ゲルググ(MS-14 GELGOOG)とはアニメ「機動戦士ガンダム」に登場するジオン軍のモビルスーツである。
機体解説
一年戦争末期に登場した高性能量産型モビルスーツ。ドムのようなボリュームある体型と、後頭部のトサカが特徴的。それまでジオン軍では一部の水陸両用機に内装という形でしか搭載されていなかったビーム兵器を、初めて携帯式のビームライフルとして標準で採用した。
特筆すべきはアルバート社製の「ビームナギナタ」。これはツインエミッターを採用した近接用兵装で、通常のサーベルと違って両端からビーム刃を形成する。しかし両刃式は慣れないパイロットが扱うと自機の頭や腕を斬り落としかねないなどかえって扱いが難しく、一般の兵士は主に片刃の状態で使用した。後の時代にもほとんど受け継がれていないことから、やはり扱いやすさに問題がある装備だったと思われる。
機体自体はザクやグフを開発したジオニック社製だが、腰部や脚部のスラスター関連はヅダやドムを開発したツィマッド社の、ビームライフルやゲルググキャノンのビームキャノンといったビーム兵器関連はビグロやザクレロといったモビルアーマーやズゴックを開発したMIP社の技術が活かされている。その機体性能はあのガンダムを上回るとされる。
劇中ではシャア・アズナブルの乗る赤いシャア専用ゲルググが先に登場し、一般兵士用の量産型ゲルググが登場したのは最終回直前の第42話からである。ちなみに作中ではシャア専用ゲルググは量産型の3倍のスピードかどうかは明言されていない。
各部の独立したモジュール構造も特徴で、特にバックパックは換装することで様々な戦場に適応できる。宇宙用高機動型のB型、ビーム・キャノンを装備した遠距離支援型のC型が代表的で、これらはバックパックと一部のパーツを換装するだけで即時に戦闘に投入できる利点があった。
もともとゲルググの型番はMS-11を予定していたが、開発の遅れによってこの番号はアクト・ザクに譲られることとなった。なお初期の1/144スケールプラモデルには「モビルスーツ-11 ゲルググ」とハッキリ書かれている。
主な戦場は宇宙であったが重力下での稼働も考慮に入れており、両腕に装備した熱核ジェットエンジン推進補助器はそういった環境での運用を視野に入れていた。
開発が遅れに遅れ(特にビームライフル)生産機数も少なめで実戦投入の時期も遅い。一応オデッサ戦のあたりには開発をしていたようだがIGLOOでの艦長のセリフからして開発の難航がうかがえる。
MS-14A 量産型ゲルググ
量産化された基幹機種。高機動型ザクのR-3型(先行試作型ゲルググ)から設計を一新し、先行量産型ゲルググの問題点を順次改善していった制式量産機。
700機以上が生産され、ア・バオア・クーやグラナダ、サイド3に多くが配備された。ア・バオア・クーの最終決戦で本格的に投入されたが、その多くはそのガンダム以上の性能を活かしきれず散っていった。詳細は「ゲルググのパイロット」の項を参照のこと。
主兵装は先行量産型と同様。少数ながら地上部隊にも支給され、ほぼ無改造または小規模の改造(陸戦型)で運用されたといわれている。また、『第08MS小隊』では戦後、少年少女と共に降下したゲルググが生活用品として活用されている。
『Ζ』ではグワジンの残骸から発見された機体がアーガマに回収され、ネモのパーツなどで修理されて活用された。主に百式がメガ・バズーカ・ランチャーを使用する際のエネルギー源としてサポートした(劇場版Zの第2部ではメタスがサポートしている)。いわば後のGN電池のはしりである。
『ZZ』では第26話にジオン敗残兵が残した赤いゲルググが登場、30・31話でアフリカの民族解放ゲリラ「青の部隊」が本機のレプリカを運用し、ガンダムチームと戦った。
ガンダム初の外伝、『MS戦記 機動戦士ガンダム0079外伝』の主人公フレデリック・ブラウン最後の乗機でもあった。
ゲルググ系MSの一覧
