バカ・アンドラーシュ(ハンガリー語:Baka András、1952年 - )は、ハンガリーの法学者、裁判官で、(第三共和政における)ハンガリー第10代大統領。元ハンガリー最高裁判所長官、元欧州人権裁判所判事。
英語圏などでは姓名の順序によりアンドラーシュ・バカ(András Baka)と表記される。
2026年8月、議会で圧倒的多数の議席を持つ与党ティサ党(尊敬と自由党)からハンガリー大統領候補に指名されており、順当に行けばハンガリーの次期大統領はバカとなる。同月11日、ハンガリー議会において選出が決定し、19日に就任することとなった。
法律家として長いキャリアを持ち、1991年から2008年まで欧州人権裁判所の判事を務めた。17年間にわたって国際的な人権裁判に携わったバカは、その後ハンガリーへ帰国。2009年には同国の最高裁判所長官に選出され、裁判官となった。
最高裁長官なので、当時のハンガリー司法における最高峰の一つまで上り詰めたバカということになるが、程なくして、バカの名が欧州司法史に刻まれることになる係争が起こる。
2010年代初頭、オルバン・ヴィクトル政権はハンガリーの憲法・司法制度について大規模な改革を進めていた。
この時、最高裁長官だったバカは、その中でも裁判官の定年年齢引き下げなど、司法の独立に影響しかねない改革を公然と批判、議会でも懸念を表明したが、やがて2011年に新たな基本法と司法制度改革が進められ、従来の最高裁判所は「クーリア」として再編されることになった。
これに伴ってバカの最高裁長官としての任期は、本来予定されていた終了時期を待たずして終了。バカは失職したのであった。
しかも新しいクーリアの長官については資格要件が変更され、バカはその要件を満たさなかったため立候補することすら叶わなかった。そのためバカは、バカがそれまで長官を務めていた最高司法機関の後継組織で、改めて長官になる道まで事実上閉ざされたのであった。
これに対してバカは、自らの任期を途中で終了させたハンガリー政府を相手取り、欧州人権裁判所に訴えを起こした。
かくして欧州司法史に残る、「Baka v. Hungary(バカ対ハンガリー事件)」が勃発したのである。この事件については、英語版Wikipediaにも記事が立項されている
。
「裁判官が政府の司法政策を批判したことを理由として不利益を受けた場合、それは裁判官の表現の自由や司法の独立とどう関係するのか」という、立憲民主主義の根幹にかかわる事件であった。
欧州人権裁判所は2016年、大法廷判決でバカの主張を認めた。
同裁判所は、バカの最高裁長官としての任期が途中で終了したことと、バカが最高裁長官として政府の司法改革について公に批判していたこととの間には関連があると判断し、最終的に、欧州人権条約第6条および第10条の違反を認定した。
これにより、バカが勝訴する結果となった。
2026年のハンガリーでは政権交代が起き、マジャル・ペーテル率いるティサ党(略称で、正式名は「尊敬と自由党」)が政権を獲得した。長年ハンガリー政治を率いてきたオルバンとフィデスは下野となり、ティサ党政権は、オルバン時代に形成された政治・制度上の構造を改める改革を進めていた。
その中で浮上したのが、新たな大統領の選出であった。ティサ党は、ハンガリーで知られる「チェス界の女王」ユディット・ポルガーを連名で候補に推挙したものの、本人が辞退したため、代わりにバカが2026年8月8日に指名された。
この背景として、バカの裁判での実績が材料となったと言われている。ティサ党側は大統領候補について、前政権との決別を象徴して国家の統合を象徴できる人物を求めており、前政権と対立して自らの権利侵害を認めさせた経歴を持っているバカに白羽の矢が立った。
なお、ハンガリーは大統領と首相の二頭政治である。政治の実権は基本的に首相と内閣が握っており、大統領は国家元首として国を代表するほか、法律への署名や一定の場合の差し戻し、憲法上の審査を求める権限などを持つ儀礼色の強い役職となる。
したがって、バカが大統領になったからといってバカがハンガリー政治を直接指揮するわけではないが、それでも、かつてオルバン政権によって最高裁長官の座を追われたバカが、オルバン退陣後のハンガリーで国家元首候補として帰ってきたという経緯は象徴的であるといえよう。
議会で圧倒的多数を確保したティサ党などにより、2026年8月11日に開催された議会での大統領選出でバカが選出された。同月19日に就任となった。
さて、そろそろ日本人の読者諸氏が最も気になっているであろう点について説明しておかなければならない。「バカ・アンドラーシュ」という氏名についてであるが、これは本名である。
「Baka」はハンガリーをはじめ中東欧に分布する姓で、姓辞典
では、ハンガリー語・スロバキア語・チェコ語圏のBakaについて、人名「Bak」に由来するものと説明されている。スロバキアにはBakaという地名がある。
またハンガリー系については、ハンガリー語の普通名詞「baka」に由来する可能性も挙げられており、普通名詞としては「歩兵」「一兵卒」といった意味を持つ。当然、日本語で異なる意味に感じられるのは事故である。
同様の事例としては、フィンランドの元首相にエスコ・アホという人物がいる。アホ首相。こちらもフィンランド史上最年少の36歳で首相となり、辞任後には携帯電話メーカーのノキア取締役を歴任している大層優秀な人物で、アホではないがアホである。
また、エジプトのファラオだったとされる人物に「バカのピラミッド」で知られるバカ王がいるが、こちらは正確には「バーカー」と読むらしく、「バウエフラー」という呼称もある。一方でハンガリー語の「Baka」は発音上でも「バカ」である。
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最終更新:2026/09/05(土) 20:00
最終更新:2026/09/05(土) 19:00
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