ジオング整備士とは、機動戦士ガンダム第42話の1シーンに登場するジオン公国軍の名も無き整備兵である。ジオングの脚について「あんなの飾りです。偉い人にはそれが分からんのですよ」という名台詞を残している。声優は二又一成(TV版)、島田敏(劇場版)。
おそらくガンダム史上最も有名な無名兵士。宇宙要塞ア・バオア・クー所属の技術整備兵で階級は軍曹。ジオングの整備担当であり、同機体の性能に全幅の信頼を寄せている。
ただし、ジオングはサイコミュ(精神感応で兵器を遠隔コントロールするシステム)をモビルスーツ(MS)に搭載した実用試験機のようなもので、まだ上腕の装甲と脚部一式が取り付けられていない完成度80%の状態であり、さらにテストすらしていない代物だった。
ギレン・ザビも機体の存在は知っていたが、殆ど重要視していなかった。そうした上層部のジオングに対する認識に不満があるようで、それは整備士のセリフの端から読み取れる。
他に乗る機体が無いという理由でジオングを押し付けられたシャアにしても「80%か・・・」と独り言を呟くなどかなり不安げな様子だった。
一方、この整備士は上官であるシャアに対して物怖じすることなく「現状でジオングの性能は100%出せます」と豪語している。その際の二人のやりとりはガンダムシリーズでも有名なワンシーンとして知られている。
ジオング整備士
「80パーセント? 冗談じゃありません。現状でジオングの性能は100パーセント出せます」シャア
「足は付いていない」ジオング整備士
「あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」シャア
「使い方はさっきの説明でわかるが、サイコミュな、私に使えるか?」ジオング整備士
「大佐のニュータイプの能力は未知数です、保証できる訳ありません」シャア
「はっきり言う。気にいらんな」ジオング整備士
「どうも。気休めかもしれませんが、大佐ならうまくやれますよ」
このやりとりは、ジオングに対する不安の色を隠せないシャアを安心させるための芝居であるという解釈もあるが、この後出撃したシャアはガンダムと遭遇するまでにMS18機と戦艦4隻を撃破し、対ガンダムでは相打ちまでもっていっている。
今までガンダムに全く歯が立たなかったシャアをして、初めてのサイコミュ搭載機、初めての大型MS、テストもろくにしていない機体でこの戦果である。これはやはり、整備士の言葉に裏表は無く、事実ジオングの性能が100%発揮されたことの証明ではないだろうか?
後に付け足された設定ではあるが、ジオング以前にサイコミュをMSに搭載する試験機としてサイコミュ高機動試験用ザクというものがあり、これは宇宙空間での高機動性を実現するために足の代わりに大推力のロケットエンジンが取り付けられている。整備士の足が飾りであるという主張はこの辺りと繋がるのかもしれない。
なお、ア・バオア・クー陥落後の彼の行方だが、漫画『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』に登場し生存が確認された。パーフェクトジオングの整備士として「(足は)まんざら飾りでもなかった」と前言を撤回している。
シャアの「はっきり言う。気にいらんな」というセリフは、「不安そうにしているパイロットにネガティブなことをハッキリと伝える無神経さが気に入らない」という意味合いである。一連のやり取りを文章で見た人からは「『気に入らない』という意思をはっきり宣言した」と誤解されがちだが、ちゃんと音声で聞けば判別できるだろう。また、シャアは本気で怒っている訳でも無く、和やかな軽口の叩き合いといった雰囲気での会話だということも文章で読んだ人には伝わっていないことが多いようだ。
ガンダムエースで連載された短編小説集「ガンダムNOVELS―閃光となった戦士たち」においてはリオ・マリーニという名で登場している。
一方、月刊ガンダムA 2010年12月号(通算100号)の『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』においては、シャア・アズナブルの「君のモノ言いは面白い 名前はなんだ?」との問いに、「サキオカ少尉であります」と答えている。
どちらも公式媒体での描写だが、「閃光となった戦士たち」はライトノベル作家によるオムニバス小説のため公式二次創作のような扱いを受けることが多く、「THE ORIGIN」はオリジナルから設定の見直しが行われた再構成作品のため、どちらが正しい公式名称とも言い切れない。現状、「ジオング整備士」が一番誤解無く伝わる呼称と言えるだろう。
ガンダムに名セリフは多いが、「あんなの飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ」ほど多くのパロディを生み、ガンダムという作品を越えて広く知られるようになったセリフも多くはないだろう。
これは主に「○○は飾りです。偉い人にはわからんのです」という形で用いられ、上司や社会的地位の高い人に理解されない現場の悲哀を面白おかしく、或いは自虐的に語る一種の慣用句になっている。
よく「足なんて飾りです。偉い人には~」と勘違いされるが、原作のセリフは「足が無い」という指摘に対して「あんなの飾りです」と言っており、「足なんて」と直接部位を指しているわけではない。これは元ネタをわかりやすくするのに改変したものが流布した結果だと思われる。
『機動戦士ガンダムIII・めぐりあい宇宙編』以降も小説やマンガ、ゲームなどでシャアとのかけあいシーンが再現されるたびに登場している。ただし、モブ扱いされるせいか声優は定まっておらず、その都度で変わることが多い。
また、2007年に発売されたケツメイシのアルバム「ケツノポリス5」のテレビCMにおいて、シャアとのやり取りのシーンが新作のセリフをかぶせられ使用されているが、声優は不明。→2021年1月24日、声優の服巻浩司氏が自身のTwitterにて、この時の整備士の声をつとめたと公表。
上記の「ガンダムNOVELS―閃光となった戦士たち」に収録されている短編小説「月光の夢、宇宙(そら)の魂」においては主人公、リオ・マリーニとして登場する。
ジオニック社においてゲルググの開発を担当していた彼は、ツイマッド社でギャンの開発を担当する親友との交流や、次期主力機コンベンションに関わる人々の醜い争いから、全企業が団結し、ジオンの全技術を結集したMSを生み出せればという夢を抱く。
そんな中、フラナガン機関に所属していた先輩からニュータイプ用MSの開発を託された彼は、自身の持つジオニックの技術とツイマッド社、そしてフラナガン機関の技術を結集したジオングの開発に成功する。その後、ジオングを現地で整備する為に志願兵となり、ア・バオアクー防衛隊に配属。シャアと一連のやりとりを行った後、夢を成し遂げた感慨と共に放置されていた旧ザクに乗り込み、光の中に消えていった。なお、本作のジオングは当初から脚部を廃して設計されているが、軍上層部等からの反感を避ける為、未完成という名目になっている。
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最終更新:2024/04/19(金) 12:00
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