ツインリンクモテギ
ツインリンクもてぎとは、栃木県芳賀郡茂木町
にあるモータースポーツ施設である。
コース全長:オーバルコース=1.5mile=2,414m ロードコース=4,803m FIA国際公認
1997年8月開業。
オーバルコースとロードコースという特色の違う2つのコースをもつ世界でも珍しいサーキット。
このためツインリンク(双子のサーキット ツインは英語で双子の意味、
リンクはドイツ語でサーキットの意味)と名付けられた。
オーバルコースは、楕円形に近い形をしたアメリカ風のトラック。
2011年までインディカーレース・IRLの日本ラウンドが開催されていた。
2008年の第3戦はダニカ・パトリックが優勝。インディカー史上初の女性優勝者誕生の舞台となった。
2011年の東日本大震災でコースが破損したため現在では満足に使うことができなくなった。
ロードコースでのビッグレース開催時には駐車場になる。
また、西のストレートに特設スタンドを設けて観客を収容する。
この航空写真でも西のストレートに青い特設スタンドが付いたままになっている。
ロードコースは、様々なコーナーを配したヨーロッパ風のトラック。
四輪ではSUPER GT、スーパーフォーミュラ、世界ツーリングカー選手権、スーパー耐久など、
二輪では全日本ロードレース選手権、MotoGPが開催されている。
サーキットのほかにもホンダコレクションホールやFANFANラボ、ホテルツインリンク、遊園地、
アスレチック施設などを備える。
ホンダコレクションホールにはホンダの名車がずらりと展示されている。
アスレチック施設には空から滑空しサーキットを眺めることができるジップラインがあるほか、
森林設備を活かして二輪のトライアル世界選手権も開催される。
駐車場から各施設までは場内無料ループバスが運行され、トイレや飲食も充実しており、
国内では珍しい軽装で観戦にいけるサーキットである。
何気に『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』でのレースシーンのロケ地として使われていたり、『ばくおん!!』に至っては制作協力として関わり、劇中で使用するバイクのエンジン音収録を
ここで行っていたりする。
S字1つ目の外側の丘の上に3本の旗を立てていて、テレビ中継で映されることがある。
MotoGP開催時は、ツインリンクもてぎの旗、日本国旗、MotoGPの旗が並ぶ。
鯉のぼりが立てられることもある。
ツインリンクもてぎは栃木県東部の山岳森林地帯にある。
東京駅から直線距離で103km離れていて、南関東から見ても少し遠い。
南関東より西の人がレース観戦するにはホテルに泊まった方がいいだろう。
ツインリンクもてぎは宇都宮と水戸という2つの県庁所在地の中間地点にある。
宇都宮と水戸のどちらからも直線距離30kmの位置にあるので、好きな方を選ぶことができる。
水戸の方が僅かに近いので、レース関係者は水戸のホテルを優先的に予約するそうだ。
県外からの出張者を多く受け入れる県庁所在地らしく、ホテルの数には余裕がある。
宇都宮からも水戸からも国道123号を走るだけで辿り着けて、それなりにアクセスは良い。
公共交通機関ではJR宇都宮駅・水戸駅または真岡鐵道茂木駅からバスないしタクシー利用となるが、
ビッグレースや大型イベント開催時には臨時の路線バス、さらに宇都宮からシャトルバスが運行される。
メインスタンドから5コーナーの方を向くと見える白い建物は、ホテルツインリンク
である。
家族連れをメインターゲットにしたリゾートホテルで、お料理が好評。
ツインリンクもてぎで事故が起こったら、まずメディカルセンターに運ばれる。
ここで手術することも可能である。
レースに帯同する医師の判断により危険と判断されたら、ヘリポートからドクターヘリを飛ばし、
獨協医科大学病院に緊急搬送することになっている。
36km離れているが、ヘリコプターなら所要時間10分程度で運ぶことができる。
この獨協医科大学病院には2008年にバルベラ、2015年にデアンジェリスが入院した。
