トール 単語

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トール

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トールとは、

  1. 北欧神話に登場する雷の神、戦神。時代によっては神とされることもある。
  2. トオル、という日本人名のオの部分を伸ばしたもの。
  3. 「背が高い」を意味する英語。Tall
  4. 3.に由来する「(背が高い人向けの)大きなサイズ」のこと。トールサイズ。転じて「スターバックスコーヒー」で提供される飲み物のサイズの一つ。
  5. トール。トールペインティング等に用いられる

本項では1.について記述する。

曖昧さ回避

概要

北欧神話においても数多くの逸話が知られ、神々の敵たる巨人を倒す戦神としての姿が描かれる。雷神・農耕神としての側面も持ち、信仰を広く集めたとされる。
英語ではソー(Thorと呼ばれ、後述するアメコミマイティ・ソー』のもあってそちらでの呼び方が広く知られる。
北欧のみならずゲルマン全域で信仰されており、古高ドイツ語ではドナー(Donarの名で知られ、時代が下るとドンナー(Donner)の名で現された。
木曜日を意味する英語の「thursday」、ドイツ語の「Donnerstag」の語ゼウスユピテル同一視される。

元来は農民階級の信仰を集めた神で、オーディンと同格以上の地位にあった神でもあった。
事実スウェーデンのウプサラの神殿においてはトール、オーディンフレイの神像がられており、その中心に据えられていたと伝えられる。その後オーディン息子としての地位に納まる事となった。

オーディンとし、はヨルズ。シヴ(シフ)とヤールンサクサという2人の妻がいる。息子にはモージとマグニ、シヴの連れ子であるウルと、スルーズというがいる。

燃えるような眼を持ち、をたたえた大男。
性格は胆にして武勇を重んじるが単純。過去巨人との戦いで頭に火打石がめり込んでおり、細な事でブチ切れるが、あまり長続きはしない。
知恵が回り口の達者なロキとは案外ウマが合い、コンビで数々の騒動に関与した。

武器にして彼の代名詞でもあるのが、「打ち砕くもの」を意味するミョルニルである。短い柄の鎚で、ムジョルニアとも呼ばれる。
トールの怪力で殴りつけても損なわれず、投げてもひとりでに手元に残る。大きさを自在に変えられる上に常にに焼けており、扱う為には製の手袋ヤールングレイプルと、力を2倍にする帯・ギンギョルズを必要とした。
ヴェルグによって作られトールに献上されて以来、多くの巨人を打ち殺してきた。その為巨人たちはミョルニルが振り上げられる音でそれと理解できたほどだという。威力はすさまじく、これで殴られて即死しなかったのは世界ヨルムンガンドのみである。
また対を清めるという効果もあり、バルドル葬儀に際しては火葬の火を浄化している。スカンジナヴィア全域でもポピュラーなもので、結婚式などのめでたい席でもレプリカアクセサリーが用いられる。

アースガルズの一スルーヴァンガルに自らの館・ビルスキルニルを所持。この館の広さはアースガルズ随一で、540もの部屋があり、農民は死ぬとこの館に迎えられて幸せに暮らすとされている。
タングリスニとタングニョーストという2頭のヤギ戦車を牽かせている。トールが空腹になると美味しく頂かれるが、と皮さえ傷であれば翌日には再生する。
遠征の途中で農家に逗留したトールは家族と共にヤギを食べたが、息子シャールヴィうっかりを傷つけてしまった為、戦車が牽けなくなってしまう。キレたトールだったが、最終的にシャールヴィとレスクヴァが従者となる事で和解した。

逸話

黄金の髪を巡る物語

トールの妻シヴは見事な金髪が自慢だったが、悪戯心を掻き立てられたロキが、彼女が眠っている間にまるごと刈り取ってしまった。
ロキの仕業だと知ったトールはブチ切れて彼を追い回し、追い詰められたロキは助命と引き換えに、かぶると本物のになる黄金製のかつらをドヴェルグ(ドワーフ)に作ってもらう事で手打ちとなった。この物語から、後に詩歌黄金を表現する「シヴの」というケニング(代称法)が生まれたという。

このかつらの他にもドラプニルなどの名だたる宝を作ったドヴェルグ・イーヴァルディの子らの名は広く知れ渡る。そこでよせばいいのにロキはドヴェルグの兄弟ブロックエイトリに「これより優れた宝が作れたらの頭をやる」と挑発、二人は奮起して鍛造を始めた。
エイトリブロックにふいごを動かす手をやめないように言いつけて出かけた後、ロキは作業を妨しようとしてハエ変身。気が散ったブロックがつい手を休めてしまい、その時作っていたミョルニルの柄は短くなってしまったという。

兄弟は宝物を持っていき、神々に判定を仰ぐ。結果は兄弟の勝ちとなり、以後ミョルニルはトールの所有物となった。
なおロキは「頭はやると言ったが首をやるとは言ってない」と言い訳して逃げた為、怒った兄弟によって口を縫い合わされている。

