シーレーンとは、元来は船舶の海上交通路(航路)のことであるが、一国の通商上・戦略上、重要な価値を有し、有事に際して確保すべきものとされる。ただし最近では英語のSLOC(sea lines of communication)からSLOCs とよばれることがおおい。
一般に海には道路がないため、どこを航行しても良い、と考える人がいるが実際のところは港湾設備・海峡・運河・地形(島も含む)・海流・気候などなどの諸条件により"運用しやすい"航路に収束していくことになる。
これが海上航路(シーレーン)と発生理由でもある。これは古代から文明の発達経路、あるいは諸国の勃興に大きくかかわっていた。
人類の文明、科学技術の発展により海上交通路は時折変化を及ぼす。たとえばスエズ運河、パナマ運河の誕生がそれであり、この誕生によりそれまでのアフリカ南端喜望峰回りのルート、そして南米南端のホーン岬のルートの重要性が著しく減じることになった(というより二つの運河建造の理由が、荒天が多く船舶の航行が厳しい二つのルートをなんとかして安全にかつ早く航行したいという要望のもとに生まれたのだが)。
そして海上交通路を多数の船が通る場所は世界で数か所、先のスエズ運河(地中海=紅海)、パナマ運河(大西洋=太平洋)、ホルムズ海峡(ペルシャ湾=アラビア海)、マラッカ海峡・シンガポール海峡(インド洋=南シナ海)があげられる。
(最近では地球温暖化の影響か、ロシア北極海側の船舶航行が可能になりつつあるとされ北極海ルートの確立が取沙汰されている。これが成立すると欧州=アジアの海路ルートが大きく変化し、アリューシャン列島付近に新たな海上交通路が発生すると論じられてもいる)
人類文明の発展に伴い、船舶が大型化・高速化するにつれ物資輸送手段として船舶輸送の比重が大きくなると海上交通路の重要性はより重要性を増。アメリカ独立戦争、ナポレオン戦争などにおいてこの海上交通路の封鎖問題が大きく注目されることになっていった。
海上交通路を阻害することにより敵対国の経済活動を阻害するだけでなく、上陸した自国、あるいは同盟国陸軍に対する補給等兵站路の維持としても海上航路の保持、あるいは阻止は重要な要素となっていった。
(またシーレーンに隣接する沿岸国の政情不安・戦争あるいは治安悪化などの不安定要因は短期、中期に問わずそのシーレーンを航行する商船団に影響を与え、国の経済に重要な影響を及ぼしかねないこともある。ペルシャ湾岸諸国の政情不安、戦争はまさしくそれであり、マラッカ海峡、アラビア海の海賊問題などが後者にあたる。)
このように自国及び自国が影響を及ぼしたい地域につながるシーレーン(SLOCs)、そしてそれが接続する海域及び沿岸地域に対して影響力を保持できる力を制海権…現在ではより相対的なものとして海上優勢…と呼び、それを好きな時に好きなだけ維持しうるだけの力を海上権力(シーパワー)と呼んでいる。
19世紀末、アメリカのアルフレッド・セイヤー・マハンが論じた「海上権力史論」はその後の海軍戦略に多大な影響を与え、海上権力(シーパワー)は地政学を論じる上でも重要な要素とされている。
(現在では、中国の自国沿岸部に対して影響を排除する接近阻止・領域拒否(A2/AD:Anti-Access/Area Denial)も取沙汰されているので興味がある方はwikipediaなど各種新聞、論文を参考にしたほうがいいだろう)
あまり認識されていないが、日本という島国(弧状列島)は太古から海上交通路に纏わる様々な問題にかかわっている。
たとえば大陸、半島からの文明、技術、人の流入が可能になったのもその一つであるし、白村江の戦いは実質朝鮮半島との海上交通路を失った日本(倭国)の敗北でもあったし、それは豊臣秀吉の二度にわたる朝鮮の役でも変わらない。
江戸時代ではあまりイメージがないかもしれないが、江戸の物流を支えていたのは大阪、あるいは北前船などに代表される北日本からの海上交通路からの海運であった。ペリー来航は、その技術力もさることながら首都でもある大都市江戸の輸送路が阻害されるという軍事的な衝撃も大きかったとされる(事実、幕末から江戸の港を守るための台場(砲台)を建造を始めている)。
日清・日露戦争、特に日露戦争は朝鮮半島への物資・人員輸送のための海上交通路保持のためにウラジオストック艦隊及びバルチック艦隊をいかに無力化するかが日本(海軍)の至上命題になったし、前後して上村艦隊と常陸丸事件などはその後の太平洋戦争における問題を予見しているかのようでもある。
太平洋戦争についてはあまり論じる必要はないかもしれない。興味のある方は兵站、あるいは海上護衛について記述している大井篤氏の項目を参考にしてほしい。
現在、日本は経済活動や国民生活に必要な資源の7割以上を国外からの輸入に依存しているが、周りを海に囲まれた島国である為資源を供給するルートの9割以上は海上輸送である。シーレーンが断たれれば石油や天然ガスといったエネルギー資源や工業資源・食糧の安定供給が断たれることとなり日本とって死活問題でシーレーン防衛は安全保障上、重要な課題である。
しかし、2016年6月27日、シーレーンの最重要 国であるフィリピンが、中国側に寝返った。大統領が、アメリカ側だったアキノから親中派のドゥテルテに交代した為だ [1]。つまり、日本は、現在、中東以外の国から天然資源の輸入拡大を迫られている。
掲示板
69 ななしのよっしん
2023/10/02(月) 16:08:53 ID: lgcj7hn+L9
仮にあったとしてもだ、マラッカ海峡やバシー海峡を封鎖したら、
ASEAN諸国とオセアニア諸国全部敵に回す羽目にならないか?と
そもそも論として日本に向かう外国の船を封鎖線で拿捕なり撃沈なりできるもんなのかと。
それやったWWIドイツさんはどうなりましたっけ?って
70 ななしのよっしん
2023/10/03(火) 07:11:12 ID: yMZNKW4PdR
常識的に考えて中露は、中立国には日本への禁輸か日本と交易して撃沈されるかの二択を求めるだろうな
中露がQアノンやEU懐疑派を支援するのも、開戦しても日台に欧米の補給物質が集積していては勝ち目がなくなるからだろう
シーレーン防衛は軍事問題であると同時に外交問題だという事になる
71 ななしのよっしん
2024/05/26(日) 01:27:18 ID: sn1WDaQqGZ
中国のシーレーン制圧策は軍事以上に政治経済の面が大きいので、純粋に軍事次元だけで語るべきじゃない
まぁ政治経済的にうまくいってるかというとアレだけど
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最終更新:2025/03/26(水) 17:00
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