ノットナウケイト(Notnowcato)は、2002年生まれのイギリスの競走馬である。
希少な血統から現れ、中距離GIを3勝した名馬だが、日本では特にとんでもない奇策でぶち抜いたエクリプスステークスがよく知られている。
一見よく分からない馬名は「ケイトはもういない」という意味で、ケイトとはコメディ映画の名作「ピンク・パンサー」シリーズの登場人物「ケイトー・フォン」のこと。1993年の「ピンク・パンサーの息子」を最後に同シリーズが終了していたことに由来する。
父Inchinor(インチナー)、母Rambling Rose(ランブリングローズ)、母父Cadeaux Genereux(カドゥージェネルー)という血統。
父インチナーは今やトウルビヨン系、ひいてはヘロド系最後の砦のような存在となってしまったアホヌーラの産駒で、短距離重賞3勝。種牡馬としては500頭以上の勝ち上がり馬を出したが、2003年に骨折のため早世している。かつてスプリンターズステークスでカルストンライトオの3着に入った香港馬ケープオブグッドホープの父と言えばピンと来る人もいるのではないだろうか。
母ランブリングローズはGIIIで2着があるが勝ち鞍はリステッド競走止まり。その曽祖母ヴェラはフランスの2歳牝馬限定の大レースであるクリテリウム・ド・プーリッシュ(現:マルセル・ブサック賞)を制しているが、他に近親の活躍馬はいない。
母父カドゥージェネルーは短距離GI2勝馬で、種牡馬としても短距離馬を中心に多くの活躍馬を輩出。貴重なテューダーミンストレル系の有力種牡馬として気を吐いた。
2歳でデビューして7ハロン程度のレースを続けて使われ2着・3着、年を越した3歳初戦でも3着となり、ハンデ競走路線[1]に進んだ4戦目で最軽量ハンデの恩恵もありようやく初勝利。しかしそこから3連敗を喫し、結局3歳シーズンを終えてハンデ競走中心に8戦2勝という目立たない成績で終わる。
ところがノットナウケイトは4歳になって急成長。これを見たサー・マイケル・スタウト調教師がノットナウケイトを重賞路線に向かわせると、期待に応えてアールオブセフトンS、ブリガディアジェラードSと中距離のGIIIを2連勝。陣営はノットナウケイトをロイヤルアスコット開催へ向かわせ、プリンスオブウェールズSへの参戦を決定した。
迎えたレースでは英チャンピオンS・ドバイデューティーフリーと2つのGIを含めて3連勝中の*デビッドジュニア、ドバイワールドカップなどを勝ったエレクトロキューショニスト、英愛オークスを含めてGIを4勝している2年前の年度代表馬ウィジャボード、イスパーン賞2着馬マンデュロと錚々たるメンバーが集まり、流石に分が悪く好位追走から7頭立ての5着に敗戦。それでも勝ったウィジャボードからは2馬身しか離れていなかったので、初GI参戦にしては健闘したとも言える。17日後のエクリプスSでは*デビッドジュニアやウィジャボードとの再戦となり、番手から残り400m付近で先頭に立ったが、最後方から飛んできた*デビッドジュニアに交わされ2着に敗れた。
そして次走となったインターナショナルSでは、愛ダービー馬ディラントーマス、エクリプスSで3着だったブルーマンデー、2年前の凱旋門賞2着馬チェリーミックスなどが参戦。これまで騎乗してきたマイケル・キネーン騎手がディラントーマスに騎乗するため、本馬はライアン・ムーア騎手との初コンビとなった。そしてレースでは先行から残り2ハロンで抜け出し、ディラントーマスを置き去りにしたところで前年の3着馬マラーヘルが突っ込んできたが、写真判定の末にこれを短頭差でギリギリ凌ぎきって初GI制覇となった。
休養明けのチャンピオンSでは前年の凱旋門賞馬ハリケーンランと張り合うように積極的な先行策に出たが途中で失速、勝利した当年の凱旋門賞2着馬プライドの9馬身半後ろで最下位に敗退し、4歳シーズンはこれで終了となった。
5歳を迎えたノットナウケイトは4月のゴードン・リチャーズS(GIII)から始動したが、スタートで大きく躓くアクシデント。最後方から道中で中団まで押し上げるという苦しい競馬となり、伸びを欠いてBCターフ優勝馬レッドロックスの4着に敗れた。
続けてタタソールズゴールドカップに出走。ここでは再戦となるディラントーマスが単勝1.5倍で断然人気となり、初コンビとなるジョニー・ムルタ騎手騎乗のノットナウケイトはドバイSC3着馬ユームザインと並んで2番人気となった。今回はちゃんとスタートを切ったノットナウケイトは2番手追走から残り400m付近で抜け出し、中団から追い上げてきたディラントーマスと叩き合いを展開。レース後に警告を受けるほどステッキを連打したムルタ騎手の激励に応えてギリギリのところでディラントーマスを凌ぎ、見事GI2勝目を達成した。
次走プリンスオブウェールズSではディラントーマスとレッドロックス、そして前走イスパーン賞を5馬身差で圧勝してGI馬の仲間入りを果たした前年3着のマンデュロらとの対戦となった。レースでは前走と同じように先行抜け出しを図ったが、それをあっさり捉えたマンデュロに引き離され、更に後方からやってきたディラントーマスにも交わされて、ディラントーマスから4馬身差の3着に終わった。
そして、次走に選んだエクリプスSで、ノットナウケイトは驚愕のパフォーマンスを見せることになる。
