ヌーヴォレコルトとは、2011年生まれの日本の競走馬である。栗毛の牝馬。
父ハーツクライ、母オメガスピリット、母の父スピニングワールド。
馬名意味はイタリア語で新記録(Nuovo Record)である。馬主は「オメガ」の冠名で有名な原オーナーだが、ヌーヴォレコルトには冠名がついていない。緑のメンコが特徴的である。
主な勝ち鞍
2014年:優駿牝馬(GI)、ローズステークス(GII)
2015年:中山記念(GII)
2016年レッドカーペットハンデキャップ(GIII)
ヌーヴォレコルトは美浦の斎藤誠厩舎に入厩。デビュー戦前から調教で凄い時計を出し期待の大きい牝馬であったが、デビュー戦は前を捉えきれずに4着敗退。首を傾げるも2戦目の未勝利戦は人気に応えて初勝利を飾った。続いて中京のこうやまき賞を先行抜け出しで勝利し、2歳戦を終える。最初の期待に違わず順調に勝利を重ねたヌーヴォレコルトは、3か月の休み明けでチューリップ賞(GIII)へと向かった。
そしてそこにはあらゆる意味でヌーヴォレコルトを語る上で外せない、いや外してもらえない圧倒的1番人気の馬がいた。単勝なんと1.1倍。 ディープインパクト産駒にしてあの名牝ベガの孫、ハープスターである。新潟2歳Sで後の皐月賞馬イスラボニータをちぎり捨てた直線一気の末脚にメディアやファンはすっかり魅了され、この時点でもはやこの世代の最強牝馬、いや最強馬扱いをされている馬であった。(※ただし阪神JFはレッドリヴェールにハナ差負けている)
当然のように圧倒的一番人気に支持され、500万特別を勝ってきただけのヌーヴォレコルトは4番人気であった。
そしてハープスターはその人気に違わぬ末脚を披露し、直線一気で突き抜け勝利を飾った。ヌーヴォレコルトはハープに2馬身半ほどちぎられながらも2着に入り、桜花賞の優先出走権を手にした。
当然ながら話題は全て勝ち馬ハープスターが持っていき、彼女の2着は全く目立たず。ハープスター陣営はこの時点で凱旋門へ行くとの発表をしており、完全に話題はハープ1頭がかっさらっている状態だった。
そうして迎えた桜花賞(GI)。1番人気は勿論ハープスター。単勝1.2倍の圧倒的支持。2番人気は阪神JFでハープスターを負かしたレッドリヴェール。一度負かしているにも関わら7.4倍もついていた。ヌーヴォレコルトは前走ハープの2着であったにも関わらず、30倍以上もつく5番人気であった。
結果だけ言えば、レースはハープスターが人気に応え快勝。最後方から直線一気のごぼう抜きを演じて見せた。
そしてクビ差の2着にレッドリヴェール、その3/4 馬身差の3着にヌーヴォレコルトは入った。ハープスターのド派手なパフォーマンスにまたしてもメディアとファンは熱狂。これだけの僅差であるにも関わらず、まるで圧勝したかのような扱い。2着のリヴェールが気の毒である。
しかしこの時点で、前が塞がりながらも抜けて伸びてきて、最後に脚を余しながら3着に入ったヌーヴォレコルトのことを、メディアもファンも、もっとよく覚えておくべきだったのである。
5月25日の優駿牝馬(オークス)(GI)。桜花賞2着レッドリヴェールが牝馬ながらダービーへ挑戦するということで、ヌーヴォレコルトは2番人気に押されることとなった。しかしそれは大きく離された2番人気であり、圧倒的1番人気は当然ハープスター。単勝1.3倍。誰もが2冠を取ると信じて疑わず、普段穴狙いの予想家も、ひねくれものの競馬芸人も皆がそろってハープスターを本命にしているという、ちょっと異様な光景が広がっていた。
桜花賞後馬体を減らしてきた馬が多い中、ヌーヴォレコルトは+4kg。ぴかぴかの好馬体で、舞台は地元の関東。
ハーツクライ産駒ということで距離延長もプラスであり、ヌーヴォレコルトには前走と比較して多くのプラス要素が揃っていた。ハープスターしか見ていなかった世間の、一体どれだけがその事実に気づいていただろうか。
まあ気付いた人は少ないながらいたようで、最終的にオッズは10倍を切っていたが。
レースはヌーヴォレコルトが中団、ハープスターは定位置の最後方付近という位置で進められた。最終コーナーを8番手で通過すると、鞍上の岩田は最後の直線進路が空くのをぎりぎりまで待ってからスパートをかけた。そこから力強くのびたヌーヴォレコルトは残り200mで先頭に立ち、そのまま伸び脚は衰えることなく、大外から追い込んできたハープスターをクビ差しのいでオークスのゴールを先頭で駆け抜けた。
スタンド騒然。スタジオも騒然。どこかで見た光景。そう、彼女たちの父親であるハーツクライとディープインパクト。1.3倍の圧倒的1番人気に押されたディープインパクトを、横綱競馬で見事破って見せたハーツクライの有馬記念を、3歳の娘たちが再現する形となった。
