ゲーム脳 単語

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ゲームノウ

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げーむのうゲーム脳とは、森昭雄さんとかいう日本大学教授2002年に書いた著書『ゲーム脳の恐怖』上で勝手に定義された仮説、およびその仮説を示す造語である。

その仮説とは、「ゲームをやってる脳みそは、認知症 (痴呆症=いわゆる老人ボケ) の患者と同じ状態になっている」というとんでもないもの。

これが事実ならば、医学界やゲーム業界において大事件である。しかし、その根拠になっているのはおもに「さんの主観・推測」と「さんオリジナル設計の簡易波計」であるうえに、2010年現在、正式な論文すらまったく書かれていないため、まともな学会ではいまだ議論の対にすらなっていない。

それなのに、毎日新聞がこの仮説をはじめて紹介したのを皮切りに、新聞テレビがこの造語がさも本当の神経学であるかのようにこぞって取り上げてしまったために、本書は10万部以上も売れてしまい、「ゲーム脳」は日本においてとても有名な造語になってしまった。

そんなわけで、この仮説は神経学を称してはいるが、「一般書籍とマスメディアが発端のクチコミ」だけで有名になり、根拠はめちゃくちゃで学会ではろくに相手にされていないという一種の都市伝説みたいなニセ科学である。

さらに、ゲーム脳の提唱者であるさんは、運動生理学が専門である体育学科の教授で、神経学に関してはまったくの門外だ。しかし、「(筋肉の論文で取った)医学博士」の肩書き(つまり医師でもなく医学部医学科出身でさえない!)を武器に、各マスメディアの協力を得て、さも神経学の専門であるかのように装っている。これにだまされないよう、十分な注意が必要である。

そんなゲーム脳であるが、いまだにマスメディア教育関係者を中心に強力な支持者がいる。そこから波及し「あんたゲームばっかりやってるとゲーム脳になるわよ!」と信じてゲームを買い控えるカーチャンもあちこちで見かけてしまうのが現状であり、その実は軽視できるものではない。

例によって、事細かに知りたければWikipediaゲーム脳の項目exitを見ることを推奨する。さらなるゲーム脳研究の醜態を知りたいなら、著者の項目exitも見逃すな。

概要

その言葉のイメージから、以下のようなが「ゲーム脳」だと思い込まれがちである。

しかし、これらは全て間違い (当てつけみたいなもの) で、さんが定義した「ゲーム脳」がし示す状況ではない。また、医学としての病気でもないので、病院で診察を受けてお医者さんから「あなたはゲーム脳です」と言われてしまうことも断じてない。

そんなこんなで世の人々にはあまり知られていない、正確な「ゲーム脳の定義」は以下のとおりである。

「簡易波計(注1)波を計測すると、高齢の認知症患者と同じ状態(注2)になっている

具体的には、この簡易波計で計測できるすべてである「α波」と「β波」の2つの波に着(注3)。「α波」を異常波である「徐波」、β波」を正常なとし(注4)、「α波」に対する「β波」の割合が低い状態を「認知症患者と同じになったヤバい状態」とした(注5)。そして、ゲームケータイPCの操作をしていると、次第に「β波」が極端に下がった状態になってしまい、いっこうに回復しなくなる(注6)。こうなった状態を「ゲーム脳」と名付けた。


- ここから下は、定義に対するツッコミです -


(注1)^ この簡易波計はさんが勝手に作ったものであり、いわゆる「医療器具」ではない。計測の方法も非常にまずいらしく、実験により「この機械波として計測されたデータには、まばたき・眼球の動きなどによる "筋電図" が成分といえるほど大量に混入しており、ここから波だけを取り出すことは」という検証結果すらある。(ソースexit, YouTubeexit)

(注2)^ そもそも、「波で認知症か判別できる」というのもさんが勝手に作り、未だに医学的に認められてなく、医療の現場でも使われた実績もない企画倒れの仮説である。しかも『ゲーム脳の恐怖』によると、さんはこの仮説を研究する際、認知症患者波をたった37人分しか計測していなかったらしい。

(注3)^ 波の分類には、ほかにδ波、θ波γ波、ω波、ρ波、σ波があるが、しょぼい簡易波計のためα波、β波の二種類しか計測できない。脳みそたったこれだけの情報で状態を見極められるような甘っちょろいものではない。

