コス(Koth)とは、ロバート・E・ハワードの小説に登場する用語で、彼の友人の作品やクトゥルフ神話の諸作品でも使われた。作品ごとに指し示す対象が全く異なることに定評がある。
ロバート・E・ハワードがクトゥルフ神話に絡めて執筆した『アッシュールバニパルの焔/The Fire of Asshurbanipal』(1936、以下注記がない限り発表年)にて言及された。
後にこの小説の初期稿が発見され未訳短編集に掲載された[1]が、こちらは神話要素がずっと少なく、コスも出てこない。
表題のアッシュールバニパルの焔とは、魔道士ズトゥルタン(Xuthltan)[2]が未知の洞窟から持ち帰った不可思議な宝石。後にズトゥルタンが拷問の末に殺された際に、彼は「忘れられた神神 [3]」に「(元々は)かれらのものであった宝石」を奪い返すように訴えたという。そこで名前が出ていたのがクトゥルー、ヨグ=ソトース、そしてこのコスだった。これ以上の詳細は一切が不明で、信者がいたのかどうかも不明である[4]。
別作品『黒の碑』では、物語の舞台であるシュトレゴイカバール村一帯は、かつてズトゥルタンという地名で呼ばれていたという設定になっている。
『墓はいらない/われ埋葬にあたわず/Dig Me No Grave』(1937)では、コスの黒ぐろとした巨大な城壁[5]がそびえる死の都市[6]、黒き城[7]についての言及がある。
この地で貌を秘め隠す暗黒の帝[8]と語らい、暗澹たる沈黙につつまれし[9]部屋[10]で契約を記した者は知識、富、長寿、などの魔術的な利益を受けるとされる。この作品ではイェジディ派の信仰するマリク・タウス[11](をモデルにした魔神)にも言及があるが、文脈からして暗黒の帝とマリク・タウスは同一の存在と思われる。一度に2柱の神々と契約をした可能性があるので断定まではできないが。
非クトゥルフ神話のSF冒険活劇『魔境惑星アルムリック/Almuric』(1939年連載開始、1964年単行本化)では、表題の惑星における都市とそこに住まう民の名に使われている。
英雄コナン(蛮人コナン)シリーズではハイボリア時代の国名の一つである。宇野利泰の訳語、及びそれを元に中村融により新訳された新訂版コナン全集ではコトと訳されている。主な言及作品は『真紅の城砦/The Scarlet Citadel』と『黒い怪獣/砂漠の魔王/Black Colossus』(いずれも1933)。
H・P・ラヴクラフト『未知なるカダスを夢に求めて/The Dream-Quest of Unknown Kadath』(1943、執筆は1926-1927)では、ドリームランドの魔法の森とガグの地下都市とを繋ぐコスの塔 (Tower of Koth)が舞台の一つとなり、その巨大な戸口の上[12]には浅浮き彫りのコスの印 (Sign of Koth)が据えられていた。
『チャールズ・ウォードの奇怪な事件/The Case of Charles Dexter Ward』(1941、執筆は1927-1928)では、ウィレット医師がとある場所に書かれた記号を見て、それが昏い眠りの深淵[13]に関連したコスの印[14]で、薄明の世界にそびえ立つ黒い塔の拱路[15]の上に据えられているものであることに気づく場面がある。彼はかつて友人のランドルフ・カーターからその力について聞いていたのだった。
ラヴクラフト作品におけるコスの印は、それを見た人間に慄然とした恐怖や不安を与える効果がある。
リン・カーター『クトゥルー神話の神神/H. P. Lovecraft : The Gods』(1957)では、アッシュールバニパルの焔とコスの印は地球本来の神々の一員にしてヒュプノスよりも温厚な夢の神であるコスに作られたとしたが、この設定はクトゥルフ神話の展開初期に書かれたので今ではかなり古びてしまっている。あとズトゥルタンの名がフニスルタンとなってるけど誰だコイツ。
『(リン・カーター版)ネクロノミコン/The Necronomicon: The Dee Translation』(1989、『魔道書ネクロノミコン外伝』に収録)では「三、門の書 - 10、コスとその印について」で、夢の小神コスについて記されている。ここではコスの塔、コスの印、そして黒い壁を持つ死に絶えた古代都市コスについても言及がある。この城塞都市は明らかに『墓はいらない』の黒き城を意識して書かれたものだ。
リン・カーター作品世界でのコスの印は夢の門を通過する際の守護を与え、諸世界に通じる門を開く鍵の役目をする。『シャッガイ/Shaggai』(1971)では、魔道士エイボンが黒い蓮を使った幽体離脱の術を行使する際に使用していた。ラヴクラフトの先行作品を意識して「まがまがしくも畏怖すべき」と形容されている。
リチャード・L・ティアニー『蟾蜍の館/The House of the Toad』(1993、未訳)においては、コスの印と黄の印は同じものだとされている。
リック・ライ[16]はこれを発展させ、黄衣の王の真の名がズカラ=コス (Zukala-Koth)だというオリジナル設定を創って自作品[17]で使用している。
ズカラはロバート・E・ハワードの詩[18]にだけ登場する超マイナーキャラクターだが当ニコ百記事編集者は未読。ズカラは後にアメコミ版英雄コナンに敵役として出演している。役柄はエピソードによって違い、悪の魔道士だったり小神だったりする。
ロバート・M・プライス『地を穿つもの/The Burrower Beneath』(1997)には死を欺いた魔術師コス=セラピス (Koth-Serapis)と、パピルスに遺された魔道書「コス=セラピスの暗黒の儀式/The Black Rituals of Koth-Serapis」が登場する[19]。
コス=セラピスの初出は、『黒き永劫/Black Eons』(1985)[20]。これはロバート・E・ハワードの未完断章をロバート・M・プライスが補筆して完成させた、いわゆる「死後合作」にあたる[21]。
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最終更新:2024/04/25(木) 09:00
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