山間部にあるサーキットなので上昇気流が発生しやすく、雲が起こりやすく雨が降りやすい。
平野部にある宇都宮市や水戸市のホテルでは晴れていたが、国道123号線を移動すると雲が多くなり、
ツインリンクもてぎではポツポツと雨が降っていた・・・この手の体験談が多く聞かれる。
山間部にあるサーキットなので霧が発生しやすい。
霧が発生してドクターヘリが飛べないと判断されると、レーススケジュールが遅延する。
2013年と2015年
のMotoGPは霧が発生してレーススケジュールが大きく変わってしまった。
こちらが現地の天気予報。
ツインリンクもてぎ花火の祭典と呼ばれる花火大会が年2回、夏と冬に開催される。
夏はお盆休みの最中、冬は大晦日あたり。
広いサーキット敷地で行われるので、都会の河川敷では使えないような大型の二尺玉花火を使ったり、
目線の高さで炸裂する花火を仕掛けたりと、圧巻の演出が目を楽しませてくれる。
花火を提供しているのは「菊屋小幡花火店」という群馬県の花火メーカーで、
全国各地の花火競技大会で優勝や上位入賞の常連になっている名門企業である。
この花火大会は1998年から始まった。その当時から音楽と花火をシンクロさせる演出に取り組んでいた。
音楽と花火を同調させるのはなかなか難しいが年々腕前が向上し、最高峰の花火大会と称されている。
駐車場・観覧席があり、飲食店もトイレも豊富にあるので花火大会の開催地としては理想的な場所の一つ。
毎年12月初旬に、ホンダレーシングサンクスデーという催しがツインリンクもてぎで行われる。
ホンダと契約を結んでいるモータースポーツ選手達がツインリンクもてぎに勢揃いし、
トークを行ったりデモランを行ったり、様々なイベントを行う。
F1ドライバー、レプソルホンダのマルク・マルケスやダニ・ペドロサなど、
スーパースターが一堂に会する貴重な光景を目撃することができる。
ロードコースは全14コーナーから成り立つが、6コーナー以降の各コーナーには名前が付いていて、
そのコーナー名で呼ぶのが慣例となっている。
「(数字)コーナー」とコーナー名の対応表は以下の通りになっている。
6コーナー | 130R |
7コーナー | S字1つ目、S字1発目 |
8コーナー | S字2つ目 |
9コーナー | V字 |
10コーナー | ヘアピン |
11コーナー | 90度コーナー |
12コーナー | (特に名前らしい名前が付いていない影の薄いコーナー) |
13コーナー | (特に名前らしい名前が付いていない影の薄いコーナー) |
14コーナー | ビクトリーコーナー |
ストップ&ゴーのサーキットで、ブレーキングの上手さと加速力を問われる。
山の中のサーキットなので上り下りの勾配がある。
かなり長く続く上り勾配と、短い距離の中で一気に下る強烈な下り勾配がある。
こちらがMotoGP公式サイトの使用ギア明示動画である。1速ギアを使うのはヘアピンのみである。
主なパッシングポイントは1コーナー、5コーナー
、S字1発目
、V字
。
軽~中排気量クラスなら、バックストレートエンドの90度コーナーもパッシングポイントになる。
ツインリンクもてぎの路面のグリップは非常に良い。
サーキットに使われるアスファルトの品質は世界共通ではなく各地域で分かれている。
日本のサーキットのアスファルトのグリップは非常に良く、
欧州のサーキットのアスファルトのグリップは日本のものよりも劣り、
米国のサーキットのアスファルトのグリップは欧州のものよりも劣ると言われている。
ツインリンクもてぎの路面のグリップは日本のサーキットらしく非常に良く、
タイヤががっちりグリップしてツルッと滑る危険性が少ない。
抜群のグリップがあるため目一杯バイクを傾けて高速コーナーリングすることもできる。
その反面、タイヤの摩耗が激しいサーキットとしても知られている。
ザラザラしたグリップの良い路面がタイヤを削ってしまい、タイヤが摩耗しやすい。
2017年の最大排気量クラスの土曜日予選ではタイヤの摩耗が話題となった。
日曜日の決勝においてもアンドレア・ドヴィツィオーゾのマシンのタイヤに摩耗が発生、
