バカ停とは、鉄道において、列車が長時間にわたり同じ駅に停車することを意味するスラングである。
「バカ停」で一単語で、あまりなにかの略語と意識されているわけではないが、あえていうなら「バカみたいな長時間停車」くらいの意味。この場合の「バカ」は「並外れた」くらいのニュアンス(「バカでかい」などと同じ用法)であり、長時間停車そのものを揶揄・誹謗する意図はない。
鉄道を走る列車は時として、同じ駅に不自然なほど長時間にわたり停車しつづけるよう決められていることがある。鉄道ファンがこの事象を呼称したスラングが「バカ停」である(業務上の用語ではない)。
とはいえスラングでしかない以上、どの程度の時間をもって「バカ停」呼びの対象になるのか明確な基準はない。単に停車時間というとき、都会の通勤路線であれば数分でも長いと言えるし、ローカル線では5分以上に達することもあるが、当該路線の傾向として「よくある」程度の停車時間ならば不自然なほどの長時間とはみなされまい。いずれにせよ、最低20分程度あれば長時間と扱って差し支えはないだろう。
原則として乗客のいる(=バカ停を客側が体験する)旅客列車が対象で、貨物列車や回送列車など、停車時間が長いことも当たり前の列車にはあまり使われない様子。また、あくまで所定の列車計画(いわゆるダイヤグラム)で決められている長時間停車のみを指し、異常発生時の運転見合わせなど、突発的な長時間停車を「バカ停」と呼ぶことはない。
要因は後述するが、その性質上、地方の長大ローカル線で生じることがもっぱらである。よって、地方・長距離の運行を抱える国鉄→JRのローカル線での事例がほとんど。私鉄その他の社局では、路線距離の短さ、運行頻度の高さ、運行系統の簡素さなどから、特筆すべき長時間停車が生じることは珍しい。
バカ停中はドアも開いているので、乗客は自由にいったん車両を降りて駅構内を散策することができる。何、座席が取られる?席を争うほど乗客がいる路線でバカ停が起きるとでも思ってるのか。それどころか駅ナカでご飯食べるくらい時間はあるが、現代では、自動販売機より立派な店がある駅で店の営業時間中にバカ停する列車はそうそうなかろうと思われる。
ちなみに、前面展望動画や車窓動画、走行音動画などでは大抵、カット対象である。そりゃ変化がないんだから仕方ない。
本来、営業列車は、目的地まで途中駅の停車時間も最低限として最速で進行することがもっとも素直な運行である。とにかく面倒がなく、乗客は嬉しいし運行側も車両を効率的に使用できる。もちろん実際には、さまざまな都合により途中駅の停車時間は長くなりうる。そして場合によっては、同じ駅で長時間、停車しつづけることを余儀なくされることとなる。これが「バカ停」である。
バカ停の直接的要因は、運行時刻の調整にある。これは、路線の設備の限界やダイヤ編成上の制限、加えて乗客の傾向のような外的要因によってもたらされる。もちろん、路線の設備やダイヤの編成は、こうした長時間停車が生じにくいように考慮されてはいるが、外的要因まで含めたすべての要素を完全に調和させることは難しく、運行計画のどこかにひずみが生じてしまうことがある。
このひずみを根本的に解決するためには、線路の増設や車両の増備、需要を超えた増便など、はるかに大規模でデメリットも大きい投資が必要になりがち。そのかわり、多少は不自然でも、同じ駅で長時間にわたり停車することを許容して、現れたひずみを吸収するのである。
「バカ停」発生の具体的要因としては、以下のような例が挙げられる。実際のバカ停の多くは、以下の要因の複合によってもたらされる。
路線に線路が一本しかない単線区間では、上下列車の離合(列車交換)ができない。よって2本以上の線路を持つ駅(いわゆる交換可能駅)、あるいは同様の機能を持つ信号場で列車交換を行う必要があるが、離合する反対方向の列車(対向列車)の到着までタイムラグが生じることがある。交換可能駅・信号場は、その路線の列車運行に応じて適切に設置されるが、それでもタイムラグが大きくなる場合はある。
地方のローカル線はほとんどがこの単線であり、バカ停が生じやすい要因になっている。特に国鉄末期以降、赤字ローカル線の合理化のため交換可能駅が削減されがち(信号要員の配置、分岐器の保守など手間が大きい。特に積雪区間で大きい)でもあり、設備の限界がしばしばダイヤに反映されている。
