カール・マチアス・フォン・フォルゲン(Karl Matthias von Folgen)とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
外伝「千億の星、千億の光」にて語られる、ゴールデンバウム朝銀河帝国の貴族・軍人。軍務省に出仕するデスクワーク専門の帝国軍官僚だったが、帝国暦481年(宇宙暦790年)末~翌482年初頭ごろ、会計官として前線基地に出ていた際に同盟軍の攻撃に遭い戦死した。最終階級は戦死特進による少将(生前の最高階級は大佐待遇)。
フォルゲン伯爵家の四男という生まれで、恵まれた風貌や服装センスを持ち、会話も上手い青年貴族だった。ハルテンベルク伯爵家のエリザベートと婚約していたが、生来みずから生計を立てる意識と能力に欠けた遊蕩児であったため、安易に禁忌へと手を出し命を落とす結果となった。
フォルゲン伯爵家に生まれたカール・マチアスは、四男と継承順位が低いために爵位相続の望みはもとより存在しておらず、将来は累代の領地家産以外のものごとで生計を立てねばならない身であった。しかし本人はといえば、貴族子弟向けの大学を7年かけて卒業し、父親に用意された一応の軍務省官僚という職務さえ怠けるしまつであり、どこかの子爵家や男爵家への養子入りを望む両親をよそに父親から与えられた金を散財する、評判の遊蕩児でしかなかった。
そんなカール・マチアスの転機となったのは、パーティーでエリザベート・フォン・ハルテンベルク伯爵令嬢と出会ったことである。元来、女性にやさしくすることができたカール・マチアスはエリザベートに手を出し、夢中にさせてしまったのである。軽い気持ちだったカール・マチアスは真剣に恋に落ちたエリザベートをもてあましたが、やがて彼のほうも本気でエリザベートとの結婚を考えるようになった。
そうなると問題となってくるのが、爵位を継げず、まともに仕事もしていないカール・マチアスがいかに結婚生活を立てるかであった。最終的に双方の家族の反対をおしきって婚約に至りはしたものの、本心から「どんな貧しい生活でもいとわない」と語るエリザベートはともかく、彼女の兄である少壮の官僚エーリッヒ・フォン・ハルテンベルク伯爵の難詰を無視するわけにはいかなかった彼は、金銭を得るためにサイオキシン麻薬の密売というありえざる行為に手を染めてしまう。
カール・マチアスがサイオキシン麻薬の密売に傾けた情熱は期待以上の実を結び、彼には永続的かつ莫大な収入が確約された。しかしその事実は、警察官僚であったハルテンベルク伯の知るところとなる。サイオキシン麻薬の密売は最大級の犯罪行為であり、“警察官僚がたまたま貴族の服を着ている”とまで嘱望されたハルテンベルク伯の妹の婚約者が関与していたとなれば、これは耐えがたいスキャンダルであった。
それは、当時のフォルゲン伯爵であるカール・マチアスの長兄からしても同じであったろう。ハルテンベルク伯はフォルゲン伯に事態を知らせて味方につけ、カール・マチアスの抹殺を決意した。両家から圧力をかけられた軍部により、カール・マチアスは前線基地の主計官として送り出される。そして、その基地が同盟軍“薔薇の騎士”連隊の攻撃を受けた際、カール・マチアスは名誉の戦死を遂げたのだった。
名誉の戦死者として少将に特進した彼は、フォルゲン、ハルテンベルク両伯爵家による盛大な葬儀によって弔われたが、婚前未亡人として残されたエリザベートは人柄が変わってしまい、心配する兄ハルテンベルク伯の勧めでヘルマン・フォン・リューネブルクと結婚したものの、幸せな夫婦生活は送れなかった。
貴族社会・軍部・警察がトリニティを組んでカール・マチアスを抹殺した一連の陰謀は、当然秘密裏に実行されたが、その顛末は貴族社会の裏面に通じていたリヒャルト・フォン・グリンメルスハウゼン大将によってひそかに記録されており、カール・マチアスの戦死から3年半後の帝国暦485年末に至ってエリザベートに伝えられる。真実を知ったエリザベートは兄を問い詰め、ついには兄を惨殺したのだった。
