『スター・ウォーズ 外宇宙航行計画』(Star Wars: Outbound Flight)とは、『スター・ウォーズ』サーガの小説である。
「レジェンズ」作品群に属する。単巻。著者はティモシイ・ザーン。
なお、当記事における人名・役職名など固有名詞の日本語表記は、原則的に本書邦訳に基づく。
かつてスローン三部作でわずかに触れられた旧共和国時代のアウトバウンド・フライト計画を主題とし、密輸商船の乗組員ジョージ・カーダスと若きジェダイ、ロラナ・ジンズラーを主な視点として、その華々しい出発と悲劇的な結末を描いた長編小説。
同作者の『生存者の探索』に続いてアウトバウンド・フライト二部作を構成するが、後の時代を舞台にアウトバウンド・フライトの結末のその後を描いた前作『生存者の探索』に対して、本作は時間を遡って結末に至るまでを描いたものであり、いわば映画旧三部作に対する新三部作にあたる。作者ザーンとしてははじめて旧共和国時代を舞台にした長篇小説でもある。
原著は長編小説単巻(ハードカバー)で2006年刊行。邦訳は同年に文庫版上下巻構成でソニー・マガジンズより出版された。日本語訳は富永和子によるもので、邦訳本表紙イラストは長野剛が担当した。
本作では、アウトバウンド・フライトのみならず作者ザーンがこれまでのスローン三部作やハンド・オブ・スローン二部作で登場させてきた未知領域(アンノウン・リージョン)の種族チス、ジェダイ・マスターのジョラス・シボース、ジョージ・カーダスといった要素に光が当てられた。こと若き日のスローン大提督に関しては、その縦横無尽の天才的頭脳をいかんなく描き出している。
時はクローン大戦勃発より5年前、ジェダイが各地の紛争解決に忙殺されつつある時代。老ジェダイ・マスター、ジョラス・シボースは、弟子ロラナ・ジンズラーを連れて向かった惑星バーロクの紛争を電撃的に解決し、彼が主導するある計画への銀河共和国からの予算を復活させることに成功する。計画の名はアウトバウンド・フライト。未知領域を経て遠く外宇宙を目指す、壮大な調査移民だった。
5万人の人々を載せ旅立つ大探査船にはシボースやロラナなど20人のジェダイが参加し、中にはオビ=ワン・ケノービとアナキン・スカイウォーカーの姿もあった。だがこの計画は、シボースの排除とジェダイの弱体化を狙ったシス卿ダース・シディアスの策謀だった。出発したアウトバウンド・フライトを待ち伏せひそかに破壊するため、トレード・フェデレーションが提供した大規模な自動化機動部隊とともにシディアスの配下キンマン・ドリアナが未知領域へ向かう。
同じ頃、その未知領域では迷い込んだ密輸商船<バーゲン・ハンター>が謎の軍隊に拿捕されていた。青い肌に赤い眼のヒューマノイドからなるその軍隊はチス拡張防衛艦隊と名乗る。彼らの基地に迎え入れられた乗組員ジョージ・カーダスは彼らを指揮するスローンことコマンダー・ミスローニュルオドと知り合い、互いの言語や社会についての知識を深める。やがてスローンの部隊は遊牧略奪種族ヴァガーリと遭遇し、カーダスもヴァガーリの脅威やスローンの天才的な戦術を目の当たりにしていく。
出航したアウトバウンド・フライトは、規律を重視するシボースと官僚主義をきらう下級乗組員の間に亀裂が生じたり、パルパティーン最高議長の要請で急遽オビ=ワンとアナキンが別任務のため下船するといった出来事を経ながらも、順調に未知領域へと乗り出した。対するドリアナの機動部隊は、チス領域の端でスローンに無力化されてしまう。スローンに対面したドリアナは、チスが恐れる銀河外の脅威に情報を与えないためにも、アウトバウンド・フライトを破壊すべきだと説いた。
ドリアナの意見を受け、アウトバウンド・フライトの前進を阻止して針路の変更を望むスローン。しかし強情なシボースは応じようとしない。いっぽうカーダスはスローンの上官から突然かけられたスパイ容疑に怯えヴァガーリに助けを求めるが、その動きもスローンの手の内だった。カーダスに誘導されたヴァガーリ艦隊は、チスとアウトバウンド・フライトが対峙するその場に鉢合わせすることになる。
アウトバウンド・フライトを狙うヴァガーリは、ジェダイによるフォースの精神攻撃で大混乱に陥る。だがその隙にスローンが両者を攻撃し、ヴァガーリを壊滅させ、ほとんどのジェダイも殺害された。憤怒したシボースは暗黒面のフォースでスローンの首を締め上げるが、動転したドリアナが本来ヴァガーリに使う予定の放射能兵器を発動させ、アウトバウンド・フライトは5万人の墓場となりはてる。人命のむやみな損失を厭い、かつヴァガーリを確実に殲滅したかったスローンにとって、これは苦い結果だった。
