アメリカ合衆国議会議事堂占拠事件とは、2021年1月6日にアメリカ合衆国議会(連邦議会)の議事堂で起こった事件である。
2021年1月6日、この日は2020年アメリカ合衆国大統領・副大統領選挙の結果(ジョー・バイデンが当選)を受けて、当選者が正式に決定する日であり、下院本会議場で上下院合同会議が開かれていた。ここでは、現職のトランプ大統領が主張する選挙不正疑惑に基づきジョー・バイデン候補に割り当てられた選挙人票に異議が申し立てられ、それについて審議が行われていた。
その中、「議事堂に向かおう」とのトランプ大統領の呼びかけに呼応して議会議事堂の周辺に集まっていたトランプ大統領支持者とみられる集団の中から、一部の者たちが柵を乗り越えて議会議事堂の敷地内に侵入、更には議事堂内に侵入し会議場を占拠した。この為、連邦議会は一時議事を中断した。
これに対し、国防総省はコロンビア特别区の州兵を派遣。また首都ワシントンの市長はこの日午後6時から翌日午前6時までの外出禁止令を発動した。
その後、暴徒を排除して再開された議会では投票結果の承認が改めて進められ、バイデン氏が過半数の選挙人の投票を得たことが確認され、バイデン氏が次期大統領となることが確定した。[1]
ワシントンDCの警察の発表によれば、この占拠事件により4名が死亡。52人を逮捕したという[2]。さらに、この事件の最中に暴徒に消火器で殴打された警官が翌日亡くなったため、この事件による死亡者は計5名となった[3]。
ドナルド・トランプは「大統領選の結果を覆そうと画策した」として起訴されたが、2024年の大統領選挙でトランプが当選したため、起訴は取り下げられている。[4]
審議を行っていた議員たちはもちろんこの占拠事件に猛反発し、トランプ大統領が所属する共和党側からもそれは例外ではなかった。
共和党のペンス副大統領は議会を再開させるにあたって「われわれはきょう議会を守ったのだ」「議会を混乱させた者たちは勝利しなかった。暴力は決して勝利しない。自由が勝利するのだ」と宣言した。また、上院の共和党トップであるマコネル院内総務は「彼らはわれわれの民主主義を破壊しようとしたが、失敗した」「われわれは無法行為には屈しない。憲法に定められた国民のための義務を放り出すことはない」と語った。[5]
ジョージア州の決選投票で敗北していた共和党のロフラー上院議員は、バイデン氏の次期大統領認定に異議を唱える予定だったが、この議会占拠事件を受けて「良心に照らして選挙結果に異議を唱えられなくなった」として方針を転換する旨の発言を行った[6]。
大統領であるドナルド・トランプも遅れながらTwitterを更新し、占拠した人々に対し撤退を呼び掛けた [7] [8]。
These are the things and events that happen when a sacred landslide election victory is so unceremoniously & viciously stripped away from great patriots who have been badly & unfairly treated for so long. Go home with love & in peace. Remember this day forever!
(試訳:様々な物事や出来事が起こるなか、神聖な大統領選圧勝が不作法かつ悪意あるやり方で、長年に亘り不当にして不正な扱いを受けてきた偉大な愛国者たちから剥ぎ取られてしまった。さあ愛を以て平和裡に家へ帰りつつ、この日の事は永遠に忘れないように!)
