スリーロールス 単語

8件

スリーロールス

6.1千文字の記事
  • twitter
  • facebook
  • はてな
  • LINE

スリーロールス(Three Rolls)とは、2006年生まれの日本競走馬種牡馬鹿毛

2009年菊花賞馬主・厩舎・生産牧場騎手など、多くの関係者に初の3歳クラシックタイトルをもたらした。

12戦4勝[4-1-0-7]
な勝ち
2009年:菊花賞(GI)

概要

ダンスインザダークスリーローマン、*ブライアンズタイム

1996年菊花賞優勝日本ダービー2着種牡馬としては安田記念ツルマルボーイをはじめ幅広い距離重賞産駒を生む柔軟性を発揮したが、やはり本領は長距離で、菊花賞子制覇のザッツザプレンティ・同じく菊花賞子制覇にメルボルンカップを制したデルタブルース・「を建てやま」の個性ファストタテヤマなど、多くのステイヤーを輩出した。本にとって3頭菊花賞子制覇を達成する産駒である。

ブライアンズタイム産駒スリーローマンは現役時35戦4勝、祖母アコニットローマンは東京プリンセス賞勝ち。またの半オペラハット(東京王冠賞1999年JDD2着)がいる。

生産は新ひだか町の武牧場。生産にはブルーショットガン、後年にはマイネルラクリマなどがいる。この牧場の創業者・武勇は、武邦彦騎手調教師(武豊武幸四郎兄弟)の従弟にあたる[1]。また、勇のの武調教師の武永祥も騎手調教師(その長男騎手のち調教師としてメイケイエールなどを管理する武英智)という兄弟だった。
ところが、2003年に勇は自宅で何者かに殺される(未解決事件)。武牧場の経営は勇の未亡人が引き継ぎ、その後に産まれたスリーロールスは勇のである武調教師に託されることとなった。

その東・武厩舎でスリーロールスを調教助手として担当したのは、後に調教師として独立デアリングタクトなどを管理する杉山紀。杉山はスリーロールスのダンスインザダーク菊花賞優勝を観戦して感動し、縁なサッカー少年から競馬世界に飛び込んだ、という不思議な縁があった。

馬主は「永井商事(株)」名義だが、その代表である永井啓弐氏はトヨタカローラ三重の経営者。地元の鈴鹿山脈から「スズカ」(スズカマンボスズカフェニックス等)、「三重県鈴鹿市⇒三」から「ミスズ」(ミスシャルダン等)「サンレイ」(サンレイポケット等)などの冠名を用い、特に悲劇の快速逃げサイレンススズカ馬主として知られる。共同所有などで永井商事名義を用いる場合は「三重」から「スリー」の冠名を用い、スリーローマンに続いて馬主となった。スリーロールスは、の名に似せた上で自動車販売店社長という職業から、高級外ロールス・ロイスに因んで名付けたものである。

デビュー以来多くの騎手が騎乗したが、毎日杯以降は浜中俊戦に定まった。彼にとっても初GI勝利パートナーとなる。

戦歴

クラシックホース3頭の新馬戦

2008年10月26日京都競馬場新馬戦(芝1800m)でデビュー。この日は菊花賞当日で(勝ちオウケンブルースリ)、京都競馬場には多くの有騎手が集まっており、5Rの新馬戦にも有騎手デビュー戦を託された良血が集まった。1番人気は名ビワハイジブエナビスタ(安藤勝己)、2番人気敗の三冠馬Seattle SlewGI2勝の*クラシッククラウンとのに持つリーチザクラウン(小牧太)、3番人気ダービーフサイチコンコルドの半で甥にもリンカーンやヴィクトリーがいるアンライバル(岩田康誠)。

好位3番手から直線抜け出したアンライバルドが、差しを狙ったリーチザクラウンと後方から猛に追い込んだブエナビスタを抑えて勝利。……その後ろで、横山典弘騎乗のスリーロールスは8番人気からブエナビスタに1身半差の4着。

その後、アンライバルドは若駒SスプリングSを勝ってクラシック一冠皐月賞を制覇。リーチザクラウンきさらぎ賞に勝って挑んだ皐月賞は13着大敗も、日本ダービーは2着連対。ブエナビスタに至っては2戦以降は連戦連勝で、阪神JF桜花賞オークスとみるみる世代の代表に上り詰める。

これはすごい!いわゆる「伝説の新馬戦」のひとつに数えられるだろう……とはくから言われていたのだが、まさかその伝説の中にスリーロールスも含まれてくるとは当初思われていなかったのである。結果的にブエナビスタ桜花賞オークス二冠、アンライバルドが皐月賞、そしてスリーロールスが菊花賞と、1つの新馬戦から3頭の3歳クラシックホースが誕生という、日本競馬史上初の記録が生まれることになる。
また、5着のエーシンビートロンダート戦線に転じて勝ち上がり佐賀サマーチャンピオン(JpnIII)を制覇、新馬戦掲示板内5頭全てが重賞に成長という、これも快挙が達成されている。