90度コーナーでマシンを左右に振るわせながらブレーキングすることになった。
このサーキットはホンダのテストコースとして使用されている。
モータースポーツに関する投資を惜しまない世界最大の2輪メーカーホンダが、
金に糸目を付けず路面の補修をちょくちょく行っていて、路面の状況は常に良好である。
陥没や凹凸やうねりが非常に少ない。
このため最大排気量クラスで使われている電子制御にとって理想的な路面環境になっており、
スムーズな加速が完璧に行われ、短い直線でも相当な車速に到達することができる。
ちなみにツインリンクもてぎはホンダが建設してホンダが所有してホンダがテストに使うコースだが、
ヤマハやスズキといった他のメーカーもテストコースとして盛んに利用している。
「ライバルメーカーの手助けをしてはいけないからコースを貸し出さない」とか、そんなことはない。
むしろヤマハやスズキはコース使用料を払ってくれる大事なお客さんになっている。
ホンダ、ヤマハ、スズキといった日本のメーカーはツインリンクもてぎでさんざん走り込んでいて、
走行データを山のように持っており、マシンに最適な電子制御を上手く組むことができる。
このため日本メーカーは総じてツインリンクもてぎでの成績が良い。
ヴァレンティーノ・ロッシはドゥカティワークスに在籍していたとき、
「ツインリンクもてぎでの日本メーカーのマシンは速い。
サテライトチームでさえ信じられないほど速い」と語っていた。
ドゥカティ、アプリリア、KTMといった外国勢にとってツインリンクもてぎは難関で、
ここで日本メーカーを負かすのはなかなか難しい。
ブレーキへの負担が強烈で、世界一ブレーキに過酷なサーキットといわれるほど。
2012年MotoGPでは、昼間のレースであるにもかかわらず、グレッシーニレーシング所属の
アルヴァロ・バウティスタのブレーキディスクが赤熱する様子がTVカメラにとらえられた。
2013年のMotoGPクラスはディスク板の直径が320mmまでと規制されていたが、
ツインリンクもてぎのレースだけは制動力の高い340mmのディスク板を義務づけられることになった。
ブレンボ(イタリアのブレーキメーカー。MotoGPクラスのほとんどのマシンにブレーキを供給する)が
選んだ「ブレーキに厳しいサーキット」の中で、ツインリンクもてぎはトップ4の一角に入っている。
2015年には再びブレーキディスク赤熱の様子がカメラに捉えられた。
雨が降って走行速度が落ちてもブレーキディスクが赤熱する。
資金力が高く高額の最高級部品を使用するヤマハワークスのマシンですらブレーキディスクが赤熱する、
この事実を見た関係者の間に衝撃が走った。
このため、ブレーキにダクトを付けて空気を当てて冷却する動きが広がっている。
こんなダクトを前輪の横に付け、空気を吸い上げてブレーキディスクを冷やすのである。
ブレーキディスクの前方は空気が当たってくれるがブレーキディスクの後方は空気が当たらない。
他のサーキットならそれで十分に冷却できるが、ツインリンクもてぎでは冷却力が不足する。
そこでわざわざダクトを付けて空気を拾い集め、ブレーキディスクの後方に空気を流し込んで冷やす。
本来なら、空気抵抗が増して走りに悪影響が出るのでこのような部品は付けないのだが、
ツインリンクもてぎのブレーキ過熱は深刻なレベルなので背に腹は代えられない。
アクセルを目一杯開ける時間が多いレイアウトなのでガソリンの消費が激しく、
燃費の向上が大きな課題となる。
2012年のMotoGPではカル・クラッチローが最終ラップでガス欠を起こし、
S字区間でスローダウンしてリタイヤした。
スリップストリームの恩恵を受けない単独走行をしすぎたり、
リアタイヤが消耗して空回りの割合が多くなったり、それらが重なってのガス欠だったとされている。
ハードブレーキングサーキットである本サーキットにおいては硬いフロントタイヤが推奨される。
フロントタイヤというのはブレーキング時にマシンの荷重を全て受け止める場所なので、
硬くて剛性が高いほど安定したブレーキングを行うことができる。
