サラブレッド系種

サラブレッド系種とは、馬の種類の一つである。
サラブレッド系、あるいはサラ系とも呼ばれ、広義の意味ではサラブレッドもサラブレッド系種とされる。

概要

血統が不明なためにサラブレッドとして認められていないがサラブレッドと思われる馬、もしくはサラブレッド以外の馬とサラブレッドを掛け合わせた馬のことを指す。
（ただしアラブ種の入る組み合わせでアラブ血量が25％以上の場合はアングロアラブに分類される）
ちなみにアラブ種の血が入っていてなおかつアラブ血量が25％未満の馬は準サラと呼ばれていたこともあったが、1974年に準サラという品種は廃止され、現在ではそれらもサラ系に含まれた。
混血馬の場合、木曽馬等の日本の在来馬との混血に関してはやや特殊で、純血の日本在来馬に4代続けてサラブレッド、サラ系、アラ系、アラブ種、アングロアラブ種を配合し、なおかつアラブ血量が25％未満の場合に初めてサラ系として認められる。

血統不明にせよ混血にせよ、競馬自体が軍馬選定目的で行われていて馬自身の能力が重要だった昭和初期までは能力さえ示せば純血サラブレッドと変わらない扱いを受けることが出来たものの、血統が重視されるようになった戦後はサラ系種は次第に軽視されるようになり、特に牡馬の場合は種牡馬となっても子供にサラ系の烙印を押されることを嫌われてごく一部の例外を除いてほとんど種付け相手が集まらず、サラ系種の父系は白毛馬・ハクホウクンしか残っていない。
牝馬の場合は子出しさえ良ければ馬主・牧場にとって貴重な存在になっていたため、純血サラブレッドと同じような扱いを受けることが可能だった。このため、サラ系種の血を母系に持つサラブレッドは現在でも存在する。

なお、8代続けて純血サラブレッドを配合し、なおかつ国際血統書委員会が「サラブレッドと同等の能力を有する」と認められた馬はサラブレッドに「昇格」することが可能。

血統不明のサラ系

日本競馬黎明期である明治時代から数多くのサラブレッドが日本に輸入されてきたが、黎明期はその馬がサラブレッドであるということを証明する血統書を紛失、または破棄（！）してしまうケースがあり、そういった馬はほとんどがサラ系とされた。ミラやバウアーストツクなど、オーストラリアから輸入された血統不明馬は「豪サラ」と呼ばれ、競走・繁殖双方で成績を残したが、後年この烙印が優秀な子孫たちを苦しめることになった。
このケースでサラ系とされた馬の子孫たちは現在ではほとんどが8代続けてサラブレッドが配合されて純血サラブレッドに「昇格」しており、血統不明が原因のサラ系現役競走馬はほとんど残っていない。

混血のサラ系

在来馬系サラ系、トロッターやアラブ種の馬とサラブレッドの混血馬。こちらは血統が判明していることも多い。
血統よりも馬自身の能力が重視された明治期～昭和初期の頃は純血サラブレッドの少なさ、トロッターの大種牡馬・豊平の活躍もあって割と多く見られたが、在来馬系及びトロッター系のサラ系種は競馬界にほとんど残っていない。

新たなサラ系馬たちの誕生

血統不明にせよ混血にせよ消滅寸前だったサラ系種だったが、2009年にアラブ系競走が消滅したことで行き場の無くなったアングロアラブ牝馬の血統を残すためにサラブレッドが交配された影響で、アラブ血量25％未満のサラ系種が増加した。

ただこれらのサラ系も大きく広がることはなく、2024年現在は現役の繁殖牝馬が1頭いるだけで、再び消滅寸前になっている。日本競馬から「サラ系」の文字が消滅する日はさほど遠くないかもしれない。

