頑強なり
視界をふさぐ風雨も
脚にまとわりつく泥水も
延々と続く原野もどれほど厄介な道だろうと
戸惑い止まることなく
むしろ気概を奮い立たせ
心折れる者たちなど顧みず
ザッツザプレンティ(That's the Plenty)とは、2000年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牡馬。
サンデーサイレンスの孫世代で初のGⅠ馬であり、ネオユニヴァースの三冠を阻んだ菊花賞馬。
主な勝ち鞍
2002年:ラジオたんぱ杯2歳ステークス(GⅢ)
2003年:菊花賞(GⅠ)
父ダンスインザダーク、母*バブルプロスペクター、母父Miswakiという血統。
父は*サンデーサイレンスの2年目の産駒で、1996年の菊花賞馬。種牡馬としても2004年には父サンデーに次ぐリーディング2位となるなど、00年代にSS後継種牡馬として活躍した。ザッツザプレンティは3年目の産駒。
母はアメリカ産馬で、アイルランドで7戦1勝の輸入繁殖牝馬。
母父ミスワキは自身の競走成績はフランスの2歳G1を勝った程度だが、種牡馬として大成功し、超名牝Urban Sea、日本ではマーベラスクラウンなどを送り出した。それ以上に母父として凄まじく、Urban Seaが大種牡馬GalileoとSea the Starsを産んでその血が欧州を席巻し、日本でもタイキフォーチュンやサイレンススズカを送り出している。
2000年5月26日、社台ファームで誕生。競走馬としてはだいぶ遅生まれである。
オーナーは一口馬主クラブの社台レースホース。募集価格は1口85万円×40口(=3400万円)だった。
所属は栗東の橋口弘次郎厩舎。厩舎の2年先輩に同じダンスインザダーク産駒のツルマルボーイ、同期にダートで活躍したユートピア、1年後輩に同じ社台RHのハーツクライがいる。
馬名意味は「こいつは最高!」。社台サラブレッドクラブのページによると、
「こいつは最高!」の意。父ダンスインザダークの最高傑作となることを期待して命名。また「お腹いっぱい」という意味もあるが、愛馬の稼いだ賞金でお腹いっぱいになれればもう最高。
だそうである。
2002年11月2日、京都・芝2000mの新馬戦で河内洋を鞍上にデビュー。17.3倍の4番人気という微妙な評価だったが、後に京成杯を勝つ断然の1番人気スズカドリームを3馬身半突き放す圧勝デビューを飾る。
これで続く京都2歳ステークス(OP)では後藤浩輝を鞍上に3.3倍の1番人気に支持されたが、この後朝日杯FSを勝つ3番人気エイシンチャンプに競り負けて2着。
3戦目は年末のラジオたんぱ杯2歳ステークス(GⅢ)へ。ここは東スポ杯2歳Sを勝ったブルーイレヴンが1.4倍という断然の1番人気で、河内が鞍上に戻ったザッツザプレンティは5.2倍の2番人気。
雨で不良馬場の中、2番手で先行したザッツザプレンティは、ブルーイレヴンが掛かって沈むのを尻目に直線で逃げ馬を捕まえると最後の200mで一気に後続を突き放して4馬身差の圧勝。出世レースを強い勝ち方で制し、一躍クラシックの有力候補に躍り出た。
明けて3歳は王道の弥生賞(GⅡ)から始動。武豊が騎乗したここは、前走の強い勝ち方で1.5倍の1番人気に支持されたが、最後方からのレースになった上にレース中に落鉄してしまい、混戦の中で6着。
迎えた皐月賞(GⅠ)は混戦ムードの中、6.6倍の5番人気。鞍上はここから中央に移籍してきたばかりの安藤勝己が主戦となる。レースは3番手で先行し4コーナーで前を捕まえようとしたが、捕まえられないまま直線で置いていかれ見せ場なく8着に沈む。
この凡走に加え、大外8枠18番に入れられた日本ダービー(GⅠ)では25.4倍の7番人気まで評価を下げた。スタートは中団に控えつつも枠なりの外目から徐々に押し上げていき、4コーナーで2番手のゼンノロブロイに並びかける。直線では内のネオユニヴァースと3頭での追い比べとなり、結局競り負けたものの、3着に突っ込み意地を見せる。
秋は菊花賞を目指し神戸新聞杯(GⅡ)から始動。春クラシックで鎬を削ったネオユニヴァースもゼンノロブロイもサクラプレジデントも揃って出てくる中で、この3頭から引き離された10.0倍の4番人気。そして2番手で先行し4コーナーで先頭に立つものの、直線であっさりかわされるとあとはついていけず、ゼンノロブロイの圧勝の後ろで離された5着。
