バックパサー(Buckpasser)とは、1963年生まれのアメリカの元競走馬・種牡馬である。
競走馬としても種牡馬としても一流だったが、それ以上にブルードメアサイアーとしての活躍で有名。
父は一大勢力を築いた名種牡馬Tom Fool、母は現在GIとなっているアラバマSを勝った名牝にして繁殖牝馬としても大きな足跡を残したBusanda、母父は三冠馬War Admiral。3代母にアメリカ最高の繁殖牝馬La Troienne(フランス生まれ)を持つピッカピカの良血馬である。
馬名こそ父のTom Fool(大馬鹿者)からの連想で「責任を逃れる人」というあんまりな意味ではあるが、その名前に反して非常に賢く、また2歳時から立派な馬格を持った馬であった。
管理したウィリアム・ウィンフレイ調教師は早い時期にレースを覚えさせるために5月のアケダクトの未勝利戦でデビューさせたが、レース中は遊びまくったため、4着に終わった。しかし、ここでレースを覚えたバックパサーは以後は着外に落ちることはなくなった。
2週間後の未勝利戦、10日後のアローワンスに連勝し、ナショナルスタリオンSではスローペースから末脚を見せて1着同着とした。トレモントSでも追い込んでクビ差勝利し、モンマスでのアローワンスでは2着*モデルフール(ダイナアクトレスの母父)に7馬身差を付け圧勝した。サプリングSでは5馬身の大出遅れを喫しながらも直線で追い上げ、半馬身差で勝ち切った。サラトガ競馬場のホープフルSでは3番手と好位置につけて、直線で抜け出すと2馬身半差で勝利した。
当時の2歳戦の大レースの1つであったアーリントン・ワシントン・フューチュリティでは後方からのレースになったが、コーナーで上がっていき一度先頭に立ったところで気を抜く悪癖が出てしまい、差し返そうとする*ファーザーズイメージに半馬身差まで迫られながら何とか勝利した。
2週間後のフューチュリティSに圧倒的1番人気で出走すると、好スタートを見せ、逃げる牝馬Priceless Gemの2番手につけたが、Priceless Gemの足は最後まで止まらず1/2馬身差で敗れ、連勝は8でストップした。なお、このPriceless Gemはのちに歴史的名牝Allez Franceの母となっている。
シャンペンSを5番手からよく伸びて4馬身差で勝利した後、バックパサーはクレイボーンファームで長期休養を取ることとなった。北米における当時の2歳馬の最高獲得賞金記録を樹立したほか、2歳フリーハンデは1位にランクされ、最優秀2歳牡馬にも選出された。
ウィンフレイ師の引退に伴いエドワード・ネロイ厩舎に移ったバックパサーは2月のハイアリアパークのアローワンスで復帰したが、長期休養で気が抜けていたか、同厩で後に最優秀スプリンターに選ばれる快速馬Impressiveの逃げを許して4馬身半差の2着に敗れた。しかし翌週のエヴァーグレーズSは*ステューペンダスにアタマ差をつけ競り勝った。
フラミンゴSではあまりの人気のために赤字を恐れて馬券の発売が中止され、この一件は現在まで「Chicken Flamingo」と呼ばれるほど批判を浴びた。レースでは先頭に立った瞬間にソラを使ったせいで危うく敗れかけたが、残り20ヤード地点からの約3完歩でギリギリ差し返してハナ差で競り勝ち、騎乗していた名手ウィリアム・シューメーカー騎手を「あそこから3完歩だけで差し返せる馬がいるとは思わなかった」と驚嘆させた。しかしこのあと裂蹄のため三冠レースは回避することとなった。
ベルモントSと同日のアローワンスで復帰すると2馬身差で勝利し、レオナルド・リチャーズSでは3/4差で勝利した。シカゴでのアーリントンクラシックではケンタッキーダービーとプリークネスSを勝利した二冠馬*カウアイキングとの対決になったが、バックパサーは2着に1馬身3/4差で勝利し、オーナーサイドの意向による強行出走だった*カウアイキングは靭帯損傷で5着に沈んでそのまま引退した。
初の古馬対戦となったシカゴアンSでは3/4馬身差で勝利し、ブルックリンHでは古馬相手にトップハンデとなったが、それでもアタマ差で勝利した。
アメリカンダービーではベルモントS勝利馬*アンバロイドとの対決となったが、バックパサーはクビ差ながらレコード勝ちを収め、*アンバロイドは6着に沈んだ。「真夏のダービー」トラヴァーズSでは*アンバロイドとの再戦となったが、バックパサーは直線で*アンバロイドを捕らえ3/4差で勝利した。アメリカ三冠レース優勝馬を負かしたことで、バックパサーは事実上世代最強馬となった。
ウッドワードSでは古馬の最強クラスであるTom Rolfeなどが出走してきたが、バックパサーは2着に3/4差で勝利し、Tom Rolfeは4着に敗れた。
ローレンスリアライゼーションSは特に強い相手がいなかったため2馬身半差で勝利し、当時2マイルの長距離戦だったジョッキークラブゴールドカップでは古馬が相手になったがアルゼンチン出身の強豪Niarkosに1馬身3/4差で勝利した。その後カリフォルニアに遠征してマリブSを3/4馬身差で勝利し、13連勝をマークしてシーズンを終えた。
バックパサーはこの年の年度代表馬・最優秀3歳牡馬・最優秀ハンディキャップホースとなった。また、世界初の3歳での100万ドルホースとなった。
