ハルトマン・ベルトラムとは、石黒監督版OVA「銀河英雄伝説」の外伝「叛乱者」に登場するキャラクターで、原作小説には登場しない。担当声優は加納詞桂章。
第237駆逐隊に所属する駆逐艦ハーメルンII<ツヴァイ>の副長。士官学校を優秀な成績で卒業し、五年も宇宙に出ていて現場の経験も豊富な士官であり、平民出身ながら若くして大尉となっており、「平民期待の星」と兵士からの人望も厚い。貴族出身の艦長アデナウアー少佐から指揮全般を任されているため、事実上ハーメルンIIの最高指揮官となっている。
職務も立派にこなし部下からも敬愛されている姿を見た当時中尉のラインハルトは、珍しくも着任早々ベルトラムのことを上官として高く評価していたが……アデナウアー少佐が戦闘で負傷し、全面的に軍務を行うようになってからは柔軟性に欠け、規則を絶対視し、独断専行で艦艇の窮地を救ったラインハルトに規則違反で軟禁を命じたり、艦艇の機能に障害をきたすと帝国軍の軍規に則り降伏を認めず自沈しようとするなど頑迷なところが徐々に浮き彫りになってくる。
さすがに自沈なんてできないと部下達から造反され、自分がラインハルトの代わりに拘束される醜態を晒す。だが、ラインハルトの現状打開策が大学で天体物理を学んでいた兵士の助言を受けて恒星の定期爆発風を利用して艦艇の推進力を確保するという、一見無謀極まるものであったため、やっぱりベルトラム大尉に指揮をとってもらおうと一部の軍人達が考え、再度の反逆がおきるが……
ロルフ・ザイデル二等兵を人質に取り、ラインハルトに銃口を突きつけて指揮権の返上をベルトラムは迫り、生き残るための無策さを指摘されても、悪あがきをした上で恒星で蒸し焼きにされるより自沈して潔い最後を迎える方が帝国軍人としての名誉が守られると語り、一兵卒の戯言を真に受けて動くなど士官としてどうなんだと責任を追及した。
「軍の階級と知識や才能は別のものだ。あなたの視野は軍隊の中だけの視野しか持ってはいない」
「こいつは驚きだ。貴族のおぼっちゃまに世間知らず呼ばわりされるとはな」
ラインハルトの逆鱗を踏んでしまって予想以上の反応がかえってきたことにベルトラムは黙り込み、その間を縫って敵軍が接近している報告が入る。そこでどう対応するべきか再び両者の間で激論が戦わされるが、そこに乱入者が現れる。
人質にされているロルフ・ザイデル二等兵の兄、アラヌス・ザイデル伍長である。ベルトラムのことを深く信頼していた彼は自暴自棄になっているとしか思えない尊敬する上官の暴挙を阻止しようとしたが、ベルトラムは自分を裏切ったと聞く耳を持たない。
「裏切ったわけじゃない。俺たちだって生き残る方法を探して必死なんだよ」
「兵士ごときが何を考えるというんだ? お前達は手足だ! 考えるのはエリートの士官がやればいいんだ!」
「それがあなたの本音か」
「そうだとも。だから私は士官になったんだ!」
ここでベルトラムは自身の価値観を披瀝する。それは、ある種のエゴイズムであったが、銀河帝国の社会を覆うひとつの現実であり、正しさであった。
「平民というだけで徴兵されて、一兵卒からやらされるのは御免だ! そんな境遇に甘んじている奴らは何を考える必要もない、資格もない! 黙って俺に従えばいいんだ!」
「誰がそんなことを。俺が平民の代表だって? やめてくれ。俺はお前達のような負け犬とは違う!」
「……負け犬?」
「いいか、軍の階級は身分とは違うんだ! 軍で出世すれば貴族の部下に命令もできる! これが『勝つ』ってことなんだ!! だからミューゼル、貴様は許さん! 貴様は中尉だ! 俺は大尉、貴様は俺の命令に従っていればいいんだ!!」
銀河帝国は厳格な身分社会であるが、同時に「弱肉強食・適者生存・優勝劣敗」を唱える軍事国家でもある。そのため、平民であろうとも理想的な軍の士官であれば、時として貴族に対して物言いできる権威を有しうることもあるのである。
