シオヤアブ(塩屋虻)とは、ハエ目ムシヒキアブ科に属する完全変態昆虫の一種である。
北海道から沖縄にかけて、ほぼ日本本土全域に生息する褐色の大型ムシヒキアブ。食性は肉食で他の昆虫を捕食する。主に6月から9月の間に活動し、そのうるさい羽音から比較的見つけやすく、自然の多い場所なら公園の中でもよく見かける事から馴染み深い昆虫の一匹と言える。オスの尻尾の先についた白い毛が塩のように見える事から塩屋虻(シオヤアブ)と命名された。この白い毛はメスには無く、またメスの方が大きい体をしているので雌雄の区別は容易。
ハエ目は全世界で9万種に及ぶ昆虫が属するカテゴリーだがその多くが害虫に分類される問題児集団。ただしシオヤアブは人を襲う事は滅多になく、芝生を枯らすコガネムシの幼虫を捕食してくれるので益虫の見方がある珍しい昆虫。
地面から1m程度の葉の裏に親が100個ほどの卵で形成された卵塊を産み付け、泡状の分泌物で覆って卵鞘を作る。シオヤアブの卵はタマゴクロバチの寄生対象となっており、孵る前に食べられてしまう事もある。卵の状態から既に生存競争が始まっているのだ。タマゴクロバチの寄生を免れた卵は約1週間ほどで孵り、卵の中から出てきたばかりの幼虫は白い芋虫のような姿をしている。
卵があった葉っぱの裏からポトリと落ちると土の中や朽ち木を住み処にして過ごす。主にネキリムシやコガネムシといった芝生を荒らす害虫を捕食して育つので、益虫として見られるとか。そして幼虫のまま越冬するが何年越冬するかは不明とされる(1~3年が有力)。成長した幼虫はサナギとなり、1~2週間かけて変態し、いよいよ空へと羽ばたく成虫に進化。ちなみに木の幹だけでなく地面でも堂々とサナギ化する。
羽化して成虫になると空を自由に飛び回り、主に陽の当たる場所で活動してチョウや蛾等の昆虫を捕食。成虫は6月から9月にかけて姿を見せるが地域によっては4月頃からでも見られる。早く伴侶が見つかれば約1週間後に産卵を行う。交尾する前に仕留めた獲物を伴侶に贈る生態もあるようで、割と恋人に対するアプローチは人間くさいようだ(求愛の際にメスに食わないようにするための囮説もある)。成虫の寿命は1ヶ月ほど。
まず獲物が通りがかるのを葉っぱの裏や空中で待ち伏せる。シオヤアブには広く見渡せる複眼を持っており、加えて高い視力で数メートル先の獲物を捕捉出来るなど高い索敵能力を持つ。このためトンボのような素早い獲物であってもスローモーションで動いているように見えるらしい。獲物を見つけると背後から一瞬で襲い掛かり、ガッチリと獲物を捕獲した上で太い口器をブッ刺して神経節を切断。口器は甲虫類の堅い甲でさえも突き破る鋭さと頑丈さを持ったシオヤアブ自慢の武器である。こうして仕留めた獲物を抱えて近くの葉の上まで移動、そのまま消化液を流し込んで体内をドロドロに溶かしたのち、体液を吸い取って暗殺する。まさに一撃必殺を極めた暗殺者のような狩りである。獲物の体液を吸っている時は非常に集中しているようで、仮に人が近づいたり、つっつかれても無視して吸い続けるんだとか。
基本的に自分より小さな(厳密には自分の脚で取り押さえられるサイズの)昆虫を襲う。これは獲物からの反撃を防ぐための対策である。普段はコガネムシやカミキリムシ、セミといった甲虫類を捕食し、蚊やテントウムシのような小型な虫も狙うが、こちらはあまり例が無い。だがシオヤアブの恐ろしい所はスズメバチ、オニヤンマ、カマキリ、カブトムシ、クワガタムシといった強豪昆虫をも襲撃し、上手く行けばそのまま捕食してしまう点にある。強豪とは行かずとも自分より大きいシオカラトンボやカナブンを相手に勝利した記録もある。場合によっては同胞でさえも襲って共食いする例があり、その獰猛さから上位の捕食者として最強議論に名前が挙がるほど。ただし一撃に全てを賭ける暗殺者スタイルの都合上、勝利するのは不意打ちに成功した場合のみであり、不意打ちに失敗する、もしくは相手から先制攻撃を受けるとあえなく返り討ちに遭ってしまう。シオヤアブには口器以外の武器が無く、強力なアゴや毒針も持っていないのだ。またミツバチの毒にすらやられる耐久性の無さも問題。
ちなみに少数ながら人間を襲った事もある。太い口器を刺されるため痛みを伴ったり、腫れたりする。とはいえスズメバチ等と比べれば遥かに大人しいので刺される事は殆ど無い。
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最終更新:2024/04/18(木) 06:00
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