シンハラ文字

シンハラ文字とは、スリランカの公用語であるシンハラ語で使用される表音文字の一種。

概要

インドの文字であるデーヴァナーガリー等と同様、ブラーフミー文字を先祖とする文字である。

「＠」記号のような渦巻状の字形が多く、これは当初文字が椰子を加工した貝葉 (ばいよう) という媒体に書かれ、この時直線で書くと葉が破れてしまうため、文字を丸く書く習慣が付いて今の形になったものである。また、他のインド諸語には見られない母音 (/æ/) や前鼻音化子音 (/ⁿɡa/ 等) を表すための文字が追加されている事や、子音結合文字があまり使われないのも特徴である。

数字は独自の物が存在し、1～10の他に20、30、40等を表す単一の数字もあったが、現在はヨーロッパと同じアラビア数字を使用している。

文字の一覧

基本文字

母音文字
	/a/		/æ/		/i/		/u/		/ru/		/li/
	/aː/		/æː/		/iː/		/uː/		/ruː/		/liː/
	/e/		/o/
	/eː/		/oː/
	/ai/		/au/

子音文字
	/ka/		/ka/		/ɡa/		/ɡa/		/ŋa/		/ⁿɡa/
	/tʃa/		/tʃa/		/dʒa/		/dʒa/		/ɲa/		/ⁿdʒa/
	/ʈa/		/ʈa/		/ɖa/		/ɖa/		/na/		/ⁿɖa/
	/ta/		/ta/		/da/		/da/		/na/		/ⁿda/
	/pa/		/pa/		/ba/		/ba/		/ma/		/mba/
	/ja/		/ra/		/la/		/ʋa/
	/sa/		/sa/		/sa/
	/ha/
	/la/		/fa/

他のインド系諸語に見られる子音の有気・無気の区別は、シンハラ語では文字の上では存在しているが、発音の上では区別していない。上掲の文字の他、外来語の発音を表すためラテン文字を併用した表記も行われる ( /za/、 /fa/)。

子音文字を子音だけで読む場合は、文字の頭に を付ける ( /k/)。なお や 等、上部に円弧状の筆画を持つ文字については変形した形で書かれる ( /k/、 /ŋ/)。

子音文字+母音半体記号 (paと結合した例)
	/pa/		/pæ/		/pi/		/pu/		/pru/		/pli/
	/paː/		/pæː/		/piː/		/puː/		/pruː/		/pliː/
	/pe/		/po/
	/peː/		/poː/
	/pai/		/pau/

他の子音文字と結合する場合も同様の形を取るが、子音文字によっては母音半体記号が以下の形に変化する。特に /u/ と /uː/ に関しては例外が多い。

• が 、 と結合する時は一体化してそれぞれ /ræ/、 /ræː/ の形になり、、 と結合する時はそれぞれ /ru/、 /ruː/ の形になる。
• が 、 と結合する時はそれぞれ /ku/、 /kuː/ の形になる。、、 等も同様である。
• が 、 と結合する時はそれぞれ /lu/、 /luː/ の形になる。
• 、、 が 、、、 等と結合する時は母音記号を小さく書く ( /ɲaː/、 /dæ/)。

子音の結合文字

以下の結合文字が存在する。、、 については、 以外の子音文字に対しても使用される。

		/kja/			/kra/			/rka/			/kʋa/
		/ksa/			/tta/			/nda/			/nda/

参考文献

• 「華麗なるインド系文字」(町田和彦編著、白水社、2001)

関連動画

関連商品

関連項目

• ブラーフミー系文字
• 文字体系の一覧
• スリランカ

外部リンク

• かしゃぐら通信 - スリランカおよびシンハラ語の情報。「シンハラ語質問箱」にシンハラ文字の書き順の解説がある。
• Local Languages | Official Sinhala unicode - 上掲の文字画像はこのサイトで配布されているフォント「Potha」に基づいて作成。
  • こちらに移転済み ＞ Local Language Portal