(注4)^ 医学的にはα波はβ波と同じく正常な波であり、α波が異常扱いされることはごく特殊な場合を除いてまずない。さらに、αはいかなる場合も徐波とはいわない。これはWikipediaの「波」の項普通に書いてあるほどの基礎レベルである。仮にも脳科学者を自称する人がこんな間違いをおかすのは、「サザエさんの知識なら任せろー」と語する人が然と「アナゴさんマスオと敵対している悪役である」と言い放つのと同じぐらいヤバい

(注5)^ α波とβ波は細なことで簡単に入れ替わってしまう程度のものであって、単純な大小で異常かなんて分からない。たとえば、普通を閉じただけでも簡単にα波の割合が高くなるし、リラックス時や仕事に集中しているときにもα波は高くなる。ちなみに、ちゃんと波を測定するときは、を閉じるよう示されることも多い。

(注6)^ 実は簡単に回復するらしい。詳しくは後述。しかし、ここまでの注意書きをすべて読んでくれたなら、回復がどうこう以前の問題だってことをわかってくれるよな?

定義よりもツッコミのほうが文章量が多くなってしまうのは、そういうものだからである。仕方ないね

この状態は、ゲーム中はの "前頭前野" という理性る部分をほとんど使わないために、ゲームをやりすぎることでこの部分が壊れてしまい機しなくなったのが原因だ」さんはしている。

さんが作為に選んだ幼児から大学院生までの約300人の波を計測してまとめたところ、症状のやや軽い「半ゲーム脳」を含めると6割ぐらいがこの傾向を示していたらしい。

これはゲーム脳仮説の核となる実験なのだが、驚くことにゲームなどに触れている時間や、ゲーム脳の症状の有との厳密な統計や対はまったくとられていない。波だけで導き出した統計に、被験者の見たの印 (こいつの成績は中の下らしい、こいつは忘れ物が多いって言ってた、こいつはなんとなく目が死んでる etc...) などをもとに、さんの主観による推測をくっつけただけなのである。

また、さんがゲーム脳の検証に使ったゲームはあの「テトリス」なので、マスメディアコメンテーターの大好物である「ゲーム内の暴力表現のがなんたら」「現実バーチャルの区別がなんたら」仮説とはまったく異なる話である。

ただし、全てのゲームが悪いのではないらしく、さんによると「太鼓の達人」や「DDR(Dance Dance Revolution)」は、視覚よりも聴覚への情報が多く、さらに手足を動かしてリズムに乗るため、運動と同じいいがあるらしい。

だからなのか、さんは講演会で突然太鼓やDDR2002年に私がゲーム会社に提案したから開発された」と自分起説を言い出す始末である (音声付きソースexit)。しかし、太鼓は2001年発売、DDR1998年発売なので どう見ても大嘘です、ありがとうございました

ゲーム脳という名前ではあるが、ゲームだけでなくパソコンケータイ文字入力でもこの状態になるということになっている。『ゲーム脳の恐怖』に続く著書がITに殺される子どもたち 蔓延するゲーム脳』だったり、その次が『「力」低下社会 ITゲーム子どもに何をもたらすのか』だったりであることからも、いかにさんがIT技術そのものに否定的(時代についていけてない)かよくわかることであろう。そんなわけで、ニコニコ見てるだけでもさんにゲーム脳呼ばわりされる標的になるらしいので、一応注意が必要だ。

症状

ゲーム脳の波が認知症患者と同じ状態とはいっても、認知症のように生活に支障を来すような重度の障害を伴うわけではない。これは「若い人なら、前頭前野以外の部分は特に壊れていないから」という都合の良い理由らしい。

『ゲーム脳の恐怖』著者のさんは、ゲーム脳の症状として以下のような例を挙げている。

これらの症例の根拠は、さんの著書や発表を見渡す限り、たまたま波がゲーム脳と認定された被験者に対してさんが抱いた印主観と、簡単な聞き取り調 (例: 「キミ、忘れ物多い?」→「はい」→「これで3人か…ゲーム脳になると忘れ物が多くなる。φ(。。)メモメモ」) ぐらいで、科学的な分析や統計なんてどこにもない。もちろん、この程度のヤツならゲームをやらない連中に普通にいてもまったく不思議じゃないわけで、なぜゲーム脳が原因という結論にジャンプできるかの相は、未だに闇のベールに包まれている。