ハープスターしか見ていなかった某テレビ局はそれはもう唖然。この時の実況など酷いもので、道中はハープスターの名前ばかり連呼しており、カメラも直線でハープスターをドアップで映していた。おかしなことやっとる。最後の直線は延々とハープスターの名前を叫んでいるだけで、ゴールの瞬間に勝ち馬の名前を言っていないという珍事を巻き起こす。挙句の果てには勝ったヌーヴォレコルトをまるで無視して「この馬はこんなところで終わる馬ではありません」「TVを御覧の皆さんもこのハープスターという名前をよく覚えておいてください」と、レース後延々と2着馬の話をして終わるという、公正競馬が聞いて呆れるあまりにひどい中継をやってのけた。スタジオもまるでありえないことが起きたとでも言いたげなお通夜状態。勝ち馬を祝福する気0である。
勝者であるヌーヴォレコルトは、まるでフロック扱い。その後ハープスターが道中落鉄していたことが分かり(余談だが次週の東京優駿を勝ったワンアンドオンリーも道中落鉄している)、余計にフロック扱いに拍車をかけた。ヌーヴォレコルトは勝ち馬であるにも関わらず、主役にしてもらえなかった。チューリップ、桜花賞と確実に差を縮め、オークスでついに逆転した努力の女の子は、理不尽にもヒールとして扱われてしまったのである。
ハープスターが凱旋門に挑戦するということで、秋の牝馬戦線に彼女は不在。となればハープスターを破ったことのあるレッドリヴェールとヌーヴォレコルトに注目は集まる。
世間の理不尽な扱いを覆すべく、ヌーヴォレコルトは自らの路線で自らの強さを証明することを選んだ。 父ハーツクライと同じである。初戦のローズステークス(GII)はレッドリヴェールと僅差の2番人気であったが、馬体が戻らず苦労するリヴェールが6着に沈む中、華麗に先行して2着に1馬身半の差を付けて完勝してみせた。
この勝利でヌーヴォレコルトは本当に力のある馬だったと分かった人も多かったのか、続いての秋華賞(GI)は1.5倍の圧倒的1番人気に支持される。しかしレースでは出遅れが響き、いい位置がとれなかった。そんな中最内から奇跡的な進路取りをした鞍上浜中のショウナンパンドラに抜け出され、外を回されながらも追いつめるもクビ差及ばず、2着に惜敗する。ちなみに時計は1:57:0という驚異的なレコードであった。
その後JCに出走するつもりで関東に帰ったが、結局エリザベス女王杯(GI)に変更となり、レコードの反動もありながら再びの輸送を余儀なくされてしまう。しかしヌーヴォレコルトはタフな牝馬であり、そのような状態でも大きく馬体重を減らすことなくエリ女に出走してきた。前走は明らかにコース取りの差であったので、再びヌーヴォレコルトは1番人気に支持される。しかし単勝3.3倍と、抜けてはいなかった。
今度は出遅れることなく、きっちりゲートを出る。直線も王者の競馬で早め先頭に立ち、完璧な競馬で勝ちに行くものの、同じくヌーヴォのすぐ後ろで完璧な競馬をしたラキシスに、ゴール前ぎりぎりで交わされてしまう。またしてもクビ差の2着惜敗であった。再度の輸送がなけば…と考えてしまう敗戦だった。しかしヌーヴォレコルトの安定感を、改めて知ることとなるレースでもあった。これでヌーヴォレコルトは休養に入り、来年に備えることとなった。
チューリップ2着、桜花賞3着、オークス1着、秋華賞2着、エリ女2着。デビュー戦以外で馬券外になったことがなく、1年を通して非常に安定した戦績を残した。勝ちきれずともほとんどの場合は連対し、堅実に走ってくれる。例年なら最優秀3歳牝馬の称号を得ておかしくないのだが、やはりというべきかハープスターに持って行かれてしまった。ちなみにハープはチューリップ1着、桜花賞1着、オークス2着、札幌記念1着、凱旋門賞6着、JC5着。どちらがふさわしいかは議論を呼ぶだろうが、古馬相手のGII勝ちが評価された形になったのだろう。
昨年牝馬路線で非常に堅実な結果を残したヌーヴォレコルトは、年明け初戦に牡馬相手の中山記念(GII)を選択した。
斎藤調教師曰く、牡馬相手にどれだけやれるか見てみたいとのことだった。もちろん相手も強豪で、中山の舞台でイスラボニータ、ロゴタイプという新旧皐月賞馬を相手取ることとなった。
何せ皐月賞馬である。地の利は完全にあちら。それに加えて当日は雨が降り続いており、ほとんど重馬場状態の稍重。切れ味勝負ならいざ知らず、パワー勝負となれば牝馬は不利である。人気はイスラボニータ、ロゴタイプに次ぐ3番人気。イスラが抜けてはいたものの、ヌーヴォも5倍を切っており、結構信頼されていたとみられる。
レースはヌーヴォレコルトがスタートと共に飛び出して見事なロケットスタートを決めると、そのまま内で先行。有力どころがほとんど前に固まりながらレースは進む。そして最終コーナーを回るときに馬群が凝縮し、かなり狭いところで揉まれることとなったが、全くひるまずに抜け出す。そして鞍上岩田は外に進路がないと見るや、先に抜け出していたロゴタイプとラチの間のギリギリ1頭分にヌーヴォレコルトをつっこませた。全く迷う様子もなく突っ込んでいったヌーヴォレコルトは、そのままロゴタイプとラチの間を走り抜け、ゴール前できっちりとらえてゴール。トレードマークの緑のメンコの色が分からなくなるくらいドロドロの状態で抜け出して来たその姿は、およそ牝馬とは思えない根性に満ち溢れていた。
