スペツナズ(Спецназ, Spetsnaz)とは、ロシアの「特殊任務部隊」である。
「スペツナズ」という名前の部隊が存在するのではなく、あくまでも「特殊部隊」全般を指し示す言葉である。
ロシア語のスペツィアルロエ・ナズナシエニ、つまり特殊部隊を縮めると「スペツナズ」になる。陽動作戦部隊や特殊偵察部隊として、あらゆる意味でのサボタージュ活動を行なうことを主任務としている。これには転覆活動、情報収集(軍事だけでなく経済面でも)や、その後の平時における秘密懲罰行動、戦時の暗殺、破壊活動も含まれる。[1]
1950年に最初のスペツナズ部隊が設置された際に念頭に置かれていた任務は、NATO諸国に配備された戦術核兵器を探し出して破壊することだった。後に敵情偵察、指揮系統の破壊、交通インフラの撹乱などの任務が追加されたが、有事に欧州全域でこうした任務を遂行するとなれば少数精鋭にこだわってはいられない。つまりスペツナズは任務の内容が「特別」なのであって、部隊を構成しているのは基本的に「中の上」程度の能力を持った普通の兵士である(ロシアには「少数精鋭」の特殊部隊もいくつかあり、これらは2012年に設立された特殊作戦戦力コマンドに所属している)。[2]
1950年10月24日、ソ連国防相のヴァシレフスキーソ連邦元帥と参謀総長のセルゲイ・シュテメンコ大将の命令により、各120人の46個独立特殊任務中隊が創設された。総勢5000人を超える隊員により結成された、これが最初のスペツナズである。
しかし軍縮に伴い、3年後には35個中隊が解散。その後大隊として再編成されたり、大規模軍事演習によって組織の見直しと刷新が行われたりと複雑な歩みを辿る。
スペツナズが本格的な実戦に参加したのは、1979年のアフガニスタン紛争とされている。
正式名称は第154独立特殊任務支隊、4個中隊を中心とした420名の隊員で構成された選抜兵だった。当時のアフガニスタンは共産主義政党による政権が樹立。しかしこれに反発した対抗勢力(ムジャヒディーン)が武装蜂起し、全土で抵抗運動が激化していた。
政権はソビエト連邦に軍事介入を要請したが、最終的にハフィーズッラー・アミーン大統領に事態を収拾できる能力がないと判断したKGBにより、暗殺作戦が決定される。嵐333号作戦(Шторм-333)と呼ばれたこの作戦に参加したのが、上記のスペツナズであった。
彼らにはアフガン軍の軍服とIDが支給され、飛行機を使って現地入り。政権より依頼されたタジベク宮殿の警護に当たる裏側で密かに宮殿の内部構造などの情報を収集し、作戦実行に備えていた。
12月27日、国内の軍事重要施設を制圧後、改装披露パーティーが行われていたタジベク宮殿を実行部隊が急襲。KGBのアルファ部隊らと共同で作戦を展開、宮殿の制圧および大統領の殺害に成功した。この時費やされた時間は43分、参加した隊員は「宮殿内で出会った者は全て殺せ」という命令を受けたという。強行突入後は激しい銃撃戦となり、実行部隊は宮殿内の部屋一つ一つに手榴弾を投げ込み、抵抗する者を掃討。大統領は自ら銃を手にして戦おうとしたが、抵抗空しく妻ともども殺害された。この時大統領の11歳になる息子も死亡しているが、状況は不明。
その後もアフガニスタン各地に支隊が続々と投入される事となるが、詳細は割愛。
1991年のソ連崩壊以後、ソ連軍も分割・再編成され、それに伴い多くのスペツナズも解散や再編成、移管が行われた。その後1994年に起きたチェチェン紛争にもスペツナズは参加。ロシア連邦軍の練度が全体的に低かった事もあって作戦に投入されたが、上層部がポンコツだったせいで敵に投降する羽目になるなど、甚大な被害を被った。
その後も人質解放作戦に参加。特に1996年1月の北カフカース軍管区における人質解放作戦では、47名の支隊がチェチェン軍の主力を牽制、数倍とも目される相手に大損害を与えたという。
その一方で、テロ事件について最悪の結果に終わるケースがある。2002年の「モスクワ劇場占拠事件」では、チェチェン独立派の武装集団42名によってモスクワのドブロフカ・ミュージアムが襲撃、観客922人が人質となった。要求はチェチェン共和国からのロシア軍撤退で、聞き入れられない場合は人質を殺害して自爆するという要求だった。
3日後の早朝、ロシア連邦保安庁アルファ部隊が突入。投入された非致死性ガス「KOLOKOL-1(コーラカル・アヂーン)」によって劇場内の人間の大半が昏倒、テロリストは全員射殺された。ところが吐瀉物を詰まらせて呼吸困難や心停止に陥った人質が続出して現場はパニックとなり、最終的に129名が死亡する事態となった。メディカルチームを帯同していれば防げた可能性もあり、後に訴訟にまで発展している。非致死性とは何だったのか
2004年に北オセチア共和国で発生した「ベスラン学校占拠事件」では、より悲惨な被害となった。
チェチェン独立派の武装集団30名によって、始業式の為にベスラン第一中等学校に集まった子供達と保護者1,181名が人質となる。要求は例の如くチェチェン共和国からのロシア軍撤退、拘束された同胞の解放、北オセチア共和国大統領らとの直接対話だった。
ロシア連邦保安庁アルファ部隊・ヴィンペル部隊を含むロシア軍が出動、交渉により一部の人質が解放される。しかし事件発生から3日後、突発的に発生した銃撃戦の最中に体育館が爆発・崩落。これに多数の人質が巻き込まれ、死者386人以上(うち186人が子供)、負傷者700人近くを数える大惨事となった。なお犯人は1名のみ捕縛され、現在は終身刑を受けている。残りは銃撃戦で死亡した他、数名が現場から逃走を図ったが怒りに燃える群衆に捕まり、文字通り八つ裂きにされて虐殺されている。
