シンハライト(Sinhalite)とは、2013年生まれの日本の競走馬。黒鹿毛の牝馬。
6戦5勝、ハナ差2着1回という完璧な成績を残したが、自身も鎬を削ったライバルもみんな早期引退してしまったため、なんだか影の薄い2016年のオークス馬。
主な勝ち鞍
2016年:優駿牝馬(GⅠ)、ローズステークス(GⅡ)、チューリップ賞(GⅢ)
父ディープインパクト、母*シンハリーズ、母父Singspielという血統。
父は説明不要、無敗の三冠馬&無敵のリーディングサイアー。
母はイギリス産馬で、アメリカで2005年のデルマーオークス(GⅠ)を勝った馬。日本のシーザリオが勝った同年のアメリカンオークスの3着馬でもある。引退後、社台グループが購入しノーザンファームで繁殖牝馬となった。
母父は1996年のジャパンカップなど世界でGⅠ4勝を挙げたイギリスの馬。日本ではアサクサデンエンやローエングリンが代表産駒となる。
全兄に2011年のラジオNIKKEI杯2歳Sを勝ったアダムスピーク、半姉に2016年のマーメイドSを勝ったリラヴァティ(父ゼンノロブロイ)がいる。
馬体重はデビューから引退まで430kg前後で、牝馬としても小柄な部類の馬であった。
2013年4月11日、ノーザンファームで誕生。オーナーは一口馬主クラブのキャロットファーム。1口11万円×400口(=4400万円)で募集された。
主戦騎手は池添謙一で、デビューから引退まで全戦に騎乗した。
馬名意味は「宝石名。輝かしい成績をおさめられるように。母名より連想」。
ジェンティルドンナで知られる栗東の石坂正厩舎に入厩。デビューは2015年10月10日、京都・芝1600mの牝馬限定の新馬戦。単勝2.4倍の1番人気に支持され、外目の3番手の好位で先行すると、直線で力強く加速して抜け出す。外から後にクラスターカップを勝つ3番人気オウケンビリーヴが食い下がってきたが寄せ付けず、1と1/4馬身差をつけて完勝。池添騎手も「センスが抜群。こんなに柔らかいフットワークの馬に乗ったのは久しぶり。後ろが来たら来るだけ伸びそうだった。今後が楽しみ」と絶賛。
焦らず2歳時はこの1戦のみで終え、明けて3歳、初戦は1月の紅梅ステークス(OP)。単勝3.0倍の1番人気に支持される。ここはスタートで出遅れ後方からのレースとなったが、直線残り200mで外から一気に加速して先行集団を呑み込む。大外から2番人気ワントゥワンが追い込んできて、最後は横並びでのゴールとなったが、ハナ差凌いで2連勝を飾った。
この節の文章は、ジュエラーの記事とほとんど同じです。 なんでそうなったかはこの2レースの映像とデータをご覧ください。 |
陣営は桜花賞直行も考えたが、結局トライアルのチューリップ賞(GⅢ)へ。ここで彼女は最大のライバルと出会う。重賞4勝を挙げたワンカラットの半妹で、デビュー戦を後方一気の末脚で圧勝、2戦目のシンザン記念でも断然の上がり最速でクビ差2着という走りを見せたジュエラーである。重賞5連勝中のミルコ・デムーロが騎乗し、牡馬相手に強さを見せたジュエラーが2.0倍の1番人気。シンハライトは5.6倍の2番人気となった。
レースは後の秋華賞馬ヴィブロスが逃げ、シンハライトとジュエラーは中団後方、全く同じ位置に並んで構える。直線入口で前にいた馬が外に膨れ、その煽りでシンハライトも少し膨れてしまうと、ジュエラーのデムーロはすかさずその隙間に突っ込んで行く。シンハライトの池添も負けじとそれを追いかけ、直線300mにわたっての馬体を併せての激しい追い比べに突入。どちらも一歩も譲らない熾烈な叩き合いの末、2頭が完全に横並びでゴール。写真判定になったが、シンハライトがハナ差かわしていた。
勝ちタイム1:32.8は桜花賞のレースレコード(アパパネとハープスターの1:33.3)を0.5秒上回るタイム。2頭の上がり3Fは33秒0を叩き出すハイレベルな激闘だった。
この年の牝馬クラシックは、阪神JFとクイーンカップを圧勝したメジャーエンブレムが絶対的本命と見られていたが、このチューリップ賞の激闘で、シンハライトとジュエラーはそれを追う存在となる。
