アンコール遺跡とは (アンコールイセキとは) [単語記事]

アンコール遺跡とは、カンボジア王国北西部、トンレサップ湖北岸のシェムリアップの北側に位置するクメール王朝時代の遺跡群である。1992年、ユネスコの世界危機遺産に登録されたのをきっかけに熱心な修復作業が施された結果、第二段階として2004年世界文化遺産に登録され、それまで危機遺産だったエリアを取り囲むような新しいエリアを設定し、全体で「アンコール遺跡公園」と名付けられた。

概要

9世紀から15世紀にかけて、およそ600年にわたりインドシナ半島に君臨し栄華を極めたアンコール朝の遺跡群。

東南アジア最大の文化遺産で、海外の世界遺産を挙げろと言われたときに、多くの人が五番以内に思い浮かぶであろう、世界遺産の中の世界遺産。

遺跡には様々なレリーフが施されており、神秘的かつ荘厳なクメール美術の傑作群として、世界中の旅人を魅了し続けている。

この記事ではアンコール遺跡の中からいくつか抜粋して紹介する。

主な遺跡

アンコール・ワット

12世紀、スーリヤヴァルマン 2世により、建築に30年かけカンボジア王朝の象徴として建てられたヒンドゥー教最大の寺院。

アンコールの遺跡群の中でもっとも有名で、カンボジアの国旗の中央に国の象徴的遺跡として描かれるなど、正にカンボジアを代表する建築物。

アンコール・ワットとはクメール語で「寺院によって作られた都の城」という意味で、二平方kmに及ぶ建物は遺跡群の中で最大で、周囲には長さ5.4kmの水濠が張り巡らされ、左右対称の構造となっており^[1]、その内側には三重の回廊が走る。回廊は内側になるほど高く、第三回廊の中央は祠堂で、高さ65mの尖塔がそそり立っている。

全体でヒンドゥー教の宇宙観を表しており、回廊はヒマラヤ山脈、水濠は海、中央に位置する祠堂は神々が住まうとされるメール山を表現している。また、壁面にはヒンドゥー教の神話と、更にインドの叙事詩をモチーフとした浮彫で埋め尽くされているなど、インドの影響も強い。

この地方の他の寺院のほとんどが東向きに建てられているのに対し、アンコール・ワットは西向き。理由は定かではないが、スーリヤヴァルマン 2世はアンコール・ワットを自らの墓標と捉えており、浄土の方向である西向きに建てさせたのでは?という考察がある。

日本人絡みでは、1632年に父の供養のためこの地を訪れた森本右近太夫の墨書が十字回廊に残されていることが有名。
また、日テレ系の「すすぬ！電波少年」の企画「電波少年的アンコール・ワットへの道の舗装」において、カンボジアのとある地点からアンコール・ワットまでの道の89Kmが舗装された。

アンコール・トム

12世紀後半、クメール王国第21代王ジャヤーヴァルマン7世により建設されたといわれているアンコール・ワットの北側に築かれた城塞都市の遺跡。

アンコール・トムとはクメール語で「大きな街」という意味。

隣国チャンパ王国からクメール人を解放し、1181年に即位したジャヤーヴァルマン7世は他の王と比べ仏教に傾倒しており、菩薩の慈愛が世界中に波及するようにと願いを込めて、塔の四面には仏の顔が彫られている。

大規模な隣国による再度の侵略を防ぐため、周囲12kmに高さ8mものラテライトの城壁が築かれた。内部は東西南北の四つの門から繋がる十字路で均等に区切られており、中央には王の精神の礎となる寺院・バイヨンが置かれるなど、堅固な要塞機能と神聖な宗教的要素を併せ持つ。

タ・プローム

ジャヤーヴァルマン7世が母を弔うために建てた大乗仏教の寺院。

かつて、東西1000m、南北700mに及ぶ広大な敷地内には、僧侶や踊子を含めた人々がおよそ一万人暮らし、周辺の村々に住まう人々に奉仕して過ごしていた。

スポアンというガジュマルの一種が遺跡を飲み込まんとばかりに成長を続けており、これがこの寺院の知名度を上げている。

アンジェリーナ・ジョリー主演の映画『トゥームレイダー』のロケ地になった事でも知られる。

バンテアイ・スレイ

アンコール・ワットの北東部にある遺跡。

ラージェンドラヴァルマンが建設を開始し、その息子であるジャヤーヴァルマン5世の時代に完成した。

名前はクメール語で「女の砦」という意味。

紅の砂岩が使われているため全体的に赤みがかっているのが特徴。

アンコール遺跡の観光拠点であるシェリムアップから車で一時間弱と、他の遺跡群から少し離れた場所に位置しているため見過ごされがちだが、小さめの規模に反し、その美しさから盗難未遂事件に発展した「東洋のモナリザ」の異名を取るデヴァターを始め、見どころが凝縮されている。

プリア・コー

879年、インドラヴァルマン1世が、ジャヤーヴァルマン 2世を始め王族の祖先に捧げるために建設したヒンドゥー教の寺院。

今は亡き古代の都ロリュオスに建てられた最初の寺院でもある。

名前はクメール語で「聖なる牛」という意味。

寺院中央の祠堂群の前方にはシヴァの乗り物であるナンディンという牛の彫像が対面して三体並んでいる。

脚注

*上空から見ると綺麗なシンメトリーに作られていることが分かる。

アンコール遺跡単語

概要