主なサラ系の馬

• ミラ：1895年生まれ。ミラ系と呼ばれる牝系の祖。血統書の紛失によりサラ系とされた。
• 第二メルボルン：1901年生まれ。1906年輸入の豪サラ牝馬。帝室御賞典や横浜ダービー2勝など30勝を挙げた明治末期を代表する名馬。血統書の紛失によりサラ系とされた。
• ピユーアゴウルド：1919年生まれの牝馬。母・宝永が血統不詳の豪サラのためサラ系とされた。デビューから無傷の7連勝で帝室御賞典と優勝内国産馬連合競走を制覇した大正時代を代表する名牝。半弟にバンザイ、全妹にカーネーシヨンという超良血。
• バンザイ：1921年生まれ。母・宝永が血統不詳の豪サラのためサラブレッド系種とされた。優勝内国産馬連合競走と優勝内国産馬連合競走を含む13戦11勝。大正時代を代表する名馬。超良血。
• カーネーシヨン：1922年生まれの牝馬。繁殖名は国宝。母・宝永が血統不詳の豪サラのためサラ系とされた。競走馬としては帝室御賞典に優勝し、繁殖牝馬としてはダービー馬スゲヌマを産んだ。全姉にピユーアゴウルド、半兄にバンザイという超良血。
• バウアーストツク：1922年生まれ。バウアーストツク系と呼ばれる牝系の祖。血統書に血統不明の馬がいたためサラ系とされた。近年の研究により、ほぼ確実に純血サラブレッドであるということが判明した。
• ナスノ：1924年生まれ。豪サラ系。初代ハクシヨウのライバル。帝室御賞典、優勝内国産馬連合競走、各内国抽籤濠州産馬混合競走の三大競走を制覇した昭和初期を代表する名馬。
• ワカタカ：1932年の第1回東京優駿（日本ダービー）優勝馬。ミラのひ孫にあたる。
• スゲヌマ：1938年生まれ。前述カーネーシヨンの仔。東京優駿と帝室御賞典を含む23戦12勝。
• カイソウ：1944年、戦中の東京優駿（日本ダービー）優勝馬。「空襲に消えたダービー馬」として知られる。母系にトロッター種とされる豊平の血が入っていたためサラ系とされた。
• ツキヤス：1951年中山大障害(春)優勝馬。タカライジンの母。明治期に豪州から輸入された血統不詳の牝馬・横浜の牝系子孫。
• キタノオー：1955年朝日杯3歳ステークス、1956年菊花賞、1957年天皇賞(春)優勝馬。ハクチカラのライバルとして知られる。バウアーストツクの孫。
• キタノヒカリ：1956年朝日杯3歳ステークス優勝馬。アイテイオー、キタノダイオーの母。キタノオーの全妹。
• キタノオーザ：1960年菊花賞優勝馬。キタノオー、キタノヒカリの全弟。
• アイテイオー：1963年優駿牝馬優勝馬。キタノヒカリの子。キタノダイオーの半姉。
• タカライジン：1963年最優秀障害馬。フジノオーのライバルとして知られる。ツキヤスの子。
• キタノダイオー：1967年北海道3歳ステークス、函館3歳ステークスを含め7戦7勝の成績を残したが故障のため引退した競走馬。愛知杯優勝のハードラークを輩出するなどサラ系には珍しく種牡馬としてそこそこの実績を残した。キタノヒカリの子。
  
• イナボレス：1972年オールカマー、1974年目黒記念(秋)を勝つなど重賞4勝を含む76戦8勝の成績を残した「走る労働者」。幕末にナポレオン3世から徳川家茂に贈られたアラブ馬高砂の子孫。
• ヒカルイマイ：1971年の皐月賞と日本ダービーを制した二冠馬。ミラの子孫。
• ヒダコガネ：1973年クイーンステークス優勝馬。母系に日本在来馬血統が入っているという珍しい馬。
• ヒカリデユール：1982年有馬記念優勝馬。同年にサラ系としては初の年度代表馬に選出された。アイテイオーの孫にあたる。
• キョウワサンダー：1984年エリザベス女王杯優勝馬。グレード制導入後初のサラ系によるGⅠ優勝馬にして2024年4月現在も唯一のGⅠ優勝馬となっている。キタノヒカリのひ孫。
• グランパズドリーム：1986年東京優駿（日本ダービー）2着。マイネル軍団総帥・岡田繁幸はこの馬以来「おじいちゃんの夢」であるクラシック制覇を幾度となく目指すも、ユーバーレーベンのオークス制覇を見ることなく没した。豪サラ・天の川の子孫。
• ハクホウクン：1994年生まれ。日本初の白毛競走馬・ハクタイユーの子で、1998年に日本競馬史上初めて白毛馬による勝ち星を上げた。母がアングロアラブのウインドアポロツサ。
• ハートランドヒリュ：1996年生まれ。中央競馬のサラブレッド系最多出走記録（127戦）を所持。豪サラ・バイカの子孫。
• マイネルビンテージ：2000年京成杯勝ち馬。2024年現在、最後のサラ系中央重賞馬。母父がグランパズドリーム。
• ゴーディー：2008年生まれ。2012年・2017年サンタアニタトロフィー勝ち馬。母イケノエメラルドがアングロアラブ。
• クーヨシン：2009年生まれ。福山で重賞4勝。2024年現在、たぶん最後のサラ系現役繁殖牝馬。母ラピッドリーランがアングロアラブ。
• サンマルホーム：2010年生まれ。2024年現在、中央競馬で最後のサラ系現役馬だった馬（2020年に地方移籍）。母母父がキタノダイオー。

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関連項目

• 競馬
• サラブレッド