アレフランス(Allez France)は、1970年アメリカ生まれ・フランス調教の元競走馬・元繁殖牝馬。
凱旋門賞を筆頭にフランスでGIを8勝する大活躍を収めた名牝で、特にロンシャン競馬場に強く「La Reine de Longchamp(ロンシャンの女王)」とまで呼ばれた。馬名はフランス語で「行け、フランス」という意味。
父Sea-Bird、母Priceless Gem、母父Hail to Reasonという血統。
父シーバードは英ダービーや凱旋門賞を圧勝したフランスが誇る歴史的名馬で、母プライスレスジェムも2歳時のベルモントフューチュリティSでバックパサーを破った実力馬。
その他、伯母に牡馬を薙ぎ倒しまくった快速の名牝アフェクショネイトリーがおり、母父ヘイルトゥリーズンも本馬が生まれた1970年に年度代表馬*パーソナリティ(アフェクショネイトリーの仔=本馬の従兄でもある)などの活躍でリーディングサイアーを獲得しているという、良血と呼んでいささかも差し支えない血統である。高祖母は名牝系の祖ラトロワンヌで、近親には*パーソナリティを筆頭に大量の活躍馬がいる。
本馬を生産したのは、アメリカのオーナーブリーダーであるイシドール・ビーバーと調教師のハーシュ・ジェイコブスが設立した馬産団体「ビーバー・ジェイコブス・ステーブル」であった。しかし同団体所有で走ったプライスレスジェムやアフェクショネイトリーと違ってアレフランスは1歳時にセリに出され、16万ドルで落札された。
本馬を落札したのはフランスの画商であるダニエル・ウィルデンシュタインの代理人として来場していた専属調教師のモーリス・ジルベール師(仏)で、本馬はウィルデンシュタインの所有馬となったが、肝心のジルベール師が本馬のデビュー前にアメリカの石油業者ネルソン・バンカー・ハントの招聘を受けてウィルデンシュタインの元を去ったため、アレフランスはアルベルト・クリムシャ師に預けられることになった。なお、半ばアレフランスを袖にしたような格好のジルベール師は、本馬と8回対戦することになるライバル・ダリアを管理することとなる。
ちなみにアレフランスは神経質で寂しがり屋だったらしく、レースに行かない時は羊が付き添っていたという。
全レースで騎乗することになる主戦のイヴ・サンマルタン騎手を背にデビュー戦を快勝したアレフランスは、そのままクリテリウム・デ・プーリッシュ(GI・1600m)に出走。ここで後方2番手から直線だけで全馬を差し切り2馬身差で勝利するというパフォーマンスを見せ、この年の最優秀2歳牝馬となった。
3歳時は1000ギニーに当たるプール・デッセ・デ・プーリッシュ(GI・1600m)にぶっつけで出走し、初対戦のダリアらを相手にまたも最後方からごぼう抜きを決めて勝利した。
このレース後に「英ダービー出走も」という噂が流れ、ブックメーカーで前売り1番人気となるなど注目を浴びる中、その試金石としてリュパン賞(GI・2100m)に出走したがここで7着に敗れてしまう。勝ったのは2000ギニーに当たるプール・デッセ・デ・プーランを勝ってきたカラムーンで、この敗戦が影響してか英ダービーは自重することになった。代わりに仏オークスに当たるディアヌ賞(GI・2100m)に出走し、ダリアを2馬身半差の2着に破って、レースレコードを2.8秒も更新する完勝を収めた。
秋は初戦のノネット賞(GIII)で4着に敗れたため、続けて出走したヴェルメイユ賞(GI・2400m)ではダリアに1番人気を譲ったが、結果は本馬が2馬身差で完勝。プール・デッセ・デ・プーリッシュ、ディアヌ賞、ヴェルメイユ賞の3競走の同一年制覇(纏めて「フランス牝馬三冠」とされることもある)は、その後2008年のザルカヴァまで35年間達成されなかった。
続く凱旋門賞では、ダリアやヴェルメイユ賞で2着だったハリーハリエットに加えて、この年のパリ大賞典を勝ったテニソン、サンクルー大賞を連覇していた*ラインゴールド、ロワイヤルオーク賞を勝ったレディベリーといった実力馬が相手となったが、これらを抑えてアレフランスは1番人気に支持された。しかし後方からよく追い込んだものの、先に抜け出した*ラインゴールドに2馬身半届かず2着に敗れた。更にイギリスに遠征して出走したチャンピオンS(GI・10ハロン)でも、ここまでの2戦で先着していたハリーハリエットの3/4馬身差2着に惜敗した。
3歳時は7戦3勝で、この年のフランス最優秀3歳牝馬に選ばれた。なお、クリムシャ師がこの年で引退したため、翌年からエンジェル・ペンナ師が本馬を管理することとなった。
4歳時はアルクール賞(GIII)をステップにガネー賞(GI・2100m)に出走。両レースにはダリアも出走していたが、アレフランスはそれらの対戦相手を問題にせず、3馬身差・5馬身差で連勝した。続くイスパーン賞(GI・1850m)も、直線だけで豪快に追い込んで勝利した。その後、夏の休養を挟んだ秋初戦は凱旋門賞を目標にフォワ賞(GIII)に出走し、ガネー賞で2着だったテニソン以下を破って勝利を収めた。
こうして4連勝で凱旋門賞に駒を進めたアレフランスだったが、一つ問題があった。サンマルタン騎手はレース10日前に腰を骨折しており、壮絶なリハビリの末にようやく騎乗態勢が整ったのは凱旋門賞当日だったのだ。更に対戦相手も、ヴェルメイユ賞を4馬身差で圧勝した同陣営のパウリスタ、前年に仏グランクリテリウム(2歳GI)を勝ち3歳GIでも善戦していた*ミシシッピアン、ロワイヤルオーク賞優勝馬ブシリス、パリ大賞典優勝馬サガロなどの実力馬が揃っていた。
