ゲフィチニブ 単語

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ゲフィチニブ

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ゲフィチニブ(Gefitinib)とは、がんの治療に用いられる抗がん薬である。先発医薬品名はイレッサ®(Iressa®)。

概要

有機化合物
ゲフィチニブ
ゲフィチニブ
基本情報
英名 Gefitinib
化学 C22H24ClFN4O3
分子量 446.90
化合物テンプレート

ゲフィチニブは、イギリスの製企業アストラゼネカによって製造、販売されている抗悪性腫瘍薬である。分子標的治療特定の分子を標的とし、その機を制御するために使用される医薬品)の一つ。先発医薬品名はイレッサ®開発コードネームはZD1839。製造、販売されているイレッサ®250は、1錠中にゲフィチニブを250mg含む褐色錠剤で、経口で1日1回用する。

がん細胞は、細胞表面に上皮成長因子受容体(EGFR)というタンパク質を過剰に発現している。このEGFRにはチロシンキナーゼ(リン化酵素)が一体化しており、チロシンキナーゼの活性化によって増殖、浸潤、転移、分化のシグナルが誘導され、がん細胞が悪性化する。ゲフィチニブは、このEGFRのチロシンキナーゼを選択的に阻することで、シグナル伝達を遮断、がん細胞増殖を抑制し、アポトーシス(細胞死)に至らしめる。とくに、EGFR遺伝子に変異をもつがん細胞に対して、ゲフィチニブは高率に腫瘍縮小効果を示す。したがって、手術不能な、あるいは再発したEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞がんに適応。なお、EGFR遺伝子変異は、日本人の非小細胞がん患者の30~40%に認められる。

副作用として、肝障害(10%以上)、急性障害、間質性炎(1~10%)、皮膚障害(1%未満)、重度の下痢(1%未満)などがある。このうち、急性障害、間質性炎の発症により、死亡することがある。2012年3月時点で、累計2,305例(うち死亡847例)の副作用報告がなされている。そのため、入院管理下で投与を開始し、少なくとも4週間は経過観察を行い、異常が認められれば投与を中止する。

2002年副作用の急性障害、間質性炎で死亡する事例が頻発したことで、社会問題となった。2004年、投与されて死亡した患者の遺族が、と製企業に損賠償をめる裁判を起こした。結果、と製企業の法的責任は認められず、2013年に遺族側の全面敗訴が確定した。

裁判

2002年7月厚生労働省はイレッサ®の製造および販売を、世界で初めて承認した。承認以前から、分子標的治療であるため副作用が少なく、延命効果も高い「の新」として期待されていた。しかし、承認からわずか3か後の10月厚生労働省は26例(うち死亡13例)の副作用報告を受け、アストラゼネカ社に対し、添付文書の訂と緊急安全性情報の作成および配布を示した。

2004年7月、イレッサ®を投与されたのち間質性炎によって死亡した患者の遺族ら11人が、と製企業に損賠償をめ、大阪地方裁判所に提訴した。同年10月、別の患者の遺族ら4人が、東京地方裁判所に提訴した。

2011年2月大阪地方裁判所は、添付文書第1版の重大な副作用欄の最初に、間質性炎について記載すべきであった(添付文書第1版では、重大な副作用欄の上から4番に間質性炎について記載されていた)など、副作用に関する注意喚起が不十分だったとして、製企業責任を一部認め、計6,050万円の損賠償を命じた。一方、イレッサ®の有用性は認めることができ、医薬品の輸入や承認に関して違法性はないとして、の賠償責任は否定した。同年3月東京地方裁判所は、添付文書第1版が安全性を欠くものだったとして、と製企業双方の責任を認め、計1,760万円の損賠償を命じた。和解が勧告されたが、と製企業はこれを拒否し、控訴した。原告も、一救済を否定する判決は不として控訴した。

2011年11月東京高等裁判所は、添付文書の重大な副作用欄に記載された間質性炎が致死的なものとなりえることは、医師が容易に認識可であること、また、間質性炎による死亡とイレッサ®投与との間に、因果関係がある可性ないし疑いがあることは示されたが、明確に因果関係があるとまでは認定できないことから、添付文書の記載は不適切とは言えないとして、一審判決を取り消し、賠償請を棄却した。2012年5月大阪高等裁判所もまた一審判決を取り消し、賠償請を棄却した。そして、2013年4月最高裁判所は上告を棄却し、二審判決(原告の全面敗訴)が確定した。

海外

アメリカでは、2003年5月食品医薬品局(FDA)がイレッサ®を承認した。なお、これは新を必要としている患者に速やかに届ける的で開始された、速承認制度のもとの承認であり、販後の臨床試験で延命効果を示すことが条件とされていた。その後、延命効果についての十分な明は得られなかったため、2005年6月、すでにイレッサ®を使用し、治療効果が認められている患者への投与のみに制限された。2011年2月アストラゼネカ社は承認申請の取り下げを発表し、イレッサ®は同年9月を以てアメリカ市場から撤退した。

ヨーロッパでは、2003年2月欧州医薬品庁(EMEA)への承認申請が行われた。延命効果を示すことができなかったため、2005年1月に一度申請が取り下げられたが、2008年5月に再申請され、欧州委員会(EC)は2009年7月、局所進行または転移の認められるEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞がんを対として、イレッサ®を承認した。

名称

分子標的治療に用いられる阻には、一般名の末尾に“-ib”が付けられる。これは、“Inhibitor”(阻)に由来する。また、“-n-”はキナーゼをし、“-tin-”がチロシンキナーゼをす。したがって、チロシンキナーゼ阻の多くは、一般名の末尾に“-tinib”が付けられている。実際の例を挙げると、ゲフィチニブ(Gefitinib)、エルロチニブ(Erlotinib)、イマチニブ(Imatinib)、ニロチニブ(Nilotinib)など。

あまり聞き慣れない名称であるためか、あるいは、イニシアチブなどの「~チブ」と表記される句にされるためか、「ゲフィニチブ」のように誤って書かれることがある。正しくは「ゲフィチニブ」である。

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