路線どうしの乗り換え駅では、別路線の列車との相互の乗り換え(接続)を目的として停車時間が調整されることがある。とはいえ列車が10分に1本は来るような路線であれば、列車を接続するにも数分ていどの停車でよく、容易である。
しかし、これがよくて2時間に1本のローカル線でははるかに難しくなる。接続先の列車も、さらに先の駅で別の列車(やっぱり2時間に1本とか)と接続していることがあり、すべてを考慮して時刻を設定しなければ、表面上の本数よりさらに不便になってしまうのがローカル線。そこで、乗り換え駅で数十分停車してでも乗り換えられるほうが便利、という判断で長時間の停車が設定されるのである。
夜行列車は、夕方〜夜に始発駅を発車して夜間に走行し、朝に終着駅に到着する。その特殊性から、運行時刻を調整する目的の長時間停車が設定されていることがある。
第一に、運行距離が比較的短い場合、始発駅を夜遅くに出発したとしてもあまりに早い時間に目的地に着いてしまう。到着が早すぎれば、乗り換え客は初列車まで長時間の待機を強いられる。この弊害を避けるため、どこか適度なタイミングで途中駅に長時間停車して時間を調整する。ただし、深夜の駅に要員を配置しないですむよう、ドアを開けず乗降車不可能な停車(運転停車と呼ばれる)であることも多い。
第二に、夜間時間帯に特定の区間を走ってもらいたくない場合がある。ある区間の線路メンテナンスに時間を取るためだったり、主に夜間に走る貨物列車(速度が遅く旅客列車の邪魔になりやすい)を優先するために、どこかの駅で長時間停車して時間を稼ぐのである。
なお、短距離の夜行では終着駅に深夜~未明に到着したうえ、早朝まで長時間停車して乗客の仮眠時間をとるような場合がある(東武鉄道の「尾瀬夜行」「スノーパル」など)が、これはバカ停と呼ばれることは少ないようだ。
上記したような各種の要因以外にも、特定の時間に特定の区間でその列車を運行するための時間調整、あるいは単純に特定の駅に長時間停車させておくための長時間停車が生じることもある。
前者の例としては、沿線の学校への登下校の便宜が挙げられる。登下校時間にあわせて学校の最寄り駅に着くよう列車を運転するために、前後の時間帯の列車の運行時刻を調整して対処するのである。
後者は観光列車(のってたのしい列車、D&S列車など)のたぐいでよく見られる。この場合、途中駅で乗客を歓迎するイベントや、途中下車させて駅周辺を観光させる目的で、長く停車時間を取っている。
| 路線 | 木次線→山陰本線(普通) |
|---|---|
| 列車 | 普通 上り 414列車(八川発 松江行) |
| 発生駅 | 宍道駅(島根県八束郡宍道町〔当時〕) |
| 停車時間 | 46分間(8時32分着 9時18分発) |
| (1964年〔昭和39年〕10月1日改正当時) | |
東海道新幹線開業当時の山陰地方における、朝の46分間バカ停。当該の普通414列車は島根県は奥出雲から県都・松江を目指す木次線の上り普通客車列車で、この宍道駅から山陰本線に入る。
木次線、山陰本線ともに単線で、発生要因としては宍道駅に9時16分に到着する下り普通客車列車(下り421列車)との列車交換だろう。この先にも複数の交換可能駅があるが、長時間停車してまで宍道駅で行き違うのは、おそらく8時36分に宍道駅から松江方面へ発車する山陰本線上り大阪行き普通列車(上り716列車)との調整と思われる。716列車は5時17分浜田駅発、大阪駅20時43分着と所要15時間26分のうんざりしそうな長距離列車で、こちらを優先しつつ、運行が近接しすぎないよう間隔を取ったものか(次発は宍道駅9時54分発)。結果として松江駅への最速は716列車への乗り換えだったりする。
それなら木次線内の運行時刻を後ろ倒しすれば停車時間を短くできてお得な気もするが、実はこの414列車、島根県立大東高等学校などの最寄り駅である4つ前の出雲大東駅を8時1分に発車する。つまり朝の通学の足になっていたことがうかがえ、うかつに遅くするわけにいかなかったであろう(前列車は出雲大東駅6時38分。逆方向にも出雲大東駅で上り414列車と列車交換する下り普通417列車が存在した)。