迎えた本番、桜花賞(GⅠ)。メジャーエンブレムが1.5倍の圧倒的1番人気で、シンハライトとジュエラーはそれぞれ4.9倍、5.0倍の2番人気と3番人気。4番人気は22.0倍で、完全にこの3頭の3強対決という様相だった。とはいえクイーンカップで圧巻のハイラップ逃げを見せたメジャーエンブレムが余程のことがない限り揺るがぬ大本命、チューリップ賞組の2頭は末脚勝負に持ち込んでも果たして逃げるメジャーエンブレムに届くかどうか……というのが概ね戦前の予想であった。
ところが、レースというのは何が起こるかわからない。なんと大本命メジャーエンブレムがスタートで躓き逃げられなかったのである。人気薄が先行集団を作る中、シンハライトは中団待機になったメジャーエンブレムと同じような位置の外目で進め、ジュエラーは後方2番手で待機。鞍上の池添はメジャーエンブレムが中団にいるのを見て驚き、メジャーエンブレムを目標にする予定を慌てて切り替えることになった。
緩いペースで直線末脚勝負の展開となり、外を回ったシンハライトは直線で満を持して馬場の真ん中どころから抜け出しを図る。メジャーエンブレムも馬群を割って抜け出してきたが、それを置き去りにして突き抜けるシンハライト。だがそこに、大外からジュエラーが飛んできた!
外を突いてはシンハライトにメジャーエンブレム、シンハライトにメジャーエンブレム、
さらに外からは、アットザシーサイド、アットザシーサイド!
そして外から来た! ジュエラーが来た! ジュエラーが来た!
さあ前の争いですが、シンハライト、シンハライト、
そして外から、ジュエラーが接近する、ジュエラーが接近する!
シンハライト! ジュエラー! シンハライト! ジュエラー!
まーったく並んでゴールイン!
完全に抜け出したシンハライトに、猛然と迫るジュエラー。チューリップ賞に続いて2頭の激しい叩き合いとなり、またしても2頭まったく並んでゴール。再びの写真判定となった。
長い写真判定の末、結果は僅か2センチ差でジュエラーに軍配。チューリップ賞のリベンジを果たされ、悔しい2着となった。池添騎手は「流れに乗れて、理想的な形でレースを進められました。ただ、先頭に立つのが少し早く、それだけが誤算でした。悔しいです」とのコメント。
続いて優駿牝馬(GⅠ)に向かったシンハライト。桜花賞で敗れたジュエラーは骨折で離脱、メジャーエンブレムは距離適性を鑑みてNHKマイルカップに向かった(そして勝った)ため、ライバル不在となった彼女は単勝2.0倍の圧倒的1番人気に支持される。2番人気は3連勝でフローラSを勝ってきたチェッキーノ(4.0倍)で、3番人気からはもう10倍超なので、シンハライトとしてはジュエラーのぶんも絶対に負けられない一戦だった。
スタートでダッシュがつかず後方待機となったシンハライト。レースは最低人気ダンツペンダントが逃げ、緩みのないラップで流れる展開。直線に入り、中団で進めたミルコ・デムーロの5番人気ビッシュが抜け出す。シンハライトはまだ馬群の後ろ。外からは2番人気チェッキーノが追い込んできて、この2頭の争いか――と思った瞬間、馬群を突き破るように間から抜け出してきたのはシンハライト! あっという間にビッシュとチェッキーノを捕らえ、最後はクビ差かわしてゴールへと飛び込んだ。
こうしてシンハライトは桜花賞の悔しさを晴らし、3強の誇りを賭けた樫の女王の座を勝ち取った。
……のだが、このレースは後味の悪い論議を呼ぶことになる。なんでかというと、最後に馬群を抜け出そうとした際、シンハライトは外に持ち出そうとして隣にいたデンコウアンジュ(9着)の進路を妨害していたのだ。
デンコウアンジュが不利を受けたのは明らかだったが、採決の結果は降着・失格などはなし。池添騎手が2日間の騎乗停止という処分となった(これで池添騎手は翌週の日本ダービーに騎乗できず)。
