ノース・アメリカンX-15(North American X-15)とは、アメリカ合衆国のノース・アメリカン・アビエーションが開発したロケット実験機である。
ノース・アメリカンX-15 North American X-15 |
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用途 | 実験機 (実験高速ロケット動力研究航空機) |
分類 | ロケット実験機 |
製造者 | ノース・アメリカン・アビエーション |
設計主任 | ハリソン・アレン・ストームス・ジュニア |
運用者 | アメリカ国立航空宇宙局 |
アメリカ空軍 | |
総生産数 | 3機 |
初飛行 | 1959年6月8日 (X-15A-1) |
最終飛行 | 1968年10月24日 (X-15A-3) |
退役 | 1973年12月 |
総飛行回数 | 199回 |
アメリカ国立航空宇宙局(NASA)及びアメリカ空軍(USAF)と主契約したノース・アメリカン・アビエーション(NAA)が実験高速ロケット動力研究航空機(Experimental high-speed rocket-powered research aircraft)として開発・製造した単発式ロケット実験機。
Xプレーンの一環、X-15計画(X-15 program)として超高高度極超音速飛行実験に使用された。設計チーム主任は航空工学者のハリソン・アレン・ストームス・ジュニア(ハリソン・ストーミー)。
機体バリエーションはX-15Aのみ。製造機体はX-15A-1、X-15A-2、X-15A-3の計3機。飛行空域まで懸架する母機には、ボーイングB-52 ストラトフォートレスをNASA仕様として改造したNB-52A及びNB-52Bが使用された。
X-15A-2はマッハ6.72もの速度で飛行する世界最速の有人機として、又、X-15A-3は高度107km以上を飛行する世界最高高度に達した航空機として国際航空連盟(Fédération Aéronautique Internationale、FAI)に公式認定され、現在でも破られていない。ただし、高度記録に関しては、スケールド・コンポジッツ・スペースシップワン(非公式高度記録112km)によって破られている。
1952年にアメリカ国家航空諮問委員会(NACA)がベルX-1やベルX-2に続く超音速ロケット実験機計画を構想。1954年にNACA、USAF、アメリカ海軍(USN)によりX-15計画として実験を開始する事が決定した。1955年にNACAは、NAA、リパブリック・アビエーション、ベル・エアクラフト、ダグラス・エアクラフトにX-15計画書を提出してそれぞれの機体設計案を提示するように持ち掛ける。この中からNAA設計案が選定され、X-15の開発が開始された。
1959年6月8日に1回目のフライト(X-15A-1初飛行)を開始、滑空試験を行った。パイロットはアルバート・スコット・クロスフィールド(スコット・クロスフィールド)。彼は元・USN所属パイロットであり、1955年に飛行士兼航空工学者としてNAAに移籍。1966年にNAA技術主任となってX-15計画に大きく貢献している。
1960年11月15日の26回目のフライト(X-15A-2、初のXLR-99動力飛行)にて、スコット・クロスフィールドは55%推力維持で最高速度3,150km/h(マッハ2.97、最高高度24,750km)を達成。
1963年7月19日の90回目のフライトにて、ジョセフ・アルバート・ウォーカー(ジョー・ウォーカー)の搭乗するX-15A-3が最高高度106,010m(最高速度5,971km/h、マッハ5.50)を記録。これはFAIが定める宇宙高度(100km以上、熱圏)での初の有人宇宙弾道飛行としての記録である。
1963年8月22日の91回目のフライトでは、ジョー・ウォーカーの搭乗するX-15A-3がFAI公式最高高度記録107,960m(最高速度6,106km/h、マッハ5.58)を樹立、2度目の有人宇宙弾道飛行に成功。
1967年10月3日の188回目のフライトにて、ウィリアム・J・ナイト(ピート・ナイト)の搭乗するX-15A-2がFAI公式最高速度記録7,274km/h(マッハ6.72、最高高度58,400m)を樹立した。
前部胴体はアルミ合金及びチタン合金によるセミモノコック構造。中央胴体は加圧用ヘリウムタンク、液体水素タンク、無水アンモニアタンクの順に内蔵。後部胴体はチタン合金によるセミモノコック構造で液体燃料ロケットエンジンを内蔵する。外装甲は内側のインコネルX(ニッケル合金)にグラスファイバーを被せ、最終的にアルミ合金で挟んだ複合装甲となっている。
主翼形状は短いテーパー翼(直線翼)でブレンディドウィングボディ(BWB)を採用。胴体側面と主翼の付け根のチャインと呼ばれる膨らみはリフティングボディとして設計されている。上下垂直尾翼と左右水平尾翼を持ち、垂直尾翼基部(胴体との付け根)が左右に展開する事でエアブレーキとなり、基部上に全遊動式ラダーが付いている。又、下垂直尾翼の全遊動式ラダーは着陸時の妨げにならないように切り離されて基部のみ残る。降着装置(ランディングギア)はフロントに車輪式ギアが1脚、リアにスキー式ギアが2脚の3点前輪式。
1956年当初は最初からリアクション・モーターズ(RMI)XLR-99液体燃料ロケットエンジンを搭載する予定であったが、RMIはタービンポンプ制御による可変推力機能の開発に手間取っていたため、予定を変更してX-15A-1にはリアクション・モーターズXLR-11液体燃料ロケットエンジンを2基(エンジン1基の燃焼室は4基)搭載した。これはベルX-1に1基搭載されたロケットエンジンと同型で、4基の燃焼室のいずれかの燃焼を止めることで簡単な推力制御は可能であった。XLR-99が世界初の推力可変・再着火可能型液体燃料ロケットエンジンとして完成すると、X-15A-2に搭載して動力飛行が行われた。このエンジンは約50~100%の間での推力調整が可能であり、26回目のフライトにて実証されている。
機体各所にはヒドラジン(推進剤)を噴射して機体の姿勢制御・軌道偏向をする姿勢制御装置(反作用制御装置、Reaction Control System、RCS)を内蔵している。これによって大気の無い宇宙高度に達した場合でも操縦する事が可能であり、機首上下のRCSでピッチ制御、機首左右のRCSでヨー制御、両主翼端表裏のRCSでロール制御を行う。この装置は後にスペースシャトルにも採用されている。又、チャイン後方から突き出たダンプチューブと呼ばれるパイプは超低温の液体燃料を噴射してエンジンを一時的に冷却するためのもので、母機から発射される前の噴射煙がこれである。
