チェンタウロ戦闘偵察車とは、イタリアで開発されたイカレした装輪装甲車である。
8輪の車体に大口径の戦車砲を積んだ「装輪戦車」の俗称で呼ばれる戦闘装甲車両の1つである。
ちなみに「チェンタウロ」とは、ギリシャ神話に登場する大弓を操る、馬の胴体に人間の上半身が付いた日本で言う「ケンタウロス」のことである。強力な打撃力と優れた機動性を持つ本車に、まさにふさわしい名前であると言える。
チェンタウロは、1980年代にイタリア陸軍が出した「(当時保有していた)レオパルト1及びM60A1が装備している105ミリ砲と同じ攻撃力を持ち、戦略機動性と路外機動性も併せ持つ高機動装輪戦車駆逐車」という要求に応じ、イヴェコ・フィアットとオート・メラーラによって開発された。[1]
イタリアは細長い地形であるため、国家中枢のある北部から南部へ戦力を派遣する場合その距離が問題になる。そこで、高速道路などを使い迅速な移動が出来て、かつ十分な火力を持つ車両が求められた。
主砲には、74式戦車など第二世代戦車の主砲と同じ「105mmライフル砲」を搭載。
これを8輪全輪駆動の大型タイヤを履かせた装甲車に乗せて最高時速108kmでかっ飛ばす。
もちろん装輪車両なので装甲は薄く戦車との正面きっての殴り合いはご法度。主に装輪車両や敵陣地の撃破に精を出す。一応増加装甲も開発されているが主に対RPG-7用。
面白い機能として弾薬を降ろせば4人の兵士を乗せられるメルカバのような機能もついている(後期型)。
その重武装っぷりから「装輪戦車」と呼ばれることがあるがこれについては後述。
チェンタウロは400両が生産され、イタリア陸軍では320両を運用中。海外派遣もされているので使い勝手はいいようだ。現在までユーゴスラニア、ソマリア、イラク、レバノンなどに投入されており、イラクでは狙撃兵が隠れていた建物を自慢の105mm砲で吹き飛ばすなどの戦果を挙げている。
また、輸出成績もよくスペインとオマーンでも採用されており、現在スペインで84両、オマーンで6両(追加で3両)が配備・運用されている。変わったところでは、アメリカにはストライカー機動砲システムを導入するための実験・訓練用に16両をリースしたが、のちに全車が返還された。
このようにチェンタウロは撃ってよし、撃たれてよし、走ってよし、と三拍子そろった傑作偵察戦闘車なのである!
えっ?「偵察車」なのに偵察してないって?
車体サイズが74式戦車とほぼ同じ大きさであり、もはや隠れる気すらない時点でお察しください。
まあ、開発経緯からしてそもそも偵察目的じゃないし仕方ないね!
大きさはどうであれ、他の装輪装甲車に漏れずチェンタウロにも多くも派生車両がある。
ここまでに説明してきた105mm砲を搭載したチェンタウロの基本型。
後期型の150両、車体後部が22cm延長されており、車体後部の主砲弾ラックを外せば4人の兵員を搭載できる。
イタリア陸軍で320両が運用されているほか、スペインでも採用され84両が配備されている。
OTT社が開発した新型砲塔「HITFACT」を搭載した車両。オマーンが採用・配備した6両はコレ。
主砲には「OTT社製 45口径低反動120mm滑腔砲」が搭載されており、NATO規格の各種120mm砲弾が
使用可能となっており、火力が大幅に向上している。ベトロニクス類も新型に交換されており、新型FCSにより行進間射撃の命中精度が向上しているほか、従来砲手用サイトにしか搭載されていなかった赤外線暗視装置が車長用全周旋回式サイトにも搭載されており、夜間悪天候時の索敵能力も向上している。砲塔前面には複合装甲を備えており40mm機関砲のAPFSDS弾射撃にも耐えられ、側面も14.5mm重機関銃弾に耐えられるとか。
また、エンジンも650馬力を発揮する新型が採用されている。
チェンタウロ120mm砲搭載型を基に全体的に性能を向上させた車両。
120mm砲搭載型が砲塔を乗せ換えただけだったのに対して、チェンタウロⅡは車体部分も含めて改良が加えられており、特に車体には増加装甲が取り付けられたほか、IED対策として底部にV字型の装甲が取り付けられている。
また、ソフト面においてもセレックスES社のC4Iシステム「FORZA NEC」を搭載することにより、リアルタイムでの情報共有能力を得ることで交戦能力が大幅に向上している。
イタリア陸軍は、旧式化が進む750両のレオパルト1をチェンタウロⅡで更新することを計画しているとか。
チェンタウロに随伴する機械化歩兵部隊の為に人員輸送能力を強化した本格的な装輪装甲歩兵戦闘車。
いわゆる陸自の89式装甲戦闘車みたいなIFV型。
チェンタウロ後期型を基に車体を80mm延長し車高も嵩上げして、歩兵8名を搭載できるようすると共に、後部に
ランプドアが装備され迅速に歩兵部隊を展開させることが可能となっている。