それどころか、さんは「いちいち波を見なくても、上記の症状があったらそいつはゲーム脳だとわかるんだYO」と、見ただけの判断を推奨する本末転倒なことを言っている。

それで、もしこれらの症状にかかってしまった場合、さんによるとこうなるらしい。

以上は全てさん自身によるである。言っとくけど、余計な脚色はしてないからな。

まとめると、さんによれば、自分にとって気に入らないことはなんでもゲーム脳が原因だということらしい。

治療法

ホンモノの認知症(アルツハイマー認知症など)の多くは根本的な治療法がないので、ゲーム脳も深刻である…と思いきや、さんによると、なんとゲーム脳は「1日15分のお手玉」をたった2週間続けるだけ治するらしい。

なーんだ、こんなに簡単に治るんだったら心配は用だね!!!!!!111

ゲーム脳と将棋

さらに、脳トレで有名な東北大学川島隆太教授や、東京大学大学院馬場教授によれば「プロ棋士将棋したり囲碁を打ったりしているときの波を「ちゃんとした波計」で計測したら、前頭前野は動いてなくて、ゲーム中の状態と似た結果になったよ。これがゲーム脳かは知らないけどね」という実験結果も出ているので、これをあてはめると将棋囲碁などでもゲーム脳となってしまう。

ただし、川島教授は「研究を進めていくうちに、ゲーム脳は全くの迷信妄想だということがわかってきている。ゲーム中の普通リラックスしている状態」、馬場教授は「ゲーム脳って、単にゲームに慣れただけの状態でしょ」との見解を示している反ゲーム脳の立場である (ソース: ゲーム脳、言われているのは日本だけexit川島隆太氏インタビューexit)。つまりこれらは、「囲碁将棋と同じなんだから別に問題ないでしょ」という意味を含んだ実験結果である。

当のさんはといえば、

と訳の分からないことを書いて全将棋ファン将棋界の人々を敵に回したっきり、将棋とゲーム脳の関係についてはしばらく沈黙を守っていた。

その後、「リアル将棋は、だけでなく腕も動かすことがゲーム脳の防止になるので問題ない。しかし、テレビゲーム将棋は慣れないうちは良いが、慣れるとパターン化してゲーム脳になってしまう」と、リアルゲーム将棋をなぜか腕を動かすか否かで区別するに転換し、ますます訳が分からなくなった持論を展開している (ソースexit)。

リアル将棋ではゲーム脳にならない」としたのは、将棋界への配慮、もしくはクレームがあったことによる方針変更なのかもしれないが、「リアル将棋に優位な点は腕を動かすことの一点であり、将棋自体は、慣れるとパターン化してが動かなくなるものである」というは、ぶっちゃけリアル将棋に対する何のフォローにもなっていない。

ゲーム脳?とテレビ

テレビ新聞などのメディアが関わらない場 (小学校催の講演会など) では、さんはゲーム脳とともに「テレビビデオ子どもに見せ続けるとの発達に良くない」という説も積極的に展開している。テレビでもゲーム脳になると直接的に言及したことはないようなので、ゲーム脳以外の新しい何かかもしれない。

さらに、過去テレビ説の関連で子どもテレビビデオを見せ続けると後自閉症になる。」というヤバな話をあちこちのゲーム脳講演会で展開していたのはが離せない (音声付きソースexit詳細はWikipediaへexit)。音は残っていないが、「自閉症が増えたのはゲームのせい」というバージョンもある。

いちおう補足しておくと、自閉症は生まれつきの障害であってだな、後的なものは存在しないというのは医学常識なのだ。こんなデマを広められたら、自閉症の子を持つは頭を抱えてしまうのだ。それなのにこの人ったら…。

実態と批判

ぶっちゃけ、この言葉はなんにも人々の役に立っていない。言葉の存在自体がでしかないのである。

世の中の情報弱者駄な恐怖に陥れ、不幸にもそんな人をや担任として持っている子供涙目にさせ、マスメディアによる事件・事故報道の方向性とか矛先とかを思いっきり狂わせたあげく、ファミコン世代に代表されるゲーム好きやゲーム開発者を憂鬱にさせているだけなのである。

実際のところ、広く用いられている用法は以下の通りである。

このように、ゲーム脳というネーミングもあいまって言葉だけが一人歩きし、もはやただの記号レッテルと化している。このせいで、前の項に書いたように言葉だけは知っていてやたらと乱用してるのに、正しい定義をまったく知らないか、とちりしている人も相当多い。ゲーム脳説はクチコミで広まることも多いので、とちりが伝言ゲーム状態で次々と伝わってしまい残念なことになっているというのもよくある話だ。

ゲーム脳仮説に対しては、神経学の専門や名の知れた大学教授など、様々な方面の有識者から批判が相次いでいるexit。そして、はじめに書いた通り、まともな論文もないゲーム脳は、まともな学会ではいまだ相手にすらされたことがない (論文がないと、他の科学者が同じ条件で科学的な検証を行うことすら出来ないので、論外なのである)。

