サキエルとは、
本記事では主に2.について記載しつつ、少し1.についても触れる。
ラテンアルファベットでの表記は「Sachiel」。中世-ルネサンス期のヨーロッパにおける神秘主義/オカルト関連の文書などで「一週間の内に24回ある、特定の1時間の守護天使」[1]や、「木星を司る天使」[2]として言及されるようだ。
この「木星を司る天使」として「Sachiel」(サキエル)ではなく「Satkiel」(サトキエル)、「Saquiel」(サクィエル)、「Zadkiel」(ザドキエル)、「Sadkiel」(サドキエル)、「Satquiel」(サトクィエル)と記している文書もあるらしい[3]。これらは響きがよく似ていることから、いずれも同じものを指していると思われる。つまり表記が安定しない。
1桁世紀のどこかで著されたとされるヘブライ語の文書『第三エノク書』(ヘブライ語エノク書)の英訳書に「SHATQIEL」(シャトキエル)という天使の名前が見て取れる[4]。上記のうち「Satquiel」(サトクィエル)によく似ている。よってこの『第三エノク書』での「SHATQIEL」こそが、オカルト系の文書での類似した天使名の元ネタではないかとも考えられる。元々はヘブライ語で書かれているであろうこの「SHATQIEL」について、どのようにラテンアルファベット転記するかによって表記がぶれただけなのかもしれない。
1967年に出版された、Gustav Davidson(グスタフ・デイヴィッドスン)の著作『Dictionary of Angels』(邦訳版のタイトルは『天使辞典』)は聖典やその偽典、神秘主義、などなどの多種多様な出典から4000以上もの天使の名前を抽出して紹介する辞典として有名なものである。この書籍の中にも「Sachiel」の項目が存在している[5]。同項目では、「Sachiel」という名前の意味を「covering of God」(「神の覆い」?)であるとしている。
多様な出典からの互いに矛盾する情報もそのまま掲載しているようで、「ハシュマリム(ケルビム)の位階にある」「第1天の住人である(いくつかの出典では第6天とされている)」「彼は南方(および西方)より出でる、月曜(または木曜、あるいは金曜)の天使である」という、なんとなくゴチャッとして整理されていない情報が記されている。勝手にどれが正しいと判断せずに、出典元に記載された内容をそのまま伝えてくれている、と考えれば信頼性があると言えなくもない。
同項目内では「魔術系の伝承では、彼は「地獄の帝国の4人の下位王子の従僕」(a servitor of the 4 sub-princes of the infernal empire)と呼ばれている」と言った記述もなされている。この表現からするとサキエルを「堕天使」的な存在だと見なす伝承もあったということだろうか。
聖書の正典に登場するわけでもないマイナーな天使だが、『新世紀エヴァンゲリオン』にて名前が使用されたことで、名称のみが有名となった。
ちなみに同アニメ関連のインターネット上の記載では「名前の元になったサキエルとは「水」を司る天使である」という記述もみられるのだが明確な出典を示しているものは見当たらず、上記の『Dictionary of Angels』を始めとした各種資料において「サキエルは水を司る」と記してあるものも乏しいようだ。後述するように同アニメの企画書では「サキエル(水の天使)」と記してある箇所があり、この情報が変質して伝えられているのみという可能性もある。
1995年から1996年にかけて本放映されたテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する、「使徒」と呼称される怪獣の一体。下記のように、主に同作の第壱話「使徒、襲来」にて登場し、第弐話「見知らぬ、天井」にて退場した。
ただし、それらに続く第参話や第四話も「この使徒との戦闘に巻き込まれて怪我をした少女の兄「鈴原トウジ」に『新世紀エヴァンゲリオン』の主人公「碇シンジ」が殴られた」ことが展開に関わっていた。
この第参話および第四話で起きた顛末を経て、鈴原トウジやその友人「相田ケンスケ」は碇シンジの親しい友人となる。よって間接的にではあるが、作中人物同士の人間関係に多大な影響を残した使徒でもあると言える。