また、IED及び地雷対策として車体下面はV字型になっており、車体下で6kgの爆薬の爆発に耐えることが出来る。
最初から増加装甲が取り付けられており、正面が30mm機関砲弾、側面が14.5mm機関銃に耐えることが可能。
砲塔には、同じくイタリア陸軍のIFVである「ダルド歩兵戦闘車」に搭載されている「HITFIST」砲塔が搭載されており、エリコン社製25mm機関砲、またはブッシュマスターⅡ30mmチェーンガンと、同軸に7.62mm機関銃を装備している。25mm機関砲は200発を搭載できる。
また、オプションとしてイスラエル製対戦車ミサイル「スパイクML/LR」2基と80mm発煙弾発射も装備可能。
通常の装輪装甲車(米軍のストライカーとか)はIFV型をベースに大口径砲を搭載した機動砲型などを開発することが多いのに対して、チェンタウロは逆の課程で開発された珍しい車両である。イタリア陸軍に採用され、通常型172両、スパイクML/LR搭載型36両の配備予定が予定されており、スペイン陸軍も導入を検討している。
現在開発が進められている自走榴弾砲型。外観がかなりキモい。ちなみにPorcupineは山嵐のこと。
チェンタウロの車体に155mm39口径榴弾砲『FH70』を装備した自走榴弾砲。
アーチャー自走榴弾砲ばりの完全無人化・自動化された砲塔を搭載した車両であり、155mm砲弾は車内に15発搭載できる。砲塔が自動化されたことで乗員は3名まで削減されており、全て車体前方に集中配置されている。
高度なFCSを搭載しており、発射した4発の砲弾を同時に着弾させることが可能。最大で毎分8発を発射でき、OTTメララ社が新開発したGPS誘導砲弾、また通常の無誘導砲弾を発射でき、誘導砲弾は射程60kmを誇る。ただし、他の装輪式自走砲と同じく砲塔の旋回は左右15度に限られている。
イタリア陸軍は本車で現在配備されているPzH2000自走榴弾砲を更新する予定だとか。
チェンタウロの車体に対空砲塔『ドラコ』を搭載した車両。
ドラコとは海自の護衛艦にも搭載されているOTTメララ社のベストセラー艦載砲、76mm速射砲を戦闘車両に搭載できるよう軽量化を施したものであり、砲塔には76mm砲に加えて7.62mmもしくは12.7mm機関銃を装備することも可能。76mm砲は対空捜索レーダー、電子光学照準システム、遠隔測定レーザーなどを組み合わせた高度なFCSに制御されており発射速度は毎分80発で、航空機はもちろん高速艇などの軽目標、戦車やIFVも攻撃できる。
余談だが対空砲塔ドラコとは、笑い話として伝説になったオトマティック自走対空砲の砲塔を元に製造コストを削減したやつだったりする。
おっきな大砲を積んで、8輪の車体でかっ飛ばすイカした装輪装甲車「チェンタウロ」。
一部ではチェンタウロのような大口径砲を搭載した装輪装甲車は「装輪戦車」と呼ばれているようである。
では、チェンタウロはホントに「戦車」なのか?、と問われれば、その答えは「NO」である。
この手の車両はあくまで「戦車相当の火力を持った『装甲車』」であって「戦車」では断じてない。
火力は高いが装甲薄いので戦車と言い切っちゃうのはどーかと思う。日本でもよく似た機動戦闘車なるものを配備して戦車を減らそうと財務省が蠢動しているが、ぶっちゃけ、戦車の代用品にはならない。
ここらへんは、詳しいことを懇切丁寧に説明してくれている90式戦車や10式戦車の記事を見て頂きたい。
装輪戦車とは「高火力の砲」を「迅速に展開して敵を迎撃する」のがコンセプトであり、正面から敵を殴りに行くものではありません。軍事解説者や政治家にはこれがわかってない人が多いので注意すること。
動いてますよ。
掲示板
61 ななしのよっしん
2025/02/27(木) 14:17:49 ID: WiZonHw/JC
チェンタウロ1にウクライナ供与の話が出てるね。
もしも実現したらこの手の車両が、現代の実戦でどれほどなのか凄い気になる。
62 ななしのよっしん
2025/05/21(水) 23:30:44 ID: +vincLgf48
AMX-10と同じ結果になると思う
機動性と火力はあるけど装甲と不整地性がネックになって早々に撃破
数があればまた違うのかな
63 ななしのよっしん
2025/11/13(木) 21:18:59 ID: KTfMmVo5lp
ウクライナ戦線にイタリア製のB1チェンタウロ偵察戦闘車が登場
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最終更新:2025/12/08(月) 04:00
最終更新:2025/12/08(月) 04:00
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