カール・グスタフ・ケンプ(Karl Gustav Kempf)は「銀河英雄伝説」の登場人物。
CVは玄田哲章(石黒監督版)、安元洋貴(Die Neue These)。
ラインハルト・フォン・ローエングラム麾下の提督。
艦隊旗艦はヨーツンハイム(石黒監督版OVA)、ガルフピッゲン(Die Neue These)。
時系列上の初登場は外伝「千億の星、千億の光」である。第六次イゼルローン攻防戦において、戦艦の艦長(大佐)として敵軍の只中、回頭しつつ主砲を斉射するという大胆な戦法で同盟軍の戦艦2隻を沈め、離脱を果たすことに成功している。OVAでは第3空戦隊長となっており、ワルキューレのパイロットに変更されている。
本編開始ではラインハルトの元帥府開設にともない、艦隊司令官(中将)として登用される。同盟軍の帝国領侵攻ではヤン・ウェンリー率いる第13艦隊と交戦。艦砲とワルキューレを用いた巧みな戦術で、オリビエ・ポプランの僚友であるウォーレン・ヒューズ、サレ・アジズ・シェイクリの両撃墜王を撃墜させる事に成功したものの、ヤンの攻撃で劣勢に追い込まれ、艦隊再編中の隙を突かれて逃げられる事となった。
リップシュタット戦役では、諸提督たちと共に帝都オーディンの制圧にあたり、一連の貴族連合軍との戦闘でも武勲をあげている。しかし、ジークフリード・キルヒアイスの死によってラインハルトが人事不省となった時には、同格であったウォルフガング・ミッターマイヤーとオスカー・フォン・ロイエンタールに音頭を取られる事となった。
ラインハルトが帝国の権力を握ると大将に昇進。イゼルローン方面の警備責任者となる。年少者であるロイエンタール、ミッターマイヤーが上級大将となったことを残念がり、また最近は麾下のアイヘンドルフがヤン艦隊との遭遇戦で敗北していた事から自分の立場に焦燥を覚え始めていた。そんな時にガイエスブルク要塞をワープさせてイゼルローン要塞を攻略せよと命令を受け、ナイトハルト・ミュラーを副司令官としたガイエスブルク派遣部隊総司令官に任ぜられる。
この作戦は発案が科学技術総監アントン・ヒルマー・フォン・シャフトによるものであり、無用の出師という批判も多く、問題点を抱えていた。まず総司令官の人事が戦略より組織上の都合を優先させて、最善のものでなかった事である。宇宙艦隊参謀総長パウル・フォン・オーベルシュタインは参謀チームのアントン・フェルナーの意見を取り入れて、ラインハルトに、上級大将ではなく大将級の提督から選択するように進言する。これを容れたラインハルトは、先の敗戦を雪ぐ機会を与えるためにケンプを選んでいる(後の会話ではオーベルシュタインがケンプを推挙した事になっている)。
そしてイゼルローン要塞を破壊するのか、占拠するのか方針が決まっておらず、現場での裁量に委ねられている。最初から要塞ごとぶつければいいんじゃねえの?とラインハルトにしてはアバウトなものであった。跳躍実験の段階においてラインハルトは、ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフに「それで死ぬとしたら、ケンプもそれまでの男だ。永らえたところで、たいして役にたつまい」と突き放した物言いすらしている。
ガイエスブルク要塞は跳躍実験を経て、イゼルローン要塞近郊に移動し、ケンプとミュラーは両艦隊16、000隻と200万の兵力を展開させる事に成功する。
正攻と奇策を用いて、ヤン不在のイゼルローン要塞駐留艦隊に苦戦を強いたものの、ワルター・フォン・シェーンコップやウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツの活躍もあって戦局は膠着。次第に冷静さを欠いて、ミュラーとの間にも齟齬をきたした。「諸事情によってヤンはイゼルローン要塞におらず、ヤンが戻って来る時に罠を張って捕らえる事が可能である」というミュラーの策を信じようとせずに退ける。ミュラーの方でも勝手に段取りをして事後承諾の形となり、功を焦った節もあった。本国には「わが軍、有利」と曖昧な報告してラインハルトから限界を看破され、ミッターマイヤー、ロイエンタールの援軍が派遣される事となった。
やがてイゼルローンに近づいている同盟軍の援軍(これこそが戻って来たヤンであった)を発見して対応を迫られる事となり、時間差を利用した各個対処戦法で対策。芸術的ともいうべき作戦であったが、イゼルローン要塞での会議中に、たまたまコーヒーを運んできたユリアン・ミンツ少年にシェーンコップが冗談のつもりで帝国軍の意図を訊ねた事から見破られた。結果ヤンとメルカッツに逆手にとられて挟撃戦の好餌となり、艦隊は大敗。
ケンプは窮地に及んでガイエスブルク要塞をイゼルローン要塞にぶつけようとしたものの、ヤンにより通常航行用エンジンのひとつを砲撃、破壊された為、要塞は周囲の残存艦隊も巻き込み暴走。とどめにトゥールハンマーを撃ちこまれて爆滅した。ケンプも致命傷を負い、要塞と運命を共にして戦死。この戦闘で帝国軍の16,000隻以上の艦隊は700隻まで激減し、全兵力の九割である180万以上の将兵を失う事となった。
