トールとは、
本項では1.について記述する。
北欧神話においても数多くの逸話が知られ、神々の敵たる巨人を倒す戦神としての姿が描かれる。雷神・農耕神としての側面も持ち、信仰を広く集めたとされる。
英語ではソー(Thor)と呼ばれ、後述するアメコミ『マイティ・ソー』の影響もあってそちらでの呼び方が広く知られる。
北欧のみならずゲルマン全域で信仰されており、古高ドイツ語ではドナー(Donar)の名で知られ、時代が下るとドンナー(Donner)の名で現された。
木曜日を意味する英語の「thursday」、ドイツ語の「Donnerstag」の語源。ゼウスやユピテルと同一視される。
元来は農民階級の信仰を集めた神で、オーディンと同格以上の地位にあった主神でもあった。
事実、スウェーデンのウプサラの神殿においてはトール、オーディン、フレイの神像が祀られており、その中心に据えられていたと伝えられる。その後オーディンの息子としての地位に納まる事となった。
オーディンと父とし、母はヨルズ。シヴ(シフ)とヤールンサクサという2人の妻がいる。息子にはモージとマグニ、シヴの連れ子であるウルと、スルーズという娘がいる。
燃えるような眼を持ち、赤い髪と髭をたたえた大男。
性格は豪胆にして武勇を重んじるが単純。過去の巨人との戦いで頭に火打石がめり込んでおり、些細な事でブチ切れるが、あまり長続きはしない。
知恵が回り口の達者なロキとは案外ウマが合い、コンビで数々の騒動に関与した。
武器にして彼の代名詞でもあるのが、「打ち砕くもの」を意味するミョルニルである。短い柄の鎚で、ムジョルニアとも呼ばれる。
トールの怪力で殴りつけても損なわれず、投げてもひとりでに手元に残る。大きさを自在に変えられる上に常に真っ赤に焼けており、扱う為には鉄製の手袋・ヤールングレイプルと、力を2倍にする帯・メギンギョルズを必要とした。
ドヴェルグによって作られトールに献上されて以来、多くの巨人を打ち殺してきた。その為巨人たちはミョルニルが振り上げられる音でそれと理解できたほどだという。威力はすさまじく、これで殴られて即死しなかったのは世界蛇ヨルムンガンドのみである。
また対象を清めるという効果もあり、バルドルの葬儀に際しては火葬の火を浄化している。スカンジナヴィア全域でもポピュラーなもので、結婚式などのめでたい席でもレプリカやアクセサリーが用いられる。
アースガルズの一角、スルーズヴァンガルに自らの館・ビルスキルニルを所持。この館の広さはアースガルズ随一で、540もの部屋があり、農民は死ぬとこの館に迎えられて幸せに暮らすとされている。
タングリスニとタングニョーストという2頭のヤギに戦車を牽かせている。トールが空腹になると美味しく頂かれるが、骨と皮さえ無傷であれば翌日には再生する。
遠征の途中で農家に逗留したトールは家族と共にヤギを食べたが、息子のシャールヴィがうっかり骨を傷つけてしまった為、戦車が牽けなくなってしまう。キレたトールだったが、最終的にシャールヴィと妹のレスクヴァが従者となる事で和解した。
トールの妻シヴは見事な金髪が自慢だったが、悪戯心を掻き立てられたロキが、彼女が眠っている間にまるごと刈り取ってしまった。
ロキの仕業だと知ったトールはブチ切れて彼を追い回し、追い詰められたロキは助命と引き換えに、かぶると本物の髪になる黄金製のかつらをドヴェルグ(ドワーフ)に作ってもらう事で手打ちとなった。この物語から、後に詩歌で黄金を表現する「シヴの髪」というケニング(代称法)が生まれたという。
このかつらの他にもドラウプニルなどの名だたる宝を作ったドヴェルグ・イーヴァルディの子らの名は広く知れ渡る。そこでよせばいいのにロキはドヴェルグの兄弟ブロックとエイトリに「これより優れた宝が作れたら俺の頭をやる」と挑発、二人は奮起して鍛造を始めた。
エイトリがブロックにふいごを動かす手をやめないように言いつけて出かけた後、ロキは作業を妨害しようとしてハエに変身。気が散ったブロックがつい手を休めてしまい、その時作っていたミョルニルの柄は短くなってしまったという。
兄弟は宝物を持っていき、神々に判定を仰ぐ。結果は兄弟の勝ちとなり、以後ミョルニルはトールの所有物となった。
なおロキは「頭はやると言ったが首をやるとは言ってない」と言い訳して逃げた為、怒った兄弟によって口を縫い合わされている。
霜の巨人スリュムはひそかにミョルニルを盗み出し、返して欲しければ美の女神たるフレイヤを自分の妻に寄越せと要求してきた。しかしフレイヤは当然拒絶、神々も頭を抱えてしまう。
そこでヘイムダルが「そんならトールが女装して花嫁になればいいのでは?」と言い出したせいで、世にも稀なる骨太の花嫁が爆誕。神々は爆笑し、トールはほぼキレかけるも、大事なミョルニルを取り戻す為にぐっと我慢した。
とりあえずロキが侍女に化けて同行。スリュムは意気揚々と花嫁を迎え、ベールをめくろうとして腰を抜かした。