ここではゲルググのバリエーションを紹介する。
- YMS-14(MS-14S) 先行量産型ゲルググ
- S型とも呼ばれる先行試作型。先行的に量産・配備が行われ、24機(一説には25機とも)がシャア・アズナブルやキシリア直属のキマイラ隊などエースパイロットや部隊指揮官に支給された。
- 主なパイロット:シャア・アズナブル、キマイラ隊、アナベル・ガトー
- MS-14B 高機動型ゲルググ
- 『MSV』『IGLOO』に登場。背中に機動力アップのためのランドセルを装備したタイプ。アタッチメントで換装が可能なため、別の機体というより装備バリエーションの1つといえる。
- 主なパイロット:ジョニー・ライデン、ヘルベルト・フォン・カスペン
- MS-14BR 高機動型ゲルググR型
- 『MSV-R』『ミッシングリンク』に登場。高機動型ゲルググの脚部に改修を施した機体。B型が増速パックを取り付けただけなのに対し、この形態では脚部の装甲を削ってスラスターを増設し、機動性をさらに高めている。これによって、脚部は完全にベクタードスラスター化した。
脚部の形状が高機動型ザクⅡを想起させるため「ゲルググR」の通称で呼ばれる。
- MS-14C ゲルググキャノン
- 『MSV』に登場。開発の遅れていたビームライフルの代替案として検討されていたタイプ。B型同様背中のアタッチメントを利用し、ビームキャノン砲付きのバックパックを装備している。
- MS-14JG ゲルググJ(イェーガー)
- 『0080』に登場。「イェーガー」とはドイツ語で「狩人」の意味。統合整備計画により全面改修された機体。専用の大型ビーム・マシンガンを装備しており、ゲルググ狙撃型とも呼ばれる。シャアが乗ってる訳ではないが、赤い色で塗装されいた。
- ブレードアンテナを標準装備する熟練者向けの高級機で、作中では後述の一機のみしか登場していない。腕部にはビームスポットガンを内蔵しているとされるが、開発が間に合わず代わりにバルカン砲で代用されており、劇中でもそれらしきシーンが確認できる。また統合整備計画で見直された為かビームナギナタは廃され、ビームサーベルを装備している(狙撃型の為装備されていない媒体もある)。
- 劇中ではサイクロプス隊のコロニー潜入作戦に陽動として投入され、多数のジム・コマンドを撃破する活躍を見せた。後にNT-1アレックスのMSシミュレーターにも登場するが、こちらでは撃破されている。
- SDガンダム作品「夢のマロン社宇宙の旅」ではブレードアンテナのない緑色の機体が確認されている。
- MS-14F ゲルググM(マリーネ)
- 『0083』に登場。ゲルググの後期型のMS-14Bを海兵隊仕様に改修した機体。トサカの大型化など基本のゲルググとの細かい外見の違いはあるが、最大の特徴はプロペラントタンクが装備可能なランドセルを装着していること。シーマ艦隊で使用された。
- 本来はビームライフルが標準装備だが、劇中登場するシーマ艦隊の一般用配備機は、長い海賊生活の中で消耗し調達が効かなかったこともあって統合整備計画以降のジオン軍共用装備であるMMP80mmマシンガンを主兵装とする。またゲルググJ同様後期型らしくビームナギナタではなくビームサーベルを装備しており、更にザクのシールドを改造したスパイクシールドを装備している。
- ただしシーマ艦隊の隊長シーマ・ガラハウ専用機(型式番号はMS-14Fs)は、彼女のパーソナルカラーである黄土色と紫に塗装されている他、頭部にバルカン砲が増設され専用の大型ビームライフルを装備し、スパイクシールドではなく大型のシールドを装備するなど、隊長機らしい贅沢な仕様となっている。
- MS-14G 陸戦型ゲルググ
