クインナルビーとは (クインナルビーとは) [単語記事]

クインナルビーとは、1949年生まれの日本の競走馬。栗毛の牝馬・

スウヰイスーやレダ、タカハタと共に牡馬に混じって戦後の競馬を蹂躙した、戦後の名牝。
ちなみに「クインナ/ルビー」じゃなくて「クイン/ナルビー」。千葉の刃物メーカーとは多分関係ない。

主な勝ち鞍
 1952年:鳴尾記念(秋)
1953年:天皇賞(秋)、鳴尾記念(春)

※年齢表記はレース名、表彰名等を除き現表記を記載

生い立ち

父クモハタは戦前の大種牡馬トウルヌソルと下総御料牧場の基礎牝馬である星旗を両親に持つ超絶良血馬で、デビューから9日でダービーを勝ったとかいうびっくり珍記録を持つ名馬。母父レヴユーオーダーは種牡馬としてはともかく、母父として本馬やダイナナホウシユウを輩出。
母の第一シユリリーは6戦2勝。その母、つまりクインナルビーの祖母はオーストラリアから輸入してきた牝馬シユリリーである。

当時としても良血と言えるだろう。そのクインナルビーは後にセダンやソロナウェー、ダイハードやテスコボーイを見出した、卓越した相馬眼の持ち主、鎌田三郎により生産された。セダンを輸入したと言えば車のバイヤーみたいだ。

華の１９５２年クラシック世代

1952年にクラシック世代を迎えた馬、特に牝馬はおっそろしい活躍を見せた、代表格は

スウヰイスー
中央35戦18勝、地方では最低でも16戦9勝、確認できる限り通算51戦27勝(多分もっと多い)
主な勝ち鞍：桜花賞 、オークス 、安田賞連覇、菊花賞2着、ワード賞(南関重賞相当)連覇
レダ
通算29戦17勝
主な勝ち鞍：天皇賞(春) 、京都記念(秋)、阪神3歳S・桜花賞2着
タカハタ
通算44戦26勝
主な勝ち鞍：朝日杯3歳S、日本経済賞、目黒記念(春)、2着：皐月賞、ダービー、オークス

我らがクインナルビーは如何に？

通算44戦17勝、2着14回、3着8回。主な勝ち鞍：天皇賞(秋)、鳴尾記念2回(52年秋と53年春)
2着に天皇賞(春)でレダとワンツーフィニッシュ
3着には阪神3歳S、桜花賞、日本ダービー、菊花賞など

当時の天皇賞は春秋ともに芝3200mであり、それを春秋ともに牝馬が制したとは恐れ入るだろう。当時の主戦騎手はサクラ軍団の専属調教師とも言える境勝太郎であり、スウヰイスーやレダ、タカハタ、そしてクリノハナやセントオー達同期の牡馬や、後進達と激闘を繰り広げた。詳細なレース内容が手に入らないので詳しくは語れないが、特にレダとは春天の借りを鳴尾記念で返し、勝ち抜けた彼女に追いつかんばかりに同年の秋の盾を制した。良いライバル関係だ。

成績で特筆すべき点は、17勝の時点で十分すぎるくらいだが、一度も掲示板を外したことがない。当時のレースはダービーを除けば少頭数である為一概には言えないが、彼女の安定感と能力を表す良い指標になるのではないかと思う。天皇賞勝利後には60kg越えの酷量が当然となったが、勝ちこそ無いが着外には沈んでいない。

クインナルビーの末裔

1953年末をもって引退し、その優れた競走能力を子孫へと伝えるのが彼女の使命である。
しかし、直仔はあんまり。一応中山4歳ステークス(今のラジオNIKKEI賞)の優勝馬カツトシを出したが大レースには届かず。そもそも子供自体5頭しか産めていない。

しかし、残した3頭の牝馬から牝系が広がっていく。1980～1990年代に開花を見せ、その一族には

オグリキャップ：有馬記念2回、マイルCS、安田記念。JRA顕彰馬
オグリローマン：桜花賞、笠松・名古屋重賞を4勝。オグリキャップの半妹
アンドレアモン：フェブラリーH、ウインターSなど、1980年代前半の中央ダートで活躍
キョウエイマーチ：桜花賞、他重賞4勝。1990年代後半のマイルの名牝
マルシュロレーヌ：ブリーダーズカップ・ディスタフ、他交流重賞4勝。キョウエイマーチの孫
ナミュール：マイルCS、他重賞2勝。キョウエイマーチの曾孫
バーデンヴァイラー：マーキュリーカップ。マルシュロレーヌの半弟
ラヴェル：アルテミスS。ナミュールの半妹

以上の活躍馬が輩出されている。現在ではキョウエイマーチ唯一の牝駒であるヴィートマルシェのラインから大物が出てきそうな雰囲気がする…と2018年に初版記事作った時に思っていたが、まさかその子のマルシュロレーヌが米牝馬最強決定戦であるBCディスタフを勝ち日本の競馬史の象徴的な1ページを彩るとは思っていなかった。

こうしてみると、オグリキャップってさほど雑草血統では無いように見える。ダンシングキャップは二線級だがそこそこ活躍してた種牡馬だし。でも、オグリキャップという大輪の華を咲かせるには、血統表の右奥底に眠る、しかし重厚堅牢なクインナルビーという土台があってこそのように思える。

クインナルビーは1960年にトサミドリの子供を出産した後に急死。享年11歳。
その仔、スズキナルビーからトミニシキ、トキノシュリリー、インターシャルマンを経て生まれたのがキョウエイマーチ、さらにヴィートマルシェを経て生まれたのがマルシュロレーヌである。

血統表

クモハタ 1936 栗毛	*トウルヌソル 1922 鹿毛	Gainsborough	Bayardo
			Rosedrop
		Sol iste	Prince William
			Sees
	*星旗 1924 栗毛	Gnome	Whisk Broom
			Fairy Sprite
		Tuscan Mai den	Mai den Erlegh
			Tuscan Red
第一シユリリー 1937 栗毛 FNo.7-d	*レヴユーオーダー 1923 黒鹿毛	Grand Parade	Orby
			Grand Geraldine
		Acc urate	Pericles
			Acc uracy
	*シユリリー 1925 栗毛	Trec lare	Tredennis
			Cl are
		War whoop	Malt ster
			War fare
競走馬の4代血統表