グラスワンダー
99年、宝塚記念。
今行くか。いや、まだか。いや、今か。
グラスワンダーとは、1995年生まれの元競走馬・種牡馬。「マルゼンスキーの再来」「栗毛の怪物」と呼ばれた名馬である。
主な勝ち鞍:朝日杯3歳ステークス(GI)・宝塚記念(GI)・有馬記念(GI)2回
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この記事では実在の競走馬について記述しています。 この馬を元にした『ウマ娘 プリティーダービー』に登場するウマ娘については 「グラスワンダー(ウマ娘)」を参照して下さい。 |
父Silver Hawk 母Ameriflora 母父Danzigという血統。アメリカ生まれである。キーンランドのセリにおいて25万ドルで落札されて日本にやってきた。外国産馬は当時、クラシックには出られなかったので、買われて来る馬は仕上がり早の短距離血統が多かったのだが、この馬はやや長距離系の血が入っているように思われる。
2歳でデビューしてあっさり連勝。後続を突き放すレース振りから「いやいや、こいつはもしかすると怪物やで」という声が上がり始める。しかしながら全競馬ファンの口が開いて塞がらなくなったのは朝日杯3歳ステークス(現・朝日杯フューチュリティステークス)でのことであった。
超ハイペースを捲ってちぎったレースっぷりも凄かったが、なにしろタイムが1分33秒6である。しかも良発表とはいえ湿った馬場で。冒頭に紹介した「マルゼンスキーの再来」は、現役時代のマルゼンスキーを見ていた関係者からも異口同音に発せられたもので、大川慶次郎氏も「ついに出てきたね、マルゼンスキー級が」と語っている。持込馬でさえ珍しかったマルゼンスキーの時代と異なり、1990年代半ばから後半は「強いマル外」が内国産馬だけで争われるクラシック路線の存在意義を問うほどになっていたが、それでもこのように称された外国産馬はグラスワンダーが初めてであった。このレースを見て「(クラシックへの出走権はないけれど)来年はこの馬の独壇場になるな」と誰もが思ったものである。
ところが、翌年春に骨折。春シーズンを棒に振ってしまう。その間に遅咲きの、これもやはり外国産馬エルコンドルパサーがNHKマイルカップを圧勝。同馬の鞍上はグラスワンダーと同じ的場均騎手。グラスワンダーが帰ってきた時、的場騎手がどちらを選ぶのかが話題になったが、結局的場騎手が選んだのはグラスワンダーだった。
秋を迎えて傷が癒えたグラスワンダー。復帰レースに選んだのは古馬相手の毎日王冠。ここには前述のエルコンドルパサーと、この年の宝塚記念を制し「史上最速の逃げ馬」との呼び声も高かったサイレンススズカが出走する事になっていた。後から考えても夢の顔合わせだが、当時の競馬ファンにとっても実に興味深い対決で、当日はGⅡだというのにGⅠ並みのお客さんが府中に詰め掛けたものである。グラスワンダーはサイレンススズカに続く二番人気に支持されていた。
しかし、グラスワンダーは早仕掛けが祟ったか伸びずに5着に沈んだ(勝ったのはサイレンススズカ、2着はエルコンドルパサー)。同期のライバル、エルコンドルパサーとの対決はこれが最初で最後。エルコンドルパサーはこの後3歳でジャパンカップを制し、海外に旅立って凱旋門賞2着の快挙を成し遂げる。グラスワンダーは結局海外には行けなかったため、後々までこの時の着順でエルコンドルパサーとの順位を語られる事になってしまうのである。
グラスワンダーは次走にアルゼンチン共和国杯(GⅡ)を選んで必勝を期した。しかしここを予想外の6着に敗れてしまう。当時、外国産馬で2歳時にめっちゃ強く、その後はさっぱりという例がいくつかあったために「ああ、グラスも早熟だったのね」と競馬ファンはあっさりグラスワンダーを見切ってしまう。そのため、続けて出走した有馬記念は4番人気だった。
ところが、グラスワンダーは先行してあっさり抜け出すと、メジロブライトの猛追を凌ぎ切ったのである。これには正直、誰もが驚いた。そして 「駄目だという情報が多いほど激走する」というグラスワンダーの法則が確立したのであった。
即ち、何か順調じゃないらしいと言われた京王杯スプリングカップは圧勝。もうグラスワンダーで仕方が無いと言われた安田記念は負け。調子は悪そうだし「この距離ならスペシャルウィークだろう」と言われ二番人気に甘んじた宝塚記念では徹底マークから恐ろしい脚を繰り出してスペシャルウィークを完封。
どう考えても勝つと思われた毎日王冠は、まぁ、ギリギリ勝ったが、その後故障してジャパンカップを回避。無茶苦茶調子は悪そうだし、ジャパンカップを勝って来たスペシャルウィークの方が勢いがあるよね、と思われた有馬記念はスペシャルウィークの猛追を鼻差しのいでウイニングランまでした武豊に大恥をかかせた優勝。もっともこの時は法則に気が付いていた人も多かったのか一番人気だったけど。
地味にグランプリ3連覇でありスピードシンボリ以来の記録である。
翌年はライバルも引退。この馬の独壇場。海外遠征だ!と言われ出したら、体調不良による調教不足もあり調整失敗で日経賞、京王杯SCと大敗。宝塚記念で故障発生して引退した。生涯戦績は15戦9勝2着1回。
なんというか、こんなに強いのに、色々危なっかしい馬だったなぁという思い出を競馬ファンの間に残してくれた。
足元が弱く、涼しい顔とは裏腹に常に故障と戦い続けた馬だったようだ。引退式で的場騎手が「グラスワンダーの本当の強さを皆さんにお見せすることができなかったのが残念でなりません」と言ったように、順調だったらどこまで強くなったのか分からないような馬であった。
種牡馬としてもなかなかに成功しているが、早熟かと思うと忘れた頃に突然勝ち出したり、いきなり激走したりするような産駒が出ているようである。如何にもグラスワンダーらしい。
後年、因縁の相手スペシャルウィークとの邂逅を函館競馬場で果たしている。栗毛の馬を見ると興奮するスペシャルのため距離は離れていたが、当のグラスワンダーは馬っ気を出していた。
2020年に種牡馬を引退。豪脚はスクリーンヒーローやモーリスの子に受け継がれる。
Silver Hawk 1979 鹿毛 |
Roberto 1969 鹿毛 |
Hail to Reason | Turn-to |
Nothirdchance | |||
Bramalea | Nashua | ||
Rarelea | |||
Gris Vitesse 1966 芦毛 |
Amerigo | Nearco | |
Sanlinea | |||
Matchiche | Mat de Cocagne | ||
Chimere Fabuleuse | |||
Ameriflora 1989 鹿毛 FNo.12-c |
Danzig 1977 鹿毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | |||
Pas de Nom | Admiral's Voyage | ||
Petitioner | |||
Graceful Touch 1978 鹿毛 |
His Majesty | Ribot | |
Flower Bowl | |||
Pi Phi Gal | Raise a Native | ||
Soaring |
クロス:Nearco 4×5(9.38%)、Native Dancer 5×5(6.25%)
掲示板
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最終更新:2022/06/25(土) 10:00
最終更新:2022/06/25(土) 10:00
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