ごく普通の裏街道の日々

新馬戦で先着された3頭がそれぞれ順調にオープンクラス戦場を移していく中、スリーロールスは3戦11月30日未勝利戦(京都1800m)で勝ち上がり。続いては2歳オープン・報知杯中京2歳Sに出走、3年前の勝ちメイショウサムソン・2年前の勝ちダイワスカーレットという注の一戦だったが、中団から直線伸び切れず5着止まり。明けて3歳の2009年も、皐月賞日本ダービーへの逆転出走を狙って出走した毎日杯(ここで以降の浜中俊が初騎乗)で8着とはね返された。
まあ仕方ないさ、地に自己条件からオープン入りして頑ろうや、そういう立場のよくいる普通の条件だった。

天皇賞(春)の行われた5月3日500万下戦を突破し(京都1800m)、場は休養に入った。
その間、戦の中は8月小倉開催にて落事故を起こしてしまう。混みにねじ込もうとした結果の自爆かつメイクデビューを任された新を競走中止にしてしまい、幸い人とも大した負傷はなかったものの、中は以降積極的な騎乗ができなくなっていた。この時、岩田康誠に心情を見透かされ「怖くてもじっと慢すれば自然と前は開く、消極的に外に行くな!」とアドバイスを受けたという。

に復帰したスリーロールスは、9月26日1000万下野分特別(阪神1800m)で中2番手追走から直線抜け出し4身差の快勝。中はレース後に岩田から「それや!」とを掛けられ、先輩からの助言に納得した。

第70回菊花賞:初物づくしのリベンジ達成

1500万下(現在3勝クラス)に昇級したスリーロールスは、中3週となる10月25日菊花賞に登録。7分の6の抽選を突破して出走を得た。
……ここから菊花賞を勝つのだから立な「の上がり」なのだが、予想の時点ではさして注もされず、せいぜいダンスインザダークという血統と前走の勝ちっぷりから狙いされる程度の立場だった。その点、賞ギリッギリで出走が危うかったが出られさえすれば勝つとの呼びも高かったメジロマックイーンの例などとは状況が異なり、どちらかと言うと自己条件でスリーロールス以上に苦労し、同じく「な勝ち野分特別」から菊花賞を10番人気で勝ったヒシミラクルの例の方が近いだろう。

この年の菊花賞だが、ダービーロジユニヴァースは調整遅れで休み中。1番人気ダービー2着から最後の一冠奪取に燃えるリーチザクラウン(武豊)、皐月賞アンライバルド(岩田康誠)は3番人気と、新馬戦で敗れた2頭とGI舞台で再び戦う機会が巡ってきた。その他神戸新聞杯勝ちイコピコセントライト記念を制したナカヤマフェスタらが上位人気に挙がり、スリーロールスもボーダー下限の立場ながら当日は8番人気(19.2倍)に評価された。

さてスリーロールスに騎乗する浜中俊だが、菊花賞当日は東で師匠坂口正大調教師の厩舎に稽古をつけ、それから京都競馬場に移動する段取りとなっていた。……が、寝坊して調教に遅れるという失態をやらかす。坂口師から「君は騎手に向いていない。他の職業を探しなさい」と厳しい叱りを受け、何としても結果を残さねばとを覚まして京都に赴いた。

最内11番から好スタートを決めたスリーロールスは内の4番手を確保して折り合い、経済コース中を進んだ。逃げを打ったのはリーチザクラウン、向正面では一時2番手と大差がついたが、3の登り坂にかけて武豊は築いたリードを消費してひと息を入れ、4の下り坂から再加速して逃げ切りを狙う。一方スリーロールスの中は、4で後続が外から殺到する中で自分も外にを出そうと一考えたが、岩田康誠の「(消極的に)外に行くな!」のアドバイス思い出して内慢し、直線でのイン突き勝負に出た。
直線残り200m、逃げリーチザクラウンと追うヤマニンウイスカー、その間を割ってスリーロールスはヤマニンウイスカーをかわし2番手に浮上したが、直後に大きく外に膨れ、一脚が鈍ってしまった。中の右ムチに過剰反応したとも、メインスタンド前のターフビジョン映像に驚いたためとも言われる。中は懸命に左ムチで立て直し、あと100mがもたず失速を始めたリーチザクラウンを捉え先頭に立ちかける。
だがここで内から突っ込んできたのが、同じダンスインザダーク産駒にして女エアグルーヴ・フォゲッタブル(吉田隼人)。2頭ほぼ並んでゴールを通過したが、ハナ差スリーロールスがぎきった。直線スリーロールスがフラついたことで審議のランプが点したが、なくそのまま確定。

スリーロールスはGI初出走でクラシック制覇の大金星新馬戦で敗れたアンライバルドとリーチザクラウンにもリベンジを果たした。上の浜中俊は3年・20歳10ヶ若さGI初制覇をクラシックで挙げた。師匠坂口正大師に電話で報告すると、には中を厳しく叱った師匠も「自分も初めては菊花賞だった[2]不思議な縁だな」とがことのように喜んでくれたという。
生産の武牧場にとってもGI級競走初勝利。また武厩舎はこれまでメルシータカオー・メルシーエイタイム[3]中山大障害制覇はあったものの、開業32年にしてGI勝利永井啓弐オーナーにとっても2007年高松宮記念スズカフェニックス以来のGI勝利、そしてサイレンススズカラスカルスズカスズカマンボらで届かずにいた3歳クラシック競走の初勝利と、初記録づくしの勝利となった。

