セト(旧約聖書)とは (セトとは) [単語記事]

セトとは、旧約聖書に登場する人物である。アダムとイブの三男。

概要

ユダヤ教・キリスト教・イスラム教などの「アブラハムの宗教」の聖典、「旧約聖書（タナハ）」に登場する人物。

ヘブライ文字での表記は「שת」。現代ヘブライ語では「シェッツ」と発音するようだが、古代の発音でどのように読んでいたかは不明。日本語の聖書でセツと表記されることもある。

アダムとイブの3番目の息子で、カインとアベルの弟。アダムが130歳の時の子とされている。カインがアベルを殺した後に生まれたので、アダムとイブはセトの事を「神（YHWH）がアベルの代わりにくださった子なのだ」と解釈している（創世記4章25節）。

聖書正典にはこれ以上の情報には乏しい。せいぜい「105歳（あるいは205歳）でエノスという息子をもうけた」「900歳ちょっとまで生きた長生きさん」と言う程度しか記載されていない。ちなみに系図をたどると、エノク、メトセラ、ノア、アブラハム等と言った聖書に登場する有名人（？）もエノスの子孫であり、つまりセトの子孫ということになる。

キリスト教の聖典「新約聖書」でもセトについて言及されており、「ルカによる福音書」によるとイエス・キリストもセトの子孫にあたるという。

ヨベル書

正典からは外れてしまうが、旧約聖書外典「ヨベル書」にはもう少しだけ追加情報が載っているらしい。それによると、同じくアダムとイブの娘、すなわち実の妹のアズラと結婚してエノスが生まれたと書いてあるとのこと。

最初の人類であるアダムとイブの子供たちなので、兄弟姉妹以外に結婚相手が居なかったものと思われる。

人名として

その他の聖書に登場する名前と同じく、欧米の人名の由来となっている。ファーストネーム、ラストネームともに実在する。

英語では「Seth」と表記し、「セス」「セト」双方の発音が混在している。→「セス」の記事を参照。

ニコニコ大百科に記事がある人物としては、野球選手「セス・グライシンガー」など。

セティアン派

紀元2世紀から3世紀ごろまでにはこのセトを崇拝する「セティアン派」「セティアニズム」というグノーシス主義の一派も存在したようである。イエス・キリストとセトを同一視している（転生体ということだろうか？）場合もあったようだ。

彼らは自らの一派が、キリスト教自体よりも歴史が古いと自負していたという。確かにセトがキリスト教よりも先立つ旧約聖書に登場する人物である以上、その可能性は皆無とは言えない。

発掘文書「ナグ・ハマディ写本」はグノーシス主義の文献が多くを占めているが、彼ら「セティアン派」が残した文書も含まれている。

ちなみにナグ・ハマディ写本が地中に隠されていた理由は、教会中枢からの「正典以外を使用しないように」という通達への対応として、「正典ではない」とされた聖書関連文書を秘匿した為と推測されている。つまりセティアン派を含むグノーシス主義の教えはその時期を境に異端とされたことになる。その後、彼らは急速に衰退し歴史から姿を消す。