そんなこんなで迎えた菊花賞(GⅠ)。三冠を目指すネオユニヴァースと、前走でそれに完勝したゼンノロブロイが人気を分け合う中、同じ神戸新聞杯で見せ場のなかったザッツザプレンティはだいぶ離されて、20.2倍の5番人気だった。
しかしダービーや神戸新聞杯の結果から、直線末脚勝負では分が悪いとみた安藤勝己は、思い切った策に出る。序盤は控えて中団に構えゼンノロブロイを見ながら進めたザッツザプレンティは、向こう正面から早めに進出を開始。父譲りのスタミナを活かしたロングスパートでの捲りに出た。
後ろにいた同じ勝負服のネオユニヴァースもそれを追いかけてくる中、ザッツザプレンティは4コーナーで早くも逃げ馬を捕まえて先頭へ。後ろからはネオユニヴァースが迫ってくるが、直線でもザッツザプレンティは先頭を譲らず寄せ付けない。後方からはリンカーンが猛然と追い込んできたが、最後まで譲らず先頭でゴール板を駆け抜けた。
ネオユニヴァースかザッツザプレンティか! ネオかザッツか!
ネオユニヴァース! ミルコ! ミルコの左鞭!
ザッツザプレンティもしぶとい! ザッツザプレンティしぶとい! 外からリンカーン!
三冠は無理か! 三冠は無理か!
ザッツザプレンティだ! ザッツザプレンティ! ネオは3着ー!
ネオユニヴァースは3着ー!
まんまと安藤勝己、まんまと安藤勝己、早仕掛けから、早仕掛けから粘り込みました!
アンカツマジックとでも言うべき名騎乗で、21世紀最初の三冠馬の誕生を阻止し、父ダンスインザダークとの菊花賞親子制覇を達成。サンデーサイレンスの孫世代としても初GⅠ制覇となった。
晴れてクラシックホースとなったザッツザプレンティは、続いてジャパンカップ(GⅠ)に参戦。逃げるタップダンスシチーを2番手で追ったが、直線では突き放される一方で、シンボリクリスエスやネオユニヴァースら後続を抑えきって2着に残したものの、9馬身差も離されて敗れる。
続いて有馬記念(GⅠ)にも参戦したが、タップダンスシチーに競り掛けにいった結果ホームストレッチで先頭に立ってしまい、3コーナーで捕まるとあとは沈んでブービー11着に惨敗。
明けて4歳は天皇賞(春)を目指して阪神大賞典(GⅡ)から始動。有馬記念2着のリンカーンに次ぐ2番人気に支持され、3番手の好位から進めて直線入口で前を捕まえたが、すぐ後ろに構えたリンカーンにあっさりとかわされて2着。
本番の天皇賞(春)(GⅠ)ではリンカーン、ネオユニヴァース、ゼンノロブロイと「4歳4強」を形成し、5.0倍の3番人気。しかし最内枠から中団前目につけて4強同士で牽制し合っているうちにイングランディーレの大逃げを許してしまい、ザッツザプレンティは何の見せ場もなく16着に撃沈してしまう。
金鯱賞(GⅡ)では中団好位で進めるも、タップダンスシチーに突き放され、ブルーイレヴンにも置いていかれて3着。ミルコ・デムーロが騎乗した宝塚記念(GⅠ)もゼンノロブロイを見ながら好位で進めるも直線伸びず5着。
この後、夏の休養中に右前屈腱炎を発症。長期休養に入る。
明けて5歳、4月の大阪-ハンブルクカップ(OP)で復帰。デムーロを鞍上に1番人気に支持されたが4着。
そして天皇賞(春)に岩田康誠を迎えて臨み、好位から進めて直線入口で2番手につけるも、残り200mで置いて行かれて10着。
このレース後、屈腱炎が再発。現役引退となった。通算16戦3勝。
結局、菊花賞の後には勝利を挙げられず、ぶっちゃけゼロ年代に多かった「後が続かなかった菊花賞馬」の1頭である(ソングオブウインド、オウケンブルースリ、アサクサキングス、スリーロールス、ビッグウィーク……)。
特にイングランディーレに大逃げ大波乱を許し「4歳4強」というくくりが一瞬で消滅することになった、春天の16着という惨敗の印象が評価の足を引っぱっているのは否めない。ボリクリに先着したJCはむしろ2番手で後続に蓋をする格好になってしまい逃げたタップに9馬身ぶっちぎられ、それでタップを潰しにいった有馬は共倒れになりボリクリの9馬身差返しをアシスト。金鯱賞と宝塚ではまたタップにいいようにやられ、その後は故障……と、菊花賞の後は語りたくなるような走りを見せられなかった。