他にも、ドロップタンク等を搭載した状態での飛行実験も行われた。前述のX-15A-2がマッハ6.72の速度記録を出した188回目のフライトでは、胴体下部側面に2つのドロップタンク、着陸時と同じ状態の下部垂直尾翼基部に実物大ダミーのスクラムジェットエンジンを搭載して飛行、切り離しの実験を行っている。この時、機体には白い耐熱塗料(アブレイティヴ・コーティング)を施していたが、断熱圧縮による凄まじい空気加熱(約1300℃)で耐熱塗料が溶け剥がれかけていた。
X-15A-2 | |
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乗員 | 1名 |
全長 | 15.45 m (50 ft 9 in) |
全幅 | 6.80 m (22 ft 4 in) |
全高 | 4.12 m (13 ft 6 in) |
主翼面積 | 18.6 m2 (200 ft2) |
空虚重量 | 6,622 kg (14,600 lb) |
全備重量 | 15,422 kg (34,000 lb) |
翼面荷重 | 829 kg/m2 (170 lb/ft2) |
最高速度 | Mach 6.72 (7,274 km/h、2,021 m/s、4,520 mi/h) |
実用上昇高度 | 107,960 m (354,200 ft、67.08 mi) |
上昇率 | 18,288 m/min (304.8 m/s、60,000 ft/min) |
航続距離 | 451 km (280 mi) |
エンジン製造者 | リアクション・モーターズ |
メインエンジン | リアクション・モーターズXLR-99-RM-2 液体燃料ロケットエンジン × 1基 |
最大推力 | 313,155 N (31,933 kgf、70,400 lbf) / 30,480 m |
推力重量比 | 2.07 |
型式 | シリアル番号 | 初飛行 | 飛行回数 | |
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1号機 | X-15A-1 | 56-6670 | 1959年6月8日 | 82回 |
2号機 | X-15A-2 | 56-6671 | 1959年9月17日 | 53回 |
3号機 | X-15A-3 | 56-6672 | 1961年12月20日 | 64回 |
搭乗者名(本名/通名) | 所属 | 飛行回数 | 搭乗機体(飛行回数) |
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アルバート・スコット・クロスフィールド / スコット・クロスフィールド Albert Scott Crossfield / Scott Crossfield |
NAA | 14回 | X-15A-1(2回)、X-15A-2(12回) |
ジョーセフ・アルバート・ウォーカー / ジョー・ウォーカー Joseph Albert Walker / Joe Walker |
USAF | 25回 | X-15A-1(13回)、X-15A-2(3回)、X-15A-3(9回) |
ロバート・マイケル・ワイト / ロバート・ワイト Robert Michael White / Robert White |
USAF | 16回 | X-15A-1(6回)、X-15A-2(6回)、X-15A-3(4回) |
フォレスト・サイラス・ピーターセン / フォレスト・ピート Forrest Silas Petersen / Forrest Pete |
USN | 5回 | X-15A-1(4回)、X-15A-2(1回) |
ジョン・バロン・マカーイ / ジョン・マカーイ John Baron McKay / John McKay |
NASA | 29回 | X-15A-1(12回)、X-15A-2(11回)、X-15A-3(6回) |
ロバート・エイトケン・ラシュワース / ロバート・ラシュワース Robert Aitken Rushworth / Robert Rushworth |
USAF | 34回 | X-15A-1(13回)、X-15A-2(12回)、X-15A-3(9回) |
ニール・オルデン・アームストロング / ニール・アームストロング Neil Alden Armstrong / Neil Armstrong |
NASA | 7回 | X-15A-1(3回)、X-15A-3(4回) |
ジョー・ヘンリー・エングル / ジョー・エングル Joe Henry Engle / Joe Engle |
USAF | 16回 | X-15A-1(7回)、X-15A-3(9回) |
ミルトン・オーヴィル・トンプソン / ミルト・トンプソン Milton Orville Thompson / Milt Thompson |
NASA | 14回 | X-15A-1(5回)、X-15A-3(9回) |
ウィリアム・ジョン・ナイト / ピート・ナイト William John Knight / Pete Knight |
USAF | 16回 | X-15A-1(6回)、X-15A-2(8回)、X-15A-3(2回) |
ウィリアム・ハーヴィー・デイナ / ビル・デイナ William Harvey Dana / Bill Dana |
NASA | 16回 | X-15A-1(6回)、X-15A-2(1回)、X-15A-3(9回) |
マイケル・ジェイムズ・アダムス / マイク・アダムス Michael James Adams / Mike Adams |
USAF | 7回 | X-15A-1(4回)、X-15A-3(3回) |
型式 | シリアル番号 | 原型 | 原型シリアル番号 | 通称 |
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NB-52A | 52-003 | B-52A | 52-0003 | ボールズ3 |
NB-52B | 52-008 | B-52B | 52-0008 | ボールズ8 |
掲示板
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最終更新:2023/12/06(水) 07:00
最終更新:2023/12/06(水) 07:00
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