- DCゲーム『コロニーの落ちた地で』,漫画版の『機動戦士ガンダム戦記』に登場。汎用型だったゲルググを防塵仕様にするなど陸戦仕様に特化したもの。ガンダム戦記に出演した機体はランドセルを装備。なお、両腕の推進補助器を廃し、グレネードランチャーや機関砲に改装した機体も見られた。シールドも通常のゲルググとは異なり、長方形の物となっている。ゲルググの配備自体が一年戦争末期だった事と、配備先が遠く離れた地球だった事が重なって運用された数は非常に少ない。
- 主なパイロット:ヴィッシュ・ドナヒュー、ケン・ビーダーシュタット
- MS-14GD ゲルググG
- 『MSV-R』に登場。陸戦型ゲルググを砂漠戦用に変更した機体。ジオン軍のキャリフォルニアベースからの撤退によって僅か8機しか生産されず、そのうえ大幅な設計変更を余儀なくされた不遇な機体。
- 紛らわしいが、ゲルググGと呼称されるのは陸戦型ゲルググ(G型)ではなくこの仕様である。
- MS-14D デザート・ゲルググ
- 『ZZ MSV』で設定され、映像としては『UC』に登場。ゲルググを砂漠や熱帯地方での運用に特化させた機体。生産機数は非常に少なく、アフリカ戦線に投入された。
- 通常のゲルググと外見上の相違点は多く、センサーやスラスターの追加、防塵のための改修が行われている。固定武装に左腕の折り畳み式の実弾砲、アームドバスターを持つ。
- なんといっても本機の特徴は、ゲリラ戦や隠密行動のために砂に潜ることを考慮していたことにある。バックパックからにょきっと伸びるセンサーはその時のための物である。
- MS-14J リゲルグ
- 『ZZ』に登場。アクシズに持ち込んだゲルググを地球圏への帰還に合わせ当時の技術で改修した機体。名称は「リファインド・ゲルググ」の略。装甲材の変更やコクピットの全天視界リニアシートへの換装の他、肩部をキュベレイを参考にバインダー化して機動力・推力を大幅に向上させている。
- 主に訓練用に使用されたが、実戦でも新型機に劣らない高い性能を見せつけた。イリアが搭乗した機体は真紅で塗装され、専用ビームライフルを使用していた。
- なお、余談ではあるがゲルググとリゲルグは頭長高の設定が違うことが多い。これは、ゲルググが新しく設定されなおした数値を使っているのに対し、リゲルグは古い数値を使っていることにある。
- 主なパイロット:イリア・パゾム
- OMS-14RF RFゲルググ
- 『機動戦士ガンダムF90』、『機動戦士ガンダムF91 フォーミュラー戦記0122』に登場。オールズモビルが過去のジオンモビルスーツを最新技術で再現した機体で、直系としての技術的な繋がりはないものの、ゲルググの名を冠する最後の機体。機体色は水色寄りのグレーと深緑のツートン。
- オールズモビルが所有する機体の中でも最高の性能を誇り、主にエースパイロットが搭乗した。オールズモビルのエース、シャルル・ロウチェスターは本機のカスタム機に搭乗している。
ゲルググじゃないけど関わりの深いモビルスーツの一覧
- YMS-15 ギャン
- 『機動戦士ガンダム』に登場。ツィマッド社がゲルググに対抗してぶつけてきた次期量産モビルスーツ候補。とはいえゲルググはツィマッド社も開発に参加しているためトライアルは出来レースだったなどと噂される。
- ゲルググと違い、格闘戦に特化しまくった上にビームライフルが使用できないため運用に難がある機体ではあるが、運動性が非常に高いため専門分野である格闘戦に限ればゲルググよりもかなりの高性能であった。
- 主なパイロット:マ・クベ
- MS-06R-3 高機動型ザクⅡR-3型 / ゲルググ先行試作型
- 『MSV』『M-MSV』に登場。その名の通りゲルググの設計ベースとなった試作機であり、かつザクⅡの最終進化形である。高機動型ザクR-2をベースにビームライフルの装備などの改修が行われており、外見もザクとゲルググの中間の様なデザインになっている。本機のデータを生かしゲルググは開発されたとみられる。
- MS-17 ガルバルディα