同アニメの「第壱話 使徒、襲来」(EPISODE:1 ANGEL ATTACK)で初登場した。劇中の「現代」である2015年に、海中から出現。この「使徒の襲来」は劇中での登場人物の台詞によれば15年ぶりのものであったという。
待ち構えていた国連軍の戦車部隊やミサイル攻撃などをものともせずに陸上を歩いて侵攻。これは使徒が持つ「ATフィールド」と言うバリア的なものによって防御しているものであるらしい。
いわゆる核爆弾のような威力を持つ強力な兵器「N2地雷」での爆発はATフィールドの防御も少し貫通したようだが、それでもサキエルを倒すには至らず、損傷した「顔」の下から新しい「顔」が生えてくるなどして自己修復してしまった。その上、その後は目から破壊光線を出す新たな攻撃方法まで獲得してしまった。
そして、「使徒」の迎撃を役割とする特務機関「ネルフ」が存在する都市「第3新東京市」まで到達し、街を攻撃し始めるのだった。
その次回エピソードである「第弐話 見知らぬ、天井」(EPISODE:2 THE BEAST)では、第3新東京市を舞台に、碇シンジがパイロットとして搭乗した巨大人型兵器「エヴァンゲリオン初号機」と戦った。
一旦は初号機に対して完全に優位に戦いを進め、碇シンジが意識を失うほどに苦戦させたが、その後に暴走した初号機の圧倒的な能力に蹂躙されて敗北。人間でいう「みぞおち」あたりに付いている赤い球「コア」を初号機に砕かれそうになると、初号機に取り付いて自爆し、消滅した。
しかしそれでも初号機は健在であり、相討ちとなることにも失敗している。
「宙に浮いた八面体」「宙に浮いたボール」「宙に浮いたひも」のようなわけのわからない形状のものも少なくない「使徒」の中にあって、「二足歩行し、腕が二本ある」という比較的人間に近い形状をしている。一般的な人間と比べていかり肩で猫背。
とはいえあくまで「比較的」でしかなく、「首が無く、人間であれば胸骨付近にあたるところに白い仮面のような顔が貼りついており、その顔も空洞のような目しか開いていない」「両腕にはそれぞれ3本の鉤爪で構成された手があり、その手に空いた穴から杭のようなものを射出できる」といった異形である。水中から現れることを踏まえてか側面にはエラもある。
この「仮面のような顔」は第6使徒「ガギエル」にも同じものが付いていたこともあり、作品外ではサキエルの顔であると同時に「使徒」全体を象徴するシンボル的に扱われることもある。
ちなみに「仮面のような」であって「仮面」ではなく、空洞のような目はちゃんとまばたきもする。まばたきする様子については、『新世紀エヴァンゲリオン』のファンからは「かわいい」と評されることもある。
この外見は漫画家の「あさりよしとお」がデザインしたもの。同氏は他にも「第4使徒 シャムシエル」や「第14使徒 ゼルエル」もデザインしている。
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氏は「今度、うちでロボット物をやるので」とだけ言われて「タイトル、メインキャラ、メインメカ、世界観など、全く知らない状態」で着手し、出来上がったサキエルの初稿をアニメ制作側に届けたところ全く先方のイメージと異なっていたそうで、その届けたときの飲み会の席で鉛筆書きにてサキエル第二稿のラフを描きあげたという。ちなみにその飲み会の席ではシャムシエルのラフも5分で描いたとのこと。
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そのデザイン過程のスケッチはあさりよしとおの個人サークル「新世界壮健社」の同人誌『ぼくのかんがえたしと』として1996年8月の日本SF大会で限定頒布されたこともあり、カントク(『新世紀エヴァンゲリオン』の監督である「庵野秀明」か)の指示のもとにデザインが詰められていく過程がわかる。
この同人誌では「イシュタルみたいなやつ」「こんなですか?」「いや…」と、サキエルのデザインの下敷きにあさりよしとおの漫画作品『ワッハマン』に登場するキャラクター「イシュタル」があったらしいことがわかるコメントのほか、腕から出る杭について「腕のギミックがガンダムシュピーゲル(※アニメ『機動武闘伝Gガンダム』に登場する機体)と似てる…」といった他の商業作品を引き合いに出した内輪的なコメントも確認できる。
前述のとおり、登場した第壱話や第弐話において「大抵の通常兵器をものともしないATフィールド」「腕から打ち出す杭。打ち出す瞬間には光の槍のようなものに変化し、元々の長さよりも長く伸びる」「目から出す破壊光線」「体を不定形に変形させて敵にへばりついての自爆」といった多彩な能力を披露している。
