クイーンズリング(英:Queens Ring、香:皇后寶戒)とは、2012年生まれの日本の競走馬。黒鹿毛の牝馬。
「適性距離は1400~1600m」と鞍上に言われながら2200mのエリザベス女王杯を勝ち2500mの有馬記念でも2着に突っ込み、ミルコ・デムーロに京都GⅠ初勝利を贈った馬。
主な勝ち鞍
2015年:フィリーズレビュー(GⅡ)
2016年:エリザベス女王杯(GⅠ)、府中牝馬ステークス(GⅡ)、京都牝馬ステークス(GⅢ)
父マンハッタンカフェ、母アクアリング、母父Anabaaという血統。
父は2001年の菊花賞・有馬記念、2002年の天皇賞(春)を制したSS産駒きってのステイヤー。種牡馬としては距離も芝ダートも問わない万能型の種牡馬として2009年のリーディングサイアーに輝くなど大活躍したが、クイーンズリングが3歳の2015年に死亡した。
母は持込馬で9戦1勝。クイーンズリングが初仔である。
母父アナバーはアメリカ産のフランス調教馬で、1996年のモーリス・ド・ゲスト賞など短距離G1を2勝し同年のカルティエ賞最優秀スプリンターを受賞した馬。種牡馬としてはブリーダーズカップ・マイル3連覇、ロートシルト賞4連覇など欧州史上最多のGⅠ14勝を挙げた超名牝・Goldikovaや、フランスダービー馬Anabaa Blueなどを輩出し、Treve(母父)やAce Impact(母父父)の血統表にも名を刻んでいる。
2012年5月25日、社台ファームで誕生。馬主は中央競馬の馬主資格保持者で共同所有するオーナーズクラブのLEX PRO。募集価格は1口60万円×10口だったが、結局満口にならなかったそうである。登録上の名義は3歳春までが吉田哲哉、3歳秋以降が吉田千津。
馬名意味は「マンハッタンの隣にある地名+母系より」ということで、ニューヨークのクイーンズ区から。
開業3年目の栗東・吉村圭司厩舎に入厩したクイーンズリングは、やや遅めの2014年12月21日、中山・芝1800mの新馬戦でベルギー人騎手グレゴリー・ブノワを鞍上にデビュー。3番人気だったが、大外枠から好スタートを決めて2番手で先行すると4角でもう先頭に立ち、悠々と押し切って圧勝。
明けて3歳初戦の菜の花賞(500万下)では外枠不利の中山マイルでまた大外枠に入れられてしまったが、中団から徐々に押し上げていき、直線であっさり抜け出すと2馬身差で完勝。枠の不利など歯牙にもかけない強い内容で連勝を飾る。
続いて桜花賞を目指してフィリーズレビュー(GⅡ)へ。ブノワ騎手は帰国してしまったのでミルコ・デムーロに乗り替わり、以降主戦となる。またまた大外の8枠17番に放り込まれ、馬体重-20kgながら3.6倍の1番人気に支持されると、後方から上がり最速の末脚で一気に差し切って無傷の3連勝。吉村師に重賞初制覇を贈り、牝馬クラシックの有力候補に躍り出た。
というわけで迎えた桜花賞(GⅠ)。この年の牝馬クラシックの大本命はきさらぎ賞で牡馬を蹴散らし3戦無敗の同じマンカフェ産駒ルージュバックで、1.7倍という圧倒的人気を集めていた。クイーンズリングは9.0倍の3番人気。この年からJRAの騎手となったミルコ・デムーロにJRA騎手としてのGⅠ初勝利を贈るべく挑んだが……みんなが後方のルージュバックを警戒しているうちに5番人気レッツゴードンキの超ドスロー逃げが決まってしまい、同じく後方にいたクイーンズリングは必死に脚を伸ばしたものの届くはずもなく4着。結局、デムーロの移籍後初GⅠは翌週の皐月賞でのドゥラメンテに持って行かれてしまった。
続く優駿牝馬(GⅠ)は後方から見せ場なく9着。デムーロは「距離が長かったです。伸びていましたが、バテてしまいました」とのコメントであった。
