テレキャスター(Telecaster)とは、フェンダー社より販売されているエレクトリック・ギターである。
1949年のプロトタイプ「エスクワイア」の発表を経て1950年に発売。当初の商標は「ブロードキャスター」(Broadcaster)であったが同名製品を抱えるグレッチ社から抗議を受けた末に「テレキャスター」に変更された。ボディに空洞の無いソリッドボディのエレキ・ギターとしては世界で初めて量産されたモデルである。発表された当初は「板っきれ」「カヌーのパドル」等と呼ばれたが、ソリッドボディによる今までに無い音色や取り回しの良さから一気に人気機種となった。
テレキャスターはソリッドボディの他にもボルトオンのデタッチャブルネック、ボディを貫く形で固定される弦、メイプル・ワンピースネック、片側6連のチューニング・ペグ等それまでのギターとはかけ離れた特徴を持つ。これは開発者のレオ・フェンダーがビグスビーがマール・トラヴィスのために制作したギターのアイディアを流用して完成させたものとされている。そのため、ビグスビーの前でフェンダーの話をすることはタブーとされていた。
世界初の量産モデルでありながらブリッジプレートにマウントされたピックアップの特徴的な音色は現在でも唯一無二と言える物であり、基本モデルは幾度かの細かい仕様変更が行われたものの現在までほぼ変わらない仕様で販売されている。エレクトリックギターが用いられる音楽の中で専らフルアコースティックが用いられるジャズ以外のほぼ全てで使用者がいると言っても過言ではないが、カントリーミュージックはテレキャスターの独壇場とも言える特徴的な用途である。一方で時代の変遷とともに求められてきた様々なサウンドに呼応するため「カスタム(Custom)」「シンライン(Thinline)」「デラックス(Deluxe)」 など伝統的な仕様とは異なるモデルも販売され、それぞれが定着しているのも特徴である。
シンプルな構成故に様々な奏法が工夫され、そうした技術を極めた人物は「テレマスター(the Telemaster)」と呼ばれる。後にも先にもこんな称号があるのはテレキャスターだけである。
1968~69年には当時のサイケデリック・ムーブメントの影響でピンク・ペイズリーとブルー・フラワーの壁紙が貼られて仕上げられたテレキャスターが発表された。ピンク・ペイズリーのモデルはジェームズ・バートンがエルヴィス・プレスリーのステージで使用したことがきっかけで有名になった。当初、フェンダー社から同ギターを供与されたバートンはあまりに派手な見た目に使用を躊躇したが、楽屋でそのギターを見たエルヴィスが気に入り「毎晩そのギターで演奏してくれよ」と言ったことから以降愛用することとなった。
1969年、ザ・ビートルズのジョージ・ハリスンにオール・ローズ・テレキャスターが供与され、同年の「ゲット・バック・セッション」及びグループ最後のライブ・パフォーマンスである「ルーフ・トップ・コンサート」で使用され在籍時末期のメインギターとして記憶されている。
このオール・ローズ・テレキャスターとは通常は指板に使用されるローズウッドでボディとネックを成形している豪華なモデルである。ネックはローズのワンピース・ネック、ボディはローズウッドを横に似分割され、間にメイプルの薄い板が貼り合わされている(ローズウッド同士の接着が困難なため)。ヘッド・デカールは当時、テレキャスターは黒のモダン・ロゴが貼られていたが、茶色のローズ・ヘッドではロゴが目立たないため、プレシジョン・ベース用のデカールを切り取って貼られていた。当時はシルバーのデカールだったが、経年変化でローズの油が染み出し、金色に変色した個体が多い。
このオール・ローズ・テレキャスターは当然「ミスター・テレキャスター」と呼ばれるジェームズ・バートンにも供与されたが、ジェームズは重くて音も気に入らないと断ってしまった。楽屋で見たエルヴィスは作りの良さに感心したが、ジェームズが手渡すとあまりの重さに驚愕したという。同ギターを宣伝したいフェンダーは「エルヴィスに進呈する」と申し出たが、エルヴィスもこれを断った。
仕様変更は基本的に他のフェンダー社製品に準ずる。ただし回路とブリッジについては大きな変更がある。
伝統的なテレキャスターのブリッジは2本の弦が1つのサドルに乗る3wayという方式である。そのため、正確なオクターブ・チューニングは出来ない(ほとんど違和感がない程度までは調整可能である)。ロイ・ブキャナン等は微妙に弦をチョーキングすることで音の狂いを修正していた。
1983年より6wayブリッジが標準仕様となり、ブリッジ・プレートはサイドのエッジが無い物となっている。
2回の大きな変更があり、現在の仕様となったのは1967年からである。当時にも現在の仕様と同じ回路に改造するミュージシャンは存在したようだがこの時代の曲をコピーする際は注意が必要である。
ヴィンテージ・シリーズなどは当時の回路を再現し、現在の回路に改造するキットが付属していた。2012年からは逆に、現在の一般的な回路が標準仕様となりヴィンテージ使用に改造するキットが付属している。
以下、各時代の回路による音色バリエーションを示す。
| ポジション | ~1952 | 1952~67*1 | 1967~現在 |
| ネック | リズムPU (Bass Tone)*2 | リズムPU (Bass Tone) | リズムPU |
| センター | リズムPU | リズムPU | リズムPU+リードPU |
| ブリッジ | リードPU (ToneノブがRとのブレンド) | リードPU | リードPU |
*1 センターとブリッジの間のポジションでミックストーン
*2 高域が大幅にカットされたプリセットトーン
そのパーツの組み上げ方式からフェンダー社製のギターはパーツ交換・改造が容易であり、テレキャスターも改造を施し使用する者が多いモデルである。
出荷時に搭載されているシングルコイル・ピックアップは低出力であるため、パワーアップを狙いアルバート・コリンズ、ロビー・ロバートソン、キース・リチャーズらはフロントを、ジェフ・ベックは両方をハムバッカー・ピックアップに交換している。コーネル・デュプリーはミドル・ポジションにグレッチ・デュアルモンド・ピックアップを増設し音色のバリエーションを増す改造を施していた。
クラレンス・ホワイトはカントリーで多用されるペダル・スチールに似せた効果を得るためにザ・バーズの僚友ジーン・パーソンズとともにボディ裏側を大きくザグって搭載するB-ストリング・ベンダーを開発、使用していた。
掲示板
36 ななしのよっしん
2016/02/07(日) 14:50:31 ID: Ip9vcJB8Bt
37 ななしのよっしん
2020/05/07(木) 19:21:05 ID: fdEdnKkeLD
DGMのシモーネムラローニはCDだけ聴いてるとメタル系だからストラトを使ってると当たり前のように思ってたけど、ライブを見たらバリバリのテレキャスでびっくりし
テレキャスであんな流暢にメタルの音出せるなんてめちゃくちゃかっこいいな
38 ななしのよっしん
2021/01/11(月) 18:13:38 ID: 5tt28/lxIy
ジョージ・ハリスンはオールローズで重いテレキャスターの音が気に入ってたのか
手放した後使ってたFritz Brosのテレキャスターも
来日時に「このギターは重いんだ」って言ってたね
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最終更新:2025/11/19(水) 14:00
最終更新:2025/11/19(水) 14:00
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