硬いフロントタイヤを選ぶと、ハードブレーキングをするときにしっかりマシンを止めることができる。
ただ、乗り心地が悪く、操縦性が悪く、あまり機敏に動けない。
柔らかいフロントタイヤは全く逆で、乗り心地が良く、操縦しやすく、機敏に動けるが、
ハードブレーキング時にしっかりマシンを止めることができない。
フラットなコーナーがとても多いという点もツインリンクもてぎの特徴である。
路面のカント(傾斜)が強烈なのはS字1発目のコーナーぐらいで、あとはフラットな路面が続く。
カント(傾斜)がしっかり付いているコーナーが多い鈴鹿サーキットとは対照的なサーキットと言える。
カント(傾斜)がついていないフラットなコーナーは、 リアタイヤが滑りやすい上に
フロントタイヤもグリップしづらく、なにもかもグリップが薄く感じられ、ライダーにとって難しい。
カント(傾斜)がしっかり付いているコーナーはタイヤのセンター部分を使うことができるのだが、
カント(傾斜)がついていないフラットなコーナーはタイヤのエッジ部分を使わざるを得ない。
ツインリンクもてぎは直線区間が多いが、意外とリアタイヤのエッジ部分を消耗するのは、
フラットなコーナーが多いためである。
また、路面のカント(傾斜)が少ないことで、コーナーがのっぺりとしていて立体感がなく、
コーナー旋回最中に進行方向に目を向けても様子がわかりづらい。
コース幅が非常に小さく見え、縁石が見えづらく、コーナー形状がわかりづらい。
路面のカント(傾斜)が大きい擂り鉢(すりばち)のようなコーナーだと、コーナーに立体感があるので
コーナー旋回最中に進行方向にちらっと目を向けるだけでしっかり把握できるのだが、
そういうコーナーが少ない。
ライダーは視覚情報に頼らず、想像力を駆使してコーナーリングしなければならない。
こういうことからもツインリンクもてぎは少し難しいサーキットなのである。
グラベル(砂)が広くて安全性が高い設計のサーキットとなっている。
5コーナーや130Rやヘアピンやダウンヒルストレートエンド90度コーナーのグラベル(砂)には
外に進むにつれて上りになる傾斜があり、
コースアウトして突っ込んでくるバイクやライダーを受け止める構造になっている。
2013年のMotoGPクラスでは、アレイシ・エスパルガロのマシンにブレーキトラブルが発生した。
よりにもよって車速が最高速になるダウンヒルストレートでブレーキが効かなくなってしまい、
異常を察知したアレイシは即座にマシンから飛び降りることを決断した。
アレイシはアスファルト路面からグラベル(砂)へ高速で滑走することになってしまったが、
傾斜の付いているグラベル(砂)に受け止められ、無傷で済んだのだった。
グラベル(砂)が広くて、ところによっては傾斜まで付いているので、安全性は高い。
しかしながら、そういうグラベル(砂)の形状が、ライダーを幻惑させることもある。
グラベル(砂)が広く大きく見えて圧迫感を感じ、ブレーキ操作を誤ってしまうことがある。
5コーナー、ヘアピン
、90度コーナー
、いずれも「砂の壁」がそそり立っているように見える。
この「砂の壁」が急に視界に入ってびっくりし、僅かにブレーキレバーを握るタイミングが遅れることで
コースをオーバーランしてしまう危険性がある。
ブレーキングするときも視覚情報に頼りすぎてはならず、やはり少し難しさがあるサーキットと言える。
最終コーナーはかなりの上り勾配で、ここを駆け上がるライダーがヌッと出現するように見える。
1~2コーナーは直角コーナーが2つ結合したコの字型コーナーで、旋回速度が高めである。
2013年に1~2コーナーのアウト側のアスファルトが拡張され、コースアウトしにくくなった。
1コーナーは有力なパッシングポイントで、インに入ってずばっと抜いていくシーンが数多く見られる。
2コーナー立ち上がりは各ライダーが目一杯外を攻める。外の縁石をはみ出して土埃を上げることもある。
2コーナー~3コーナー間の直線の下や4コーナー~5コーナー間の直線の下に地下道がある。
転倒したライダーはコースを横切るわけにはいかないので、この地下道を通ってピットに帰る。
