デヴィッド・キース・リンチ(David Keith Lynch, 1946年1月20日 - )とは、アメリカ合衆国モンタナ州出身の映画監督である。
代表作は『ブルーベルベット』『マルホランド・ドライブ』『ツイン・ピークス』など。
『エル・トポ』で知られるアレハンドロ・ホドロフスキーと並び、カルト映画の巨匠として知られる。
1946年、モンタナ州ミズーリにて誕生。農務省の研究員だった父の転勤に伴い、国内を転々とする少年時代を送る。ボーイスカウトに参加し、最高位のイーグルスカウトを授与されている。
一方で絵画に興味を示し、ワシントン美術大学とボストン美術館付属美術学校に通う。そうした中で物足りなさを感じて欧州留学を決意するが、たった15日で切り上げて帰国してしまった。これについてはオーストリアの街並みがあまりにも整然として美しく、創作意欲が萎えた為だという。
その後、伝統あるペンシルベニア芸術科学アカデミーに入学。敢えて治安の悪い立地にある物件を3000ドルで購入し、地下室で絵画や映画の製作に熱を上げた。
1967年に最初の短編映画を製作。AFI(アメリカン・フィルム・インスティチュート)の奨学金を得てロサンゼルスに移住してAFIが運営する芸術学校に通いつつ、1972年に『イレイザーヘッド』の自主製作を開始。5人のスタッフの協力を得て、1977年に長編映画監督としてデビューした。
作品はその難解さと不気味さから上映を拒否され、最初の上映では25人ほどしか客が入らず、批評誌でも酷評された。更にカンヌ国際映画祭に送ろうとしたが周囲に止められ、映画同様に妻も彼の元を去るなど散々な状態だった。
しかし後に深夜上映されると、次第に「ミッドナイト・カルト」として一部に熱狂的支持を受け、カルト映画の代名詞となる。因みに最初の上映の翌週に来た観客は24人で、その全員がリピーターだったという。
1980年の『エレファント・マン』は、実在した奇形の青年、ジョン・メリックの数奇な半生を題材としたヒューマンドラマである。
醜悪な容貌ゆえに見世物小屋に出された心優しい青年と、彼を怪物ではなく人間として扱おうとした人々、偏見と悪意、善意と欺瞞といった複雑な要素を見事に描き、アカデミー作品賞を含む8部門にノミネートされた。これを機に一躍知名度を上げる。
1984年の『デューン/砂の惑星』は、元々アレハンドロ・ホドロフスキーが手掛けていたものだったが、監督降板により制作中止となった後、リンチを監督に置いて再び制作し、映像化した。だが映画としての評価は高いものではなく、SFファンや原作者本人にも不評である。
これについてリンチは「最終決定権が自分になく、大変悔しい思いをした」と自伝で語っている。しかし全編に渡ってグロテスクなリンチワールドが全開で、特に悪役であるハルコネン男爵の造詣などはマニアックなファンから再評価されている。
1986年、『ブルーベルベット』を発表。のどかな田舎町の暗部を描き、善と悪の対比が協調されるなど、後の『ツイン・ピークス』の原点とも言える。
『砂の惑星』の反省を踏まえ、大幅な予算削減と引き換えにファイナルカットの権利を得たリンチは本作で存分に才能を発揮させ、その内容は公開当時大きな論争を生んだ。
特に性的虐待の生々しい描写に関して、多くのアメリカ国民が嫌悪を示した。しかし結果的には興行的成功を収め、後に名作として評価されて多くの賞を受賞。この作品によって、以後のリンチの作風を確立させることとなる。
1990年~1991年にかけて脚本家マーク・フロストと共にテレビドラマ『ツイン・ピークス』を制作。
50年代を思わせるアメリカの田舎町を舞台にした連続殺人事件を題材に、現地警察とFBI捜査官による合同捜査、謎が謎を呼ぶ予測不可能の展開、パズルのように複雑な人間模様など、様々な要素が盛り合わさった本作は世界中でヒット、大ブームとなる。日本でも関連書籍が多数出版され、社会現象を巻き起こした。
リンチ本人も作中でクーパー捜査官の上司、ゴードン・コールを演じた。補聴器をつけていて尚極度の難聴で、大声で話す変人として強烈なインパクトを残した。\これはちょっとした内密の話なんだが!/
1992年に前日譚『ツイン・ピークス~ローラ・パーマー最後の7日間~』が映画化。その後2014年に新作の製作が発表され、2017年より新シリーズが放映された。年月の経過によって出演者が何人も亡くなっており、物故者に対する哀悼の意を示して名前がクレジットされている。
1990年の『ワイルド・アット・ハート』はニコラス・ケイジ主演の、暴力と異常な偏執に彩られた男女の逃避行を描いたロードムービーで、『オズの魔法使い』のオマージュが多数みられる。リンチ節全開の強烈なキャラクター造詣や独特な映像感覚により、カンヌ国際映画祭のパルム・ドールを受賞した。
1992年に再びマーク・フロストと共にテレビ局を舞台にしたコメディドラマ『オン・ジ・エアー』を制作するが、低視聴率の為、こちらはわずか3話で打ち切られてしまった。ある意味伝説。一方で第一話が雑誌「TV Guide」の「1997年テレビドラマの優れたエピソード100」の57位に選ばれていたりする。
1997年にサイコ・スリラー映画『ロスト・ハイウェイ』を公開。
1999年に実話を元にした映画『ストレイト・ストーリー』を公開。他作品と作風が違い、全年齢指定の人情物のロードムービーとなっている。
2001年に映画『マルホランド・ドライブ』を公開。
夢と現実の境目がはっきりしない世界観や脈絡のない意味不明なシーンなど、今までのリンチ作品の手法が使われており、見ている観客自身が自分なりの解釈をしなければならない難解な作品になっている。カンヌ国際映画祭で監督賞受賞。
2006年にリンチの新境地となる映画『インランド・エンパイア』を公開。
ポーランドの民話を題材にした映画のリメイクに挑む監督と俳優たち。しかしそれは曰くつきの「呪われた映画」で、死人を出して製作が中止された代物だった。次第に現実と映画の世界が交錯し……という内容。
リンチが好きな時に俳優を呼んでデジタルビデオで撮影した映像をつなげていくという制作方法により、製作期間は2年半という長丁場だった。それ故に数あるリンチ作品の中でも屈指の難解さを誇り、多重構造のストーリーを描き出す実験映画と言える。
アメリカの批評家によって選出される「全米批評家協会賞」において実験的映画賞を受賞した。
監督業以外にアニメーションを制作したり、映画制作をしてない時は絵を描いたりしている。
2011年にミュージシャンとしてシングル『Good Day Today/I Know』でソロ・デビュー。同年11月にはデビューアルバム『クレイジー・クラウン・タイム』をリリース。MVも手掛けている。
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最終更新:2024/04/25(木) 21:00
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