私にえも言われぬ喜びを与えてくれる唯一のスポーツは、厳密に言えば自転車競技だ。
具体的に言うと、ツール・ド・フランスである。
ツール・ド・フランス(Tour de France)とは、世界最大級の自転車ロードレースである。
オリンピック、FIFAワールドカップと共に世界三大スポーツイベントと称される。
現在の主催はフランスのメディア大企業、アモリ・スポル・オルガニザシオン (ASO)。
ジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャと共に数えられる世界三大レース「グランツール」の二戦目にあたる。開催時期は7月初旬。
通称はツール。フランス人にもル・トゥールで通る。
他にもツール・ド・スイスやツール・ド・ポローニュなどツールを冠すプロツアーレースはあるものの、歴史的背景からツールと言ったらツール・ド・フランスになる。
日本人に一番知名度があるレース……というか標準的な日本人はこれ以外をまず知らない。
23日間で約3500kmを走破、時には標高差2000mの登山もする、超人的プロライダーの祭典である。
1903年、第1回が開催。フランスのスポーツ新聞社・ロト(現:レキップ)の宣伝の為、編集長のアンリ・デグランジュが発案したのが始まりである。当初は大変過酷なレースで、選手は道路の脇で眠っていたという。サポートは認められず、選手自らが修理用の道具を装備した状態でレースに臨んでいた。
以来様々な変遷を遂げ、二度の大戦で中断を挟みつつも、今日まで開催され続けている。
ジロがイタリア人のためのレース、ブエルタがスペイン人のためのレースと言われる中、その知名度から世界的な注目を含め、フランス人以外も本気で狙いに来るレースである。というかフランス人は25年ほど勝てておらず、85年のベルナール・イノー(現コースディレクター)が最後。
他のグランツールより平地ステージが多いという特徴があるため、ここでポイント賞を獲得したり、記憶に残る勝利を挙げたスプリンターが高評価を得る事が非常に多い。
山岳は高低差や最大斜度では他2つのグランツールに及ばないが、一日に4000m以上登らされたり(2000m登って降りて1000m登って降りて、別の1000mの山を登って降りる)、登坂距離が10kmを超えて1時間近く山の中を走るなど、違った形でのきつさ(ドSさ)を持ち合わせているため、ジロやブエルタで山岳上位=ツールでも山岳上位、となるわけではない。
ちなみに「死の山」と呼ばれるモン・ヴァントゥは登坂距離が21.8kmとか意味不明な事になっている。
賞は複数あり、それぞれにリーダージャージと呼ばれる特別なジャージまたはゼッケンが存在する。ステージ終了時点で各賞1位の選手・チームは、翌日ジャージまたはゼッケンをつける事が義務づけられている。これにより、一目で誰が前日のトップなのかが解る。
個人総合時間賞のリーダージャージは黄色で、「マイヨ・ジョーヌ」と呼ばれる。最終ステージ終了時点でマイヨ・ジョーヌの着用権利を持つ選手が総合優勝者となる。
その他マイヨ・ヴェール(ポイント賞、緑)、マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ(山岳賞、白地に赤水玉)、マイヨ・ブラン(新人賞、白)などが存在する。
現時点でのステージ日本人最上位は、2009年第2ステージで記録した新城幸也の5位。
ニコニコ動画においては、実際のレース映像がアップされている。
レース結果ではわからない駆け引きや落車、ゴール前のスピード感などの魅力でコメント数が多くなることがある。
日本では「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」が2013年から開催されている。
これはツール・ド・フランス100回を記念して始まったイベントで、当日はレースに加えて飲食店や物販で賑わう。ちなみにクリテリウムとは、街中に作られた短いコースを周回するロードレースの事である。
名物として「悪魔おじさん(エル・ディアボロ)」の存在が挙げられる。
本名はディディ・ゼンフト。ドイツ出身の熱狂的なファンで、悪魔のコスプレで毎年参加して応援しているおじさんである。出現するポイントの手前の路上に三叉槍をペイントしており、これが目印になる。
1993年以来毎年姿を見せており、グランツールをはじめとした著名なレースには必ずといっていいほど参加。更にはロードレースを題材としたアニメーション映画『茄子 アンダルシアの夏』にも登場している。2016・2017年にはさいたまクリテリウムにも登場し、人気を博した。ちなみにただの変なおじさんではなく、奇抜なデザインの自転車フレームを製作し、ギネス記録も保持している。
華やかなレースの裏側では、不正行為や問題もそれなりに存在する。
大会の初期には選手が途中で列車を使用していた事が発覚し、大問題になった。これによりチェックポイントを設けてポイント制導入に至っている。
その後もドーピング問題は深刻で、かつてはアンフェタミンやコカインの鎮痛目的での使用、現在ではステロイドを始めとした薬物使用が問題となっている。ツール・ド・フランス7連覇を達成したランス・アームストロングのドーピング違反による優勝記録抹消と永久追放は、ショッキングな話題として報じられた。
2009年からは生体パスポートによるチェックを導入しているが、その後もドーピング問題は続いている。
グランツールのうち2つのレースで総合優勝することを「ダブルツール」、ダブルツールに加えて世界選手権ロードレースの個人種目を制することを「トリプルクラウン」と呼ぶ。ダブルツール達成者は過去に7人、トリプルクラウンに至っては2人のみである。
参加者の中で最も総合タイムが遅い選手、要するにビリの選手は「ランタン・ルージュ」と呼ばれる。これは貨物列車の最後尾に目印としてつけられていた「赤いランプ」を意味し、トップとは別の意味で注目される。こうしたランタン・ルージュのエピソードをまとめた「敗者たちのツール・ド・フランス~ランタン・ルージュ~」という本が出されている。
レース映像については「TDF2013」のように「TDF」+「西暦」のタグで検索してください。
毎年BOXでDVDまたはBlu-rayが発売されている。
レースの裏側も収録されており、ファンにとっては充実した内容となっている。
関連書籍も多く発行されている。
ドイツのテクノユニット、クラフトワークの楽曲。
1984年の映画「ブレイクダンス(Breakin')」で使用され、人気を博した。
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最終更新:2023/06/02(金) 05:00
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