なお、提示した1964年10月改正まで、414列車は8時36分着・8時55分発の17分間停車で、上り716列車は8時40分発、下り421列車とは次の来待駅で交換していた。しかし10月改正で出雲市発金沢行の急行「あさしお」号(402D列車。宍道駅は通過)[1]が新設されており、来待駅で下り421列車と交換する列車が急行「あさしお」に差し替えられたことで、宍道駅でさらに長く待つことになったようである。
| 路線 | 函館本線→根室本線(直通) |
|---|---|
| 列車 | 普通 下り 419列車(函館発 釧路行) |
| 発生駅 | 滝川駅(北海道滝川市) |
| 停車時間 | 32分間(10時12分着 10時44分発) |
| (1964年〔昭和39年〕10月1日改正当時) | |
国鉄最盛期の北海道、函館本線と根室本線の接続駅である滝川駅で発生していた、32分間のバカ停。当該の普通419列車は釧路駅へと向かう下りの長距離客車列車である。
直接の発生要因として、単線である根室本線のひとつ先の隣駅・東滝川駅[2]を10時32分に発車し、滝川駅に10時54分(本列車発車10分後)に到着する対向列車(上り426列車)との列車交換がある。東滝川駅との中間にある一ノ坂信号場[3]でこの対向列車と列車交換を行うべく、手前の滝川駅で長時間停車しているものと思われる(対向列車は当列車を待つため、滝川駅まで本来9分程度の区間に22分を要している)。
なお、東滝川駅やその先の幌岡信号場でも列車交換は可能。どちらかで列車交換とすれば停車時間を短くできるのだが、実は当列車の前後には滝川駅に10時33分着、10時37分発(釧路行)の下り特急「おおぞら」号(2001D列車)が存在しており、この特急の追い抜き待ちも兼ねて30分余の停車時間となったものと思われる(そしてたぶん対向列車は一ノ坂信号場で列車を2本待たされている……)。
しかしこの419列車、函館駅を前日23時20分に出発し釧路駅に18時50分に到着する、所要時間19時間30分のとんでもない長距離普通列車である(同じ函館駅-釧路駅を結ぶ前述の特急「おおぞら」は所要時間の短い室蘭本線・千歳線経由で10時間30分)。そう考えると30分くらい落ち着く時間があってもいい。
| 路線 | 中央本線→篠ノ井線(直通) |
|---|---|
| 列車 | 普通 下り 441M(新宿発 長野行) |
| 発生駅 | 日野春駅(山梨県北巨摩郡長坂町〔当時〕) |
| 停車時間 | 55分間(3時50分着 4時45分発) |
| (1980年〔昭和55年〕10月当時) | |
「列車の接続」と「夜行列車の時間調整」両方の理由によってバカ停が複数発生していた例として、中央本線―篠ノ井線直通の下り夜行普通列車を挙げる。ダイヤを何度も変更されながら数十年にわたり運行され続けていた列車だが、ここではウェブサイトで詳細なダイヤを確認できる
1980年10月時点のものを中心に、その後の変遷も紹介する。
普通441M列車は中央本線の「東京管内・高尾以遠の終車」と「長野管内の始発」を1本にまとめた上、間の区間も客扱いして長距離客も拾おうというような発想で運行されていた夜行普通列車で、東京周辺在住の登山愛好家が八ヶ岳や日本アルプスを攻めるのに愛用していたことから、「山男列車」「山岳夜行」といった異名が付けられていた。
新宿駅を23時55分に出発、大月(1時50分ごろ着)あたりまでは東京都心から郊外への帰宅客需要を満たしつつ、山梨の県都甲府駅に2時51分に到着する。このまま順当に走れば小淵沢駅に4時前には着けるのだが、前述の通りこの列車は長野管内の始発列車を兼ねており、朝4時前では早すぎて需要が薄い。また夜行列車としての観点では小淵沢駅で小海線に乗り換えるという需要があるが、小海線の小諸行き始発227D列車は小淵沢発5時45分なので、4時前に着いたら間が2時間も開く。夜も明けていない駅で2時間乗り継ぎ待ちをするのは客としても辛いし、国鉄にしたって改札を閉じておきたい時間帯の駅構内に乗り換え客が長時間滞留するのは保安上よろしくない。
そこで甲府駅で23分、日野春駅で55分というバカ停2発をはさんで小淵沢駅5時1分着に調整するのである。日野春駅には待避設備があるため、夜行急行「アルプス」の臨時増発便(下り8401列車)の運転日はこれの通過待ちもしていたようだ[4]。
