「ドット絵」とは、コンピュータ画面上における出力最小単位の小さなマス目に色を置き、それを並べ合わせて表現した絵であり、昔のコンピュータの限られた解像度や使用色数、データサイズなど制約の中で、出来る限りの映像表現をするために生まれ、発展した、コンピューターグラフィックスの技法のひとつである。
明確な「ドット絵」の定義は存在しないようだが、一般的に、絵や写真を拡大して、ピクセル単位で判別出来るようにしたものはドット絵とは呼ばず、ピクセルに一つずつ色を置き手作業で描いて仕上げたものを「ドット絵」とすることが多い。
海外(特に英語圏)では「pixel art」(ピクセルアート)と呼ばれている。
四角いピクセルを一つずつ配置して描く特殊な絵のため、ドット絵ならではの独特な描き方や制限は以下のようなものがあった。
ドット絵におけるアンチエイリアシングやディザリングは、ソフトで処理をするのではなく、今も昔もそのまま手打ちで中間色を配置したりアミかけを行うことが多い。このあたりの工程もドット絵が「職人芸」と言われるところのひとつと言える。
そうした工程を踏むことにより、スペースの限られた小さなチップ上でも、クッキリとした色分けをする個所と、なめらかにぼかした個所を混在させることができ、ドット絵ならではの独特の引き締まった画にすることができる。
ドット絵は基本的にリソースの乏しい昔のコンピュータやゲームハード用のデータであったので、データサイズのスリム化のため、2色、4色、8色、16色~などのコンピュータで扱いやすい色数で描かれることか多かった。
過去に多く使われたパレットは、そのハードでの使用可能色中のうち同時に16色とか、1スプライトにつき16色とか256色など。キャラクターなどの場合はチップを透過させるための指定色も含まれるため、一色分使える色が減る。つまり16色パレットの場合は実質15色しか使えないことになる。
そんな制約があったため、最初から使う色を選択しその中でパズルのように組立てて描くか後から規定色数に収まるように減色するかのどちらかの方法がとられていた。
広義的には、たとえコンピュータ上のものでなくとも、だいたい正方形になっているマスを最小単位にして描かれたものならば、それはドット絵とされることが多い。
コンピュータグラフィックス(CG)の歴史の始まりは、きわめて実用的な用途としてだった。
1944年からのMITによるフライトシミュレータなどの開発計画「ワールウインド計画」。
その後年の1948年、ワールウインドコンピュータによるCRTへの点描画実験が世界初のCGとされている。
その後、コンピュータを使って描画してなんらかの外部へ出力するCGとは別に、ホビー用コンピュータ上での映像表現の手段としてや、パーソナルコンピュータのGUIなど、昔のコンピュータ上にてリアルタイム処理が可能なCGとして発展を続けたのが「ドット絵」である。
家庭用ゲーム機は、性能の割り振りがゲームに特化しており、その中で最適化された低解像度かつ数色で構成されたグラフィックは、当時のコンピュータゲームを象徴する絵だった。
国内で本格的に家庭用ゲーム機が普及することになったのは、やはり任天堂の「ファミリーコンピュータ」(1983年)からとなる。「ドット絵」と言えば任天堂やセガなどの8bit機のシンプルなキャラクターチップなどを思い浮かべる人は多いかもしれない。
そんな8bit機も、ハードの現役時代は長かったので、後期の作品になるとハードを使いこなした感の強いグラフィックを実現したゲームもちらほら出てくる。
こういった制約だらけの昔のハードで使われたシンプルな構成のドット絵は、現在においては、チップチューンなどと同じく、そうしたノスタルジーさを醸し出すジャンルとして半ば定着している。
90年代のはじめにスーパーファミコン(SFC)が発売された。
SFCは前世代機を大きく上回る32,768色中から色が選択可能となり、フルカラーではないもののそれほど違和感なく実写画像なども使えるようにもなっており、さすがに同時期のアーケードゲームや、NEOGEOなどの半業務用マシンには一歩二歩譲るものの、SFCよりも選択可能色や同時発色数で劣るメガドライブ(MD)やPCエンジン(PCE)に比べて色鮮やかなグラフィックを実現していた。
SFC初期
SFC後期