エクリプスSの対戦相手の中で難敵と思われたのは、3連勝で英ダービーを制し、鞍上の名手ランフランコ・デットーリ騎手に初のダービーのタイトルをもたらした3歳馬オーソライズドと、「史上初となるカルティエ賞最優秀2歳牡馬・同3歳牡馬のダブル受賞を果たして種牡馬入りしたは良かったものの、受精率があまりにも低かったために現役復帰させられた」というダンツフレームもビックリな経歴を持つ4歳馬ジョージワシントンの2頭だった。単勝オッズはオーソライズドが1.57倍の圧倒的人気となり、以下ジョージワシントンが5倍、ノットナウケイトが8倍と続いた。
レースはオーソライズド陣営がペースメーカーとして送り込んだシャンペリーの大逃げで始まり、ノットナウケイトは中団好位を追走。オーソライズドとジョージワシントンは後方で互いに睨み合いながらの競馬となった。そして直線に入って各馬が仕掛ける中、ノットナウケイトは何を思ったか外ラチ沿いへ逸走してしまう。
すわ故障か、それとも鞍上ムーア騎手の気が狂ったのかと驚く観衆。しかし、これこそが鞍上の温めていた奇策。事前にコースを歩いて外の方が馬場が良いことを確認していたムーア騎手は、多少距離をロスしてでも馬場の良い外から差し切るという作戦を思い描いてレースに臨んでいたのである。
内では既にオーソライズドとジョージワシントンの叩き合いとなり、やがてオーソライズドがこれを制して前に出て、ダービー馬の風格を見せつけた……と思われたところへ、オーソライズド鞍上のデットーリ騎手から死角になるほど離れた外からぶっ飛んでくる馬が1頭。そう、ノットナウケイトである。
レースは結局、勢いよく大外からぶち抜いたノットナウケイトがオーソライズドに1馬身半差をつけて勝利。豪快な勝利はイギリスはおろか国外でも大きな話題を呼んだ。デットーリ騎手はノットナウケイトが目に入っていなかったとレース後に陣営に詫びたという。
この後ノットナウケイトは連覇がかかるインターナショナルSに参戦。雪辱を期すオーソライズドが単勝2.5倍の1番人気、4度目の対戦となるディラントーマスが3倍で2番人気、ノットナウケイトが4.5倍で3番人気となり、残る4頭は全て10倍超えの3強ムードとなったこのレースでは正攻法の競馬をして先頭に躍り出たが、そこへ最後方から飛んできたオーソライズドとディラントーマスが本馬を並ぶ間もなく交わしていき、雪辱を果たしたオーソライズドの3着に終わった。
さらに続けて参戦したチャンピオンSでは9回目のGI出走にして初めて1番人気となり、いつも通りの先行策を取ったが、残り1ハロンで大きく失速して6着に大敗。これを最後に競走馬を引退した。
引退したノットナウケイトは、父インチナーを繋養していたイギリスのスタンリーハウススタッドで種牡馬入りし、2013年にはアイルランドのノックハウススタッドに売却された。ちなみに同牧場では2017年に日本から再輸出された5歳下のダービー馬*ワークフォースも繋養されている。
種牡馬としては、トウルビヨン系×テューダーミンストレル系という現代の主流から大きく離れた血統が未知の魅力となっていたものの重賞馬が初年度産駒のカスタムカットだけという状態が続いていたが、2017年になってオーストラリアに移籍していた3年目の産駒レッドカークウォリアーが同国のGI・ニューマーケットハンデキャップを優勝。さらに翌年には同レース史上5頭目の連覇を達成し、同年のブラックキャビアライトニング(GI)でも優勝している。騸馬なので血を残せないのが惜しいところだが。
同じくアホヌーラ系で、カタールの王族であるファハド殿下が献身的にサポートしていたことでも知られるドゥーナデンが2019年に死亡したこともあり、貴重なヘロド系の血を後世に残す役割を担う1頭となっていたが、同年の12月になってノットナウケイトも繁殖シーズンの後半に死亡していたことが判明した。17歳没。
Inchinor 1990 栗毛 |
Ahonoora 1975 栗毛 |
Lorenzaccio | Klairon |
Phoenissa | |||
Helen Nichols | Martial | ||
Quaker Girl | |||
Inchmurrin 1985 鹿毛 |
Lomond | Northern Dancer | |
My Charmer | |||
On Show | Welsh Pageant | ||
African Dancer | |||
Rambling Rose 1995 栗毛 FNo.2-u |
Cadeaux Genereux 1985 栗毛 |
Young Generation | Balidar |
Brig O'Doon | |||
Smarten Up | Sharpen Up | ||
L'Anguissola | |||
Blush Rambler 1988 栗毛 |
Blushing Groom | Red God | |
Runaway Bride | |||
Nikitina | Nijinsky II | ||
Vela |
クロス:Northern Dancer 4×5(9.38%)、Nijinsky II 5×4(9.38%)
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最終更新:2025/06/13(金) 23:00
最終更新:2025/06/13(金) 22:00
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