その現実を強く信じているベルトラムにとって、ラインハルトは自分より階級が下のくせに身分を盾にしてその軍の上下関係という現実を否定しようとしている憎たらしい貴族にしか見えなかった。それだけにベルトラムの怒りは激しかったが、ラインハルトは動揺しなかった。
「断る」
「な、にぃ……?」
「私は士官としてこの艦の兵士たちの生命を預かっている。ひとりとして無駄に死なせるわけにはいかない。いま貴方に指揮権を返さないことが最善の道であると信じている。これが叛乱だというのなら! 私はその汚名をあえて被ろう」
このやりとりで趨勢は決まった。キルヒアイスの機転でこのやりとりはすべて艦内に流されており、兵士を重んじるラインハルトより軍の秩序のみを信奉するベルトラムの自沈に付き合おうとする者は、だれひとりいなくなっていたのである。
孤立を悟り、一度は銃を下ろして現実を受け入れようとしたベルトラムであったが、あまりの屈辱と怒りで我を忘れ、激情から後先考えずにラインハルトを射殺しようとしたが、人質になっていたロルフ・ザイデル二等兵が間に割って入って身代わりとなって死亡してしまう。
自分の感情的行為で兵士を殺してしまったことにベルトラムは茫然自失したが、こんなことで死人をだしてしまったことに激昂したラインハルトに銃を向けられて、動揺気味に銃を向けなおした。他の軍人もラインハルト側とベルトラム側に別れて銃撃戦かというところで、アデナウアー少佐が医者の静止を無視して仲裁にやってきた。
アデナウアーは、もとはといえば自分が指揮権を曖昧にしてしまったことが今回の対立の原因であると謝罪し、正式にラインハルトを艦長代理に任命した。これに対し、ベルトラムは「貴族同士で」と不服の態度をみせたが、この艦を救おうとする意思と冷静な判断力を評価してのことであり、どうか大尉も協力してやってほしいと説得され、受け入れた。
その後のベルトラムの行動は序盤の有能な軍人という評価を肯定していくものであり、ロルフを殺してしまったことで兵士たちに恨まれていることを承知の上で兵士たちに混じっての艦艇修理に志願し、針のむしろ状態の中でそれを完遂し、船外作業中にロルフの兄であるアラヌス・ザイデル伍長を庇って恒星の熱で焼死した。
ハーメルンIIは無事にイゼルローン要塞へと帰投したが、アデナウアーが個人的な配慮から艦内のゴタゴタを全部なかったことにして報告したため、叛乱軍との戦闘中に名誉の戦死を遂げたと処理され、二階級特進している。
掲示板
8 ななしのよっしん
2022/03/18(金) 11:45:27 ID: jOv3cLG//8
>>1むしろ軍人でそこまでいけば立派だよな
この世界いくら優秀だろうと乗っている船が撃沈されたら
終わりの世界だし
9 ななしのよっしん
2023/03/30(木) 18:38:42 ID: Rjpy3nJI7e
シヴァが戻らない?
フィッシャー提督は!脱出者はいない(0名)とのことです
というのがあったと思えばミュラーみたいに3連続撃沈されても全部生き延びたケースもあるし
艦が撃沈されたとして平均でだいたい何割くらい脱出間に合って生還できるもんなんだろうか
10 ななしのよっしん
2023/10/07(土) 19:00:21 ID: 0tPFlm8MVr
>>8
銀英だからみんな麻痺しているけど、大佐や艦長って「時代に選ばれた一握りの英才」レベルだしね。
スケールが違うとは言え、日本海軍の艦長達ってみんなWikipediaにページ作られてるわけだし。
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最終更新:2024/04/24(水) 23:00
最終更新:2024/04/24(水) 23:00
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