と、議会に集まった自らの支援者たちを「偉大な愛国者」と呼び、「愛と平和のうちでの帰宅」を呼びかけつつも「選挙で自陣営が勝利したが不正によって奪われた」というこれまでの主張をさらに繰り返した[9]。
TwitterやFacebookはトランプ大統領のこの姿勢を問題視し、トランプ大統領のアカウントを一時凍結した[10]
Twitterはその後凍結解除したが、8日に暴力を助長する可能性があるとして、アカウントを永久凍結を行った[11]。また、トランプ大統領の支持者のアカウントも同じ様な理由で凍結がされていった。
トランプ大統領とその支持者は主要SNSを追われ、表現の自由を標榜する右翼系SNS「Perlar」へと移住したが、9日にGoogle PlayやApp Storeから削除され[12]、サーバーを提供しているAmazon Web Servisesもその提供を10日に停止した[13]。
この様な巨大IT企業(ビッグテック)の動きには、表現の自由・言論の自由の観点から好ましくないという意見がトランプ支持者以外からも出ており、大きな例ではトランプに否定的と言われているドイツ連邦共和国のメルケル首相が暗に批判をしている[14]。
この占拠事件にはアメリカ国内から多数の失望と非難の声が上がった。
かつての大統領経験者らもコメントを発し、バラク・オバマ元大統領は「連邦議会での暴力は、現職の大統領が合法的な選挙結果について根拠のないうそをつき続けたことで引き起こされたもので、われわれの国の大いなる不名誉と恥として歴史に刻まれるだろう」と、この事態を引き起こした原因がトランプ氏の主張した陰謀論にあるとする強い非難を発表した[15]。
ジョージ・W・ブッシュ元大統領も、共和党の一部の政治家が「反乱」を扇動したと非難し、「大統領選後に一部の政治指導者が取った向こう見ずな態度と、きょう目撃した米国の制度や伝統、法執行機関に対する敬意の欠如に、がくぜんとしている」と述べ、陰謀論を唱えてきた政治家やそれを信じて暴動を行った支持者らを非難した[16]。
イギリス首相のボリス・ジョンソンもこれらの光景が恥ずべき行為であると述べた[17]。
このように多くの非難が巻き起こった事を受けて、一部のトランプ支持者の間からは「あの暴徒たちはトランプ支持者などではない、「アンティファ」などの左派の暴徒だ」「トランプ支持者のふりをして悪事を働き、汚名を着せようとしているのだ」といった陰謀論も巻き起こった。
しかし、これらの陰謀論の多くについては「ファクトチェック」(事実確認)された結果、明らかなデマや誤りであったり、明確な根拠が示されていない主張が多いことが指摘されている。
「暴徒はトランプ支持者ではなくアンティファ」は「根拠不明」。英語圏SNSから日本でも拡散
例えば議事堂に侵入した暴徒の中でも特徴的なビジュアルをしていた、「毛皮を着て角を付けた、バッファローのような格好の男」について「彼はアンティファだ」「BLMに参加していた左派だ」という主張が拡散された。その根拠として、彼がBLMのデモの現場にいた写真が使用されたようだ。
しかし、「バッファローのような格好の男」は「ジェイク・アンジェリー」(Jacob Anthony "Jake" Angeli Chansely)という、トランプ大統領を熱烈に支持することで知られる陰謀論ムーブメント「Qanon」(Qアノン)の熱心な支持者として知られていた人物である。そして「BLMのデモに参加していたところ」という写真も重要な部分が切り抜かれたもので、切り抜かれる前の部分には「Q SENT ME」(Qが私をここに遣わした)という「Qアノン」のスローガンが掲載されていた。
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https://twitter.com/WbmVwy/status/1346962705253482503
また、同じく特徴的なビジュアルのヒゲのぽっちゃり男性について、「手のタトゥーがアンティファの証拠だ」という主張も目立った。しかしこの男性の手のタトゥーはアンティファのマークではなく、『Dishonored』というゲームに登場するマークなのだった。
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https://twitter.com/AMonmouthPlatts/status/1346933131211755530