次の3~4コーナーが勝負どころになっている。3コーナーはきつく、4コーナーは緩やかになっている。
3コーナーを上手く止めて、4コーナーを絶妙なラインで上手く立ち上がり、
前の車の背後にぴたりと付けてスリップストリームを利用して車速を伸ばし、
5コーナーでインに入って抜くというのが非常によく見られるシーンである。
4コーナーが高速コーナーで、4コーナーから5コーナーは下り勾配になっていて速度が乗りやすく、
5コーナー自体がキツい角度の低速コーナーであるといった条件が重なり、
5コーナーが本サーキットで最も激しいブレーキングの場所になっている。
サスペンションやブレーキのデータに表れている。
ゆえに各ライダーは5コーナーをしっかり止められるマシン作りを目指すことになる。
5コーナーは地味なコーナーに思われるが、パッシングも多く、マシンセットの基準にもなり、
最も重要な場所となっている。
5コーナーで抜きにかからず上手く立ち上がることに専念するのも選択肢の1つとなる。
5コーナーを上手く立ち上がってファーストアンダーブリッジを抜け、
その次の130Rでしっかり速度を乗せ、前の車の背後に付いてスリップストリームの恩恵を受け加速し、
S字1発目でズバッとインに入ってパッシングする。
S字1発目は急激な上り坂で、ここから長い間上り勾配になるので、
進入速度を目一杯速くしたほうが得をする。
S字1発目の進入速度がその後のS字区間全体のコーナーリング速度を決めてしまう。
S字1発目には擂り鉢(すりばち)のようにカント(左右の傾斜)がしっかり付いているので、
あまりブレーキを掛けずオーバースピード気味に飛び込む。
S字からV字を経てヘアピンに至るまで非常に長い上り坂になっている。
S字は特に勾配がキツく、ライン取りや操縦が下手なライダーが地球の重力によってさらに遅くなる。
S字区間はライダーの上手下手がハッキリ鮮明になる。
「この上り坂区間、それも特にS字区間で速いライダーは全体のラップタイムでも速い」と言われる。
S字区間で近づいてV字コーナーでズバッと抜くのはマルク・マルケスが得意としている。
S字2つ目からV字への距離が短い。
S字2つ目で右にバイクが傾いた状態から左に切り返してV字に進入する。
距離が短い、切り返しがある、この2条件のため、S字からV字へは車速を乗せづらい。
車速を乗せづらいので先行ライダーを抜き去るパッシングは非常に難しい場所の1つのはずなのだが、
マルク・マルケスはV字でのパッシングを繰り返している。
マルク・マルケスは身体能力が抜群なので切り返しもやたら速く、その分、車速も速い。
マルク・マルケスが何度もパッシングを披露したので、他のライダーもパッシングを挑むようになった。2017年からはV字の前に観客席が設置されるようになった。
V字を立ち上がってもまだ上り勾配が続く。
ヘアピンのあたりがツインリンクもてぎの頂点となっている。上り勾配なのでマシンを止めやすい。
ヘアピンでは早めにブレーキングしてゆったり回り、次のダウンヒルストレートの加速に備える。
低速コーナーだがパッシングシーンは少ない。
パッシングを仕掛けると走行ラインが崩れ、立ち上がりの加速が鈍り、
ダウンヒルストレートで置き去りにされてしまう可能性が高まる。
ダウンヒルストレートは本サーキット最長の762mとなっている。
最初は平坦だが、アーチ看板をくぐってから急激な下り勾配が始まり、谷底に落ちるような感覚になる。
ここの高低差は30mで、ビル10階建て分の高さを一気に下る。
ダウンヒルストレートを下から見た写真を見ると、悪い冗談としか思えないような傾斜になっている。
ヘアピンの立ち上がりはコースの外側で、ダウンヒルストレートの中間地点でコースの内側へ移り、
ダウンヒルストレートエンドの90度コーナーではコースの外側へ移る、
このようなコースを2回横切る蛇行が最大排気量クラスで一般的である。
特に、晴れて乾いた路面になるとそういう傾向が強まる。
現在のMotoGP最大排気量クラスの電子制御は発達していて、バイクが深く傾いている状態から一気に