ケンプの訃報は同僚のエルネスト・メックリンガーにより妻子のもとへと伝えられ、死後は上級大将の称号と帝国軍葬をもって送られた。遺族には充分な年金が与えられる事となった。
ロイエンタールは同情こそしなかったが、ケンプへの処遇を切り捨てられた駒と考え、ラインハルトに対してかすかな不審を抱き始める。
ケンプ艦隊は全滅に近い打撃を被った。艦隊戦に破れた後はガイエスブルク要塞に撤退したため、参謀長フーセネガーほか艦隊司令部にも生き残りがいるとみられるが、アイヘンドルフ、パトリッケンといった分艦隊司令は以後登場していおらず、戦死の可能性が高い。後にフーセネガーは大本営情報主任参謀となっている。イザーク・フェルナンド・フォン・トゥルナイゼンやテオドール・フォン・リュッケも要塞戦以前はケンプ艦隊の幕僚であった。
ミュラーは復讐に燃えてヤンの首級を掴む事を大神オーディンに誓うものの、後のバーミリオン会戦で一矢報いた事や、ヤンとの面識で、その人柄に好意をいだいた等の事から、復讐の念は敬意へと昇華した。一連の経験を機に大きく頭角をあらわし、後にミッターマイヤーに次ぐ名望を得るが……それは別の物語となる。
かつて名を馳せた撃墜王であり、ケンプの若き日はワルキューレのパイロットとして数十機の敵機を撃墜した歴戦の勇者であった。勇気も統率力も非凡で、艦長や艦隊司令官といった将器を求められる地位にあっても有能であったが、ロイエンタール、ミッターマイヤーに比すれば用兵に柔軟さを欠いている。彼らを使わない作戦で出番がまわってきた事から、当時の元帥府大将での評価は高かったようであり、ミッターマイヤーはケンプに一目おいていた。
当時の帝国軍において、複数の艦隊司令官により構成され、独立した大規模な作戦を行う総司令官級となった人物はキルヒアイス(3個艦隊)、ミッターマイヤー(3個艦隊)、ロイエンタール(3個艦隊)、ケンプ(2個艦隊+要塞)の4人のみである。
ケンプは軍営の実務家としても優れ、10万近い工兵を指揮してガイエスブルク要塞の移動計画を成功させている。パイロット、艦長、艦隊司令官、現場監督、要塞司令官をこなした、ある意味レパートリー豊富な軍人といえる。
| 統 率 | 運 営 | 情 報 | 機 動 | 攻 撃 | 防 御 | 陸 戦 | 空 戦 |
| 90 | 20 | 36 | 84 | 96 | 78 | 80 | 100 |
茶色の髪を短く刈った、線の太い堂々たる偉丈夫で、花崗岩の風格があった。内実も豪放で公明正大な人物。提督たちでは比較的年長者でオーベルシュタインと同い年(黎明編≒34才~雌伏編≒36才)。
元帥府での提督たちの中では競争意識が激しく、感情的でやや人格に安定を欠いた。しかし、死を迎えて本来の度量を取り戻し、ミュラーへの詫びを遺している。
艦長時代(OVAでは空戦隊長時代)は、援軍をよこさなかった総司令部に暴言を叩きつけようとしたり(通信オペが気を利かせて伝えなかった)と過激な一面も見せている。反面、第八次イゼルローン攻防戦では戦闘の前に挨拶をして礼儀を示す古風な面も持っていた。
家族は妻と長男グスタフ・イザーク8才。次男カール・フランツ5才の4人家族。家では優しい夫、父親としての顔を見せ、妻の実家に仕送りを行っており、良き家庭人でもあった。
掲示板
103 ななしのよっしん
2024/09/21(土) 18:11:09 ID: 0sPZmFK57m
ほんとにイゼルローン回廊がケンプ・ミュラー回廊になってたら数年後ぐらいにそう名付けたことを後悔しそう
ネーミングセンス的な理由で
104 ななしのよっしん
2024/12/12(木) 22:13:40 ID: GeDE/PNBU2
ヤン艦隊に大きな不利があった上にヤンが勝利にこだわっていなかったとはいえ、以降のヤンの戦績を考えれば「ヤン艦隊と正面から戦って全面敗走に至らなかった」と言うだけでも名将認定されそう
105 ななしのよっしん
2025/10/09(木) 20:42:18 ID: bwx3dq+e+w
「子供にたいしては単純明快さをむねとすべき」
「世の中の複雑さ、醜悪さは、成長するにしたがって自然に理解できるようになる」
「親に教えられた単純明快な人生観をうらむようになるかもしれないが、自分が人の親になればその心理をわかるときがくるだろう」
原作で語られてるケンプの子育て観が好きなんだ
例え捻くれたとしてもいずれ理解してくれるだろうという子供への信頼が感じられて
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最終更新:2025/12/10(水) 02:00
最終更新:2025/12/10(水) 02:00
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