アラム語 単語

アラムゴ

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アラム語(Aramaic)とは、中東地域で用いられる言のひとつである。

概要

ヘブライ語フェニキア語と同じくアフロ・アジア語族セムに属する言である。その歴史は紀元前10世紀ごろに遡ると考えられ、確認される最古のアラム文字資料から前9世紀には独自の文字による表記が行われている。この時代のアラム語は古アラム語(Old Aramaic)と呼ばれる。

その後新バビニアやアケメネスペルシア帝国の時代には公用語として帝国の広範囲に用いられた。この時代のアラム語は、当時の世界帝国における公用語であるということから帝国アラム語(Imperial Aramaic)または公式アラム語(Official Aramaic)と呼ばれる。

ペルシア帝国が崩壊しヘレニズム時代に突入するとギリシア語の取って代わられ、アラム語は公用語の地位を失う。これによって標準的なものによる統制を失ったアラム語は各地方ごとに独自の発展を遂げるようになる。

これら各地の諸変種は大きく東アラム語と西アラム語の2つの方言群に分けられる。アラム語の最もよく知られた変種の一つであるシリア(Syriac)は東アラム語に属する。その後アラム語が使用された地域にはイスラーム教と共にアラビア語の使用が普及し、アラム語の使用人口は大きく減少する。

しかしながらアラム語を話すコミュニティそれ自体は消滅することなく、現在シリア西部イラク北部、トルコ東部などにアラム語コミュニティが点在している。またそれらの地域から逃れた離散民のコミュニティヨーロッパアメリカ所在する。

イエス・キリストもアラム語をにしていたと考えられ、聖書にはアラム語による箇所も散見される。それら聖書におけるアラム語についてはは聖書アラム語(Biblical Aramaic)の記事を参照されたい。

文字体系

アラム語はその変種によって異なる表記体系を持つ。

ごく初期のアラム語はフェニキア人たちの文字をそのまま利用して表記された。

しかし前8世紀中頃からアラム文字として区別しう文字体系に発展し始める。その中でも特に重要な発明が単を区切って表記する方法と、半音や門音を表記する文字を流用した長音の表記である。このうち後者は「読み(Matres Lectionis)」と呼ばれ、後の文字体系でも観察されるものである。

このフェニキ文字によるアラム語表記からアラム語独自の変化を経て、現在(方形)ヘブライ文字として言及されることの多い文字体系が成立する。

この文字はもともとアラム語の表記に用いられた文字であり、ヘブライ人たちはこれを借用した、ということである。このアラム/ヘブライ文字はアラム語が公用語として広く用いられた間に広範囲に普及する。

公用語としてのアラム語が崩壊すると、アラム文字もまた各地で独自の進化を遂げるようになる。この過程でパルミ文字やナバテア文字マンダ文字シリア文字などが発達する。このうちナバテア文字による資料はナバテアの民がアラビア語を話すようになるとともにアラビア語の要素を多く含むようになり、やがてアラビア文字へと発展していく。

またシリア文字はエデッサ(シリアオールハイ現在トルコシャンウルファ)とその周辺地域で発達し、そこで話されたアラム語=シリアの表記に用いられた文字であるが、このシリアシリア系の東方教会で共通言として用いられたために、非シリア(特にアラビア語)話者のキリスト教徒によって、彼らのキリスト教徒としてのアイデンティティを表明するものとして彼らの言を表記するのにも用いられた。そのような事例はガルシューニー(Garshuni)と呼ばれる。

また、アラム文字公用語時代に非アラム語話者の間にも広まったため、アラム語以外の言の表記にも用いられるようになった。その代表例が中期ペルシア語である。中期ペルシア語を表記するアラム文字もまた、独自の発達を遂げパフラヴィ文字などの名前で区別されるが、この文字で表記されたペルシア語にはアラム語におけるりをそのまま書いてペルシア語として読む「訓読」の例が多く確認される。またそのような訓読詞にはその後に表音的に用いられた文字が続いて「送り仮名」となることも観察される。

現代のアラム語表記はシリア文字の他、ラテン・アルファベットによる表記法も開発されており、後者による表記もそれなりに理解されるようである。

音韻的特徴

アラム語は3000年の歴史を持つ言であり、その歴史の中で大きく姿を変えている。そのため以降の節ではこの言歴史を通じて観察される特徴に絞って言及する。

母音

アラム語はその変種の多くで音を表記しない表記体系を持っている。そのため音に関しては不明瞭な点が多い。以下に示すのは、ある程度音が分かる変種における音体系である。

1.トゥーローヨー(Ṭuroyo, Jastrow 2011)

弛緩
i u
e o ə ǔ
a ǎ

2.現代西アラム語(Western Neo-Aramaic, Arnold 2011)

以下に示す5音を持ち、それぞれ長短を区別する。また、二重音としてay、awを持つ。

i u
e o
a


子音

アラム語の子音体系についても変種ごとに差が見られる。特に現代ではそれ以前のアラム語では見られなかったような子音が存在する。以下に示すものはその一例である。

1.トゥーローヨー(Ṭuroyo, Jastrow 2011)

Bilabial/labiodental dental/interdental palatal velar uvular pharyngeal glottal
Stop p b t d ṭ (ḍ) k g q (')
Affricate č ǧ
Fricative f v  ḏ (ḏ̣) ġ ḥ ʕ h
Sibilant s z ṣ š ž
Nasal m n (ṇ)
Lateral l (ḷ)
Trill r (ṛ)
Semi-Vowel w y

2.現代西アラム語(Western Neo-Aramaic, Arnold 2011)

p b t [d] k [g] [']
(ć) (č) (ǧ)
f   ḏ̣ x ġ h
s z ṣ ẓ š (ž)
m n
l
r
w y

文法体系

性数はヘブライ語と同じく単複双・男女である。人称代名詞で例を見てみよう。

単数 複数
1人称 ānā axnan
2人称男性 at axton
2人称女性 ati
3人称男性 hau→ou āni
3人称女性 haiai,ei

動詞

おおよそ以下のようになる。

wa※は動詞句の間に入る

動詞 +li 現在 +wa※ 過去
+連辞(iwēn) 現在 +wa 未完過去(経験)
be+ +連辞(iwēn) 現在進行形 +wa 未完過去
ke+ +ēn 現在 +wa 未完過去(習慣)
bit(be)+bit+haven +ēn 未来 +wa※ →条件法
di+ 未来 +wa →条件法
di+haven +ēn →接続法 +wa 未完過去
→接続法 +wa※ 未完過去

参考文献

本文で参照した文献の他、有用と思われる文献をいくつか挙げておく。

Akopian, Arman. 2017. Introduction to Aramean and Syriac Studies: A Manual. Piscataway, New Jersey: Gorgias Press.

Arnold, Werner. 2011. “Western Neo-Aramaic.” In: Weninger, Stefan (ed.) The Semitic Languages: An International Handbook, 685-696. Berlin/Boston: De Gruyter Mouton.

Huehnergard, John and Naʿama Pat-El (eds.) The Semitic Languages: Second Edition. London/New York: Routledge.

Jastrow, Otto. 2011. "uroyo and Mlaḥsô." In Weninger, Stefan (ed.) The Semitic Languages: An International Handbook, 697-707. Berlin/Boston: De Gruyter Mouton.

Weninger, Stefan (ed.) The Semitic Languages: An International Handbook. Berlin/Boston: De Gruyter Mouton.

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和書では以下の本に聖書アラム語解説があったのだが、訂の際にその部分は丸ごと削除されてしまった(和書で出てる他のアラム語の本はちょっと信用がゲフンゲフン)。

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