花嫁となったトール、大暴れ

霜の巨人スリュムはひそかにミョルニルを盗み出し、返して欲しければ美の女神たるフレイヤを自分の妻に寄越せと要してきた。しかしフレイヤは当然拒絶、神々も頭を抱えてしまう。
そこでヘイムダルが「そんならトールが女装してになればいいのでは?」と言い出したせいで、世にも稀なる太の爆誕。神々は爆笑し、トールはほぼキレかけるも、大事なミョルニルを取り戻す為にぐっと慢した。
とりあえずロキ女に化けて同行。スリュムは意気揚々とを迎え、ベールをめくろうとしてを抜かした。

ス「おお!なんと燃えるような眼で私を睨みつけるのだ!」
ロ「ふ、フレイヤ様は方様を思うあまり眠れなかったのです」

さっそく婚礼の宴が開かれ、に扮したトールはの前に並べられたご馳走を(怒りながら)あっという間に貪り食う。

ス「おお!彼女はあれほどの料理を一息にらげるのか!」
ロ「ふ、フレイヤ様は方様を思うあまりずっと食事していなかったのです」

などとトンチキ漫才を繰り広げた後、宴もたけなわとなり、祝福する為にミョルニルが運ばれてくる。
待ち望んでいた用の武器が膝に置かれた間、トールはをかなぐり捨てると、スリュムを始めとした巨人全員虐殺。ついでにスリュムの財宝を奪って引き揚げたのであった。

まやかしの巨人と世界蛇

術と策略を得意とする巨人、ウートガルザ・ロキはヨトゥンヘイムの一都市、ウートガルズを支配していた。

遠征の途中、ウートガルザ・ロキの宮廷に招かれたトールとその一行は術に騙される事となった。
トール本人は大海と繋がった杯を飲み干せず、世界ヨルムンガンドの化身たる小さなを持ち上げる事もままならず(それでもあと少しで持ち上がりそうになった為、ウートガルザ・ロキは内心肝を冷やした)、しまいには「老い」の化身たる老婆との相撲に勝てない(神といえど寄る年波には勝てないというメタファー)など、散々からかわれる。
全部の勝負が終わった後にネタバラシされたトールはキレてミョルニルを振りかざしたが、巨人とその宮廷は然と消え、後には荒野だけが広がっていたという。

この出来事でヨルムンガンドに遺恨を抱いたトールはに漕ぎ出し、特製の釣り竿の頭を餌にしてヨルムンガンド釣り上げようとした。
あと少しで釣り上げられるといった時、が沈むと思った同行者のヒュミルが怯えて釣り糸の鎖を切ってしまい、ミョルニルで頭を殴られたヨルムンガンドの底に潜ってしまった。怒ったトールはからヒュミルを突き落としたという。

ヨルムンガンドとの因縁は、最終戦争であるラグナロクによって決着を見る。
ヴィーグリーズの野における最終決戦において、ヨルムンガンドミョルニルによって命を落とすが、同時に神々すらも殺す猛を浴びせかけていた。その場から9歩後ずさって倒れたトールは、二度を起き上がる事はなかったのである。

補遺

サブカルチャーにおいて最も知られているのは、アメコミマイティ・ソー」だろう。
北欧神話ベースとした物語になっており、アスガルド最強戦士でありながら傲慢の罪を咎められ、地球へと追放されてドナルドブレイクという人間転生させられる。記憶を失い、両足が不自由青年として生きていた彼は、幼少時から惹かれていたノルウェー旅行の最中に魔法の鎚・ムジョルニアを手にした事で本来の姿と記憶回復世界侵略せんとする者との戦いに身を投じるのだった。
その人気は高く、マーベル・コミックにおいてはアイアンマンキャプテン・アメリカと並び「BIG3」に数えられ、ゲーム映画にも登場している。

ミョルニルの破壊力になぞらえ、現実フィクションを問わず、兵器名前にされる機会もある。

アメリカ合衆国の準中距離弾道ミサイルPGM-17」には「トール」の名がつけられており、英語の「ソー」もしくは「ソア」で呼ばれる。
1954年開発を開始、モスクワを射程圏内に入れるためにイギリスに配備されたが1963年に退役した。衛星攻撃兵器として配備されていたものも、1975年に退役している。
またこれをベースとした中打ち上げロケット「ソー」シリーズ開発され、後のデルタロケットへと繋がっている。

田中芳樹小説銀河英雄伝説」では、イゼルローン要塞として「雷神の鎚(トゥールハンマー」が登場。作中最強火力を誇り、一度の撃で数千隻以上の軍艦文字通り「消滅」させる。

1828年に発見された元素番号90の元素トリウム、および鉱物トール石(トーライトはトールに由来している。ウラン含量が多い事からウラン鉱石として用いられており、核燃料の材料となっている。

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