スタートするとアレフランスは後方を追走し、いつも通り末脚に賭けようとした。しかし手負いのサンマルタン騎手、直線で叩き合いになったら満足に追えずに負ける可能性が高いと考えたのか、なんとフォルスストレートで外を回って進出するというロングスパートを仕掛ける。そのままアレフランスが先頭で直線を迎え、普段は豪脚を身上とするアレフランスが、逆に直線で19頭の追い込みを受けて立つという競馬となった。
負けたらサンマルタン騎手はフルボッコにされたかもしれない早仕掛けであったが、しかしアレフランスの脚は衰えない。流石に後方から追い込んだコンテスドロワールらの方がゴール前の伸びは勝っていたものの、それでもコンテスドロワールをアタマ差で凌ぎ優勝した。前年に亡くなったシーバードの娘が凱旋門賞を制した、フランス競馬ファンにとって記念すべき瞬間でもあった。
4歳時は5戦5勝でシーズンを終え、文句なしにフランス年度代表馬・最優秀古馬牝馬となった。
5歳時は始動戦のガネー賞をコンテスドロワールやダリアなどのメンバー相手に4馬身差で圧勝し、続くドラール賞(GII)も勝利した。しかしイスパーン賞では3着に惜敗し、連覇は達成できなかった。
秋はフォワ賞を勝利して凱旋門賞に向かったが、今回は2年ぶりの出走となるダリア以外にもメンツが揃っていた。本馬以外に有力と目されたのは、プール・デッセ・デ・プーランとリュパン賞を勝ったグリーンダンサー、プール・デッセ・デ・プーリッシュとヴェルメイユ賞を勝ったイヴァンジカ、セントレジャーを10馬身差で圧勝したブルーニ、牝馬ながら英ダービー2着と健闘したサンタラリ賞(GI)の勝ち馬ノビリアリーなどの3歳馬であった。
ところが、珍しく好位から競馬をしていたアレフランスは道中で他馬と接触し左後脚を落鉄。結局直線でも伸びを欠き、連覇ならず5着と敗退した。勝ったのは上に挙げた4頭の3歳馬でもダリア(15着)でもなく、この年GIを2連勝していながら近走の不振で最低人気・単勝120.7倍にまで評価を落としていたドイツ調教馬スターアピールであった。
その後は英チャンピオンSでスターアピールと再戦したものの、当時GIIだったクイーンエリザベスII世Sを勝ってきたローズボウルの2着に敗戦し、アメリカに遠征して出走したダート10ハロンのナショナルサラブレッドチャンピオンシップ(リステッド)ではシンガリ負け。ここで目処が立てば6歳時もサンタアニタハンデキャップ(米GI)を目標に現役続行予定だったがこの結果を受けて立ち消えとなり、引退した。それでもフランス最優秀古馬牝馬は2年連続で受賞した。
通算成績は21戦13勝、うちGI8勝。獲得賞金はドル換算で138万6146ドルで、世界初の100万ドル牝馬となった。
凱旋門賞などが開催されるロンシャン競馬場との相性は「ロンシャンの女王」という異名があるだけあって非常に良く、17戦して[12-1-1-3]、勝率は70%超えという恐ろしい成績を残している。そのロンシャン競馬場をダリアが非常に苦手としていたこともあり、ダリアとの対戦成績はアレフランスの8戦全勝で終わっている。
ケンタッキー州・レーンズエンドファームで繁殖入りしたアレフランスだったが、その繁殖成績はGI馬を4頭出したダリアと比べると大人しいものに終わってしまった。それでも4番仔のアクションフランセーズがGIIIを勝っているので完全な失敗だったわけではないし、3番仔のエールドフランスはオーストラリアで種牡馬入りしてGI馬を出している。
1989年、他馬に脚を蹴られて骨折したのが致命傷となり、19歳で安楽死措置が執られた。アクションフランセーズが重賞馬を出すなどして牝系を伸ばしており、本馬の牝系は現在でも残っている。日本にもアクションフランセーズの孫の*アーティストチョイスという牝馬が輸入され、同馬から牝系がじわじわ伸びつつある。
Sea-Bird 1962 栗毛 |
Dan Cupid 1956 栗毛 |
Native Dancer | Polynesian |
Geisha | |||
Vixenette | Sickle | ||
Lady Reynard | |||
Sicalade 1956 鹿毛 |
Sicambre | Prince Bio | |
Sif | |||
Marmelade | Maurepas | ||
Couleur | |||
Priceless Gem 1963 黒鹿毛 FNo.1-x |
Hail to Reason 1958 黒鹿毛 |
Turn-to | Royal Charger |
Source Sucree | |||
Nothirdchance | Blue Swords | ||
Galla Colors | |||
Searching 1952 鹿毛 |
War Admiral | Man o'War | |
Brushup | |||
Big Hurry | Black Toney | ||
La Troinne | |||
競走馬の4代血統表 |
掲示板
掲示板に書き込みがありません。
急上昇ワード改
最終更新:2024/04/20(土) 01:00
最終更新:2024/04/20(土) 01:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。