そして5時14分に小淵沢駅を出て長野県に入ると、今度は上諏訪駅で49分(5時57分着、6時46分発)のバカ停を行う。これは何故かというと飯田線との接続のためで、辰野駅着を7時9分まで遅らせて、伊那大島発の飯田線下り始発223M列車(辰野駅7時3分着)から乗り継げるようにしているのである。一方で小淵沢―上諏訪間の各駅から松本・長野方面へ急ぎたい客は、上諏訪駅6時0分発の急行「天竜」1号(501M列車)に乗り継げば、急行停車駅には早く着ける(松本6時58分、長野8時9分着)。さらに6時21分発の普通232M列車もあり、辰野から飯田線に乗り入れるので辰野まではこちらが先着する。ただし232Mは(おそらく単線の飯田線では223Mとの交換待ちの必要があることから)辰野駅で23分のバカ停を行うため、441Mの乗客が飯田線方面へ行きたい場合は辰野で乗り換えても同じ列車に乗れるようになっている。この後は塩尻駅で中央西線、松本駅(15分停車)で大糸線との接続をとりつつ、長野駅に9時49分着で長い旅は終わる。
また対になる上りの長野発新宿行き夜行普通列車として442M列車があった。こちらは長野駅―松本駅間(1442M列車として運転)では夕方のラッシュ輸送に組み入れられていたようで、長野駅を18時台という早い時間に出発するよう設定されていた(特急を使えばその日のうちに東京まで着ける)。一方で塩尻以東では終電としての役割を与えられていたため、やはり長時間停車で調整していた。1984年7月の時刻表では松本駅で82分の大バカ停があり、他に辰野駅で26分、甲府駅で25分、それ以外にも5~10分の停車を頻繁に行っていたとみられる。
その後国鉄民営化を控えた1985年3月ダイヤ改正で442M列車は廃止、441M列車は上諏訪駅までに短縮されて上諏訪でのバカ停はなくなった(同時間帯の上諏訪発長野行快速が新設されたので実質的には分割)。JRとなってからは列車番号を変えつつ、92年3月改正で甲府止まりとなって夜行列車ではなくなり、翌年には廃止されている。
時は流れて2017年3月、同じ441Mの列車番号で、高尾発長野行の昼行普通列車が新設された。こちらは特に時間調整の必要がないらしく、停車時間は長くても3分程度である。中央特快との接続の関係から2024年3月改正で大月発に短縮され、現在に至る。
| 路線 | 北陸本線 |
|---|---|
| 列車 | 普通 上り 328M列車(金沢発 敦賀行) |
| 発生駅 | 福井駅(福井県福井市) |
| 停車時間 | 29分間(8時26分着 8時55分発) |
| (2012年〔平成24年〕6月20日訂補当時) | |
北陸新幹線の敦賀駅延伸で第三セクター化されるより前の北陸本線(現・ハピラインふくい)に存在した。県都・福井駅における29分のバカ停。当該列車は金沢駅と敦賀駅を結ぶ普通列車。
立派な複線路線である北陸本線では、列車交換による長時間停車はありえない。ではなぜ当列車が朝に30分近くも停車しているのかといえば、まだ北陸新幹線がない頃の北陸本線が、普通列車より多いくらいの勢いで特急列車が行き交う、いわゆる「特急街道」だったことによる。
当列車が8時26分に福井駅に到着すると、3分後の8時29分には上り特急「サンダーバード」80号(8080M列車、特定日のみ運転)が到着、2分停車して追い抜いてゆく。さらに8時36分、上り特急「しらさぎ」4号(4M列車)が到着、2分停車して追い抜いてゆく。そして8時47分、上り特急「サンダーバード」10号(4010M列車)が到着、2分停車して追い抜き、当列車は6分後にようやく発車となる。
1本は特定日のみ運転とはいえ、わずか30分で3本の特急列車が通り過ぎてゆくのはむしろなかなか壮観ではある。なお、1本前の普通列車(324M)も特急2本待ちで21分の停車時間を記録している。
| 路線 | 宗谷本線 |
|---|---|
| 列車 | 普通 上り 4326D→4328D列車(稚内発 名寄行) |
| 発生駅 | 音威子府駅(北海道中川郡音威子府村) |
| 停車時間 | 73分間(8時40分着 9時53分発) |
| (2012年〔平成24年〕6月20日訂補当時) | |