ゲーム脳研究の成果が発表される学術的な場は、さんが自分で作った「日本健康行動科学会」というちっちゃい自作自演団体のみである。この団体の名前には「学会」がついてるが、設立か2006年4月12日までは日本学術会議が発行する「日本学術会議力学研究団体」の称号を持っていなかったため、いわゆる一般に言われている「学会」ではなかった。それ以降は一応「学会」の仲間入りをしたものの、論文の内容の検証や吟味をしてくれる読委員を置いていないため、発表される論文のクオリティはまったく保されていないのが現状である。

また、2ちゃんねるをはじめとしたネット上では、マスメディアの言う典的な胡散臭い言葉だとして「スイーツ(笑)」のように「ゲーム脳(笑)」と化される。ゲーム脳を盲信している人に対し「ゲーム脳」と皮を込めて揶揄されることもある。

これに対するゲーム業界の反応は意外と冷静で、CESAが小冊子を発行したり研究成果を発表したりという程度にとどめて静観の構えを見せているが、宮本茂氏が「ゲーム脳」についてのインタビューで「自分の開発したゲームを使って実験してほしい」と反論を述べたころがあり、後日雑誌で質問された「最近が立った事」事項においては、マスメディア報道の偏向性や在り方を回答していたなど、ゲーム開発者にとっては頭の痛い言葉でしかなく、相変わらず「ゲーム脳」はマスメディアどもの便利な言葉でしかないようだ。

そんなゲーム脳であるが、こんな言葉が流行るのはマスメディアどものゲームバッシングっぷりが異常なうえに、それに加えてマスメディアに必要以上に流される人間が多い日本特有の現象であり、事実として、日本マスメディア管轄外となる日本国外に一歩でも外へ出ると、もう誰も知らない言葉である。一応、『ゲーム脳の恐怖』はいくつかの言語に翻訳されているが、ほとんど読まれていないようだ。

異議あり!!

ここまででも既に散々突っ込みを入れたが、まだまだ突っ込みどころ満載である。

まず、さんは、研究であるはずのテレビゲーム自体、およびその周辺文化無知っぷりをあらわにしている。たとえば、『ゲーム脳の恐怖』などでわかる範囲でもこんな感じ。

それどころか、最初に書いた定義の説明でもさんざん突っ込んだように、『ゲーム脳の恐怖』は波の基礎的な説明ですら誤っており、これまた門外であるさんの無知っぷりを惜しげもなく披露している。しつこくサザエさんに例えると、サザエの夫は波平だとか、タラちゃんカツオとか、ノリスケ伊佐坂さん息子だとか、本当にそんな初歩的なレベルの勘違いが先に挙げた以外にも複数あるのだ(ソース斎藤環氏に聞く『ゲーム脳の恐怖』exit)。

つまり、この時点でさんは、実はゲームのことものこともよく知らないのにゲーム脳仮説を作っていた」という衝撃的な事実がよくわかる。

しまいには、この本に良い例として提示されている「運動したあとの波」のβ波が低下しまくっていて、先のページで悪い例としている「ゲーム脳の人の波」とどう見ても同じ形をしているという支離滅裂っぷりだ(ソーストンデモ『ゲーム脳の恐怖』exit)。運動後の波が痴呆症と同じ状態だとすれば、あまりにもショッキングな話である。

さらに、『ゲーム脳の恐怖』の中身に関しては、「印として」「と思われる」「かもしれない」「に見える」「だろう」「ようだ」連発のような主観・憶測がひたすら立つ。

一例を挙げると、こんな感じである (『ゲーム脳の恐怖P107108)。ほぼ妄想の域に達している。

実際このテレビゲーム(注:バイオハザードのこと)をおこなってもらった大学生は、ゲームを一人で深夜にやると、恐怖心にかられると言っていま した。くり返しおこなっているとナイフで自分を防御しようと思うようになるかもしれません。さらにエスカレートすると、自分 の身を守るために警官のピストルを奪おうとする行為及んでしまうかもしれません。

そんなこんなで脳科学の専門ではない人(と学会会長山本弘氏など多数)からも強な突っ込みを食らうほど、もはやどうしようもない仮説である。

そして、ニンテンドーDSソフト脳を鍛える大人のDSトレーニング脳トレ)」の大ヒットにより「ゲー」と呼ばれるジャンルが注を浴びることになり、ついにゲームソフト自体がゲーム脳仮説の矛盾を示すようになった。