さっそく婚礼の宴が開かれ、花嫁に扮したトールは目の前に並べられたご馳走を(怒りながら)あっという間に貪り食う。
ス「おお!彼女はあれほどの料理を一息に平らげるのか!」
ロ「ふ、フレイヤ様は貴方様を思うあまりずっと食事していなかったのです」
などとトンチキな漫才を繰り広げた後、宴もたけなわとなり、花嫁を祝福する為にミョルニルが運ばれてくる。
待ち望んでいた愛用の武器が膝に置かれた瞬間、トールは花嫁衣裳をかなぐり捨てると、スリュムを始めとした巨人を全員虐殺。ついでにスリュムの財宝を奪って引き揚げたのであった。
幻術と策略を得意とする巨人、ウートガルザ・ロキはヨトゥンヘイムの一都市、ウートガルズを支配していた。
遠征の途中、ウートガルザ・ロキの宮廷に招かれたトールとその一行は幻術に騙される事となった。
トール本人は大海と繋がった杯を飲み干せず、世界蛇ヨルムンガンドの化身たる小さな猫を持ち上げる事もままならず(それでもあと少しで持ち上がりそうになった為、ウートガルザ・ロキは内心肝を冷やした)、しまいには「老い」の化身たる老婆との相撲に勝てない(神といえど寄る年波には勝てないというメタファー)など、散々からかわれる。
全部の勝負が終わった後にネタバラシされたトールはキレてミョルニルを振りかざしたが、巨人とその宮廷は忽然と消え、後には荒野だけが広がっていたという。
この出来事でヨルムンガンドに遺恨を抱いたトールは海に漕ぎ出し、特製の釣り竿と牛の頭を餌にしてヨルムンガンドを釣り上げようとした。
あと少しで釣り上げられるといった時、船が沈むと思った同行者のヒュミルが怯えて釣り糸の鎖を切ってしまい、ミョルニルで頭を殴られたヨルムンガンドは海の底に潜ってしまった。怒ったトールは船からヒュミルを突き落としたという。
ヨルムンガンドとの因縁は、最終戦争であるラグナロクによって決着を見る。
ヴィーグリーズの野における最終決戦において、ヨルムンガンドはミョルニルによって命を落とすが、同時に神々すらも殺す猛毒を浴びせかけていた。その場から9歩後ずさって倒れたトールは、二度を起き上がる事はなかったのである。
サブカルチャーにおいて最も知られているのは、アメコミ「マイティ・ソー」だろう。
北欧神話をベースとした物語になっており、アスガルド最強の戦士でありながら傲慢の罪を咎められ、地球へと追放されてドナルド・ブレイクという人間に転生させられる。記憶を失い、両足が不自由な青年として生きていた彼は、幼少時から惹かれていたノルウェー旅行の最中に魔法の鎚・ムジョルニアを手にした事で本来の姿と記憶を回復。世界を侵略せんとする者との戦いに身を投じるのだった。
その人気は高く、マーベル・コミックにおいてはアイアンマン、キャプテン・アメリカと並び「BIG3」に数えられ、ゲームや映画にも登場している。
ミョルニルの破壊力になぞらえ、現実・フィクションを問わず、兵器の名前にされる機会もある。
アメリカ合衆国の準中距離弾道ミサイル「PGM-17」には「トール」の名がつけられており、英語の「ソー」もしくは「ソア」で呼ばれる。
1954年に開発を開始、モスクワを射程圏内に入れるためにイギリスに配備されたが1963年に退役した。衛星攻撃兵器として配備されていたものも、1975年に退役している。
またこれをベースとした中型打ち上げロケット「ソー」シリーズが開発され、後のデルタロケットへと繋がっている。
田中芳樹の小説「銀河英雄伝説」では、イゼルローン要塞の主砲として「雷神の鎚(トゥールハンマー)」が登場。作中最強の火力を誇り、一度の砲撃で数千隻以上の軍艦を文字通り「消滅」させる。
1828年に発見された元素番号90の元素・トリウム、および鉱物のトール石(トーライト)はトールに由来している。ウラン含量が多い事からウラン鉱石として用いられており、核燃料の材料となっている。
掲示板
21 ななしのよっしん
2024/02/16(金) 16:50:55 ID: 16xds81Gxc
お前亨って言うんだろ?じゃあ能力者名イナズマな!
初見時飲み込むまで少しかかったぞ最強さん…
22 ななしのよっしん
2024/04/20(土) 08:22:05 ID: RgyQJ3ECWQ
キリスト教に改宗した人間の夢に出てきて「俺を信仰しろ」と脅すけど手は出さないの、小物っぽいけど人の良さがにじみ出ていて好き
オーディンは現実に来るし慣習破ると殺されるから怖い
23 ななしのよっしん
2024/05/15(水) 14:22:45 ID: Ul2T3GoRWN
すぐ相手の頭をハンマーでカチ割ろうとする
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/10(火) 02:00
最終更新:2024/12/10(火) 02:00
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