池添騎手はトールポピーで勝った2008年のオークスでも同様に降着なしの騎乗停止処分を食らった前科があったため、なおさら「またか」という感じで、ルールとはいえもともと「やったもん勝ち」という批判のある降着ルールに関して論議を呼んだ。
ちなみに同年の皐月賞ではリオンディーズが4位入線から5着に降着を食らっている。
せっかくのクラシック制覇にちょっとケチがついてしまったシンハライト。秋華賞でジュエラーやメジャーエンブレムと改めて決着をつけるべく、秋はローズステークス(GⅡ)から始動。復帰戦のジュエラーも出走してくる中、単勝1.6倍の圧倒的支持を受けると、今回はジュエラーが先行するのに対してこちらは後方待機。直線に入ると大外から一気の末脚を繰り出し、重馬場もものともせず、逃げ粘るクロコスミアをハナ差差し切ってきっちり勝利。11着に沈んだジュエラーとは対照的に、秋華賞へ万全、視界良好……のはずだった。
だが、秋華賞へ向けて調整中の10月4日、左前脚に腫れが確認される。エコー検査の結果は浅屈腱炎。秋華賞を回避し休養に入ったが、結局そのまま11月に現役引退、繁殖入りが発表された。
秋華賞で決着をつけるはずだったライバル2頭は、メジャーエンブレムも原因不明の筋肉痛で紫苑Sを回避したあと、結局治らず競走能力喪失と診断され翌年1月に引退。ジュエラーは秋華賞に出たもののヴィブロスの4着に敗れ、レース後に筋肉痛を発症しエリザベス女王杯を回避。さらに翌年3月に骨折が重なり、こちらもそのまま現役引退となった。
2016年牝馬クラシック3強はこうして、全員が古馬として走ることなくターフを去った。
シンハライトは通算6戦5勝、ハナ差2着1回。ほぼ完璧な成績である。だが、自身も鎬を削ったライバルも全員古馬と戦うことなく引退してしまったため、その実力を証明する術はなかった。2017年のドバイターフを勝つなど、この世代の牝馬で最も活躍したヴィブロスは桜花賞・オークスとも出走すらできなかっただけに尚更、シンハライトがどのくらい強かったのかは想像の域を出ない。せめて秋華賞でヴィブロスを含めてきっちり激突できていれば、あるいは3強のうち誰か1頭でも古馬戦線で活躍していれば、この3強のライバル関係はもうちょっと語られたであろうに……。
JRA賞最優秀3歳牝馬は貰えたが、オークスの勝利がやや後味の悪いものになってしまったことも含め、なんというか自分自身とは関係のないところまで含めて運のない馬であった。
引退後はノーザンファームで繁殖入り。道半ばで途切れてしまった夢は、子供たちに期待したい。
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ウインドインハーヘア 1991 鹿毛 |
Alzao | Lyphard | |
Lady Rebecca | |||
Burghclere | Busted | ||
Highclere | |||
*シンハリーズ 2002 栗毛 FNo.6-e |
Singspiel 1992 鹿毛 |
In the Wings | Sadler's Wells |
*ハイホーク | |||
Glorious Song | Halo | ||
Ballade | |||
Baize 1993 栗毛 |
Efisio | Formidable | |
Eldoret | |||
Bayonne | Bay Express | ||
Lambay |
クロス:Halo 3×4(18.75%)、Northern Dancer 5×5(6.25%)
掲示板
1 ななしのよっしん
2024/09/24(火) 23:25:46 ID: ld5mbLJ3xa
強かったのにほぼほぼ語られないのなんでだろうか
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/12(木) 22:00
最終更新:2024/12/12(木) 22:00
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