夏に父マンハッタンカフェが亡くなり、秋はローズステークス(GⅡ)から始動。桜花賞馬レッツゴードンキとオークス馬ミッキークイーンが両方出てくる中、またまた大外枠のクイーンズリングは今度は前目の5番手での競馬を試し、逃げるレッツゴードンキに食い下がったが後方待機勢にかわされて5着。
そしてラスト一冠の秋華賞(GⅠ)では14.9倍の5番人気。17番人気ノットフォーマルがハイペースで飛ばす展開を後方に控え、直線で大外に持ち出して上がり最速の末脚で猛然と追い込んだものの、中団から抜け出したミッキークイーンにクビ差届かず悔しい2着。父に弔いの勝利とはならなかった。初GⅠを逃した吉村師は「あそこまで行ったら…とも思いますが、よく走ってくれました」とちょっと悔しそうなコメントであった。
続いてアンドレアシュ・シュタルケ騎手を迎えてエリザベス女王杯(GⅠ)に向かったが、混戦の中でも特に見せ場なく、勝ったマリアライトから0.3秒差の8着に敗れて3歳を終えた。
明けて4歳は1400mの京都牝馬ステークス(GⅢ)から始動。デムーロが鞍上に戻り、単勝4.7倍ながら1番人気に支持されると、前目でレースを進めて先に抜け出した馬をきっちり捕らえ、後続の猛追を振り切って勝利。デムーロは「この馬のベストの距離は1400m~1600mでしょう」とのコメントを残した。
というわけでヴィクトリアマイル(GⅠ)に向かい10.1倍の5番人気に支持されたが、中団から大外を追い込むも見せ場なく8着。
続いて米子ステークス(OP)に向かい1.7倍の1番人気に支持されたが、ケントオーに4馬身ちぎられて2着と取りこぼしてしまう。
秋は府中牝馬ステークス(GⅡ)から始動。通算12戦目で5度目の8枠を引いたクイーンズリングだったが、好スタートからスムーズに好位の3番手で先行すると、上がりを2位タイの33秒5でまとめる完璧な内容で1馬身半差で完勝、重賞3勝目を挙げる。
オーナーサイドはマイルCSとの両睨みのつもりだったようだが、吉村師はどうやら最初から秋の目標はエリ女と決めていたようで、次走はエリザベス女王杯(GⅠ)。いや、適性距離は1400~1600だったはずでは……? なおデムーロはこのとき同年の桜花賞馬ジュエラーに騎乗する予定で一度クイーンズリング陣営には断りを入れていたのだが、ジュエラーが回避となってしまって騎乗馬がなくなったところにクイーンズリング陣営が再び依頼を入れ、騎乗することになった。
前年覇者マリアライトと同期の二冠牝馬ミッキークイーンが人気を分け合う中、クイーンズリングは前走の強い勝ち方もあってか6.1倍の3番人気に支持される。枠は1枠2番だった昨年に続いて珍しく内枠の2枠3番。となれば前走で見せたような好位先行で進めたいところ……。
だったのだが、クイーンズリングはスタートで思いっきり後手を踏んでしまう。しかしデムーロは「2200mなら、まだ時間はある」と慌てず、そのまま中団のインに構え、1000m通過61.8のスローペースの中で折り合いをつけて進める。経済コースを通って上がっていったクイーンズリングだったが、直線入口では前が壁。前のパールコードと内のメイショウマンボ、外のミッキークイーンに囲まれてしまい、進路を失い万事休す……かと思いきや、前のパールコードが外にヨレたことで進路が開いた。すかさずそのスペースに突っ込んだクイーンズリングは、前で粘る伏兵シングウィズジョイを最後にクビ差捕らえきって栄光のゴール板へと飛び込んだ。
京都在住のミルコ・デムーロは、意外にも京都競馬場のGⅠはこれが初勝利。吉村師は開業5年目で嬉しいGⅠ初制覇。LEX PROの所有馬としてはスノードラゴン以来2頭目のGⅠ制覇となった。それにしてもこの馬の適性距離はどこなのか、謎の深まる勝利でもあった。
この勝利で年末は香港カップ(GⅠ)に向かったが、モーリスの勝利の後ろで特に見せ場なく9着に終わった。