- 『MS-X』に登場。小惑星ペズンにて行われた「ペズン計画」によって生産された、ゲルググとギャンの合わせ技な機体。ギャンの高い運動性とそれに裏打ちされた格闘性能をそのまま捨てるのは惜しかったのか、ギャンを再設計してゲルググの生産ラインで作られた。見た目はゲルググにギャンの成分を入れた感じとなっている。大気圏内の飛行を視野に入れたA型と宇宙用のB型がある。機体の規格自体はゲルググシリーズと同じようで、ゲルググJは本機と胴体を共有している。
- 基本性能が高かった本機は一年戦争後連邦軍に注目され、マイナーチェンジ機であるガルバルディβがルナツーにて生産されることとなった。
ゲルググのパイロット
上記のように、ゲルググはビーム兵器の装備やガンダムと並ぶ高性能を誇る量産機であったが、そのような機体をもってしてもジオン公国は地球連邦軍に敗北している。
漫画「機動戦士ガンダム 光芒のア・バオア・クー」ではア・バオア・クーが陥落した理由について戦闘中のザビ家内紛以外にも、パイロットに学徒兵も多かったことなどが述べられている。 また、多くの古参パイロットの新型機への機種転換が間に合わなかったことが示唆された。
他に特にゲルググがその真価を発揮できなかった理由については後付けを含めたいくつかの説として
- 当時の敗戦濃厚なジオン公国軍には人材が不足しており、学徒兵にすら頼らざるを得なかった。
- 統合整備計画の実施などから分かるように、当時のモビルスーツは操縦系が不統一で機種転換が難しかった。
- そもそも完成が戦争終盤になったため、生産数自体が少なく満足に機体を供給することが出来なかった。
などが語られており、その内学徒兵についてはゲルググに限った話ではないもののアニメ本編でセリフ描写がされている部分もある。
しかし、MSVなどで語られるようなトップエース達はそれらの困難をものともせずにゲルググを駆って活躍している他、優秀なエリートなどに優先してゲルググが回されている描写があったり、普通にベテランの乗り換え先になったりすることもあるため、厳密な所はよく分かっていないのが実情である。そのため、外伝やコミカライズ作品内では物語の都合や作者の好み次第で本機の扱いも両極端になる傾向が見られる。
そんなこともあり、一年戦争を語る上で「ゲルググの開発が後一ヶ月早ければ…」と言われることもしばしばである。
ゲームでのゲルググ
設定を反映し、ガンダムとほぼ互角か、やや劣る程度の性能を与えられることが多い。3Dのゲームではビームナギナタを使った大立ち回りも見どころ。
『SDガンダム ガチャポン戦士スクランブルウォーズ』ではガンダムにも匹敵する性能を持ちながら安価、しかもビームナギナタが非常に高性能で猛威を振るった。ガチャポン戦士の系列になる『SDガンダム ガシャポンウォーズ』では何をトチ狂ったのかオープニング、チュートリアル、果てにはパッケージと非常に優遇され、まるで自重する気配を見せなかった。
『スーパーロボット大戦』や『SDガンダム Gジェネレーション』では機体性能こそ高いものの、標準的なビーム兵器しか持たないため火力の貧弱さが悩み。
『VS』シリーズにも登場しており、『機動戦士ガンダム EXTREME VS.』ではシャア専用ザクの後継としてシャア専用ゲルググが登場。コストも2000で、名実ともにアムロのライバルにふさわしい機体として登場した。
余談
見ての通りブタ鼻である。いくら派生機を作っても後付けでミリタリー色を強くしても基幹機種に付いたその印象だけは拭えなかった。
コミックボンボンで連載していた『サイボーグクロちゃん』でも、ブタバナとネタにされており、トニーたけざきのガンダム漫画二巻でも、シャアにゲルググを紹介したジオン兵が、「ブタ鼻以外は最高です!!」とネタにされてしまっている。
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