅡ」の2種類がある。
アメリカ東海岸に残っていたヘリテイジ車両の寝台車を置き換えるために、1980年代半ばから増備されている車両。小柄ながらも2段寝台で、なんと全客室にトイレを完備している。
2014年より、前述のヘリテイジ荷物車および食堂車の置き換えのために、ビューライナー荷物車・食堂車の製造が始まった。荷物車内には自転車ラックを設けるなど、時代の要請にあった設備を備えている。
2000年に登場した、アメリカ東海岸の、いわゆる北東回廊を走る高速列車。営業最高時速は150マイル(約241キロ)。アメリカにおいて、ペンシルバニア鉄道が新幹線に対抗して開発しアムトラックに引き継がれた「メトロライナー」以来の高速電車である。名前のAcelaはAcceleration(加速)とExcellent(優秀)をあわせた造語である。優秀を自称する割によく故障するけど。
車体はボンバルディア(メトロライナーを製造したバッド社を吸収合併している)によるステンレス製で、雪の中を驀進する銀色ボディーは、かつての400系新幹線つばさを髣髴とさせる。
登場前には、ドイツのICEやスウェーデンのX2000を借り上げAmtrakロゴをつけて試運転を行うなどいろいろな方式が検討されたが、最終的にフランスのTGVをベースにした車両となった。そのため編成両端の車両が機関車の動力集中方式となっている。
かつてのメトロライナーは貫通式の先頭車で、2両単位での増解結ができたが、こちらはビジネスクラス4両、ファーストクラス1両、カフェカー1両、機関車計2両の8連固定編成を組んでいる。
活躍の舞台である北東回廊線は、ボストン、ニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンD.C.と大都市が比較的近い距離に続けて存在するため、鉄道の優位性が高い。そのためこの区間はアムトラックの稼ぎ頭で、路線の自社所有という強みを活かし、毎時1本というアメリカの都市間鉄道では稀な高頻度運転を行い、ビジネス客などを中心に好評を博している。しかしながら一部にまだ踏切が存在し、また地上設備の老朽化などで十分な実力を発揮できないでいる。
登場時から大小のトラブルに見舞われたものの、アムトラックのフラッグシップトレインとして早10年以上が経過。好評を受けて増結や車両の更新が検討されていたが、先日それに代わって新型車両による置き換えが発表された。今後の去就はまだ明らかになっていない。
掲示板
8 ななしのよっしん
2017/03/02(木) 22:51:56 ID: +tUtuVU3SC
https://
SL気動車電車貨物列車路面電車と見てて飽きないな
通過に10分かかる貨物もあるし遮断器に捕まったら参るけど
ニューヨークだけとか大都市限定の路線って路電ぐらいしかないのか
新宿から池袋までの埼京線や外回りのみの山手線みたいなもんで
9 ななしのよっしん
2017/09/10(日) 20:10:12 ID: pQSc7hlwr0
10 ななしのよっしん
2018/06/23(土) 14:54:27 ID: z1aieAjK03
Chicago Style(江南スタイルのパロディ)クオリティ高すぎワロタ
>>sm33383598
オリジナルは17万再生だってね
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/13(金) 00:00
最終更新:2024/12/12(木) 23:00
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