明けて5歳の戦績は……ラストラン以外はあんまり書くことがない。初戦の阪神牝馬ステークス(GⅡ)は馬場と落鉄に泣いてブービー15着に大敗。ヴィクトリアマイル(GⅠ)は内から押し上げていき、直線で一度は先頭に並びかけるもそこから競り負けて6着。連覇を目指した府中牝馬ステークス(GⅡ)も外から脚を伸ばしたがクロコスミアの逃げ切りを許して4着。
連覇のかかったエリザベス女王杯(GⅠ)では相棒のデムーロをモズカッチャンに取られてしまい、弟のクリスチャン・デムーロが騎乗したが、ここもあまり見せ場なく7着。勝ったのはそのモズカッチャンだった。
そして年末、クイーンズリングは引退レースとして有馬記念(GⅠ)に挑むことになった。GⅠ6勝の同期キタサンブラックの引退レースとなったこの有馬記念、デムーロは今回も2番人気スワーヴリチャードに取られてしまったが、その代わり鞍上には名手クリストフ・ルメールを迎えた。当日は33.1倍の8番人気。中山はデビュー当初に2戦2勝とはいえ、5歳となって凡走続き、初の2500mでそもそも牡馬相手の実績がほぼ無しということを考えると、主に鞍上で人気したといったところか。
1枠2番のキタサンブラックの隣、2枠3番に入ったクイーンズリングは、決して好スタートではなかったが、ルメールが押していき、逃げるキタサンブラックを見るような位置で前目、先行集団の中につけた。そのままキタサンブラックがマイペースで逃げる中、好位でじっくりと進めたクイーンズリングは、直線でキタサンブラックが後続を突き放す中、前のトーセンビクトリーとシャケトラをかわして抜け出すと、キタサンブラックには全く届かなかったものの、外から追い込んできたシュヴァルグランとスワーヴリチャードを最後ハナ差凌ぎきって見事2着に突っ込んだ。
敗れはしたものの、ルメールも「完璧なレースが出来ました」と自賛する内容で、男の引き際に華を添えて現役を引退した。通算19戦6勝 [6-3-0-10]。そしてこの2着で『ウイニングポスト』等の競馬ゲームでは距離適性の査定がますます難しくなり、重賞2勝している1400mが適正外扱いされてしまったりするのだった。有馬は距離の誤魔化しが効くとはよく言うけれど、ホント貴女の適性距離どこだったんですか?
引退後は故郷の社台ファームで繁殖入り。初年度のお相手には種牡馬入りしたキタサンブラックが選ばれ、いきなり有馬記念ワンツー配合!と話題を呼んだが、残念ながらその仔(牡馬)は生まれてすぐ亡くなってしまったようで、血統登録すらされなかった。
続く登録上の初仔となるシャザーン(父ロードカナロア)は2021年のセレクトセールで金子真人オーナーに2億2000万円で落札。すみれSを勝って皐月賞(6着)と東京優駿(9着)への出走も果たしている。以降は主にロードカナロアをつけられているが、キタサンブラックとの配合が再び試されることがあるかどうかも楽しみにしたいところである。
マンハッタンカフェ 1998 青鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*サトルチェンジ 1988 黒鹿毛 |
Law Society | Alleged | |
Bold Bikini | |||
Santa Luciana | Luciano | ||
Suleika | |||
アクアリング 2005 鹿毛 FNo.1-t |
Anabaa 1992 鹿毛 |
Danzig | Northern Dancer |
Pas de Nom | |||
Balbonella | *ゲイメセン | ||
Bamieres | |||
*シーリング 1990 鹿毛 |
Bering | Arctic Tern | |
Beaune | |||
Blue River | Riverman | ||
Azurella |
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