さらに、この「手にタトゥーのある男性によく似た、ヒゲのぽっちゃり男性」および議事堂に居た「もう一人の男性」らしき人が肩を組んで一緒に映っている画像を探してきて、「画像のあるサーバーのURLが「phillyantifa.org」というアンティファ系のサイトのものだった!こいつらがアンティファである証拠だ!」という話も流布された。しかしこの「肩を組んでいる写真に映っているもう一人の男性」も「マシュー・ハイムバック」(Matthew Warren Heimbach)という、白人至上主義ナショナリストとして以前から知られていた人物である。そしてその「肩を組んでいる画像」はそのアンティファ系のサイト「phillyantifa.org」が「こいつはネオナチだ!」として晒上げるためのページ
に掲載していた画像だったというオチだった。
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https://twitter.com/tanakaJpnUsa/status/1346970088717635589
しかも、こちらの「肩を組んでいる画像」に映っている「ヒゲのぽっちゃり男性」は「ジェイソン・タンカースリー」(Jason Tankersley)という、白人至上主義者として以前から知られていた人物であるらしいのだが、この人物の手のタトゥーは上記の「『Dishonored』のタトゥー」とは異なっており、「そもそもよく似ている人だけど別人」であるということらしい。
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https://twitter.com/TR_727/status/1347042187591045126
何らかの噂話を教えられた際に自分で「ファクトチェック」を行う、または信頼できるファクトチェックサイトを確認する癖を付けている人々はこういった情報に騙されづらい。だが残念ながらトランプ支持者は「大統領選挙に不正があった、その証拠はこれだ」という彼ら/彼女らの主張が「ファクトチェック」された結果「根拠無し」「誤り」等と判定されることが多かったことを苦々しく思っており、「ファクトチェック」行為を嫌っていたと思われる。そのためか、騙されて拡散してしまう人も少なくなかったようだ。
ただし、これらの「デマであると確認された情報」と類似した情報が、一方で事実と確認された例もある。
「ジョン・サリヴァン」(John Earle Sullivan 。自称「Activist John」または「Jayden X」)という人物は自分の事を「この事件の群衆の内部に紛れ込んで様子を記録したジャーナリスト」だと触れ回って、事件後に内部で起きていた事の証言をしたり、動画などを提供していた。
しかし実際には「様子を記録していただけ」とは言いがたかった。彼自身がYouTubeに投稿した動画(人が射殺されるシーンが含まれるため、ここではリンクは掲載しない)においては、彼が議事堂内で粗暴な言葉を使ったり、窓を割ったと思われる行動も記録されており、それらを根拠として2021年1月14日に逮捕された[18]。また、彼の報道機関への所属も確認されていないとのことで、「ジャーナリスト」という点もどうやら自称であった。
そして、彼は「Insurgence USA」という「人種差別や警察の暴力への抗議」を謳う(いわゆるBLM系)団体の創設者だと主張していた。つまり「BLM活動家も居た」という主張が確認された例となった。なお彼は2020年11月の時点で既に、「複数の抗議団体内で様々な問題行動を起こして追放されている要注意人物。関わるな」として類似の抗議団体の間で警告が回されるような人物だったようだ。
ただし、この話から「射殺された女性はアンティファである彼に煽られていたのだ」「アンティファやBLM活動家がこの事件そのものを煽ったのだ」といった主張に繋げる例も少なくなかったが、それらの主張には根拠が乏しいとのこと[19]。
掲示板
1600 ななしのよっしん
2025/01/19(日) 12:45:49 ID: xpBGLJhebt
韓国でも大統領支持者が暴動を起こしたようだ
韓国・ユン大統領を逮捕 支持者の一部が暴徒化 逮捕状を出した裁判所を襲撃
https://
1601 ななしのよっしん
2025/01/25(土) 10:03:36 ID: fp4opYxW+9
SNS眺めると「正義の戦い」と認識している人がゴロゴロいて頭痛くなりますよ
1602 ななしのよっしん
2025/03/16(日) 02:19:24 ID: 2hxAtZXNX5
wikiだと関連項目に文化大革命があって、
文化大革命の記事の関連項目にはこの襲撃事件があるんだよな。
あまりにも皮肉である。
提供: ta_ma
提供: こがんのねこ。
提供: すずくろ
提供: Pyun Pyun
提供: sakemasu
急上昇ワード改
最終更新:2025/04/16(水) 23:00
最終更新:2025/04/16(水) 23:00
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