ただしこれは彼ら特殊部隊が無能だった、という意味ではない。ベスラン学校占拠事件でのアルファ部隊・ヴィンペル部隊は殉職者10名を数えており、全員が人質を守る為に命を落としている。手榴弾の上に覆い被さって人質を守り犠牲となった者、自ら囮となって銃撃を引き付けて死亡した者、様々である。中には事件の3週間前に結婚したばかりの若い隊員もおり、そういった犠牲があった事は、事件の悲惨な結末とは別に知っておくべきかも知れない。
2023年4月に米国防総省から機密文書が流出する事件が発生した。この文書によれば、2022年2月に勃発したロシア・ウクライナ戦争に於いてロシアは各スペツナズ旅団を前線での戦闘に投入し、部隊は9割近い損害を被った…とアメリカ政府は分析した上で、部隊の再建には10年を要し、その間ロシアの海外における秘密作戦を行う能力は低下するだろうと考えていることが明らかになっている。[3]
現在ロシア連邦において「スペツナズ」と呼称される部隊は以下の通り。
このうちもっとも有名なのは、ロシア連邦参謀本部情報総局(GRU)に所属する特殊任務部隊であろう。
戦時の敵後方での偵察、破壊工作や要人の暗殺の他、平時にも私服で偵察活動(スパイ活動)を展開しているとされる。
またシステマなど独自の格闘術や、スペツナズナイフ(刀身の射出ができるナイフ)などのユニークな装備があることでも知られる。ただしスペツナズナイフについては実際に使われていたかどうか疑問の声が上がっている。仕方ないね。
良くも悪くも「おそロシア」を体現する組織な事もあり、フィクション作品ではとかく悪役にされがちで「やられ役」を主に担当している。あんまりじゃないですか…。
著名なスペツナズ関係のキャラクターとしては「メタルギアソリッド」のリボルバー・オセロットが挙げられる。マカロニウエスタンを愛好し「弾の気持ちが解る」凄腕のガンマンで、拷問のスペシャリスト。アフガニスタン紛争にも参加、「シャラシャーシカ」の名で恐れられた。前日譚に当たる「MGS3」では若き日の姿が描かれ、GRU「山猫部隊」隊長として、ネイキッド・スネーク(後のビッグボス)の前に立ちはだかる。何度かの戦闘を経て、シリーズを通じて大きな役割を果たす事となった。
2015年に発売されたFPS「レインボーシックスシージ」は、テロリズムに対応する為、国や組織の垣根を超え、各国の特殊部隊のエリートを結集した部隊「レインボー」の活躍を描く。この内スペツナズからは5名のオペレーターがチームに参加。バッジからロシア連邦保安庁アルファ部隊とされる。ブービートラップの達人、芸術家肌のスナイパーなど、一癖も二癖もある面子揃い。中でも防衛側オペレーターの「タチャンカ」は様々な事情からネタにされ屈指の人気を誇り、公式からもたびたびプッシュを受けている。詳細は当該項目を参照。
掲示板
206 ななしのよっしん
2023/08/29(火) 03:40:46 ID: bpOJFrKD1W
ソ連時代から熱心に空挺戦車の開発までやって空挺部隊に執心してるし中国も空挺部隊に執心してる
中国は共産党の御意向を示して党が重要と判断した局面で真っ先に投入されるからというのもあるらしいけどロシアの空挺部隊もそういう政治的思惑でもあるんだろうか
207 ななしのよっしん
2024/01/03(水) 10:59:30 ID: lTNo1eqy3D
>>201
写った車両の減少は損耗の証拠だと主張するが、普通に考えて前線で今も活動してるだけだし
別地点で別部隊と合流・修理・復帰するから同じ基地を撮影しても無意味だし
”第22旅団と他2つの旅団は95%損耗”と推理されても根拠が無い
あと第25連隊を除き帰還した全部隊を追跡したと主張するが、そんな詳細な追跡はまず無理
900人のスペツナズ第346部隊は残り僅か125人と主張するが
https://
346部隊は900人も居ないし、臨時増員されてても大部分が一般兵で構成された混成部隊だから
本物のスペツナズは少ししか混じってなくて影響小さい
司令官の戦死は部隊運用に不具合が発生している証拠だとの主張は正しいが
それを根拠にしてスペツナズが使い捨てにされて大損害ってのは理論の飛躍過ぎる
208 ななしのよっしん
2024/01/03(水) 12:02:29 ID: lTNo1eqy3D
>>207のリンク先は米国とドイツが共同運営するマーシャル安全保障研究所の解説
スペツナズの本来の目的は偵察・諜報・破壊工作・反乱鎮圧といった低強度紛争であって
スペツナズ隊員だけで構成された大部隊なんてものは珍しくて
通常は大勢の一般兵士の中に少数が混じって支援を受けながら行動するもので
防衛戦に投入されて大損害を出すなんて変な使い方はしないはずだから
①本当に間違ってスペツナズ隊員ばかりで構成された部隊を正規軍同士の正面衝突に投入した
②大量の一般兵士の中の一部にスペツナズ隊員が混じってただけなのに全員スペツナズだと勘違いした
①と②どちらか検証しないと駄目なんだが
①も②も両方共に証拠は全然無いし、戦果の誇張は両軍共に頻繁にやってるし、
死体も部隊章も何も出てこないし、正直今の段階じゃスペツナズ大損害なんてのは嘘くさい話だと思うぞ
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最終更新:2024/03/29(金) 18:00
最終更新:2024/03/29(金) 18:00
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