デッドセクション(無電区間、死電区間)とは、電化区間で電気が通っていない区間である。
電車を走らせるためには電車に電気を送るための送電線(架線)が必要になるが、電化された各区間で電気の種類(交流・直流)、電圧、位相、周波数が異なる場合、同じ電線でつなぐことはできない。また、そうした電線の区切れ目を通過する際、電車が架線から電気を取り込むためのパンタグラフを通じて両区間の電線がつながってしまうと架線や電車や電源に異常が生じ、最悪故障してしまう。
それを防ぐため、架線はあるが電気が通っていない区間を設けて両セクションが電気的につながらないようにしている区間がデッドセクションである。
この区間には架線に電気が通っていないので、電車は惰性でデッドセクションを通過することになる。通過時には一時的に電車内の照明が落ちることもあるが、近年は車両にバッテリーなどを搭載することで照明を落とさないようにする工夫が施されており、デッドセクションの通過に気付きにくくなっている。(E653系など最近の車両でも電気が消える例もある。)
繰り返しになるが架線に電気が通っていないので、デッドセクション内で停車してしまうと、電車は動くことができなくなる(実際にそのような事故がある)。そのため、交直切換箇所には標識などが設けられており、運転士にむけた注意喚起が常に行われている。敦賀~南今庄間のデッドセクションは踏切や勾配があるのでそこで止まってしまった際無電区間を切り替えて発車出来るようにする設備があるそうである。
ちなみに、元から電車が通ることを想定していない非電化区間については、電車が惰行運転を強いられるわけではないため、デッドセクションと呼ばれることはない。
……はずだが、個人サイト「日本のデッドセクション」を運営するHN「デッドセクション」氏は、自身の居住地である徳島県(電化率0%)のことを「県内全域デッドセクション」と自虐的に呼称している。
送電方式には直流と交流の2種類が存在する。
明治時代から電化が進められた都市部の在来線では、電車の製造コストを下げられる直流電化が採用された。
一方、戦後から電化が始まった北海道、東北、北陸、九州の在来線では、電車の製造費用が高価になるものの地上設備側の送電コストを下げられる交流電化が採用された。
なお新幹線については、高速走行に必要な大電力の供給がしやすい交流電化が全区間で採用されている。
これらの境界には直流と交流を切り替えるためのデッドセクションが設けられており、交流電車よりも更に高価な交直流電車が運行されている(あるいは路線自体の電化を諦め、気動車による運行を行っている)。JR東北本線の黒磯駅付近、JR北陸本線の敦賀駅付近などが該当する。
都市部の在来線であっても、「地磁気観測所の近くだから」という理由で交流電化が採用された区間が存在する。地磁気を観測するためには近くに磁気を発生させるものがあってはならない。鉄などの導電体に電流を流すと磁気が発生してしまうため、一定方向に磁場が発生する直流電化を採用できない。これに対して交流電化の場合は電流の向きが周期的に入れ替わるため磁場の影響を打ち消すことができ、地磁気観測への影響を少なくすることができる。
その影響で、茨城県石岡市の気象庁地磁気観測所周辺にあるJR常磐線の取手駅付近やJR水戸線の小山駅付近にはデッドセクションが設けられており、東京都心に比較的近いにもかかわらず直流電車が乗り入れられないため車両運用上の大きな制約となっている。
さらに、首都圏新都市鉄道つくばエクスプレスも都心部での直流電化と茨城県内の交流電化を両立するためにデッドセクションの設置と高価な交直流電車の導入を余儀なくされたほか、関東鉄道常総線・竜ヶ崎線や鹿島臨海鉄道大洗鹿島線では電化自体を諦めて非電化のままとなっている。
直流同士・交流同士であっても、送電線の電圧が異なっている場合はデッドセクションが必要になる。
交流電化の場合、JRは在来線(20kV)と新幹線(25kV)で電圧が異なるため、両者の線路がつながっている箇所にデッドセクションが設置されている。
ミニ新幹線の接続駅(福島駅構内・盛岡駅構内)と、新幹線と在来線が同じ線路を走る青函トンネルの前後にある接続点(新中小国信号場・木古内駅構内)が該当する。
直流区間の場合、箱根登山鉄道(750V)と小田急線から直通する列車(1500V)が接続する箱根湯本駅構内にデッドセクションが設置されている。
一方で、伊予鉄道の郡中線・横河原線(750V)と高浜線(600V)が接続する松山市駅構内のように、無電区間を設けずに異電圧接続を実現している例もある。(両線を乗り入れる電車も複電圧車ではなく、許容電圧を広げたり性能を落として走らせているものと思われる。)
交流電流は1秒間に50回または60回の周期で電流の向きが入れ替わっている。この入れ替わるタイミング(位相)が異なる送電線同士を接続すると、電圧や周波数が同じであっても架線などに異常が生じてしまう。そのため、交流電化された在来線の場合は、変電所の境界などにデッドセクションが設けられている。
ただし、新幹線の場合は無電区間ではなく、電車の通過に応じて通電系統が切り替わるエアセクションでの接続となっており、デッドセクションは存在しない。
交流電流の向きが入れ替わる周期(周波数)が異なっている場合も同様にデッドセクションが必要になる。日本の商用電源の場合、東日本では50Hz、西日本では60Hzで電気が供給されているため、これらの区間を跨ぐ箇所にはデッドセクションが必要になる……はずだが、商用電源周波数の境目を走る在来線は全て直流電化なので、在来線の交流電化区間で異周波数が接続している箇所は存在しない。
50Hz地域と60Hz地域を跨ぐ北陸新幹線では3箇所で周波数を切り替えているが、位相区分セクションと同様に無電区間ではなくエアセクションでの接続となっているため、デッドセクションは存在しない。
同じく50Hz地域と60Hz地域を跨ぐ東海道新幹線の場合は、東京都内と神奈川県内の合計4箇所に周波数変換所を設けることで全区間の60Hz送電を実現しているため、こちらもデッドセクションは存在しない。
直流電化で電圧が同じ場合は、パンタグラフが一瞬通過する程度であれば送電線が接続されても大きな問題にはならないため、エアセクションやインシュレータセクションなど無電区間を設けない方法で接続している場合がほとんどである。
しかし、相互乗り入れ会社間や車庫と本線など、電源を完全に分離したい場合にデッドセクションが設けられることもある。JR宇都宮線と東武日光線が接続する栗橋駅構内や、JR御殿場線と小田急線が接続する松田駅構内などが該当する。
掲示板
1 ななしのよっしん
2022/02/19(土) 09:27:07 ID: bcwzC2T0QV
> 上記の理由以外でデッドセクションになる例として「地磁気観測所の近くだから」がある
非電化路線のことを言ってるんだろうけどこれってデッドセクションと呼ぶんだろうか
2 ななしのよっしん
2022/02/20(日) 00:12:12 ID: F6p3tLDZIj
>>1
地磁気観測所への影響が少ない交流に切り替えるので、そのわずかな隙間をデッドセクションにする、だよね?
3 ななしのよっしん
2022/03/13(日) 22:01:47 ID: bcwzC2T0QV
鉄道に詳しくない人でも理解できるように、電化の歴史について大雑把に触れながら大幅加筆してみました。
地磁気観測所についても記述内容が飛躍しないように頑張ってまとめてみましたが、合ってますかね……?
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最終更新:2024/04/19(金) 15:00
最終更新:2024/04/19(金) 15:00
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