また、いまいち振り返られることの少ない(気がする)FC後期からSFCと同世代の他機種の2Dグラフィックスだが、メガドライブのソフトはパッと見の絵面ではSFCほど鮮やかではないものの、ハードのCPU周りの性能ではSFCを上回っており、やや動作がもっさりすることの多いSFCと比べて、ゲームのレスポンスの良さを含めた8ビット時代のソリッドさの残る、制約の中で作られたドット絵もMDの味と言える。
そして、早くからCD-ROMに移行していたPCエンジンでは、大容量を生かした使い回しの少ない大きな一枚絵(これも単なる大きなドット絵だったりするものが多い)やアニメーションなどを駆使し、この先の2Dグラフィックの流れを先取り、プレイステーションやセガサターンに連なる礎をすでに築きはじめていたのだった。
欧米系の海外ゲームは、写実的な表現が常用可能になったこの世代からは、実写や通常画の取り込みや、当時のハイエンド3DCGからのプリレンダリングなどを積極的に取り入れていたが、ハードの仕様的に低解像度2Dゲームが大半を占めていたこの世代までを「ドット絵の時代」と感じる人も多いと思われる。
日本国内では90年代前半までにおいては、アーケードゲームがゲームのグラフィックのフラグシップ的な存在であった。
だが、プレイステーション(PS)やセガサターン(SS)などの90年代中頃の新世代ゲーム機は、前世代よりも処理速度が向上し、同時に使用できる色数なども増え、アーケードの2Dゲームとも肩を並べるグラフィックを実現出来るようになった。特に、PSと違って生粋の2DマシンであるSSは、SFCやMD、PCEなどでは難しかった「2Dアーケードゲームの完全移植」を謳うソフトも多かった。
この世代の一般的なゲームにおける解像度はスーパーファミコンやメガドライブなどと大した違いは無く、QVGA(320×240)付近の解像度にとどまっており、まだまだゲーム機の性能ではゲーム中でのハイレゾモードの常用は現実的ではなかった。
したがって、リアルタイムで3D表現が可能となって、アニメ、実写、3Dからのプリレンダリングなどのムービーが大々的に使えるようになり、そちらがコンピュータゲームの映像表現の主流となってからも、ドット絵を使った2Dゲームはきちんと存在し、16ビット機以降も確実にドット絵の向上を見せていた。
2Dゲームにおいて、ドット絵が確実に「必要」といえる解像度QVGAクラスのハードでは、ドット絵の精度がそのままグラフィックの向上に繋がったため、そういった意味では2Dに特化したCPシステム基盤やNEOGEOなどでリリースされた、90年代後半から2000年代前半の2D格闘ゲーム群が、純粋なドット絵においての技術的な到達点のひとつとも言えるかもしれない。
NEOGEOはなんと2000年代半ばまでソフトがリリースされている。
これは実質、ゲームボーイ並みのロングランであり、2世代以上前の設計と性能で長く第一線を戦い続けたハードである。
プレイステーション2(PS2)クラスのハードになってしまうと、さらにハードの性能が全体的に向上し、この世代ではついにゲーム中の解像度が、それまでのPCゲーム並みの解像度であるVGA(640×480)基準になってしまう。
ハード性能の向上により、純粋な2D表現のみのゲームも数を減らし、2D表現主体のゲームでも「キャラクターと背景の全部がドット絵」ということは少なくなっていった。
が、「動きのある2Dキャラクター」に関しては相変わらずドット絵が多く使われていた。
ベクター画像や、イラスト風のキャラクターを動かしているものはまだまだ多くなかったようだ。
解像度が上がったため、PS2やゲームキューブ等ではドットキャラクター自体も大型化しているが、さらにそれを何倍かに拡大して表示していたものが多く、ポリゴンや一枚絵で普通に描画されている背景等と比べドット絵の荒さが目立つこともあった。拡大率はゲームによってまちまちで(2倍、4倍というような整数で固定倍のものはあまりなく、画面の動きに合わせて滑らかに拡大されていた)、中にはPS2の解像度に合わせ大きなドット絵を描いているゲームも存在する。
ゲームボーイアドバンス~ニンテンドーDSなどの解像度の低い携帯ハードや、携帯電話等の端末では、大型化していないドット絵も現役で使われている。
といっても、携帯機の解像度もかなり高くなってきており、特にスマートフォン・タブレットは解像度が非常に高い上に、機種ごとに解像度が違う。そうしたものはドットを描いた上で、雰囲気が残るレベルでぼかしをかけた拡大表示をしていることもある。