ガバッとアクセルを開けることができる。そうするとバイクが勢い余ってコース内側にまで移動する。
「マシンを起こしてからアクセルを開けて真っ直ぐ走って距離を得する」よりも、
「一瞬でも早いタイミングでアクセルを開けて加速力を伸ばす」ことが有効と各チームが判断している。
電子制御がほとんど無いmoto2やmoto3のレースだと、最大排気量クラスよりも蛇行は控えめである。
2002年の最大排気量クラスの記録映像がある。この年は4ストロークエンジンの初年度で、
電子制御がまだ未発達だったため、バイクが深く傾いている状態からアクセルをガバッと開けることが
できなかった。それゆえ、ダウンヒルストレートの蛇行が現在よりかなり控えめになっている。
ダウンヒルストレートエンドの90度コーナーは難易度が高く、テクニックを要する。
ブレーキングの初めは優しくソフトにブレーキレバーを握らねばならない。そして徐々に握りを強める。
いきなりガツンとブレーキを握ると一気にリアタイヤが浮いてしまう。
2014年金曜の練習走行で、ダニ・ペドロサがいきなりガツンとブレーキレバーを握ってしまい、
リアタイヤを思いっきり浮かせてしまった。リアを浮かせたまま130メートルも走ったらしい。
恐怖を感じるほどの急激な下り坂をアクセル全開で走る状態から激しいブレーキを行うので、
多くのマシンがリアタイヤを1~2cm浮かせるジャックナイフとなる。
2011年のケーシー・ストーナー、2013年のヴァレンティーノ・ロッシ
がここで止まりきれずに
オーバーランしてグラベル(砂)に突っ込んでいる。
MotoGPの歴史に名を残すレジェンドライダーもコースアウトする厳しいコーナー。
また、ブレーキしすぎてスピードを殺しすぎてもいけない。
角度のきついコーナーではなく90度コーナーなので、ある程度のスピードを残してコーナーに入りたい。
このため、「もっとも強くブレーキングする場所」の座を僅差で5コーナーに譲っている。
90度コーナーを過ぎてもまだ下り勾配が続き、セカンドアンダーブリッジまで同じ傾斜の下りが続く。
下り勾配が続くせいでグリップが薄く感じられ、なんとも走りにくい。
このように90度コーナー周辺は難しい。
最大排気量クラスの車重の重いハイパワーマシンだと90度コーナーの難易度は極度に高まり、
人間の能力の限界を越えるほどの難しさになる。それゆえ90度コーナーでのパッシングは少ない。
あのマルク・マルケスですらこの90度コーナーでパッシングしようとしていない。
ロスしないように上手くまとめるコーナーという感じ。
雨が降って濡れた路面になると、最大排気量クラスでも90度コーナーでのパッシングをしやすくなる。
雨が降って濡れた路面だと滑りやすいので、電子制御を雨用の設定に変えてエンジンの出力を抑える。
そのため、晴れて乾いた路面の時よりも最高速が10km/hほど下がる。
90度コーナーのブレーキングの難易度もぐっと下がり、パッシングも多く見られるようになる。
90度コーナーを脱出したら可能な限りマシンを右に寄せる。
Dunlopの看板があるセカンドアンダーブリッジの中できちっとコース右に寄っているのが望ましい。
左コーナー1発目はかなりの高速コーナーで、橋をくぐってここを高速で駆け抜けるライダーを
ピット側から写すのがテレビ中継の定番である。
左コーナー1発目はマシン左側が路面に当たり火花を散らすこともある。
左コーナー1発目を過ぎた後はアスファルトが広がっており、転倒したライダーが滑る
ことがある。
左コーナー2発目と最終コーナー(ビクトリーコーナー)はS字になっていて、
最終コーナーに向けて右に切り返すところからぐっと上っている。
最終コーナー(ビクトリーコーナー)は隠れた難所となっている。
ここは急激な上り勾配になっていて、上りきった頂点で直線にさしかかるので、
思い切りアクセルを開けたくなる。
しかしながら上り勾配を上りきった頂点はリアタイヤの荷重が抜けて滑りやすくなっているものであり、
そこでアクセルをガバッと開けるとリアタイヤが滑ってしまう。
そして急にグリップが回復してライダーがマシンからはじき出され、