4歳時には16ハンド2インチ1/4とさらに雄大な馬体になっていたバックパサーは、1月にサンタアニタのサンフェルナンドSを勝利して連勝を伸ばしたが、その後裂蹄により休養に入った。
復帰戦の5月末のメトロポリタンHでは130ポンド(約59kg)のトップハンデを背負ったが、ここも勝利した。
陣営はヨーロッパ遠征を視野に入れ、芝のボウリンググリーンHに出走させたが、ここでは初の芝に加えて135ポンド(約61.2kg)のハンデも影響して3着に敗れ、連勝は15で途切れることとなった。
その後サバーバンHを133ポンドで勝利したが、136ポンド(約61.7kg)を背負ったブルックリンHでは軽ハンデの上がり馬であるHandsome Boyに8馬身差で逃げ切られた。
引退レースとなったウッドウォードステークスでは、米史上最速馬と名高い'68年度代表馬Dr. Fager、ベルモントステークスを22馬身差で完勝していた当年の二冠馬にして'67年度代表馬Damascusと激突。今なお名勝負とたたえられるこのレースで、バックパサーは暴走気味に逃げたDr. Fagerは半馬身かわしたが、Damascusには10馬身差をつけられ2着に敗れている。このときバックパサーはすでに膝の関節炎を患っていて、引退後はクレイボーンファームで種牡馬となった。
「一般的に競走馬には100の欠点があるが、この馬には欠点が見つけられない」と言われるほどに馬体、能力とも完璧な馬だったという。また、訪問者には鼻を擦り付けて挨拶するという極めて優しい馬でもあったらしい。トレードマークはブリンカー付きのメンコで、黒と赤の覆面で必ず勝ちきる姿はまさにアメリカンヒーローであったという。
通算31戦25勝。圧倒的な実績に反して、25勝のうち半数は着差1馬身以下の僅差。この馬は追い込みを得意としていたのだが、どうも差し切ると力を抜いていたらしい。「唯一の欠点はレースへ挑む態度だ」とも言われたとか。
のちのブラッドホース社選定「20世紀のアメリカ名馬100選」第14位。
史上最高額(当時)のシンジケートを組まれて種牡馬入りしたバックパサー。15歳で早世するまでに313頭の産駒から35頭のステークス勝ち馬を送り出し成功を収めた。しかし、*シルバーチャームが種牡馬として失敗したこともあり父系はBuckarooの子孫くらいしか残っておらず、先行きは不透明である。
が、この馬に関していえば本領はブルードメアサイアー、すなわち母の父に入ってからであった。
特にMr. Prospectorとは強いニックスがあると言われ、バックパサー同様ブルードメアサイアーとして大活躍したMiswaki、ヒシアケボノなどの父Woodman、Dubai Milleniumやシーキングザパールを送り出したSeeking the Goldなどは全て父ミスプロ・母父バックパサーである。
これ以外にも「スーパーカー」マルゼンスキー(父Nijinsky)、Personal Ensignなどを輩出したPrivate Account(父Damascus)、1983~84年にGIを6連勝したSlew o' Gold(父Seattle Slew)、'84年欧州年度代表馬El Gran Senor(父Northern Dancer)、「ビッグレッド」の名を継ぐ*サンデーサイレンス最大のライバルEasy Goer(父Alydar)などの母父としてバックパサーの名を見ることができる。彼が母父に入った馬の多くは種牡馬としても実績を残しており、現代の競馬界に大きな影響力を持つ馬も多い。史上屈指のブルードメアサイアーとして、これからもバックパサーの血は続いていくだろう。
Tom Fool 1949 鹿毛 |
Menow 1935 黒鹿毛 |
Pharamond | Phalaris |
Selene | |||
Alcibiades | Supermus | ||
Regal Roman | |||
Gaga 1942 鹿毛 |
Bull Dog | Teddy | |
Plucky Liege | |||
Alpoise | Equipoise | ||
Laughing Queen | |||
Busanda 1947 青毛 FNo.1-s(x) |
War Admiral 1934 黒鹿毛 |
Man o' War | Fair Play |
Mahubah | |||
Brushup | Sweep | ||
Annette K. | |||
Businesslike 1939 黒鹿毛 |
Blue Larkspur | Black Servant | |
Blossom Tome | |||
La Troienne | Teddy | ||
Helene de Troie | |||
競走馬の4代血統表 |
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最終更新:2024/04/26(金) 01:00
最終更新:2024/04/26(金) 01:00
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