「およそ社会だの人生だのをまじめに考えたことのない青年」と評される通りに将来への危機感がなく、乗馬と撞球とダンスでは名人級とはいえ生業につながらないなど、貴族の放蕩息子というほかなかったカール・マチアスではあるが、単なる無能とは切り捨てがたい部分もある。貴族令嬢であるエリザベートがどう言おうと結局は貧しい生活に耐えないだろうと理解する程度には現実を理解しており、結婚生活に必要な収入を得るために(正業とは正反対の行為ではあるものの)確かに努力もし、十分なリターンという以上の利益を獲得もしている。
女性の扱いにも長け、女性にやさしかった、あるいは「やさしいふりをするのが得意だったのかもしれない」という。実態がどちらに近かったのかは不明瞭ではあるが、エリザベートとの仲に本気になってからは、二人の暮らしのため(形はどうあれ)大いに努力し成果を挙げたことは事実である。そしてエリザベートも、リューネブルクとの結婚後に至ってもかつての婚約者の影を心中にとどめ続けた。
作中では、本気でエリザベートとの婚約を考えるようになったカール・マチアスの心情について「これまでの自分のありかた、生きかたに、疑問があったのかもしれない」と語られている。
上述の通り、カール・マチアスは“薔薇の騎士”連隊の攻撃の際に戦死した。この当時の“薔薇の騎士”連隊長こそ、のちに帝国に逆亡命してエリザベートと結婚するリューネブルク大佐であり、カール・マチアスとしては、少なくとも自分を戦死させた敵の責任者に婚約者を奪われた格好といえる。
帝国では、まさにリューネブルク自身がカール・マチアスを殺したのだ、という噂が流れた。同盟軍ではより踏み込んで「リューネブルクは自分が殺したカール・マチアスが持っていた婚約者の写真を見て惚れ込み、亡命して結婚した」という噂すらあった。しかし真相は一切明らかではなく、単なる因縁話かロマンチシズムの行き過ぎと切り捨てられる程度のものではあった。
ただし、リューネブルクはカール・マチアスについて、一度エリザベートに何かを語ろうとした形跡がある。しかし結局リューネブルクは語るのをやめ、そのまま第六次イゼルローン要塞攻防戦に出征して還らなかった。帝国暦485年末、ハルテンベルク伯とリューネブルク、カール・マチアスの死に関わった二人の男は、偶然にも時を同じくして非業の死を遂げたのである。
掲示板
1 ななしのよっしん
2021/04/09(金) 06:21:31 ID: HXO9YuLKQF
2 ななしのよっしん
2021/04/10(土) 08:12:14 ID: 1pRdwXxvL/
軍人による麻薬密売というと、外伝「汚名」のバーゼル中将の事も思い出す。何か繋がりがあったんだろうか。
>>1 帝国への逆亡命を考えていたリューネブルクに出された条件が、カール・マチアスたちがいた基地の襲撃と壊滅があった、というのはどうだろうか。
3 ななしのよっしん
2021/04/11(日) 03:24:30 ID: kHkQ4lhujv
>>2
論拠のない推察なので記事内には書かなかったんですが、
(あとサイオキシンつながりでバーゼルの記事作ってました。話を先取りされてしまったw)
アルレスハイム会戦はカール・マチアスが死んだ翌年くらいの483年のことで、
カール・マチアスは後方のデスクワーク士官、バーゼルは後方主任参謀と職域も近いので、
つながりがあった(というかバーゼルの組織の手下だった)可能性はあるかも、とはこの記事書きながら思ってました
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最終更新:2025/12/07(日) 22:00
最終更新:2025/12/07(日) 22:00
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