3Dでもドット絵の技術は使われている。
それはポリゴンモデルに貼り付ける画像「テクスチャ」においてだ。
時代は進んでもゲーム専用ハードにおけるメインメモリやVRAMなど制限はやはり大きく、テクスチャのサイズや色数の制限という「制約」はここにも存在している。
そんなこともあり、無尽蔵に大きくすることができないテクスチャは、単に縮小減色するだけでなく、最終的にドット単位で丁寧に調整しているゲームも存在する。解像度VGA以下のゲームハードにおける~5000ポリゴンクラスのリアルタイムレンダリング用モデルは、まさに職人芸によって制作されており、このクラスのものだと、モデルの出来は2D仕事の出来の良し悪しに大きくかかっているといってよいかもしれない。3Dといっても素人目に馴染みのない専門用語や工程があるだけで、基本は「画材」のひとつである。
現状のPCゲームやXbox360やPS3クラスの機器だと、前世代よりもシェーダの効果の比重が大きく、スペキュラやノーマルマップなどの複数のテクスチャ情報を備え、モブ素材でもそれなりに大きなテクスチャを使用するため話はすこし変わってくるが、今世代、国内では携帯機市場の方が規模が大きいため、今もそうしたローポリゴン系の職人芸を見ることが出来る。
そういった点で「限られた条件下での最大の表現を求める」という意味も含めて今もまだドット絵の技術や心得は受け継がれているのだ。
ニコニコ動画のドット絵タグは、主に「描いてみた」のサブカテゴリ的な扱いで定着しており、倍速表示の作画ムービーや、各種作例などが数多く投稿されている。
どういうわけかニコニコ動画に投稿されている、「プロの犯行」によるドット絵講座は必見である。
それ以外では昔のゲームの動画などにこのタグが付けられることもある。
ドットを自作する場合、特に理由がない限りpngで保存するのが普通。
ただ、ブラウザによってpngの色味が変わる例があるそうなので、その点だけ記憶に留めておきたい。現在のブラウザで、普通のペイントソフトでは滅多に起きないとは思うが…
jpg形式での保存は、特別な理由がない限り厳禁。jpgはその性質上、ドット単位で変色が起きる。jpgはドット絵には全く適していない。画質の劣化だけでなく、jpgの圧縮方式とドット絵の相性も悪いため、ファイルサイズもpngより大きくなりやすい。
(それでもjpgを使う「特別な理由」の例だが、ニコニコのプロフィール画像はjpgしか受け付けない…)
gifはpngでは使えないアニメーション機能が使えるのが利点。
pngと比べると使える色数が少ない点が劣るが、ドット絵で使う分にはgifの256色で不足することは滅多にないので、pngと大差ないと言える。ファイルサイズはpngより若干大きくなる。
ただし、Windows標準ペイントに限定した話だが、gifで保存するとパレットが勝手に修正され、ほとんどの画像が壊滅的な被害を受ける。よって標準ペイントでgifは使いものにならない。
gifを扱いたい理由がある場合は、ドット絵に適したグラフィックソフトの導入をお勧めする。
掲示板
226 ななしのよっしん
2024/02/23(金) 15:38:44 ID: ur3RzfdsXU
何でも3Dモデル作ったほうが流用効くからこそ逆にドット表現の良さが際立つ時代になってきたと思う
227 ななしのよっしん
2024/05/08(水) 08:59:26 ID: nmH7ccJRPv
ドット絵も個展開く人やドット絵オンリーイベントが開く位大きいジャンルになって久しいんよな
コロナ前には末広町?だかの小学校跡地でかなり大きいイベントあって、自分が開場30分前に行ったら目算200人以上並んでたし
直近10月頃の上記イベントの後釜(言い方悪し)でも箱の大きさ故に入場制限かけられたりと凄かったぞ
後昔みたいにドット絵といっても制限が有るが故の絵じゃなくて表現の仕方が増えたってのも大きいと思うね
228 ななしのよっしん
2024/08/19(月) 17:25:17 ID: 4/Z3uQ9oFc
CGアレルギーの身として言わせてもらうとこれだけは廃らせちゃいけないと思う
急上昇ワード改
最終更新:2024/12/08(日) 22:00
最終更新:2024/12/08(日) 22:00
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