昔、国勢調査員が来た時、そいつの肝臓をソラマメと一緒に食ってやった。ワインのつまみだ。
A census taker once tried to test me. I ate his liver with some fava beans and a nice Chianti.
『羊たちの沈黙』
ハンニバル・レクター(Hannibal Lecter)とは、トマス・ハリスの小説に登場する架空の人物である。
通称「人食いハンニバル(Hannibal the Cannibal)」。
初出は1981年の小説『レッド・ドラゴン』。
本編では脇役だったが、作者は彼のキャラクターを惜しんで1988年の『羊たちの沈黙』に登場させる。
本作は『レッド・ドラゴン』より後に起きた猟奇殺人を追う物語で、作中では改めてその特異な存在感を知らしめることになった。同年には優秀なホラー小説に与えられる「ブラム・ストーカー賞」を受賞するなど、高い評価を得た。
知名度が一気に上がったのは1991年の映画で、彼を演じたアンソニー・ホプキンスの怪演もあり、同年のアカデミー賞の主要5部門を受賞している。
続編となる『ハンニバル』が1999年、前半生を描いた『ハンニバル・ライジング』が2006年に刊行され、それぞれ映像化されている。
2013年にはテレビドラマ『ハンニバル』が3シーズンにわたり放送。
舞台を2013年に置き換え、登場人物の設定も大幅に変更されている。マッツ・ミケルセン演じる新たなるレクターは、リライトされた設定やウィル・グレアムとの複雑な関係も相まって評価が高い。
驚異的な天才にして優秀な精神科医、そして食人鬼という「怪物」。
先天的多指症。手の指が6本あったが、後に整形手術で除去した。なお映画にはこの設定が存在しない。
人間の精神に通暁しており、言葉で他人を操り、自殺に追い込む事さえ可能な領域にある。
家庭教師から「記憶の宮殿」という記憶法を教わっており、幼少時以来の記憶を保有。思考の中に構築された壮麗な「宮殿」を逍遥し、蓄積した知識と記憶を正確に再現する事が出来る。しかし「宮殿」には幼少期のトラウマを封じた禁断の領域があり、時に彼を悪夢へと誘う。
基本的に彼が殺して食べるのは「世に野放しになっている無礼な人間」に限られており、美味な部位のみを食する、「洗練」された美食家。
料理の腕前は超一流。ワインや香料についても深い見識を持ち、化粧品の匂いでブランドを正確に言い当てられるほど敏感な嗅覚を持つ。
音楽についてはテルミンやハープシコードを演奏し、お気に入りはグレン・グールド演奏の「ゴルトベルク変奏曲」。「神曲」で知られるダンテに関する見識は高く、ダンテ研究家の「フェル博士」として披露した演説は、峻厳な研究家を感嘆させるほどだった。リトアニア語、英語の他にもイタリア語を流麗に操り、現地人でも違和感を感じないレベルにある。
知力だけではなく体力も高く、軽々と人体を持ち上げられる。人間を殺す時でも脈拍が一瞬乱れる程度で、後は至って平静。青年期に学んだ日本の剣術の他、すれ違いざまにナイフで急所を抉って即死させるのもお手の物。正しく「リアルチート」である。
一方で若者が使うようなスラングを好んで用いる、スポーツカーの運転を好むなど、意外な一面も見せる。
自分が認めた相手に対しては理解を示し、礼を尽くす限りは紳士的に接する。収監施設の看護師、バーニー・マシューズが礼儀正しく、規則に忠実に自分の世話をした(その結果一度たりとも脱走の機会を得られなかった)ことに感謝し、自由の身となった後に礼を綴った手紙と謝礼金を送っている。
また自身に比肩し得る存在に対しては強い興味と執着を抱く。原作ではウィル・グレアムとクラリス・スターリングがそれに該当する。
1933年、リトアニアの貴族の家に生まれる。両親の系譜は共にイタリア貴族の名門に辿り着き、スイスの著名な画家・バルテュスとは従兄弟の関係にあるという。ミーシャという妹がおり、溺愛していた。
幼少の頃から類まれなる知性を発揮していたが、第二次世界大戦によって両親や使用人を失い、極限状況の中で衰弱した妹はリトアニアの対独協力者に殺されて食われるという凄惨な体験をしている。これが後に彼を「怪物」に変える一因となった。