有馬記念:一度きりの4頭の再会

次走は有馬記念リーチザクラウンアンライバルドも同じく出走し、そして何といっても1960年スターロツチ以来49年ぶりの3歳による有馬記念制覇を狙うブエナビスタも駒を進めていた。1つの新馬戦から4頭が翌年に3歳にして有馬記念で集結というだけでも快挙だが、もうスリーロールスは「期待の良血3頭の後を拝したモブ」ではなかった。クラシックホースにのし上がり、堂々とファン投票で選出(18位・25,407票で登録中の第10位)され、3頭と並んでグランプリに出走できるまでになっていたのである。

スタートからここでも逃げを打ったのはリーチザクラウンアンライバルドとブエナビスタは並ぶように5・6番手、スリーロールスはその背後をマークした。ところが、残り1000m付近でスリーロールスは突如脚元に異変を生じて失速、競走中止。中はを流して引き上げた。

診断は左前浅屈腱不全断裂。年が明けてすぐ精密検が行われたが、症状は重く引退の決断が下され、2010年1月6日競走馬登録を抹消された。通算成績12戦4勝[4-1-0-7]。
調教助手の杉山はこの出来事を悔い、自らのメールアドレスにスリーロールスの名と有馬記念の日付を入れて後々まで忘れないようにしたという。

引退後

引退後はレックススタッドで種牡馬入りしたが、同じダンスインザダークツルマルボーイ(産駒48頭)やザッツザプレンティ(産駒61頭)と同様にほとんどは集まらず、僅か5年で種牡馬引退産駒は29頭、中央では障害で1勝を挙げたのみに留まった。

その後、戦の浜中俊2012年に24歳の若さJRAリーディングを獲得[4]調教助手の杉山紀は5度挑戦して調教師試験に合格、2016年東で独立開業して後にケイティブレイブデアリングタクトジャスティンパレス等を管理するに至る。

ロールス・ロイスのような高級きを放ったのは一だったかもしれないが、スリーロールスの走りは多くのホースマン人生を動かしたのである。
現在は功労繋養展示事業の助成を受け、故郷の武牧場で余生を過ごしている。

血統表

ダンスインザダーク
1993 鹿毛
*サンデーサイレンス
1986 青鹿毛
Halo Hail to Reason
Cosmah
Wishing Well Understanding
Mountain Flower
*ダンシングキイ
1983 鹿毛
Nijinsky II Northern Dancer
Flaming Page
Key Partner Key to the Mint
Native Partner
スリーローマ
1997 青毛
FNo.7-d
*ブライアンズタイム
1985 黒鹿毛
Roberto Hail to Reason
Bramalea
Kelley's Day Graustark
Golden Trail
アコニットローマ
1990 黒鹿毛
*ブレイヴストローマン Never Bend
Roman Song
カミモリレディー *ネプテューヌ
カミモリダイテン
競走馬の4代血統表

クロスHail to Reason 4×4(12.50%)、Graustark 5×4(9.38%)

関連動画

関連リンク

関連項目

脚注

  1. *競馬の武一家の祖である薩摩士武七(1860 - 1928)は、置県後北海道に渡り畜産と西洋術を学んだ。その長男武芳の子が騎手調教師武邦彦、孫が武豊武幸四郎兄弟。一方、武七の四男である武三(騎手調教師)の長男が武(調教師)、次男が武勇(武牧場代表)、三男が武永祥(騎手調教師)。また永祥の子に武英智(騎手調教師)。
  2. *1995年菊花賞マヤノトップガンでの厩舎GI勝利のこと。
  3. *メルシー」は、スリーロールスの実質的オーナーである永井啓弐氏の永井康郎氏が所有馬に用いた冠名
  4. *但しこの2012年まで、JRA賞最多勝利騎手の対レースには定交流競走も含まれていたため、それを含めた勝利数は岩田康誠が上回り、中は受賞を逃している。
この記事を編集する
関連記事

親記事

子記事

  • なし

兄弟記事

掲示板

おすすめトレンド

ニコニ広告で宣伝された記事

記事と一緒に動画もおすすめ!
日高愛[単語]

提供: ゲスト

もっと見る

急上昇ワード改

最終更新:2024/04/24(水) 09:00

ほめられた記事

最終更新:2024/04/24(水) 09:00

ウォッチリストに追加しました!

すでにウォッチリストに
入っています。

OK

追加に失敗しました。

OK

追加にはログインが必要です。

           

ほめた!

すでにほめています。

すでにほめています。

ほめるを取消しました。

OK

ほめるに失敗しました。

OK

ほめるの取消しに失敗しました。

OK

ほめるにはログインが必要です。

タグ編集にはログインが必要です。

タグ編集には利用規約の同意が必要です。

TOP