それでも彼の場合「ネオユニヴァースの三冠を阻んだ」という切り口があるだけまだ……と思いきや、肝心のネオユニヴァースが古馬でほとんど活躍しないまますぐ引退してしまったこともあり、そもそもネオユニヴァースが3着だったこともあって、そのことすらロクに語られない。結果、エイシンチャンプやウインクリューガーのようにネタ扱いすらされるでもなく、世代全体として影が薄いと言われがちな2003年クラシック世代のGⅠ馬の中でもひときわ影が薄い存在になってしまっている。
菊花賞のロングスパート捲りはミスターシービーやゴールドシップという偉大すぎる先達と後輩がいるし、ダンスインザダークとの菊花賞親子制覇ですらデルタブルースとスリーロールスがいるもんなあ……。
他のレースの内容を見る限りでも、決して弱いわけではないのだが、ネオユニヴァースやゼンノロブロイ、リンカーンらにはあと一歩及ばないぐらいの実力だったことは否定しがたい。しかしだからといって、菊花賞での勝利はまぐれの一発と貶められるようなものでは決してない。父譲りのスタミナを信じて思い切ったロングスパートの捲りを仕掛けて、まんまと二冠馬を押し切ったアンカツの名騎乗は、記憶に留めておきたいところである。
引退後は社台スタリオンステーションで種牡馬入りしたが、集まった牝馬は初年度で51頭に留まり、たった1年で社台SSを追い出されてしまう。
レックススタッドに移動して種牡馬を続けたが、3年目にはもう種付け数が5頭まで落ち込み、結局2010年限りで種牡馬引退。産駒は5世代で61頭、活躍馬は全く出せなかった。……これでもダンスインザダークの後継種牡馬では一番産駒が多い(ツルマルボーイは48頭、スリーロールスは29頭、デルタブルースはそもそも種牡馬になれず)というのが切ない。
その後はノーザンホースパークで乗馬となり、2017年に引退名馬繋養展示事業の対象となって南幌ライディングパークに移動。2005年の安田記念馬アサクサデンエンと一緒に余生を過ごすことになった。
2023年、「ナイスネイチャ・35歳のバースデードネーション」の支援対象となり、アサクサデンエンともども引退馬協会のフォスターホースとして受け入れられることとなった。
ダンスインザダーク 1993 鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ダンシングキイ 1983 鹿毛 |
Nijinsky II | Northern Dancer | |
Flaming Page | |||
Key Partner | Key to the Mint | ||
Native Partner | |||
*バブルプロスペクター 1984 栗毛 FNo.1-b |
Miswaki 1978 栗毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
Hopespringseternal | Buckpasser | ||
Rose Bower | |||
*バブルカンパニー 1977 栗毛 |
Lyphard | Northern Dancer | |
Goofed | |||
Prodice | Prominer | ||
Euridice |
クロス:Northern Dancer 4×4(12.50%)、Raise a Native 5×4(9.38%)
掲示板
2 ななしのよっしん
2023/04/20(木) 11:44:39 ID: yL8HJaqEJB
リンカーンよりは上じゃね?
3 ななしのよっしん
2023/07/01(土) 13:45:38 ID: X43Lb+vLZV
アサクサデンエンと共に
アサクサデンエン、ザッツザプレンティが「ナイスネイチャ・35歳のバースデードネーション」受け入れ馬に
https://
4 ななしのよっしん
2023/12/28(木) 19:39:16 ID: kecWcj8arh
2023年ホープフルステークスの名馬の肖像に選ばれてた。タイトルは「頑強なり」。
急上昇ワード改
最終更新:2024/04/20(土) 10:00
最終更新:2024/04/20(土) 10:00
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