当のさん本人は、講演会で「ゲームに頼るのはよくない。こんなもん買うなら古本屋で100円小説買って読んだほうがマシ」(ソースexit)とスネたかと思えば、その翌年にゲームメディアからインタビューを受けると「手で書くからにいい可性がある。まだ実験していないけど」(ソース:毎日新聞exit)と急に手のひらを返したり、批判してたのに実験すらまったくしていなかったことを自ら明かしたりしている。

また、ニューメキシコ州の神経学研機関である「The Mind Research Network」が行っている研究によると、思春期少女26人に、毎日30分「テトリス」で遊ぶのを3ヶ継続して遊んでもらったところ、「実験前にべての大皮質が厚くなり、活動効率が上がった」という結果が見られた(ソース翻訳:GIGAZINEexit)。たまたまゲーム脳と同じく「テトリス」を使った実験であったにもかかわらず、まったく正反対の結果である。

さらに、さんはゲーム脳を根拠に「ゲーム少年犯罪の原因になる」と必死しているが、ハーバード大学心理学者らによる5年間にもわたる研究では、「残酷的ゲームは、武道アクション映画を観た後の子どもが見せる反応と変わらないし、ストレス発散にすぎない。」という結論となった(ソース:CNETニュースexit)。

そして、『議論ウソ』(小笠原喜康・著、講談社・刊)では、ゲーム脳に関して以下のように言及されている(長いので要約になるのはご容赦願いたい)。

  • この本(『ゲーム脳の恐怖』)は脳科学者が書いたもので、学者の立場から警告を発する形を取っている。
  • それならば、そのような科学的知見を述べるのにふさわしい論の展開をしていることが期待される。
  • しかし、この本はそんな予想を裏切るようないくつもの危ない論理を抱えている。
  • その”危ない論理”というのは、論理学では「虚偽」と言われる、わかりやすく言えば「ウソ」の(しかし本当らしく感じる)論法である。

「危ない論理」「虚偽」「ウソ」…口調こそ丁寧だが、ボロクソに扱われている。しかも、この本の著者である小笠原喜康教授日本大学理学部教授なのだ。ゲーム脳は同じ大学・学部の教授にもここまで言われてしまう有様である。

異議あり! に異議あり!…だと?

これらゲーム脳の批判に対して「子供ゲームばかりするのは悪いのは当然だろ?」と反論する人がいるかもしれない。だが、「ゲーム脳の否定」と「ゲームのやりすぎの肯定」はイコールではない。むしろ、何事もやり過ぎが良くないのは当たり前のことであり、「お菓子を食べ過ぎると太る」のと同様に、いちいち語るまでもない。

ではなぜ「ゲーム脳」説が批判を浴びるかというと、「ゲームのやりすぎは良くない」という結論への反発でも、ゲームを小馬鹿にされたゲーム好きによる反発でもなく、その結論に至るまでの「脳科学的に見せかけた何か」の実態が間違いやウソオンパレードだからである (の場で他人を誹謗中傷したり、気でウソ発言をしたり、重大な脱線事故をタブロイド化したりと、さんの人間性があまりにも色々とアレだからというのも多少はある)。

それがどんなに社会に歓迎される口当たりのいい結論であろうとも、その実態があからさまなニセ科学であるとすれば、しかるべき批判を加えられるのは当然の話である。だからみんなゲーム脳を批判するのだ。

もしゲームのやりすぎによる悪を語ったり、こどもゲームの付き合い方を考えたかったり、ゲームにハマって乱れた生活習慣を正したかったりという場合でも、「ゲーム脳」のようなニセ科学は除外したうえで考えていかないと、本来向かい合うべきだった問題を見過ごして誤った結論にショートカットしまうなど、えらいことになってしまう危険がある。

ぶっちゃけゲームのしすぎが問題なのであれば、単に「ゲームばかりしてないで勉強しなさい!!」と叱って、しつけと生活習慣で解決すればいい話。こんなアクロティックな話はいらねーだろ。ありがとーございました。

でもこの記事はもうちょっとだけ続くんじゃ

あき夫が脳科学者になるようです (ゲーム脳ができるまで)

『ゲーム脳の恐怖』の著者・森昭雄インタビューexitと、この本の冒頭部分に書かれている、ゲーム脳ができるまでをわかりやすく解説。ゲーム脳がいかに適当にでっち上げられた仮説かよくわかります。ちなみに、この当時は「認知症」という言葉がなかったので「痴呆症」という古い表記で書きます。