その後戦災孤児として孤児院(奇しくも元は自分たちの居城だった)に入れられる。失語症により言葉を発しない状態が続いたが、後にフランス在住の叔父ロベールに引き取られ、妻である紫夫人(レディ・ムラサキ)から様々な教養を学び、日本文化の素養も習得する。
しかし市場に買い物に出た際、肉屋の男が紫夫人を侮辱し、激怒したロベールが持病の心臓発作を起こして死亡。レクターは復讐の為に肉屋を日本刀で殺害、その肉を食らう。これが最初の殺人となった。
その後医科大学で解剖学を学び、解剖図の制作やスケッチ販売で生計を立てる。
その間トラウマから閉ざしていた幼少の記憶を再現すべく、薬物と自己催眠によって「記憶の宮殿」を復活。ミーシャを殺して食った一味の名前と顔を思い出し、彼らを次々と殺害する。
しかし一味のリーダーを殺そうとした時、自分もそれと知らずにミーシャの肉を口にしていた事実を知り、これがレクターを完全に「怪物」に変えてしまった。
事件後は警察に逮捕されるが「戦争が生んだ悲劇」として報じられ、世間の同情を集めたレクターは釈放された。そして最後の一人を殺す為、アメリカに渡る。(『ハンニバル・ライジング』)
アメリカでは医学を学び、1970年に精神科医として独立。多くの有名人や上流階級が患者となったが、しばしば無礼な相手を見とがめては殺して食らうという凶行を繰り返す。
1978年にFBI捜査顧問だったウィル・グレアムに正体を突き止められるが、返り討ちにして逃亡、1年後に逮捕された。
ところが収監された精神病院で看護婦を襲い、顔に食らいついてズタズタに引き裂くという異常な行動に出る。この為精神病院への終身拘束が決まり、以後は独房での生活を送る事となった。しかし牢屋の中でも論文を発表し、多数の書籍を購読するなど、その活動は留まる事を知らなかった。
1981年、彼を逮捕するきっかけとなったグレアムから連続猟奇殺人の捜査協力を求められ、応じる一方でかねて文通で交流のあった犯人をたきつけてグレアムと家族を襲撃させた。(『レッド・ドラゴン』)
1983年、連続誘拐殺人「バッファロー・ビル」の捜査協力を求められ、当時FBIアカデミーの学生だったクラリス・スターリングと最初の出会いを果たす。
最初は相手にしなかったが、協力の見返りとして条件の良い監房に移された。しかし彼の扱い方を軽く見ていた看守2人の隙をついて殺害、逃亡する。その後はツアー客に扮して南米に渡り、自分に関わった様々な相手に手紙を送った。(『羊たちの沈黙』)
1990年、イタリア・フィレンツェに渡って「フェル博士」を名乗り、カッポーニ宮司書を殺害して後釜に座る。
貴重な建造物や蔵書に触れ、おおいに生活を満喫するが、自分に懸賞金をかけたメイスン・ヴァージャーの手が伸びた事、陰謀の一環でクラリスが窮地に立たされた事からアメリカに渡る。その後一時は捕らわれの身となったがクラリスによって救出された。(『ハンニバル』)
なお原作と映画版では結末は異なるが、どちらにしても自由の身である事には変わらない。
『レッド・ドラゴン』に登場。レクターを逮捕するきっかけとなった「伝説の男」。
優秀なプロファイラーだが、犯人の思考ばかりか感情まで同調してしまう為、カウンセリングを受けている。ドラマ版では自閉症スペクトラムの一種とされ、苦しみながらも事件解決に奔走。精神状態を安定させるためにレクターの精神鑑定を受けるという流れになっている。
FBI捜査顧問時代、レクターが「ほんの遊び心」で残した手がかりから、彼が連続失踪事件の犯人だと突き止める。しかし返り討ちにあって瀕死の重傷を負い、一旦は逃亡を許してしまった。
療養後にFBIアカデミー教官に復帰、世間を騒がせる一家惨殺犯の手がかりを求め、精神病院に終身拘束されているレクターを訪問。そこでヒントを与えられて犯人を追うが、一方でレクターは密かに殺人犯と「文通」し、逆にグレアムを襲撃するように唆していた。最終的にグレアムは一命こそ取り留めるが、顔をズタズタに切り裂かれるという結末を迎えている(映画では重傷を負いながら生還)。
『羊たちの沈黙』『ハンニバル』に登場。レクターにとって極めて重要な存在。