だが艦内では、ロラナがわずか数十人の植民者とともに生存していた。彼ら植民者はシボースと対立して中央の収納コアに勾留されていたことで助かったのだ。残骸の悪用を避けるためアウトバウンド・フライトに乗り込んだカーダスたちと協議したロラナは、アウトバウンド・フライトを隠し場所となる星団へと移動させる。だが損傷した巨大探査船は安定せず、小惑星に不時着するしかなかった。ロラナはその過程でジェダイの義務をまっとうするが、彼女の犠牲と引き換えに生存者は全員無事に生き残る。
すべては終わり、<バーゲン・ハンター>も解放された。スローンの手腕に感銘を受けたドリアナは、機密保持のため彼を抹殺するよりも、チスがすでに接触した銀河外の敵に対し彼と共闘できる道を探る。カーダスもドリアナに才覚を見込まれ、彼から情報網を率いる訓練を受けることになる。同様にカーダスの資質を買うスローンは彼の前途を祝福し、二人は友人として別れるのだった。
ジョラス・シボースの主導で計画が進められた、外銀河への大規模な探検調査船。共和国領域外の種族やフォース感知者の存在を探査するとともに、未知領域にひそむ脅威や銀河外からの侵略者の可能性を探ることを目的とし、中途の未知領域に植民地や基地を築くことも想定したものである。
船体は、中心の収納コアを取り囲むように全長600mのドレッドノート艦を6隻配し、それぞれをパイロンでつないだ構造をしている。収納コアには膨大な物資が蓄えられ、植民志願者でもある乗員とその家族あわせて約5万人の人々と20人のジェダイが搭乗する。司令艦D-1からD-6までのドレッドノート艦は各種の兵器で重武装しており、ジェダイが共同して制御すればきわめて強力な戦力ともなる。
最高指揮官はパクミール艦長で、各ドレッドノート艦にコマンダーを置いて乗組員を指揮する。ジェダイはマスター・ジョラス・シボースの指導下にあるが、シボースは乗組員の家族の中からフォース感知能力を持つ子どもを選抜し、新たなジェダイとして育成することも想定している。
銀河の外縁部、未知領域に住む青い肌と赤い瞳のヒューマノイド種族チスによる独立国家。
ルーリング・ファミリーと呼ばれる複数の一族が支配する寡頭制で、極めてシステマチックで保守的な社会を形成する。厳格に先制攻撃を禁じる規律と強い保守性、そして他種族を見下すチス特有の気位の高さが特徴で、人間などに対しては、完璧に礼儀正しい態度を維持しつつも遠ざけるところがある。科学技術面でも高いレベルに達しているが、周辺の異種族文明を含め、ドロイドは一切存在していない。
もともと閉鎖的で銀河共和国からは未知の国家であり、チス側の共和国についての知識もごくわずかでしかない。母語は人間では発声困難な言語チユーンで、共和国で一般的な言語ベーシックも知られていないが、未知領域の種族間で通用するいくつかの交易言語によって別種族との意思疎通は可能。
チスの名前は、家系や社会的地位を反映した複雑な本名と、その一部を抜き出した「コア・ネーム」からなる。コア・ネームは親しい間柄で用いるもので初対面の者や格下の者が呼ぶことは非礼とされるが、他種族にとり本名より遥かに発音が容易であるため、作中ではコア・ネームで呼ばれることが多い。
未知領域を縄張りとし、諸惑星からの略奪を生業とする海賊遊牧種族。
ミスカラと呼ばれる長のもと市民ごと宇宙を移動する種族で、ジェルーンなどの辺境の種族から略奪を繰り返すのみならず奴隷化して手ひどく扱い、軍艦の外壁にとりつけたバブルに奴隷を入れて人の壁として用いるような、強圧的で酷薄な勢力である。チス同様ドロイドは概念じたい存在しないが、疑似重力場によってハイパースペース移動をふせぐ重力投影装置のような共和国にない軍事技術も有している。
ヴァガーリはチス・アセンダンシーと戦争状態にはないため、スローンはヴァガーリをチスに対する脅威と考えているものの、先制攻撃を禁じるチスの規範を真っ向から破ることはできない。また、ヴァガーリは市民や後方補給施設ごと動く完全な遊牧民であり、わずかでも軍用艦を取り逃がせば、いずれ再起を許すことになるという問題もある。
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最終更新:2025/12/07(日) 13:00
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