       ____      == 2000年 ==
     /      \
   / ─    ─ \    脳波を測っただけで「痴呆症患者の痴呆の進行度合いがわかる」
  /   (●)  (●)  \  っていうかつてないほど画期的な理論を新しく考えたお
  |      (__人__)    |   これが実用化されればあき夫も脳科学者の仲間入りなんだお
  \     ` ⌒´     /   さっそくそんな波計を作ってみるんだお
 森あき夫 (大学教授・当時55歳)

        ノ L____       == 数ヶ月 外注していたオリジナル簡易脳計の試作が完成 ==
       ⌒ \ /
      / (○) (○)\    おらおら波計の設計をしたプログラマーども!
     /    (__人__)   \   さっそくお前らで動作テストしてみるんだお!!
     |       |::::::|     |
     \       l;;;;;;l    /l!| !
     /     `ー'    \ |i
   /          ヽ !l ヽi
     丶- 、       しE |そ  ドンッ!!

    `ー、_ノ       ∑ l、E ノ <              ΩΩΩΩΩΩΩΩ
               レY^V^ヽl

         ____
      /::::::─三三─\    開発に関わったプログラマー8名全てが、
    /:::::::: ( ○)三(○)\  健常にもかかわらず「痴呆の状態」と判定される
    |::::::::::::::::::::(__人__)::::  | ________
     \:::::::::   |r┬-|  / | |          |   \ な、なんだってー!! /
    ノ::::::::::::  `ー'´   \ | |          |    ΩΩΩΩΩΩΩΩ

       ____
     /      \

   /  _ノ  ヽ、_  \   おかしいお…あき夫の考えた理論に間違いなんてあるはずないお…
  /  o゚⌒   ⌒o  \  プログラマーども以外脳波を計測したら間違いなく正常だったんだお…
  |     (__人__)    |  きっと波計が壊れてるんだお
  \     ` ⌒´     /

       ____      そういえばこのプログラマーどもは、設計図も作らないで、
     /⌒  ⌒\    喋らずに何も考えないでずっとパソコンの画面をただ見てるんだけなんだお
   /( ●)  (●)\
  /:::::⌒(__人__)⌒:::::\
独創的なひらめきなんてほとんどしてないんだお………
  |     |r┬-|     |  に帰ってもずっとパソコンに向かってるって言ってたし、
  \      `ー'´     /  自分のことをヲタっぽいと言ってたし、そりゃもおかしくなるはずなんだお

          ____
        /_ノ  ヽ、_\      
          == 結論 ==
 ミ ミ ミ  o゚((●)) ((●))o      ミ ミ ミ
/⌒)⌒)⌒. ::::::⌒(__人__)⌒:::\   /⌒)⌒)⌒)  こいつらはパソコンモニターに向かいすぎて
| / / /     |r┬-|    | (⌒)/ / / //   脳がボケたに違いないんだお!
| :::::::::::(⌒)    | |  |   /  ゝ  :::::::::::/    あき夫の理論に間違いなんてないんだお!!
|     ノ     | |  |   \  /  )  /
ヽ    /     `ー'´      ヽ /    / 
    今度はゲームに浸かってるうちの学生どもで
 |    |   l||l 从 l||l      l||l 从人 l||l     実験してみるんだお!!
 ヽ    -一''''''"~~``'ー--、   -一'''''''ー-、
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒))

         ____      == 後日…ゲーム歴が長い日本大の学生10名の脳波を計する実験 ==
       /      \
      /  ─    ─\    痴呆だったりそうでなかったりバラバラの結果になったんだお
    /    (●)  (●) \   これは何かあるに違いないお
    |       (__人__)    | ________
     \      ` ⌒´   ,/ .| |          |
    ノ           \  | |          |  ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ

         ____       == さらに後日…幼児大学院生から性別を問わず
       /      \         無作為に選んだという300名の波を計測する実験 ==
      /  ─    ─\
    /    (●)  (●) \
   またバラバラの結果になったお
    |       (__人__)    | ________
     \      ` ⌒´   ,/..| |          | ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ
    ノ           \  | |          | ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ

       ____
     /⌒  ⌒\      集計したらが痴呆になってるが6割ぐらいいたお!
   /( ●)  (●)\     こいつらがどれぐらいゲームしてたとかの統計は取ってないけど…
  /:::::⌒(__人__)⌒:::::\  この中で成績良くないとか忘れ物よくするとか言ってたもいたし、
  |     |r┬-|     |   こいつらはきっとゲームのやりすぎで痴呆になってるんだお!
  \      `ー'´     /   こいつは大変だお!!