絵に描いたようなハイサイド転倒になってしまう。
だから最終コーナーの立ち上がりは慎重にアクセルを開けなければならないが、
それを忘れた軽量級の若いライダーがガバッとアクセルを開けてハイサイド転倒する例が後を絶たない。
2013年のmoto3決勝でランキング2位のアレックス・リンスが3位走行中にハイサイド転倒したのも
この最終コーナーだった。3位で終わっていればランキング1位になって最終戦に進んでいたのに、
転倒でランキング3位へ転落してしまう。まさに運命を変える転倒になってしまった。
最終コーナー(ビクトリーコーナー)はイン側の狭い場所だけにカント(傾斜)が付いており、
アウト側にはカント(傾斜)が付いていない。
針に糸を通すような感じでカント(傾斜)が付いているイン側の狭い場所を通らなければならない。
走行ラインはたった1本だけで、パッシングは不可能に近い。
ツインリンクもてぎはハードブレーキングサーキットであり、ライダーの両腕筋肉への負担が大きい。
MotoGPに帯同する医師によると、ツインリンクもてぎで腕上がりの症状を訴えるライダーは非常に多く、
世界トップクラスに腕を酷使するサーキットであるとのこと。
最大排気量クラスにおいて5コーナーや90度コーナーでのブレーキレバーへの入力は約8kg。
2リットルペットボトル4本を右手の指3~4本で引っ張り上げるのと同じ操作を行う。
それに加えて強烈そのものの減速Gがかかり、「重りを背負って腕立て伏せをする」と形容されるような
激しい負荷が上半身にのしかかる。
また、ハードブレーキングサーキットであるがゆえに、ライダーへの精神面への負担も大きい。
バイクを止めるというのは素人目には簡単そうに見えるのだが、
2輪のバイクをしっかり止めて、コーナーの中でコントロールしつつ減速して、
しっかり向きを変えて立ち上がっていくのは非常に難しい作業なのである。
バイクの操作にほんのちょっとの狂いもミスも許されず、非常に正確な操作が必要になる。
そうしたブレーキングが絶え間なく延々と続くので、ライダーの精神的な消耗も激しい。
ツインリンクもてぎは厳しいコースで、肉体面でも精神面でも充実していないと好成績を収められない。
MotoGPライダーのなかでも、ツインリンクもてぎがとても大好きだというライダーは
非常に少ないらしい。
ライダーにとってはまさに過酷そのもの、試練の場所といえるだろう。
ここを得意としていたのはロリス・カピロッシで、最大排気量クラスで3連覇を達成した。
また2002年には2ストローク500ccマシンで4ストローク990ccマシンに競り勝ち、
1位から7秒差の3位に入賞するという偉業を達成している。
ツインリンクもてぎでキャリア初優勝を飾ったライダーは5人いて、
中野真矢、青山博一、ヨハン・ザルコ、ダニー・ケント、アレックス・マルケスである。
いずれも「上位争いの常連で、もう少しで勝ちそうなのに初優勝を逃し続けていた」というライダーばかりだった。
そして、この5人のうち4人が後に世界チャンピオンになっている。
掲示板
5ななしのよっしん
2016/10/06(木) 23:12:00 ID: UUFRuy0UXH
6ななしのよっしん
2017/07/18(火) 18:15:05 ID: Z1rhDj2mwv
なんて詳しい記事だ
7ななしのよっしん
2019/12/14(土) 20:07:44 ID: ZRzIzfJ3TR
お悔やみ申し上げます。
レース場で起きたことなら仕方が無い。ただ前方の2台は避けていたなら、車両の軌道は見えているはず。「あれ?変なライン取るな?」とかね。
オフィシャルがきちんと仕事してれば旗も振られていたはず。フォーミュラ乗るくらいならそれなりに技量はあるはずだけど、何があったのだろうか。
サーキットで事故1人死亡 フォーミュラカー、栃木
https://
急上昇ワード改
最終更新:2021/02/26(金) 04:00
最終更新:2021/02/26(金) 04:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。