平成後期におけるバカ停のメッカといえば北海道の北辺、旭川駅から稚内駅までを結ぶ宗谷本線の音威子府駅である。これは朝の上り普通列車に存在する、一時間を超える73分という大バカ停。駅ナカの蕎麦屋で名物・音威子府そばをモリモリ食べられるぞ! なお、この駅を境に列車番号が切り替わるが、実質的には同一列車というパターン。
この宗谷本線も単線路線なのだが、離合する下り列車は当列車の12分後、8時52分には到着する(下り普通4325D列車、稚内行)。ところがこの下り列車も9時20分まで28分の相対的小バカ停を決め込む。何事が起きているかといえば、さらに13分後の9時5分、後を追ってきた上り特急「スーパー宗谷」2号(52D列車)が到着し、下り列車と列車交換しつつ当列車を追い抜いてゆく。この前後2本待ちがバカ停発生の最大要因といえる。
ただし、それでも先を行く特急「スーパー宗谷」2号が次の交換可能駅である豊清水駅[5]を過ぎれば、当列車も後追いで発車できるはずで、25分ほど発車時刻を繰り上げ得たとは思われる。しかしそうしても、先の美深駅で下り「スーパー宗谷」1号との列車交換に同じだけ待たなければならない(列車交換は30分先の名寄駅までできない)のだった。
| 路線 | 宗谷本線 |
|---|---|
| 列車 | 普通 下り 4331D→4335D列車(名寄発 稚内行) |
| 発生駅 | 音威子府駅(北海道中川郡音威子府村) |
| 停車時間 | 82分間(15時9分着 16時31分発) |
| (2012年〔平成24年〕6月20日訂補当時) | |
宗谷本線音威子府、午前に上りのバカ停あれば、午後には下りのバカ停あり。というわけで同じ時代の音威子府駅から、下り普通列車の82分という大バカ停を紹介しよう。こちらも当駅で列車番号が切り替わる。
15時9分に到着する、この稚内行普通列車が待っているのは、15時46分着発の上り特急「サロベツ」号(62D列車)である。すでに30分待っている。だが当然のように、入れ違いで当列車が発車したりはしない。この後、上り「サロベツ」号は豊清水駅で下り特急「サロベツ」号(61D列車)と列車交換し、今度はこの下り「サロベツ」号の追い抜きを待たなければならないからである。まさかの特急上下2本待ち。
さて、下り「サロベツ」号は音威子府駅に16時8分着発。だが単線の宗谷本線では、特急列車に追い抜かれてすぐ後追いで普通列車が発車とはいかない。正面衝突や追突を避けるため、交換可能な地点のあいだに進入してよい列車は1本のみ[6]。よって、下り「サロベツ」号が次の交換可能駅を通過する(佐久駅。わずか2駅隣だが27km先)まで待った16時31分、ようやく普通列車は稚内駅へと向けて発車するのだった。終点・稚内駅には18時49分着。稚内行きの最終普通列車である。
| 路線 | 小野田線 |
|---|---|
| 列車 | 普通 上り 1240M列車(長門本山発 宇部新川行) |
| 発生駅 | 雀田駅(山口県山陽小野田市) |
| 停車時間 | 35分間(18時47分着 19時22分発) |
| (2026年〔令和8年〕8月当時) | |
最後に紹介するのは、当記事の立項時点で現存する35分のバカ停。山口県の小ローカル線、小野田線(宇部新川-雀田-小野田)から同線の本山支線(雀田-長門本山)が分岐する雀田駅で、本山支線から小野田線本線へと直通する普通列車に生じたものである。
この列車は本山支線の終端・長門本山駅を出発して6分で雀田駅に到着、そこから小野田線本線に入り17分で終点の宇部新川駅までを結び、総所要時間は58分。所要時間の半分以上が雀田駅での停車時間というバカ停ぶりである。しかも雀田駅では当列車到着後の18時53分に小野田発宇部新川行の普通列車(1238M列車)が着発するため、長門本山駅からの最速はこの本線列車に乗り換えとなる。
要するに、実質的には本山支線のみの普通列車(長門本山→雀田)と小野田線の区間列車(雀田→宇部新川)がひとまとめになっているものだと思えばよい。前者[7]の利用客は本線列車に乗り継ぐのが前提、30分ほど空けて後者の区間列車が(前者と同じ車両で)運行される、という構図なのであろう。
| 路線 | 都営三田線→東急目黒線・新横浜線→相鉄新横浜線(直通) |
|---|---|