          ____
        /_ノ  ヽ、_\  
              == 結論 ==
 ミ ミ ミ  o゚((●)) ((●))o      ミ ミ ミ
/⌒)⌒)⌒. ::::::⌒(__人__)⌒:::\   /⌒)⌒)⌒)  この6割のらはどうせゲームが原因だろうから、
| / / /     |r┬-|    | (⌒)/ / / //   ゲーム脳って名前にして本を書くお!
| :::::::::::(⌒)    | |  |   /  ゝ  :::::::::::/
|     ノ     | |  |   \  /  )  /     そうしたらゲーの悪口たくさん書けてスッキリするし
ヽ    /     `ー'´      ヽ /    /     あき夫は印税入るしボロけでウハウハだお!!
 |    |   l||l 从 l||l      l||l 从人 l||l     話題になれば脳科学者として有名になるお!!!
 ヽ    -一''''''"~~``'ー--、   -一'''''''ー-、    TVにも出られるし演も頼まれるちゃうかもしれないお!!!!
  ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒))

 こうして、「ゲーム脳」という言葉が生まれ、世に出ましたとさ。THE END

ゲーム脳ができた経緯からわかるまとめ

  • 波を計測して痴呆症(認知症)の度合いが分かる」という仮説は8年以上が経った現在医学的には認められていないし、もされていない。もちろん病院などの医療の現場で活用されているわけがない
  • それどころかこの仮説はまったくの誤りであり、健常者でも痴呆症と判定されてしまう
  • 「健常者でも痴呆症と判定されてしまう」という悲惨な現実から、「この理論は誤りでした」という結論にはもっていかず、つじつまを理矢理合わせるように「ゲーム脳」を定義した
  • この8人のプログラマーがキレやすいとか、物忘れがしいとかまともな根拠はまったくなし。主観だらけ
  • 波で痴呆症の度合いが分かる仮説は誤りだったのに、健常者が「その仮説では痴呆症とされる波」を示しているとなぜかマズいということになっている。そしてなぜだか原因がゲームであるというのが「ゲーム脳」。意味不明
  • プログラマーが自分のことを「ヲタっぽい」と話していたことを原因として挙げる意味はさらに不明
  • 波計を開発したプログラマーたちをさんざん痴呆呼ばわりしたくせに、その人たちが開発した波計はゲーム脳研究ちゃっかり活用するという、そのセコい根性はどうよ
  • だいたい、作為に選んだ被験者の6割のが痴呆だったら日本は終了してるだろ、常識的に考えて
  • ていうかプログラマー何も考えずに画面を見てるだけでできる仕事じゃねーよ、なめんなバーカバーカ

その他 森さんの問題発言

ここまでに書いたことでも既にどれが問題発言なのか分からなくなるほどの問題っぷりていうか、そもそもゲーム脳を推進すること自体が問題な気がするが、さんの暴走はこれだけに留まらない。

さんはゲーム脳研究に対する批判・反摘に対し、の場で「ゲーム業界に関係のある人間が反論している」といったような科学的ではないきわめて抽的な反論や、感情的に相手を誹謗中傷する発言を繰り返しているのだ。

──たとえば、京都大学久保田競名誉教授 (脳科学の権威とも呼ばれているすごい人。東北大学川島隆太教授導者でもある) が週刊誌サンデー毎日」上でさんを批判したこと(ソースexit)に対して

京大の名誉教授久保田名誉教授のこと)による誹謗中傷があった。お歳を召されたのではないか? 京大ゲーム会社から70億もらっているから、言いたいことが言えないのだろう。ゲーム会社がらみになってしまうと、まともな人もまともなことを言わない。 京大の名誉教授でもお金がらみに染まってしまうと言いたいことも言えない。私は科学だから言いたいことを言う。」

京大ゲーム会社から70億もらっている」(Googleexit)とは、任天堂山内溥社長が、過去の治療で入院したことがあり、老朽化が進んでいた京都大学医学部附属病院の新病棟建設費用として、個人資産の70億円を京都大学に寄付した事実 (ソースexit) をしているようなのだが、医療の発展のための寄付なのに、あたかも口止め料のような言い放ちっぷりだ。

しかも、これを発言した場は東京都世田谷区催のゲーム脳講演会だ。数人の聴衆の前でこんな名誉毀損行為をしでかすなんて、いくらニセ科学者とはいえ、言いたいことを言いすぎだよ!! さすがさん! おれたちがやらない事を然とやってのけるッ! そこにシビれぬ! あこがれぬゥ!!