幼少時に保安官の父が殉職して孤児となる。引き取られた親戚の農場で屠殺される子羊の悲鳴を聞き、助けようとして叶わなかった事がトラウマになっている。
FBIアカデミー訓練生時代、連続誘拐殺人犯『バッファロー・ビル』の調査に当たって上司のジャック・クロフォードから、調査に非協力的なハンニバルから情報を引き出す任務を与えられる。率直な態度を好ましく思うも、クロフォードの差し金と知って軽くあしらったレクターだが、帰り際にクラリスが別の患者から辱められた「非礼」の償いとして、最初のヒントを与える。
以後も彼女のトラウマを語る事と引き換えにアドバイスを与えるが、功を欲した精神病院院長、チルトン博士の妨害工作に乗じて脱走に成功。事件解決に至ったクラリスに手紙を出す(映画では電話)。
『ハンニバル』ではFBI捜査官に昇格したが、レクターをおびき寄せる餌として利用され、窮地に立たされる。後におびき出される形となったレクターが生きたまま豚に食い殺されんとする現場で救出に入るが、麻酔銃を受けて昏倒。混乱の中でレクターによって逆に救出された。
原作と映画ではその後の結末が異なる。原作では傷の治療と薬物による暗示により、共に幼少時に失った存在(クラリスは父、レクターは妹)を補完。「記憶の宮殿」を共有する一心同体の関係となる。映画では隙をついてレクターを拘束したが逃亡されている。
『レッド・ドラゴン』に登場。連続一家惨殺犯。
ビデオ編集会社で働く寡黙な男。幼少時に虐待に近い扱いを受けて育てられ、自分の容姿を嫌悪している。盲目の女性、リーバと恋仲になるが、自身の抱える闇と狂気には勝てなかった。
ウィリアム・ブレイクの絵「赤き竜と太陽をまとう女」の「レッド・ドラゴン」を自分の理想とし、タトゥーを彫っている。
レクターの熱烈な「ファン」で、ファンレターに偽装して密かにメッセージのやり取りをしていた。その中でグレアムの殺害を示唆されて凶行に及ぶが……
『ハンニバル』に登場。レクターの命を狙う男。
大富豪の家に生まれ、残虐な嗜好によって実妹を含む複数の子供に性的暴行を働いた。減刑のためカウンセリングを受け、主治医としてレクターを選ぶが、彼をコントロールしようとして不快に思われた事から、麻薬を投与された上で自分の顔を「自発的に」滅茶苦茶に破壊。更に首をへし折られて全身麻痺となった。見るもおぞましい風貌となっているが頭脳は明晰で、経営能力は極めて高い。
精肉事業や為替取引で一大資産を築いているが精神は歪み切っており、養護施設から引き取った子供に恐怖を味わわせて泣かせ、涙を入れたマティーニを啜るなど、常軌を逸している。レクターに復讐すべく莫大な懸賞金をかけ、捕らえたあかつきには品種改良した凶暴な豚に生きたまま食わせようと画策している。
しかし計画はクラリスの乱入により頓挫。原作ではレクターに唆された実妹のマーゴによって口にペットのウツボをねじ込まれ、喉を噛み裂かれて死亡。映画では同じくレクターに唆された執事のコーデルが車椅子を豚舎に投げ落とし、生きたまま豚に食われた。
掲示板
14 ななしのよっしん
2020/07/27(月) 18:51:02 ID: UPQ/53kAeZ
ドラマハンニバルに居着いた腐共はオワコン化した瞬間にドラマゴッサムに移住してそこでも同じ事を繰り返して純粋な視聴者を追い出したからなぁ
15 ななしのよっしん
2021/01/03(日) 00:34:59 ID: Qa3MjQ82el
正直レクター博士が表舞台に出張って来ない方がおもしろい
刑務所の中から一歩も出ずに「殺人鬼を操る殺人鬼」っていう役に徹してたレッドドラゴンが個人的に一番いい
16 ななしのよっしん
2022/08/19(金) 20:28:40 ID: IrCppgshAp
ライジングのレクター役だったギャスパー・ウリエル事故で亡くなってたんだね
才能もありまだ37だというのに非常にもったいない
急上昇ワード改
最終更新:2024/04/25(木) 21:00
最終更新:2024/04/25(木) 21:00
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