牝馬の中山記念制覇は91年ユキノサンライズ以来24年ぶりの快挙であった。凱旋門以降迷走を続けるハープスターを後目に、堅実に、確実に歩みを進めてきたヌーヴォレコルト。そうしてついに牡馬相手に年明けのGIIを勝利する女傑となったのだ。
次走はヴィクトリアマイル(GI)。ここにはハープスターも出て来るはずだったが回避。その後故障が判明、そのまま引退とのことで、この2頭の再戦は見られないまま終わってしまうことになった。もっと世の中がハープスターを普通の桜花賞馬として扱っていれば、そしてヌーヴォレコルトを普通のオークス馬として扱っていれば、この2頭のライバル関係はもっといいものになっていたのではないだろうか。馬に罪はないだけに、複雑な思いが募る。
レースではストレイトガールが直線で鋭く伸びて勝利する中、ヌーヴォレコルトは伸びを欠き6着と初めて掲示板を外すことになった。
宝塚記念(GI)では圧倒的1番人気のゴールドシップが出遅れる中、先行したラブリーデイ(牝馬っぽい名前だが牡馬)が優勝し、ヌーヴォレコルトは5着に入着した。
秋初戦のオールカマー(GII)では秋華賞馬ショウナンパンドラとの再戦となったが直線でヌーヴォレコルトが最内を抜け出すもショウナンパンドラが大外から追い込み1馬身1/2の差を差をつけられて2着に終わった。
秋2戦目のエリザベス女王杯(GI)ではマリアライトとの追い込み勝負になったが早めに抜け出したマリアライトを捕らえることはできずクビ差の2着になった。
12月の香港カップ(香港GI)では日本のエイシンヒカリが逃げる中ヌーヴォレコルトは直線で伸びるが1馬身差で捕えきれず3戦連続で2着となった。
2016年は大阪杯(当時GII)からの始動となった。大阪杯では直線で失速し6着に敗れた。
次走はクイーンエリザベス2世カップ(香港GI)に遠征したが、ここでも6着に敗れた。
この後陣営はアメリカ競馬の祭典、ブリーダーズカップ・フィリー&メアターフ(米GI)への遠征を決めた。レースでは中団でレースを進めたが馬群に飲み込まれ11着と大敗を喫した。
その後アメリカのレッドカーペットハンデキャップ(米GIII)で勝利し、海外で重賞4勝目を挙げることになった。
その後も間を明けず香港ヴァーズ(香港GI)に転戦し、後方から追い上げるも、4着に終わった。
もう一花咲かせたい陣営はこの年も現役続行を決めるが中山記念(GII)に出走し7着、金鯱賞(GII)で10着と燃え尽きたかのように凡走し、ついに3月15日付けで引退を発表した。
通算23戦6勝。6歳まで大きな怪我がないのも勲章の一つである。
これからは繁殖牝馬として次世代にその勝負根性を受け継いでいくことになる。
ハーツクライ 2001 鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
アイリッシュダンス 1990 鹿毛 |
*トニービン | *カンパラ | |
Severn Bridge | |||
*ビューパーダンス | Lyphard | ||
My Bupers | |||
オメガスピリット 2001 鹿毛 FNo.3-d |
*スピニングワールド 1993 栗毛 |
Nureyev | Northern Dancer |
Special | |||
Imperfect Circle | Riverman | ||
Aviance | |||
*ファーガーズプロスペクト 1990 芦毛 |
Chief's Crown | Danzig | |
Six Crowns | |||
Fager's Glory | Mr. Prospector | ||
Street's Glory | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 4×5×5(12.50%)
まともな実況のほう
掲示板
16 ななしのよっしん
2021/05/24(月) 01:38:54 ID: ck8Izq+M2a
2021年のオークスもフジTVは目玉のソダシばかりにフォーカスするクソ実況でした・・・
17 ななしのよっしん
2022/09/03(土) 16:54:46 ID: WyrndspLCT
思えばラヴズの勝った香港QE→BC→香港国際のローテの先駆者だったんだな
先輩オークス馬が果たせなかった夢を後輩オークス馬が果たしたというのはドラマがあるな
18 ななしのよっしん
2023/05/18(木) 16:25:00 ID: L69DDt+zTg
次は息子が樫制覇に挑戦。しかも相手は圧倒的大本命、当時と被るプロセス。
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最終更新:2024/04/25(木) 01:00
最終更新:2024/04/25(木) 01:00
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