さらに、別の日には、の前での発言ではないのだが、

「ああ、久保田さんね。あの人、認知症入ってる。」

久保田名誉教授をなんと認知症患者扱いしてしまう始末(ソースexit)。もちろん波を測ったわけではない。

さん、どう考えても”誹謗中傷される側”より(京都大学久保田名誉教授任天堂、そしてゲーム業界に対して)”誹謗中傷してる側”です。本当にありg(ry

──精神科医の斎藤環氏 (ひきこもり研究の第一人者として有名) の科学的な反(詳細exit)に対して(ソースexit)

斎藤環さんというゲームマニアみたいな人が、批判を書いている。悪いけどあの人は波を知らない素人です。生理学の知識のいかわいそうな人なんですよ(笑)医学部でも実習で教えましたからね。彼よりはまあ10倍くらいは知識がありますよ(笑)。対談してもかまわない。恥ずかしくて彼はものが言えないと思いますよ。」

実際には、斎藤氏はさんの「に関する誤った認識」や「波の測定法の誤り」への科学的根拠をもとにした摘をしている (この記事の最初のほうでサザエさんで例えたところも含む)。そのため、この発言中の

生理学の知識のいかわいそうな人」「彼よりは10倍くらいは知識がある」

というのは大きな間違いである。ちなみに言うとゲームマニアでもない (そう言い出した根拠すら不明)。ある動画では主語的語 (さんと斉藤氏) が逆だと断言されていたが、それでだいたいあってるはず。

とにかくいつもこんな調子なので、に遺憾ながらさんは「を反するための知識や結果を持ち合わせてない」という見方をせざるをえない。

ちなみにWikipediaexitには「テトリスソ連軍事的で開発された。テトリスをすると反射的になり人を殺しても何とも思わなくなる。人を殺戮ロボットにするのだ」(Googleexit) といったような、さんの衝撃的な問題発言ウソ発言が詳細に引用されているので、見逃せないぞ。

スラングとしての「ゲーム脳」

概要」の項にもある通り、「ゲーム脳」そのものの語感から、「別の意味で現実ゲームの区別がついていない」、「現実ゲームノリを持ち込む」、いは「創作ゲーム的な思考や設計を意識のうちに持ち込む」「あらゆる創作物をゲーム視点で批評する」ことを俗に「ゲーム脳」と表現することもある。

等。

関連動画


以下の動画 (「ギャプッ! ギャプッ! クソワロタ!」というコラで有名なネトゲ廃人が登場) はネトゲ依存症を扱ったものなのだが、この動画の次のシーン (動画には含まれていない) になぜかさんが突如登場している。

おそらくの問題ではないネトゲ依存症の特集なのに、インターネットを長時間やると、右(みぎのう)が機低下して思いやりや道徳心が欠落、つまり自己中(ry」「さらにゲームもやり続けることで左(ひだりのう)も低下し、論理的に物が考えられなく(ry)」という、いつもの頭が痛くなるゲーム脳仮説を長々とをしていた。これが放送された2005年頃は、そんな感じでマスメディアがどさくさに紛れて積極的にさんに発言権を与えていた時代でもあった。

関連商品

森さん著のゲーム脳関連書籍

ゲーム脳仮説へ批判・ツッコミを行った書籍

さん著の『元気のつくりかた』は、子どもでも読める内容にした『ゲーム脳の恐怖』、つまり子どもに直接ゲーム脳仮説で洗脳させることを的とした本で、こんな題名なのに内容は冒頭からとても過激であるexit。まさにZ定。

逆に、「テレビゲーム子どもの心」は、実はゲーム脳を思いっき批判した本である。題名の印で誤解されやすいので注意。また、「トンデモ本世界T」では下記のリンクトンデモ『ゲーム脳の恐怖』」についてが取り上げられている。

関連項目

関連リンク

スネークたちのレポート

さんの講演会に潜入したスネークな方々が書いたレポート集。個人サイトを出典と認めないWikipediaには載ってないぞ。本に書かれていないさんの思いつきや、催眠商法の会場みたいな狂気が伝わってきます。そして考えされられます。ちなみに、印を付けた4つのリンクは同じ講演(2006年3月6日東京都世田谷区にて)のレポートです。

脚注

  1. *子どものゲーム依存防げ*四国新聞 紙面で警鐘、啓発用DVDも配布*健康懸念 香川で条例化へ | 北海道新聞 NIEexit
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