| 列車 | 急行 下り 7961列車(西高島平発 西谷行) ※新横浜―西谷は普通として運転 |
| 発生駅 | 新横浜駅(神奈川県横浜市港北区) |
| 停車時間 | 26分間(22時49分着 23時15分発) |
| (2025年〔令和7年〕3月改正時) | |
冒頭に「バカ停は地方の長大ローカル線で生じる」と書き、ここまでそのような例を多くみてきたが、国鉄やJRではなく大手私鉄の列車、それも大都市の主要駅で発生したバカ停を番外編的に紹介しよう。2025年3月のダイヤ改正で新たに設定され、現行ダイヤでも継続している。
7961列車は都営地下鉄三田線の西高島平駅を出発、東急線経由で約1時間20分かけて新横浜駅に到着する。終点の西谷駅まではあとわずか2駅、6分ほどで着くのだが、その前に26分の長時間停車が始まる。その間に和光市発海老名行き(6405列車)がやってきて2分停車ののち発車していくが、優等列車の待ち合わせではなくこれは普通列車[8]である。海老名行きは西谷駅から相鉄本線に乗り入れるのでこれに乗れば西谷駅まで行けるし、そこで海老名行き特急との接続もある。車内でも乗り換えを促すアナウンスが繰り返し流れるので、7961列車に残るのは寝過ごし客とバカ停を満喫したい鉄ヲタぐらいだろう。それはそれとして「急行が終点の2駅前で足踏みしている間に普通列車に抜かれる」というウサギとカメみたいな現象が発生しているのは、運転間隔調整が必要なことによる。
この時間帯、西谷方面行きは毎時4本のペースで新横浜駅を出るのだが、22時57分着の6405列車の次に来るのは23時24分着の7455列車で、その間30分近く開く。そのため22時台後半の列車の出発を遅らせて等間隔になるようにしたいのだが、その際2本の列車を少しずつ遅らせるよりは、2駅先までしか行かない先着列車だけを長く待たせて順番を入れ替えてしまった方が不便が少ないだろうというのがこのバカ停の趣旨である。わざわざ最後の2駅分だけ列車種別を変更しているところを見ても、「新横浜駅止まりの急行列車の車両が、26分後に西谷行き普通として出ていく」というのが実態と言ってよい(つまり前述の雀田駅の例と同じである)。なおこの7961列車は土休日のみの運転で、平日はこの時間帯に毎時6本と本数が増えるため長時間の調整は発生しない。
ちなみに、26年3月改正後のダイヤ(現行)では、7961列車自体は変わらないが、8分後にやってくる和光市発海老名行きが特急(3709列車)[9]に変更され、抜かされることが感覚的にわかりやすくなった(新横浜―西谷間にある羽沢横浜国大駅は特急も止まるので、乗り換えに不都合はない)。

掲示板
8 ななしのよっしん
2026/08/17(月) 14:57:14 ID: sAP2ult2HN
飯山線で十分以上の停車時間がある駅が三つくらいの全線通す列車乗ったけどあれは大雪とかで遅延したとき用なのかな
キハ110系だから乗り心地良いほうとはいえ結構くたびれた
9 ななしのよっしん
2026/08/17(月) 17:21:28 ID: KG6/9kxVN6
札幌駅を跨いで走る普通列車は、札幌駅で10分以上の停車が割とあったりします
理由としては「小樽駅方面/岩見沢駅方面/新千歳空港駅・苫小牧駅方面で独立したパターンダイヤが組まれている」にもかかわらず「どの列車がどちらの方面と直通するかが、快速エアポートを除くと一定でない」ってのが大きいと思われます
なお、現行ダイヤで札幌駅で一番待たされるのは15分です(724M 手稲駅8:39→8:55札幌駅9:10→9:41北広島駅)
10 ななしのよっしん
2026/08/22(土) 11:14:27 ID: uGzxlEL3CL
宮脇俊三の旅行記で、土讃線で1駅おきぐらいに15~20分止まる普通列車の話を読んだ記憶があるんだけど、どの本だったか思い出せない……
>>5
情報ありがとうございます。その部分修正しました。「待避設備があって、乗降客がなさそうだから」という身も蓋もない理由の可能性が高い気がしてきましたねえ。
急上昇ワード改
最終更新:2026/09/15(火) 12:00
最終更新:2026/09/15(火) 11:00
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