また、劇中で浮遊能力も見せている。ただしあくまで短距離・短時間しか浮遊しておらず、「空中を自在に飛行する」ような描写は無かった。
「第3使徒」である「サキエル」。
アニメの第壱話で登場する使徒なのに「第3使徒」なのは、設定上「第1使徒 アダム」や「第2使徒 リリス」を既に人類が確認しているためである。
「サキエル」とは、おそらく記事冒頭で触れた、ユダヤ/キリスト教系の伝承/オカルトに登場する天使「サキエル」を元ネタとしてアニメ制作スタッフが命名したものと思われる。英語での表記も、上記の天使と同じ「Sachiel」と表記される。
ただしこの「第3使徒」「サキエル」の2つの言葉は、実はアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の本編作中では一度も登場していない。様々な関連商品展開の中で明らかとされた名称であるようだ。そのため、アニメのキャラクターボイスを担当した声優らが「第3使徒」や「サキエル」と口に出して言っている機会は意外と少ない。
とはいえ、ゲーム作品などで台詞に出ることもあるようだ。以下の動画はセガサターンのゲーム作品『新世紀エヴァンゲリオン 2nd Impression』を編集したもののようだが、再生時間1:30頃にキャラクター「碇ゲンドウ」(CV: 立木文彦)が「第3使徒、サキエル」と発言している。
アニメ本編が実制作される前の「企画書」(書籍『新世紀エヴァンゲリオン (ニュータイプ100%コレクション)』に収録)では、第1話「再会する人々」(テレビ版の「第壱話 使徒、襲来」とはタイトルが異なる)や第2話「見知らぬ、天井」に登場する使徒は「サキエル」ではなく、「ラジエル」という「金属的な巨人」と表現される使徒のはずであった。
また「脚本」(書籍『EVANGELION ORIGINAL』に収録)でも、この話数で登場する使徒は「サキエル」ではなく「ラジエル」という名称で掲載されている。
またこの「企画書」には「サキエル(水の天使)」という使徒のイメージボード(「y.s」とクレジットが入っており、おそらく「貞本義行」によるもの)も掲載されている。その外見は、「黒っぽい胴体の猫背の人型で、肩などのところどころが灰色調の装甲のような覆われている」というアニメ版の「サキエル」と通じるところもあるもの。しかし特徴である「仮面のような顔」ではなく「モノアイのような大きな一つ目が付いた頭部」があったり、敵を切り裂くための長い鉤爪が付いていたりと、アニメ版のサキエルとは明らかに異なるものである。
このイメージボードに添えられた説明では「専用空母にて太平洋上を移動中のエヴァ弐号機に襲いかかる。」とされており、アニメ本編での第6使徒「ガギエル」に相当するような役回りだったようだ。第1話や第2話ではなく、第8話「アスカ、来朝」(テレビ版の「第八話 アスカ、来日」に相当)に登場する予定だったかと思われる。
『新世紀エヴァンゲリオン』のリビルド(再構築)シリーズ『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の第1作である、2007年のアニメ映画『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』にも、ほぼ同じ外見、同じ役回りで登場した。
ただし同作においては「第3使徒」ではなく「第4の使徒」と設定されていた。この使徒より先に別の「第3の使徒」が発見されていたと設定が変更されたためである。この「第3の使徒」は次作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の冒頭で登場する。
また、本作では「サキエル」という固有の呼称も無くなった。この「第4の使徒」だけでなく、他の使徒の多くも固有の名称が無くなっている。
とはいえ、『新世紀エヴァンゲリオン』で登場したサキエルとほぼ同じものなので、エヴァンゲリオンシリーズのファンからは便宜上「サキエル」と呼ばれることが少なくない。
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最終更新:2025/04/13(日) 06:00
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