カール・フォン・デア・デッケン(Karl von Der Decken)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
自由惑星同盟軍の陸戦士官・中尉。宇宙暦794年3月当時に23歳、“薔薇の騎士”連隊の一員であり、言及はないが帝国からの亡命者の係累と思われる。若々しい顔、ワルター・フォン・シェーンコップにひとしい長身とより厚く幅のある身体を持つ朴訥とした大男で、平時においては温和かつ律儀な人物であった。
いっぽう戦場にあっては高い陸戦技倆を持つ勇者であり、同盟軍最強の陸戦部隊たる“薔薇の騎士”連隊において、ワルター・フォン・シェーンコップ(中佐・副連隊長)、カスパー・リンツ(大尉)、ライナー・ブルームハルト(中尉)とともに四人あわせて「おそらく最強のカルテット」と評された。
宇宙暦794年のヴァンフリート星域の会戦中、衛星ヴァンフリート4=2同盟軍基地での戦闘において、逆亡命したかつての上官ヘルマン・フォン・リューネブルクと直接対戦し、力及ばず斃され戦死した。
宇宙暦794年3月に生じたヴァンフリート星域の会戦では、“薔薇の騎士”連隊が駐留する同盟軍後方基地のある衛星ヴァンフリート4=2で地上戦が行われた。帝国軍降下の情報を受け偵察に出た“薔薇の騎士”連隊長オットー・フランク・フォン・ヴァーンシャッフェ大佐は8時間を経過しても帰投せず、同副連隊長ワルター・フォン・シェーンコップ中佐は自ら捜索に出ることとした。
デア・デッケンはこの時、より年長のリンツ、年少ブルームハルトのふたりとともにシェーンコップの随行に選ばれ、ヴァーンシャッフェ達が立ち往生していた地点まで、彼らが乗る装甲地上車“気まぐれヨハン”の運転を担当している。
やがて、かつて帝国に逆亡命した先代の“薔薇の騎士”連隊長、ヘルマン・フォン・リューネブルク准将の指揮する帝国軍陸戦部隊が同盟軍基地へと攻め寄せた。同盟軍は緒戦から帝国軍の有線ミサイル砲車の正確な狙いの前に損害を出したが、この時デア・デッケンはシェーンコップの指示で有線ミサイルのワイヤーを狙撃切断し無力化する妙技を見せている。
戦いが近接戦闘の様相を見せ始めると、彼も銃のエネルギーを費いはたして戦斧での白兵戦に移った。しかしそこに、かつての上官リューネブルクが現れる。シェーンコップから対戦を回避するよう言われていたはずのリューネブルクの威圧と挑発に、デア・デッケンは裏切り者への怒りを返したが、リューネブルクは嘲罵と戦斧の強烈な撃ち込みで彼にむくいた。そしてリューネブルクのすさまじい斬撃は、彼を装甲服ごと左肩から胸へかけて切り裂き、速やかに絶命させたのである。
かくして「最強のカルテット」が「最強のトリオ」になった直後、シェーンコップが駆けつけて連戦のリューネブルクを斃しかけたが、寸前に反撃を受けてついに好機を逃すこととなった。持ち越されたデア・デッケンの復仇が果たされるのは同年末、第六次イゼルローン要塞攻防戦でのこととなる。
温和な気性の持ち主で、5年連続、1年に1階級ずつ昇進した前歴があることを「奇妙に律儀」と評されている。彼の律儀さを示すものとして、画家志望だったリンツのモデルとして、3時間にわたって装甲服姿で片膝立ちを維持した、という話がある。だが、その律儀ぶりに対する返礼にリンツから酒をおごられ「黒ビールを大ジョッキで1ダース」飲み干したというから、これは単なる律儀者ではない。まずもって酒豪そのものであり、しかも返礼とはいえその量を上官におごらせたあげくに“遠慮したように”席を立った、というところまでいくと、妙な図太さをあわせ持った律儀者だったといえる。
石黒監督版OVA外伝「千億の星、千億の光」では、ヴァーンシャッフェ捜索への夕食直後の出撃の際、行儀わるくサンドイッチを持ったままの“育ちがいい”ブルームハルト、より行儀わるく紙コップを口にくわえてくずかごに放り捨てるリンツ(ここまでは原作にもある描写)に対し、きちんと食べ終えて口をナプキンで拭いてから立ち上がるデア・デッケンの丁寧さがオリジナルの対比として描かれている。帝国系のはずなのに手を合わせてごちそうさままでしてるのはご愛嬌
“薔薇の騎士”連隊員としての陸戦能力においては、石器時代ではない「勇者」と評され、ヴァンフリート4=2の地上戦において長距離狙撃型レーザー・ライフルでもって有線ミサイルのワイヤーを撃ち抜いた際には、至近への着弾にも関わらず微動だにせずに狙いをつける冷静沈着さを見せた。
反面、リューネブルクの前では戦慄と怒りを隠せず一騎打ちにおよび戦死することとなったが、シェーンコップはデア・デッケンでは練達のリューネブルクにいまだ及ばないとしながらも、最盛期を過ぎたリューネブルクに比し「五年、否、三年後には逆転するであろう」と、彼の実力と将来性を高く評価していた。デア・デッケンを斃した直後にシェーンコップと対戦したリューネブルクは、自らの戦斧の慣性にらしくもなくよろめいて危地に陥ったが、これもデア・デッケンが命と引き換えにあたえた疲労の結果かもしれないとされている。
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最終更新:2024/04/24(水) 04:00
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